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5. 異世界6日目 治癒魔法に挑戦
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5. 異世界6日目 治癒魔法に挑戦
予定通りの時間に起きてから朝食に食パンとハムとサラダをとり、準備をして宿を出る。次の宿の予約だけしておこうと朝食付きで300ドールの宿へ行ってみる。
宿は建物が古いのでそれほど綺麗な感じではないけど、ロビーを見る限り掃除などはちゃんとしているところだ。部屋はかなり狭いみたいだけど、最低限の設備は整っているらしい。
普通の駆け出しの冒険者は実家のある町で冒険者登録をするので宿代がかからないから生活ができているのであって、宿に泊まりながら冒険者を続けるのはやはりある程度階位が上がってからになるようだ。それでもこのレベルの宿に一人で泊まるのはいい方らしく、普通は相部屋だったり、パーティーで一部屋借りたりするらしい。まあ稼ぎを考えるとそうだろうね。
今日は治癒魔法に挑戦するつもりだ。回復魔法や治癒魔法は講習を受けることができるようなんだけど、金額が高いこと、習得に時間がかかること、結局覚えられない人が多いことがネックで受ける人は少ないらしい。
そして治療関係の魔法を覚えた人は治療をする職に就くことが多いため、わざわざ危険な冒険者になる人も少ないらしい。このため冒険者で治療ができると言うことが分かるといろいろなパーティーからの勧誘が多くなるそうだ。
魔法を教えてくれるのはこの町では教会になるようだ。教会で信仰されているのはこの世界を治めているという神様がほとんどで、一部地域は土地神の信仰もあるらしい。
ちなみにこの世界は5柱の神様によって治められているため、神様とはこの5柱のみを指す言葉となっている。このため土地神の信仰はあるが、あくまでその眷属という形になるようだ。地球のようにいろいろな神様がいるわけではないのは、神託など実際にその力が見える形となっているからだろう。
悪いことをしたからと言って天罰が下ると言うことはほとんどないらしいけど、ゼロではないというのが怖いところだ。実際に天罰を受けてなくなったという人もいるみたいだけど、どこまで本当なのかは謎だ。普通に雷に打たれたとしても天罰と言われることがあるだろうからね。
ちなみにそれぞれの神様の所轄する分野に貢献があった場合にはそれぞれの神様からの祝福をもらうことがあり、それは神の祝福としてスキルに表示されるらしく、耐性効果やその分野の成長速度を速める効果があると言われている。
教会は町の中心から少し離れたところにあって、孤児院を併設しているらしい。まあどこの世界でも似たような感じだなあ・・・。
事前に聞いていた道順を歩いて行くと、目的の建物が見えてきた。よくあるとがった屋根の建物ではないけど、結構大きな建物だ。イメージとしては体育館のような建物にアパートがひっついているみたいな感じで奥のアパート部分が居住スペースで手前の体育館みたいなところがホールなのかな?
正面にある大きな扉が開いていたので中に入ってみると、正面に像が5つ並んでいた。これが神様の像なのかな?入ってすぐのところに受付のようなところがあり、係の女性がいたので声をかけてみる。
「すみません、こちらで治療関係の魔法講習が受けられると聞いてきたのですが、ここで受付をすればよろしいのでしょうか?」
「はい、こちらで怪我の治療をする治癒魔法と病気などの治療をする回復魔法の講習が受けられます。講習内容は治療魔法の知識を習得するための講義、確認のための試験、そして実習となりますが、各内容の値段設定はこのようになっています。」
値段表の書かれた案内を見ると、それぞれの講習の金額が書かれていた。上級は高いなあ。
本の内容の講義(1日3時間):
初級=500ドール、中級=1,000ドール、上級=5,000ドール
試験:
初級=200ドール、中級=500ドール、上級=1,000ドール
治癒魔法実技講習(1日2時間):
初級=1,000ドール、中級=50,000ドール、上級=500,000ドール
回復魔法実技講習(1日2時間):
初級=800ドール、中級=30,000ドール、上級=300,000ドール
「こちらで受けられるのは上級までの本の内容講義と中級までの実技講習となります。ただし毎日可能なのは初級までとなります。また、上級の実技講習に関しては現在この町では受けることが出来ません。
本の内容については特に講義を受けずに自分で勉強することも可能ですが、本の貸し出しは行っていませんのであちらの部屋でやってもらうことになります。いくつか本は準備していますが、他の方が使用されている場合は使えませんのでご了承ください。」
