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17. 異世界60日目 冒険者として活動中
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17. 異世界60日目 冒険者として活動中
目を覚ましてから改めてパーティーについて考えてみるが、まずはどのくらいの収入が見込めるのかを確認することからだよな。
冒険者として生きていくと決めたからにはその生活基盤をきっちりと確かめておく必要があるからね。両親からはお金のことはきっちりと考えるように言われていたからなあ。
先日はたしかに一日で3000ドールちょっと稼ぐことができたんだけど、一日稼いだからといってずっとその収入があるわけでもない。とりあえずはしばらく収支について確認しないといけないだろうな。
情報交換を兼ねてジェンと一緒に朝食を取ることにしていたんだけど、ジェンは朝早くから宿の手伝いをしていたみたい。
「おはよう。結局朝からの手伝いは続けているんだね。」
「おはよう。ええ、いろいろとお世話になってきたし、出来る範囲ではやろうと思っているのよ。」
朝食は一緒に取るみたいで、自分と同じテーブルにやって来た。今日のメニューはサンドイッチとサラダとコーヒーだ。
「いろいろとお金のことを考えたんだけど、冒険者として生活しようと思ったらやっぱり一日に2000ドールは稼ぎたいところかな。これは生活費だけでなく、装備の更新とか整備も含めての話しだけどね。」
宿と食事は1日あたり一人600ドールとすると1日1200ドールいるので余裕を見て1500ドールくらいと考えていいだろう。ジェンの宿泊費は安くなっているけど、それは今のところは考えないほうがいい。
そして装備については今使っているものを再度一式そろえようとしたら一人頭最低でも10,000ドールくらいは考えていた方がいい。武器はまだ整備していれば長持ちはすると思うけど、今のレベルの防具だと半年~1年で買い換える感じになる。もっといいものだと整備しながら使えばかなりの期間使えるらしいけどね。
ということは半年で20,000ドールをためなければならないと言うことだ。グレードアップすることを考えるとその倍なので一日あたりに換算すると300ドールくらいになる。
「それは毎日その金額が必要という前提の話しなの?」
「いやさすがに毎日というわけにもいかないし、雨の日の狩りは正直やめておいた方がいい。なので月に狩りに行くのは15~20日くらいになるんじゃないかと思ってるんだ。そう考えると一日2500ドールくらいはほしいけど、まあ最低ラインは2000ドールという感じかな。
ただ装備のグレードアップとかを考えていくと3000ドールくらいはほしい感じはするね。」
本当は宿や食事のランクを下げればもう少し目標は下げてもいいんだけど、最初から目標を下げると大変なことになるからね。
これでも月の稼ぎで一人15~20万を目標にするわけだから結構な稼ぎという額だ。まあ実際には必要経費みたいなものもかかるから、得られた額の7~8割くらいが収益という感じだろうな。
「実際にはどのくらい経費とかがかかるか分からないけど、やっていけば徐々に効率も上がっていくと思うし、まずはその辺りを目標に置くのがいいかもしれないわね。
前に聞いた時にちゃんと活動している並階位の冒険者の1日の収入は一人当たり500~1500ドールくらいと言っていたから二人で2500ドールならできないことはないというレベルね。」
「それに自分たちは治療系の魔法が使えるので薬代がかからないのが強みかな。他の人たちは薬代の負担が結構大きいみたいだし、怪我のリスクもあるからね、
ただ大けがの時のことまで考えていたらしょうがないし、さすがに保険に入るのは金額的に負担が大きすぎるんだよね。」
「治療系の魔法はイメージが重要みたいだから、正直骨折とかも治せるような気がするのよね。怪我をしないのが一番だけどね。」
「ああ、あと、お金を稼ぐ手段としては骨董店やのみの市での転売も考えてるよ。のみの市は月に1回やっているので、もしかしたら装備分くらいは稼げるかもしれないし、そのまま装備の強化が出来るかもしれない。
ただあまりおおっぴらにやってしまうと変な人たちに目をつけられかねないというのが怖いからほどほどにしないといけないけどね。」
「それは鑑定を持っている強みね。私も早く鑑定レベルを上げないといけないわね。」
朝食を終えてから準備をしてすぐに町の外へ移動する。とりあえず3日間くらいどのくらいまで稼げるかを確認するつもりだ。
この間と同じように二人でひたすら魔獣を狩っていく。魔獣を倒して解体、魔獣を倒して解体・・・。お昼を食べてから魔獣を倒して解体・・・。ひたすらこれの繰り返しだ。
さすがに何度も倒した魔獣なので大丈夫とは思うんだが、緊張感が薄れてしまうことには気をつけないといけない。
戦闘をしながら魔法についてもいろいろと試している。イメージを膨らませて使っているが、なかなかこれという感じにはならない。まあこの辺りのイメージはぼちぼちやっていくしかない。
今のところ使える魔法系統は火、風、水、土の4つなんだけど、土に関しては落ちている石を使っている。魔法としては塊を飛ばしてダメージを与える”火弾””風弾””水弾”、石を飛ばす”石弾”、切り裂くイメージの”風斬””水斬”、壁や盾となる”水壁””土壁”という感じだ。
いろいろと本を読んだんだけど、戦闘につかっている魔法は大体同じようなもので、それぞれの種類の玉として打ち出す、それぞれの威力で斬る、エリアに発生させて範囲攻撃する、壁で防ぐという感じだった。
それぞれの種類や威力の違いで呼び方がいろいろとあるんだけど、たんに威力が違うものを別の呼び名にしているだけのような気もする。
できるだけ遠くから攻撃できればいいんだけど、やっぱり遠くなればなるほど精度も威力も落ちてしまうので、実際に効果の出る距離は10キヤルドくらいしかない。それ以上だと精度以前に威力が落ちすぎてしまう。ただ5キヤルドくらいまで近くになったら目や足など効果のある場所を狙うようにしている。
並階位の魔獣まではまだいいんだけど、上階位からは魔法攻撃でも躱してくるようなので高階位の魔獣を狩るにはもっと精度や速度や威力を上げなければならないだろう。
魔法のスキルレベルアップもかねてできるだけまんべんなく使いたいんだけど、狩りには火属性の魔法は難しい。火事の危険もあるし、素材もだめになってしまうからね。
防御として使う壁関係はまだ薄くしか作れないので強度的にはかなり厳しい。まあそれでも目隠しにはなるし、いきなり目の前に出すので魔獣も驚いて突進の勢いが下がるだけでも効果があると考えている。
このほか攻撃ではないけど、ジェンの使っていた風魔法で空気の振動を制限することで防音効果のエリアを作ったり、土魔法で簡単なテーブルやかまどのようなものを作ったりとか、重量軽減をしたりとか、水魔法で魔獣の血を吸い出すとかいろいろと使っている。
魔法についてはジェンも魔法のレベルアップのために常に魔素をまとわせたり、放出をしたりとやっていたらしい。自分と同じように異世界ものの小説からの知識だったみたい。比較できないのでやらない場合と比べて効果があるかどうかは正直わからないけど、半分無意識にやってきているので負担もないからとやっているようだ。
これに加えてちょっと時間があると魔法で遊んでいた。今では2種の魔法を同時に使うことが出来るらしい。同時に2つの属性魔法が使えるのであれば複合技ができないかとか考えている。自分はまだ一つしか使えないけど、今後検討していく価値はありそう。
重量軽減の魔法はかなり驚いていた。原理はすぐに理解できたみたいで、魔素使用による負担もあまりなく使いこなしている。いまのところ魔素の使用量から大体3割まで軽減するくらいが負担かからないようだ。
自分は慣れているせいか、さらに軽くできるんだけど、二人で50キグムくらい、無理すれば60~70キグムくらいは運ぶことができるので、狩った魔獣の素材は全部運べている。普通は運搬の関係で買い取り額の安い肉などは持って帰れないので貴重な部位のみを持って帰ることが多いようだ。