「知識については特に講義を受けなくても良いと言うことなんですね?」
「はい。ただし、きちんと知識を習得していないと魔法の訓練をしても習得が出来ませんので、試験を受けて合格しなければ実技講習は受けることは出来ません。中級以上の試験は必須ではありませんが、初級は必須となります。
一応文字をあまり読めない場合でも理解できるように講義は行いますが、やはりある程度文字が読めないと復習が出来ないため厳しくなります。」
まずは本の内容を確認して大丈夫そうなら試験を受けてみるかな。おそらく自分も持っている医学スキルの取得が条件だと思うんだが、どうやら学識系のスキルは知られていないようなので試験で判断するのだろう。
「試験に合格できれば習得までは普通どのくらいかかるのでしょうか?」
「通常であれば10日~15日くらいでしょうか。早い人で5日程度で取得した人もいますね。しかしながら生まれもった素質も必要ですし、知識が足りていない場合や神への信仰が足りなければスキルを覚えられない場合もあります。」
スキルを覚えられないのは単にちゃんと理解していなくて医学スキルを得ていないだけの問題だと思うんだけどねえ。それに知識スキルには確かに神学というものがあるけど、習得には関係ないと思うんだよね。
「ありがとうございます。知識はおそらく大丈夫だと思うのですが、一度本を読んで復習した後で試験を受けさせてください。」
「それは問題ありませんが、試験を受けて不合格でも試験代の返却はありませんのでその点はご了承ください。」
本の置いている部屋に行ってみるが、朝早いせいか他には誰もいなかった。本は全部で5冊あるが、最低限の知識としては最初の1冊が理解できれば良いらしい。現時点で医学スキルは持っているので、内容的には高校生でも知っているレベルなのかな?
体の構造とか怪我などの症例、病気の原因になる菌やウイルスなどの話であり、正直もとの世界では中学生くらいならある程度知っている内容だった。10分ほどでざっくりと一通り目を通してから試験を受けることを伝える。
「本当に大丈夫ですか?」
「はい、内容を見た限り問題なさそうなので受けたいと思います。」
さっそく試験を受ける。問題は全部で100問ほどあるんだけど、思ったよりも簡単な内容なので30分ほどで書き終わる。だって「体の中を流れている血液の役割は?」とか、「内臓の名前を5つ以上あげよ。」とか「止血に有効な方法は次のどれか?」とかなんだもんなあ。いくつかはこっちの世界に敷かない薬に関する問題もあったけど、ガイド本とかでも理解していた内容だったので問題なかった。
まあこちらの常識と自分の常識がずれていたらしょうがないけど、ざっと読んだ内容ではそんなに差はなかったから大丈夫だろう。
採点をしてもらったところ、ほぼ満点だったみたいで無事に合格することが出来た。
「おめでとうございます。実技を受ける資格があると判断できました。一応今からでも実技講習は受けることが出来ますが、どうしますか?」
「それではお願いします。あ、治癒魔法の初級コースでお願いします。」
支払いをすると、奥からフードをかぶった40歳くらいの女性がやって来た。地球で言うシスターというような雰囲気ではあるな。
「担当のアルマエラと言います。それではさっそく実技講習を始めたいと思います。」
「よろしくお願いします。」
「魔法は使えると言うことでしたので魔素の取り込みなどについては省略させていただきます。まずは手のひらに魔素を集めるところまでやってみてください。そのあと魔法の時はその魔素を魔法のイメージに変換しますが、治癒魔法は治癒部分に当てて治癒することをイメージすることで発動させます。
切り傷であればくっつけるイメージ、擦り傷であれば皮膚が再生するイメージで行ってみてください。こちらの小ネズミに傷を付けますのでそれを直すようにがんばってみてください。」
まずは小さな傷をつけてからお手本に治療をしてもらう。小さなひっかき傷が治療をすると跡形もなくなくなっていた。治療のイメージで跡が残ったり、ちゃんと治療できなかったりするらしい。さすがに魔法を使って悪化することはないということを聞いてちょっと安心する。
治療は怪我をしてからの時間が早ければ早いほど治りやすく、傷跡も残らないらしい。時間が経っても治療は可能だけど、うまく治らないこともあるし、傷跡が残ってしまったりするようだ。
もちろん治癒魔法のレベルにもよるが、段階的にはおおよそ1日以内、3日以内、10日以内、30日以内という感じで、30日を超えると極端に治癒率は下がってしまうようだ。このため治療に関しては出来れば1週間(10日)、最長でも1ヶ月(30日)以内で行うのが前提になるみたい。
魔素を手のひらに集めてから、治療に取りかかる。ひたすら血管と皮膚が再生するイメージで魔法を使ってみるがどうもうまくいかない。何かやり方が違っているんだろうか?
さすがに精神的に持たないので途中休憩を取りながらも訓練を継続する。MPとかはないので枯渇するわけではないんだけど、風魔法の時よりも思った以上に精神を消耗してしまう。いろいろとアドバイスを受けながら頑張ったんだけど、講習中にスキルの習得はできなかった。
新しい宿には夕食がないので事前に聞いていた安めの食堂に行ってみる。安いと言っても定食は50ドールだ。今日の日替わりのハンバーグ定食をお願いする。やはりやってきているお客の質は落ちるようでちょっと柄が悪い人たちもいる。絡まれないようにしないといけないな。
テンプレのように特に絡まれることもなく、食事を終えてから宿に戻る。シャワーはちゃんとお湯も出てくれるので問題はない。宿のレベルは低くてもそのあたりはちゃんとしていると考えていいようだ。まあさらに落ちるとお湯も出ないようになりそうだけどね。
ベッドは昨日よりは硬いけど寝ることには問題はなさそうだ。衣類の洗濯のサービスはないのが残念。下着だけ自分で洗って干しておくことにした。
目覚ましをセットしていたんだけど、起きると1時になっていた。大急ぎで準備をしてから朝食の場所へ行ってみる。どうも魔法を多く使うと精神的に疲れてしまうようだ。特に治療についてはうまくイメージができなかったので余計に疲れてしまったのだろう。
朝食はパンとサラダとジュースだけだった。まあ安いからしょうがないか。パンだけは3回までおかわりできるようなのでまだいい方なのかな?パンも別に固くなってしまったパンというわけでもないしね。
夕食代と併せて350ドールとなるので最初の宿の600ドールと比べると約半分だからまだお得か?部屋も特に問題なかったしね。
今日は又別の宿に行くことにしているので荷物をまとめてから宿を出る。今日泊まる宿は最初の宿と同じレベルのところで朝食のみついて600ドールの”カイラン”というところだ。建物は3階建ての石造りの建物で、前のところよりも綺麗な感じだ。宿の予約だけしてから教会へと向かう。
昨日と同じくお金を払い、アルマエラさんの指導の下で実習に取りかかる。話を聞くと、他の人よりもコツのつかみ方が早いようなので予想より早く習得できるかもしれないと言うことだった。そうだといいなあ。だめだったら治療のみお願いしなければならないし。
昨日と同じように血管と皮膚の再生のイメージで魔法をかけていくがなかなか治ってくれない。なんとなく発動しているような感触はあるが、効果が出てくれない。お手本を何度か見せてくれるんだが、イメージの仕方がおかしいのだろうか?
昼食の後、再びイメージをしていたんだが、ふと「傷の治りの早い絆創膏」に書かれていたイメージを思い出してやってみるとなんとうまく発動してくれた。怪我を魔力で直すのではなく、自己治癒力を高くして治すイメージなんだな。
何度か子ネズミで試した後、今度は自分の指にも傷をつけて発動してみるとうまく治ってくれた。よしよし・・・。
さすがに2日での習得に驚いていたけど、最初から医学スキルを持っていたこともあって納得しているようだった。
時間も少し余ったので他の治療についてのコツを教えてもらう。ある程度慣れてくると、あまり意識しなくても同じような治療ができるようになるようだ。ただ同じように見えても違うことが原因であれば魔法が発動したとしても効果が出ないらしい。このためいろいろな治療のイメージをできるようになっておくことが必要となってくるみたい。
イメージで視力とかまで戻ると言うことは、イメージさえすれば癌とかそんなものまで治せるんだろうか?骨折とかも骨の再生や成長を促進するイメージで結構いけそうな気もするしね。
「これから話すことはあくまで私個人の意見なので頭の片隅にでも置く程度と思ってください。」
アルマエラさんはちょっと深刻そうな表情で話し始めた。
「治療関係の魔法は講習を受ければ確実にスキルを取得できると言うことであれば良いのですが、やはり取得できない場合も多いのです。また以前からも講習費用は安いとは言えませんでしたが、ここ最近はさらに費用が高くなり、治療関係の魔法を学ぶ人たちの数が減ってきています。
医学の知識の本がもっと流通していれば良いのですが、本の閲覧や複製にも制約がかかっているのもスキルを取得しにくい一つの要因だと思います。」
まあここでしか勉強できないとなるとなかなか難しいのはあるかもしれないよね。そもそも識字率もそんなに高くないだろうし、講習代もそんなに安いわけでもないからねえ・・・。
「医学知識を身につけるのが大変そうですしね。」
「ええ、そのとおりです。そもそも本を読める人も多いわけではありませんし、お金がある人は自分で覚えずに治療を受けますからね。