重さは軽減できるとはいえ、あまりにかさばるとやはり邪魔になってしまうのはしょうがないところだ。魔法を使うときとかには重量軽減魔法は切ることになるので、狩りの際には荷物を下ろしてやっている。収納魔法がほしい・・・。
毛皮とかが特にかさばるので数を狩るようになったら狩る魔獣も選ばないといけないかもしれない。
あと遠征した場合はさらに持ち帰るのはかなり厳しいだろうなあ。遠征の時は鮮度の問題から肉の持ち帰りも制約がかかってしまうしね。
ちなみに魔獣の血抜きについてもかなり驚いていた。これをするだけで解体も楽になるし、肉の質の維持にも役に立っている。きっちり抜けるので軽くなるので、運搬の時にもかなり効果があるからね。
3日間1時から5時まで4時間(地球時間で8時間)、途中休憩は取ったりしたがひたすら狩りをした結果、収入は2900、2400、2300で平均が2500ドールとなった。
「とりあえず目標の2500ドールは達成できたけど、気合い入れてやったにしては厳しい数値かもしれないんだよね。」
「休憩時間も短くとってやったくらいだからね。今回は3日間と期間を決めてやったからがんばれたけど、これがずっとだとなると厳しいかもしれないわね。」
「まあ魔獣を狩るのは問題ないんだけど、やっぱり探すのに時間がかかっているというのが効率が上がらない理由だろうね。」
魔獣を探すのは魔獣の痕跡を追ったりするというわけではなく、索敵で探りながらというのに頼っているので効率が悪いのだろう。
「そうは言っても索敵範囲がいきなり広がるわけでもないし、魔獣の痕跡とかはなかなかわかりにくいのよね。」
「でも痕跡とかを探すことを勉強するよりは索敵のエリア拡大に力を入れた方が早そうなんだよなあ・・・。」
ちなみに他の人たちはというと、魔獣の痕跡を追う人たちと索敵を使って狩りをする人たちとほんとに運任せの人たちがいるようだ。場所によっては魔獣の方からよってくるところもあるのでその場合は探す必要もないらしい。ただその分危険がかなり高い。
「そうは言っても並階位で2500ドール稼いでいるというのはすごいことだとは思うわよ。近くの魔獣のレベルを考えたらこのくらいが限度なのかもしれないわ。」
「たしかにそれはあるんだよね。もう少し遠くに行けば魔獣のレベルも上がるし、数も増えるので効率は上がるかもしれないね。ただその場合は日帰りはきつそう・・・。」
「もう少し余裕を持ってやっても最低限と言っていた2000ドールは稼げそうだし、前も話したように徐々に効率も上がっていくと思うから今の段階ではこのくらいの稼ぎでもいいんじゃないかな?
もともと並階位くらいまでは冒険者だけの収入だけだと生活が厳しいというレベルだったわけじゃない。そう考えたら一日で3000ドール超える日もあれば十分じゃないかな?」
「そうだね。最初からそんなに稼げるとは思っていなかったし、やり方を考えながら一番いい方法を探していこう。」
この3日間はひたすら狩りをするのみだったけど、宿に戻って、夕方から宿の手伝いをしていた。流れ的に自分も片付けなど手伝っていたんだが、そのおかげで自分の分の宿代も半額にしてくれたので良かったかな。
この値段だったら一日の生活費は1000ドールもいらないので、2000ドール稼げれば十分という感じかもしれない。
狩りを終えた翌日もジェンと一緒に朝食をとりながら今後の話しをする。
「とりあえず近場での報酬の目安は付いたんだけど、一回は遠征してどのくらい稼げるかやってみようと思うんだ。」
「遠征と言うことは泊まりがけって事よね?野営するの?」
「行こうと思っているところの近くには村とか泊まれるところはないので野営をする感じで考えているけどどうだろう?」
二人きりになるのでジェンがどう思うかだよなあ・・・。他にも盗賊とか他のたちの悪い冒険者とかの対応も考えないといけないしね。
「・・・うん、分かったわ。一番ベストな方法はやってみないと分からないしね。とりあえず野営をするならいろいろと買わないといけないわよね。」
とりあえず自分のことは信用してくれているということなのかな?
「ああ、最低限テントや寝袋とかは買わないといけないし、携帯の食料もある程度持っていかないといけないと思うんだ。あと現地で簡単に調理できる道具くらいは持って行った方がいいかなと思ってる。
それで急だけど、しばらくは天気が良さそうなので今日のうちに買い出しして、明日には出発しようと思ってるけど大丈夫?」
「分かったわ。ルミナには話しておくね。
荷物も置いていくから部屋は確保しておいた方がいいわよね。さすがに安くしてもらっているのに荷物だけ預かってと言うのは気が引けるわ。」
「うん、それでいいよ。あとで10日分をまとめて支払いしておくよ。」
朝食を終えてから買い物へと出かける。買い物はカサス商会で大体そろいそうなのでそこに行くことにした。アーマトの店よりは小さいけどそれでも十分大きな店舗だ。ちなみにジェンの友人のマラルはこの店で働いているらしい。
キャンプ用品売り場のようなところでいろいろと商品を見ていく。
「荷物をあまり持っていくと素材とかが持って帰れなくなるので必要最低限にした方がいいだろうね。今回は2泊くらいで考えているから携帯食は最低限の3日分くらいかな。」
「交代で見張りをするからテントも一人用で、寝袋も交代で使うから一つあればいいわよね。」
「同じ寝袋で気にならないなら自分はかまわないけど・・・。」
「浄化魔法である程度綺麗に出来るし、それ以前に荷物を出来るだけ少なくするならそんなことは言っていられないでしょう?」
テントはもとの世界にあったようなドーム型テントで支柱を2本クロスして簡単に立てられるタイプだ。布の素材も撥水性のものなので多少の雨であれば水ははじいてくれそう。三角テントだったら立てるのが面倒だったのでよかったよ。
寝袋は夏用で薄手のものを選んだ。下に敷くマットのようなものもあったけど、結構大きいので今回はパスだな。まあ何かしら下に敷けばなんとかなるだろう。エアーマットのようなものは売っていなかったしね。
「携帯食はこの○ロリーメイトのようなものかな?ビーフジャーキーとか缶詰もあるけど、缶詰はさすがに重いからねえ。」
「こっちの魔法で腐るのを防止した非常食はさすがに高いわね。1食で300ドールはさすがに赤字になってしまうわ。しかも結構重いからこれは気軽には買えないわよね。」
「まあ他のものよりおいしそうだけど、その値段だとさすがにねえ・・・。」
保存食のようなものは乾燥系のものや缶詰などであとは腐食防止をかけた食べ物という感じだ。もとの世界にあるものはだいたいそろっている感じだけどインスタントラーメンとかは開発されていないのかな?まあ地球でも開発されたのは50年くらい前だったように思うしね。
魔法の腐食防止があるから、そっち方面の開発がそこまで進んでいないのかもしれない。ちょっと時間ができたら作ってみてもいいかもしれないね。以前博物館でラーメン作りを体験しているし、たしかガイド本に入っている偉人伝の本にいろいろと載っていたと思う。
「あとは現地で倒した魔獣の肉も調理することを考えたら料理道具もいるかな。フライパンまでついている携帯用の食器セット一式とまな板と包丁のセットくらいか?あと調味料も最低限のものがいるなあ。」
「二人で持つとしても結構な量になるわね。帰りに持って帰られる素材も制限されるかもしれないわね。」
ざっと見た感じリュックの半分くらいは埋まってしまうくらいになる。ちなみに着替えは持って行かず、浄化魔法だけで対応する予定だ。最低限キレイにはなるからね。それだけでも荷物が減るので助かる。
あと一番困るのはトイレ関係だ。この世界では排泄を抑えるという魔法薬があり、これを飲むと6時間ほどはトイレに行かなくてよくなるため、日帰りの狩りに出る人はこれをよく使っている。
ただし、汗をかきやすくなったりすることと(水分が汗として出る)、効果が切れるとすぐに行きたくなってしまうと言う問題は出てしまうのだが、やはり便利なので冒険者が狩りに行くときは必需品となっている。
野営の時などはどうするかというと、やはり穴を掘って対応するというのが一般的だ。荷物に余裕がある人は折りたたみ式の個室のようなテントの中でして、用を足すと場所を少しずつ移動していくという形だ。今回はトイレの場所に使う簡易テントも購入することにした。
浄化の魔法が結構一般的なのでほとんどの人がこれで後処理をしているみたい。使えない人はトイレットペーパーのような紙だったり、葉っぱ(使える葉っぱは結構普通に自生している)だったりする。
他にもライトなど細々したものを買ったので、全部で3700ドールもかかってしまったが、これはしょうがないだろう。まあ何回か使ったら元は取れると信じよう。
両親がツーリングを趣味としていたことからギミックについていろいろと聞いておいてよかったよ。最初はとりあえず最低限のものだけをそろえてから、必要と思ったら買い足していく方が一番無駄がないと言っていたからな。最初の頃に買ったはいいが使わなかったものも多かったらしい。
戻ったら向こうでは時間がたっていないことになるようだけど、元気にしているかなあ・・・。まさか息子がこんなところに来ているとは思ってもいないだろう。週末には相変わらずツーリングに行っているのかなあ?