たとえ覚えたとしても初級レベルだとわざわざお金を払ってまで治療を受ける人はほとんどいません。このため治癒士を目指す人たちは中級以上の魔法の取得をすることが前提となります。
初級レベルしか取得できなかった場合に治療院を営んだりする方もいますが、簡単な手当の他には薬による治療を行っています。」
初級治癒魔法はあくまで軽い切り傷や打撲とかの治療くらいだし、初級回復魔法も軽い病気や弱い毒治療くらいだからねえ。解毒は別として初級治療についてはあると便利くらいのものといった感じかなのでお金を払って魔法治療するかは微妙だな。
「もし中級以上の治療魔法を使えることが知られると教会への勧誘などいろいろと大変ですので、多くの人は実力を隠していることが多いという話しも聞いています。
特に冒険者として活動している治癒士はその実力を隠されていることが多く、通常は簡単な治療しか行えないと言うことになっています。良階位以上の冒険者になってくると、教会も強く出られないようですので実力を公開している方達もいますけどね。
ですので教会に所属する気が無いのであれば、今後治癒士として実力をつけることができたとしてもあまりおおっぴらに活動するのは控えた方がよいですよ。」
「そんな状況なんですね。だた、それを自分に言っても大丈夫なのですか?」
「治療で収入を得ている教会の人間がこういうことを言うのは問題かもしれませんが、教会以外でももう少し安く高度な魔法治療をできる場所が増えれば良いと思っているんですよ。
上級とは言いませんが、中級の治療でも出来る人が増えればその分命の助かる人や後遺症で苦労する人が減るはずです。ですので困っている人がいたとしたら少しでも助けてほしいと思ってこの話をしました。」
単純に親切心からの助言なのかな?教会の人がこういうことを言うって事は、治療方針については教会の中でもいろいろと問題を抱えているんだろうなあ。
「もし治療関係の魔法のレベルを上げることが出来れば出来るだけ多くの人の治療をやってみたいと思います。いろいろとありがとうございました。」
宿に戻ってからシャワーを浴びてさっぱりした後、食堂へと向かう。もうすでにお客はかなりやってきているのでカウンター席に座ることになった。
メニューを見るとかなりの種類があり、説明も書いてあるので助かる。さすがにドラゴンステーキなんてものはないけど、ちょっと高めのステーキセットとフルーツ盛り合わせを注文。結構値段はするけど、まあこのくらいは許容範囲だ。
ステーキはミディアムで焼いてもらったが、かなりおいしかった。魔牛の肉と書いているので牛肉のようなものなんだろうか?フルーツもよく分からないものが多いけど、甘いものからちょっと酸味のあるものとかなり楽しむことができて満足だ。
部屋は初日の宿よりも若干広めで、ベッドの質は良くなっている感じだった。残りもあと3日か。明日はせっかく治癒魔法まで覚えたのでちょっと冒険してもう少し遠出してみるかな。
今日習ったことの復習をかねて目の治療をやってみることにした。近眼は目の形が前後に伸びた状態になっているせいだとか目の筋力が落ちているとか読んだことがある。とりあえず眼球を真円にして、さらに目の筋力を回復するイメージで治療をしてみると、少し視力が良くなった感じになった。まだコンタクトをしていても違和感はないんだけど、よく見えるという状態にまでなっている。
さすがに魔法を使うと精神的に来るものがあるみたいでベッドで横になるとすぐに眠りに落ちていった。
~アルマエラSide~
久しぶりに治癒魔法を習いたいという人がやってきました。講習代が高いせいもあって、なかなか受ける人がいないのは悲しいことですが、教会の方針なので仕方がありません。もっと気軽に受けられるようになれば病気や怪我で苦しむ人が少なくなるはずなのに・・・。
ちゃんと勉強してきていたらしく、試験はほぼ満点の結果でしたので実技に取りかかりましたが、やはり簡単にはいかないようでした。ただ1日目に魔法が発動する気配があったので数日で習得できるかもしれないと思っていましたが、なんと翌日には治療ができるようになって驚きました。
あまった時間で他の治療方法について話しましたが、思ったよりも理解されている内容が多く驚きました。
冒険者として登録していることから、教会の所属はあまり考えていないようでした。勧誘される話しをするとかなりいやそうな顔をされていましたからね。ですので一応注意として伝えて上げることにしました。
私個人の意見としてはやはりもっと治療関係の魔法が一般化すれば良いかと思っています。今の教会は治療関係の魔法を独占してしまいたいような印象を受けます。講習だけでなく、治療費についても値上げをするという話しも聞きますしね・・・。
できるだけ頑張ってみますと言って去って行きましたが、頑張って立派な治癒士になってほしいと思います。
予定通りの時間に起きてから朝食に食パンとハムとサラダをとり、準備をして宿を出る。次の宿の予約だけしておこうと朝食付きで300ドールの宿へ行ってみる。
宿は建物が古いのでそれほど綺麗な感じではないけど、ロビーを見る限り掃除などはちゃんとしているところだ。部屋はかなり狭いみたいだけど、最低限の設備は整っているらしい。
普通の駆け出しの冒険者は実家のある町で冒険者登録をするので宿代がかからないから生活ができているのであって、宿に泊まりながら冒険者を続けるのはやはりある程度階位が上がってからになるようだ。それでもこのレベルの宿に一人で泊まるのはいい方らしく、普通は相部屋だったり、パーティーで一部屋借りたりするらしい。まあ稼ぎを考えるとそうだろうね。
今日は治癒魔法に挑戦するつもりだ。回復魔法や治癒魔法は講習を受けることができるようなんだけど、金額が高いこと、習得に時間がかかること、結局覚えられない人が多いことがネックで受ける人は少ないらしい。
そして治療関係の魔法を覚えた人は治療をする職に就くことが多いため、わざわざ危険な冒険者になる人も少ないらしい。このため冒険者で治療ができると言うことが分かるといろいろなパーティーからの勧誘が多くなるそうだ。
魔法を教えてくれるのはこの町では教会になるようだ。教会で信仰されているのはこの世界を治めているという神様がほとんどで、一部地域は土地神の信仰もあるらしい。
ちなみにこの世界は5柱の神様によって治められているため、神様とはこの5柱のみを指す言葉となっている。このため土地神の信仰はあるが、あくまでその眷属という形になるようだ。地球のようにいろいろな神様がいるわけではないのは、神託など実際にその力が見える形となっているからだろう。
悪いことをしたからと言って天罰が下ると言うことはほとんどないらしいけど、ゼロではないというのが怖いところだ。実際に天罰を受けてなくなったという人もいるみたいだけど、どこまで本当なのかは謎だ。普通に雷に打たれたとしても天罰と言われることがあるだろうからね。
ちなみにそれぞれの神様の所轄する分野に貢献があった場合にはそれぞれの神様からの祝福をもらうことがあり、それは神の祝福としてスキルに表示されるらしく、耐性効果やその分野の成長速度を速める効果があると言われている。
教会は町の中心から少し離れたところにあって、孤児院を併設しているらしい。まあどこの世界でも似たような感じだなあ・・・。
事前に聞いていた道順を歩いて行くと、目的の建物が見えてきた。よくあるとがった屋根の建物ではないけど、結構大きな建物だ。イメージとしては体育館のような建物にアパートがひっついているみたいな感じで奥のアパート部分が居住スペースで手前の体育館みたいなところがホールなのかな?
正面にある大きな扉が開いていたので中に入ってみると、正面に像が5つ並んでいた。これが神様の像なのかな?入ってすぐのところに受付のようなところがあり、係の女性がいたので声をかけてみる。
「すみません、こちらで治療関係の魔法講習が受けられると聞いてきたのですが、ここで受付をすればよろしいのでしょうか?」
「はい、こちらで怪我の治療をする治癒魔法と病気などの治療をする回復魔法の講習が受けられます。講習内容は治療魔法の知識を習得するための講義、確認のための試験、そして実習となりますが、各内容の値段設定はこのようになっています。」
値段表の書かれた案内を見ると、それぞれの講習の金額が書かれていた。上級は高いなあ。
本の内容の講義(1日3時間):
初級=500ドール、中級=1,000ドール、上級=5,000ドール
試験:
初級=200ドール、中級=500ドール、上級=1,000ドール
治癒魔法実技講習(1日2時間):
初級=1,000ドール、中級=50,000ドール、上級=500,000ドール
回復魔法実技講習(1日2時間):
初級=800ドール、中級=30,000ドール、上級=300,000ドール
「こちらで受けられるのは上級までの本の内容講義と中級までの実技講習となります。ただし毎日可能なのは初級までとなります。また、上級の実技講習に関しては現在この町では受けることが出来ません。
本の内容については特に講義を受けずに自分で勉強することも可能ですが、本の貸し出しは行っていませんのであちらの部屋でやってもらうことになります。いくつか本は準備していますが、他の方が使用されている場合は使えませんのでご了承ください。」
「知識については特に講義を受けなくても良いと言うことなんですね?」