インスタントラーメンのことを考えていたのでラーメンが食べたくなり、ラーメンのようなものを提供している店でお昼をとることにした。スープは醤油ベースでかん水入りの縮れ麺を使ったものでそのまま醤油麺と言われているんだが、自分的にはラーメンと言ってもいいものだ。
味の種類は醤油と塩はあるんだけど、豚骨味はないみたい。豚骨ラーメンも久しぶりに食べてみたいなあ・・・。作り方は分かるけど、目標とする味になるのかは微妙すぎる。時間もかかるしね。
ただフォークで食べるのでちょっと違和感があるんだけど、箸がないのでこれはしょうがないだろう。食べるときに音を立てるのは特に問題はないみたいだけど、ジェンはさすがに苦労していた。
このあとも町中をいろいろ回って買い物をしたり、お茶をしたりして夕方には宿に戻る。夕食の後で宿の手伝いをしてから眠りについた。
翌朝0時に起きてから朝食を取り、早々に出発する。目的の場所は歩いて2時間近くかかる森になるんだけど、町の周りよりも1ランク上の魔獣が多い場所だ。素材の買い取りの対象も多いので効率は結構いいらしい。
残念ながら肉は運搬の関係から持って帰られる量が制限されるので、その分は向こうで消費するか、希少部位のみを持って帰るとかしなければならないだろう。
一応腐るのを軽減できる魔法はあるんだけど、暑くなってくるとその軽減力も小さくなる。今までは狩ってからその日に持ち帰っていたのであまり気にしていなかったんだけどね。初日に狩ったものだとさすがに保管が無理かなあ。
荷物の運搬で最も効率がいいのは収納魔法や収納バッグだ。ただ収納魔法は習得が大変だし、収納バッグは値段もそうだが、そもそもなかなか売りに出ないので持っている人は少ない。
このため、まだ手に入りやすい荷車や車を購入する人もいるけど、車は数百万ドールに維持費も結構かかるものなのでこちらも簡単には手が出ない。それに荷車や車については狩り場にはあまり持って行けないというのが問題となる。
荷物運搬用の人を雇う場合もあるようだけど、かなり収益が大きくないと厳しい。そのくらいのレベルの魔獣を狩れる場合はだいたい収納バッグを手に入れていることが多いため、荷物運搬を職業にしている人はほとんどいなくて、状況によって臨時的に雇われるくらいらしい。
これらの理由で荷物の運搬には普通のリュックや若干重量を軽減できる重量軽減バッグを使う冒険者が多い。ただ値段によって軽減率は違うんだけど10~20%の重量を軽減効果でしかなく、しかも魔獣石を消費するらしい。そう考えたら魔法で重量を軽くしている自分にとってはお金を出してまで買う気は起きないものだ。
「ねえ、ふと思ったんだけど、重量軽減の魔法を私達自身にかけてみたらどうなのかな?身体が軽くなって早く移動できたりしないかな?」
狩り場に向かっている途中でジェンが思いついたように言ってきた。いままで重量軽減は荷物のみを考えていたんだけど、たしかに体を軽くしたら早く移動できるかもしれない。
「たしかにそれはそうかもしれない。ちょっとやってみよう。」
荷物の軽減よりも集中しないといけないけど、重量軽減の魔法を身体と荷物全体にかかるようにすると足にかかる負担が一気に軽くなった。
「これはいけるかも!!」
「ほんと!!」
体が軽いので一歩の距離が一気に長くなる。全力疾走ではないけど、軽く走るくらいの感覚でかなりペースが上がった。
「とりあえず無理ない範囲で走って行ってみよう。」
途中で移動している人たちを追い抜いて走って行くと、狩り場まではある程度早足で2時間くらいかかると聞いていたんだけど、なんと1時間もかからず到着できた。もしかしてこれだったらちょっと無理すれば日帰りもできるようになるんじゃないか?