「はい。ただし、きちんと知識を習得していないと魔法の訓練をしても習得が出来ませんので、試験を受けて合格しなければ実技講習は受けることは出来ません。中級以上の試験は必須ではありませんが、初級は必須となります。
一応文字をあまり読めない場合でも理解できるように講義は行いますが、やはりある程度文字が読めないと復習が出来ないため厳しくなります。」
まずは本の内容を確認して大丈夫そうなら試験を受けてみるかな。おそらく自分も持っている医学スキルの取得が条件だと思うんだが、どうやら学識系のスキルは知られていないようなので試験で判断するのだろう。
「試験に合格できれば習得までは普通どのくらいかかるのでしょうか?」
「通常であれば10日~15日くらいでしょうか。早い人で5日程度で取得した人もいますね。しかしながら生まれもった素質も必要ですし、知識が足りていない場合や神への信仰が足りなければスキルを覚えられない場合もあります。」
スキルを覚えられないのは単にちゃんと理解していなくて医学スキルを得ていないだけの問題だと思うんだけどねえ。それに知識スキルには確かに神学というものがあるけど、習得には関係ないと思うんだよね。
「ありがとうございます。知識はおそらく大丈夫だと思うのですが、一度本を読んで復習した後で試験を受けさせてください。」
「それは問題ありませんが、試験を受けて不合格でも試験代の返却はありませんのでその点はご了承ください。」
本の置いている部屋に行ってみるが、朝早いせいか他には誰もいなかった。本は全部で5冊あるが、最低限の知識としては最初の1冊が理解できれば良いらしい。現時点で医学スキルは持っているので、内容的には高校生でも知っているレベルなのかな?
体の構造とか怪我などの症例、病気の原因になる菌やウイルスなどの話であり、正直もとの世界では中学生くらいならある程度知っている内容だった。10分ほどでざっくりと一通り目を通してから試験を受けることを伝える。
「本当に大丈夫ですか?」
「はい、内容を見た限り問題なさそうなので受けたいと思います。」
さっそく試験を受ける。問題は全部で100問ほどあるんだけど、思ったよりも簡単な内容なので30分ほどで書き終わる。だって「体の中を流れている血液の役割は?」とか、「内臓の名前を5つ以上あげよ。」とか「止血に有効な方法は次のどれか?」とかなんだもんなあ。いくつかはこっちの世界に敷かない薬に関する問題もあったけど、ガイド本とかでも理解していた内容だったので問題なかった。
まあこちらの常識と自分の常識がずれていたらしょうがないけど、ざっと読んだ内容ではそんなに差はなかったから大丈夫だろう。
採点をしてもらったところ、ほぼ満点だったみたいで無事に合格することが出来た。
「おめでとうございます。実技を受ける資格があると判断できました。一応今からでも実技講習は受けることが出来ますが、どうしますか?」
「それではお願いします。あ、治癒魔法の初級コースでお願いします。」
支払いをすると、奥からフードをかぶった40歳くらいの女性がやって来た。地球で言うシスターというような雰囲気ではあるな。
「担当のアルマエラと言います。それではさっそく実技講習を始めたいと思います。」
「よろしくお願いします。」
「魔法は使えると言うことでしたので魔素の取り込みなどについては省略させていただきます。まずは手のひらに魔素を集めるところまでやってみてください。そのあと魔法の時はその魔素を魔法のイメージに変換しますが、治癒魔法は治癒部分に当てて治癒することをイメージすることで発動させます。
切り傷であればくっつけるイメージ、擦り傷であれば皮膚が再生するイメージで行ってみてください。こちらの小ネズミに傷を付けますのでそれを直すようにがんばってみてください。」
まずは小さな傷をつけてからお手本に治療をしてもらう。小さなひっかき傷が治療をすると跡形もなくなくなっていた。治療のイメージで跡が残ったり、ちゃんと治療できなかったりするらしい。さすがに魔法を使って悪化することはないということを聞いてちょっと安心する。
治療は怪我をしてからの時間が早ければ早いほど治りやすく、傷跡も残らないらしい。時間が経っても治療は可能だけど、うまく治らないこともあるし、傷跡が残ってしまったりするようだ。
もちろん治癒魔法のレベルにもよるが、段階的にはおおよそ1日以内、3日以内、10日以内、30日以内という感じで、30日を超えると極端に治癒率は下がってしまうようだ。このため治療に関しては出来れば1週間(10日)、最長でも1ヶ月(30日)以内で行うのが前提になるみたい。
魔素を手のひらに集めてから、治療に取りかかる。ひたすら血管と皮膚が再生するイメージで魔法を使ってみるがどうもうまくいかない。何かやり方が違っているんだろうか?
さすがに精神的に持たないので途中休憩を取りながらも訓練を継続する。MPとかはないので枯渇するわけではないんだけど、風魔法の時よりも思った以上に精神を消耗してしまう。いろいろとアドバイスを受けながら頑張ったんだけど、講習中にスキルの習得はできなかった。
新しい宿には夕食がないので事前に聞いていた安めの食堂に行ってみる。安いと言っても定食は50ドールだ。今日の日替わりのハンバーグ定食をお願いする。やはりやってきているお客の質は落ちるようでちょっと柄が悪い人たちもいる。絡まれないようにしないといけないな。
テンプレのように特に絡まれることもなく、食事を終えてから宿に戻る。シャワーはちゃんとお湯も出てくれるので問題はない。宿のレベルは低くてもそのあたりはちゃんとしていると考えていいようだ。まあさらに落ちるとお湯も出ないようになりそうだけどね。
ベッドは昨日よりは硬いけど寝ることには問題はなさそうだ。衣類の洗濯のサービスはないのが残念。下着だけ自分で洗って干しておくことにした。
目覚ましをセットしていたんだけど、起きると1時になっていた。大急ぎで準備をしてから朝食の場所へ行ってみる。どうも魔法を多く使うと精神的に疲れてしまうようだ。特に治療についてはうまくイメージができなかったので余計に疲れてしまったのだろう。
朝食はパンとサラダとジュースだけだった。まあ安いからしょうがないか。パンだけは3回までおかわりできるようなのでまだいい方なのかな?パンも別に固くなってしまったパンというわけでもないしね。
夕食代と併せて350ドールとなるので最初の宿の600ドールと比べると約半分だからまだお得か?部屋も特に問題なかったしね。
今日は又別の宿に行くことにしているので荷物をまとめてから宿を出る。今日泊まる宿は最初の宿と同じレベルのところで朝食のみついて600ドールの”カイラン”というところだ。建物は3階建ての石造りの建物で、前のところよりも綺麗な感じだ。宿の予約だけしてから教会へと向かう。
昨日と同じくお金を払い、アルマエラさんの指導の下で実習に取りかかる。話を聞くと、他の人よりもコツのつかみ方が早いようなので予想より早く習得できるかもしれないと言うことだった。そうだといいなあ。だめだったら治療のみお願いしなければならないし。
昨日と同じように血管と皮膚の再生のイメージで魔法をかけていくがなかなか治ってくれない。なんとなく発動しているような感触はあるが、効果が出てくれない。お手本を何度か見せてくれるんだが、イメージの仕方がおかしいのだろうか?
昼食の後、再びイメージをしていたんだが、ふと「傷の治りの早い絆創膏」に書かれていたイメージを思い出してやってみるとなんとうまく発動してくれた。怪我を魔力で直すのではなく、自己治癒力を高くして治すイメージなんだな。
何度か子ネズミで試した後、今度は自分の指にも傷をつけて発動してみるとうまく治ってくれた。よしよし・・・。
さすがに2日での習得に驚いていたけど、最初から医学スキルを持っていたこともあって納得しているようだった。
時間も少し余ったので他の治療についてのコツを教えてもらう。ある程度慣れてくると、あまり意識しなくても同じような治療ができるようになるようだ。ただ同じように見えても違うことが原因であれば魔法が発動したとしても効果が出ないらしい。このためいろいろな治療のイメージをできるようになっておくことが必要となってくるみたい。
イメージで視力とかまで戻ると言うことは、イメージさえすれば癌とかそんなものまで治せるんだろうか?骨折とかも骨の再生や成長を促進するイメージで結構いけそうな気もするしね。
「これから話すことはあくまで私個人の意見なので頭の片隅にでも置く程度と思ってください。」
アルマエラさんはちょっと深刻そうな表情で話し始めた。
「治療関係の魔法は講習を受ければ確実にスキルを取得できると言うことであれば良いのですが、やはり取得できない場合も多いのです。また以前からも講習費用は安いとは言えませんでしたが、ここ最近はさらに費用が高くなり、治療関係の魔法を学ぶ人たちの数が減ってきています。
医学の知識の本がもっと流通していれば良いのですが、本の閲覧や複製にも制約がかかっているのもスキルを取得しにくい一つの要因だと思います。」
まあここでしか勉強できないとなるとなかなか難しいのはあるかもしれないよね。そもそも識字率もそんなに高くないだろうし、講習代もそんなに安いわけでもないからねえ・・・。
「医学知識を身につけるのが大変そうですしね。」
「ええ、そのとおりです。そもそも本を読める人も多いわけではありませんし、お金がある人は自分で覚えずに治療を受けますからね。
たとえ覚えたとしても初級レベルだとわざわざお金を払ってまで治療を受ける人はほとんどいません。このため治癒士を目指す人たちは中級以上の魔法の取得をすることが前提となります。
初級レベルしか取得できなかった場合に治療院を営んだりする方もいますが、簡単な手当の他には薬による治療を行っています。」
初級治癒魔法はあくまで軽い切り傷や打撲とかの治療くらいだし、初級回復魔法も軽い病気や弱い毒治療くらいだからねえ。解毒は別として初級治療についてはあると便利くらいのものといった感じかなのでお金を払って魔法治療するかは微妙だな。
「もし中級以上の治療魔法を使えることが知られると教会への勧誘などいろいろと大変ですので、多くの人は実力を隠していることが多いという話しも聞いています。
特に冒険者として活動している治癒士はその実力を隠されていることが多く、通常は簡単な治療しか行えないと言うことになっています。良階位以上の冒険者になってくると、教会も強く出られないようですので実力を公開している方達もいますけどね。
ですので教会に所属する気が無いのであれば、今後治癒士として実力をつけることができたとしてもあまりおおっぴらに活動するのは控えた方がよいですよ。」
「そんな状況なんですね。だた、それを自分に言っても大丈夫なのですか?」
「治療で収入を得ている教会の人間がこういうことを言うのは問題かもしれませんが、教会以外でももう少し安く高度な魔法治療をできる場所が増えれば良いと思っているんですよ。
上級とは言いませんが、中級の治療でも出来る人が増えればその分命の助かる人や後遺症で苦労する人が減るはずです。ですので困っている人がいたとしたら少しでも助けてほしいと思ってこの話をしました。」
単純に親切心からの助言なのかな?教会の人がこういうことを言うって事は、治療方針については教会の中でもいろいろと問題を抱えているんだろうなあ。
「もし治療関係の魔法のレベルを上げることが出来れば出来るだけ多くの人の治療をやってみたいと思います。いろいろとありがとうございました。」
宿に戻ってからシャワーを浴びてさっぱりした後、食堂へと向かう。もうすでにお客はかなりやってきているのでカウンター席に座ることになった。
メニューを見るとかなりの種類があり、説明も書いてあるので助かる。さすがにドラゴンステーキなんてものはないけど、ちょっと高めのステーキセットとフルーツ盛り合わせを注文。結構値段はするけど、まあこのくらいは許容範囲だ。
ステーキはミディアムで焼いてもらったが、かなりおいしかった。魔牛の肉と書いているので牛肉のようなものなんだろうか?フルーツもよく分からないものが多いけど、甘いものからちょっと酸味のあるものとかなり楽しむことができて満足だ。
部屋は初日の宿よりも若干広めで、ベッドの質は良くなっている感じだった。残りもあと3日か。明日はせっかく治癒魔法まで覚えたのでちょっと冒険してもう少し遠出してみるかな。
今日習ったことの復習をかねて目の治療をやってみることにした。近眼は目の形が前後に伸びた状態になっているせいだとか目の筋力が落ちているとか読んだことがある。とりあえず眼球を真円にして、さらに目の筋力を回復するイメージで治療をしてみると、少し視力が良くなった感じになった。まだコンタクトをしていても違和感はないんだけど、よく見えるという状態にまでなっている。
さすがに魔法を使うと精神的に来るものがあるみたいでベッドで横になるとすぐに眠りに落ちていった。
~アルマエラSide~
久しぶりに治癒魔法を習いたいという人がやってきました。講習代が高いせいもあって、なかなか受ける人がいないのは悲しいことですが、教会の方針なので仕方がありません。もっと気軽に受けられるようになれば病気や怪我で苦しむ人が少なくなるはずなのに・・・。
ちゃんと勉強してきていたらしく、試験はほぼ満点の結果でしたので実技に取りかかりましたが、やはり簡単にはいかないようでした。ただ1日目に魔法が発動する気配があったので数日で習得できるかもしれないと思っていましたが、なんと翌日には治療ができるようになって驚きました。
あまった時間で他の治療方法について話しましたが、思ったよりも理解されている内容が多く驚きました。
冒険者として登録していることから、教会の所属はあまり考えていないようでした。勧誘される話しをするとかなりいやそうな顔をされていましたからね。ですので一応注意として伝えて上げることにしました。
私個人の意見としてはやはりもっと治療関係の魔法が一般化すれば良いかと思っています。今の教会は治療関係の魔法を独占してしまいたいような印象を受けます。講習だけでなく、治療費についても値上げをするという話しも聞きますしね・・・。
できるだけ頑張ってみますと言って去って行きましたが、頑張って立派な治癒士になってほしいと思います。
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