狩り場がかぶらないように、索敵で人のいないエリアへと進む。ここに出てくる魔獣は山猫、二頭蛇、巨蟷螂、吸血蝙蝠、魔猪、魔牛、魔馬とかの並階位の中、上位となる。
他にも大蟻や大蜂という魔獣もいるようなんだけど、こいつらは団体で襲ってくるのであまり相手をしたくない。毒は即死レベルではないらしいけど、数多く刺されるとやばいらしいし、素材にもならないからね。
あと穴熊や大魔猪とか上階位の魔獣も出る可能性があるようなので、これらがいた場合は逃げた方がよさそうだ。倒すのも厳しいのに、せっかくの素材があまり持って帰られないのでもったいない。
さっそく索敵をしながら森の中を進んでいく。魔獣の強さについても大分分かるようになってきてはいるのでかなわないくらいの魔獣が来たら早々に逃げる方がいいだろう。
大蛇とか毒スライムとか初階位の魔獣もいるんだけど、割合的には並階位の魔獣が圧倒的に多い。そして魔獣も結構いるのでそんなに探すまでもなく遭遇できるのはありがたい。
山猫は普通考える猫よりは二回りほど大きくて小さな豹といった感じだ。木の上に潜んでいることが多く、近くに来たところで襲いかかってくる。隠密のスキルを持っているみたいなので注意は必要だけど、いる場所がわかってしまうと一気に危険性が下がる。
発見したら少し離れたところから風弾と水弾で攻撃して木から落としてからとどめを刺す感じだ。反撃をしてきても最初にダメージを与えているので動きが遅くなっていて、盾で防ぎながら倒すことができる。
毛皮が買い取り対象なのでできるだけ傷つけないように倒さないと買い取り価格が大幅に下がってしまうので風弾や水弾が有効だ。威力的には風斬の方が楽なんだけどね。ただ解体はかなり面倒だった。しかも結構かさばるし・・・。
二頭蛇は大蛇よりも少し大きいくらいの二股の蛇だ。頭が二つあるので攻撃力は確かに高いんだけど、その分動きが遅いので大蛇よりも倒しやすかった。毒は持っているみたいだけど、それほど強くないみたいなので気にしないようにしている。
こちらも倒した後の解体が面倒だった。しかも二股なので余計に難しい。さすがにすべての解体がうまくいくわけではないのはしょうが無いよなあ・・・。肉は食べることができるので今日食べる分だけは確保しておく。
巨蟷螂や吸血蝙蝠は数が多いので面倒なんだけど、強さ自体はそこまではない。特に吸血蝙蝠は病原菌を移されるのが怖いので倒しきった後は安全のため回復魔法をかけておく。病原菌を除去するイメージでやればいいみたいだ。
こっちの素材回収はかなり楽なんだけど、結構かさばるのが問題だ。ただ戦闘中に傷が入って買い取り対象外のものもそれなりに出るのは仕方が無い。
やはり二人で狩りをすると最初の魔法攻撃でかなりダメージを与えることができるのでだいぶ楽になる。魔獣が1匹の場合は囲って攻撃できるので攻撃も通りやすいし、向こうも両方から攻められて困惑するので攻撃も避けやすいからね。おそらく一人だとこのレベルの魔獣を狩るのは結構大変だったと思う。
今回倒した魔獣で食べられるのは蛇肉だけなんだけど、今日食べる分以外は処分するのがちょっともったいない。一匹当たりだいたい50ドールくらいなんだけど、日持ちの問題もあるし、重量の問題もあるのであきらめるしかない。
お昼は携帯食を食べてから5時に狩りを終了する。今日狩ったのは山猫5、二頭蛇8、巨蟷螂8、吸血蝙蝠12で大体4000ドールくらいになりそう。肉も持って帰っていたらプラス500ドールくらいだけど、これはしょうがないだろう。
いったん森から出て少し離れたところの岩陰に移動してからテントを設営。魔獣の注意も必要だけど、盗賊とかにも注意しなければならないので出来るだけ遠くから見つかりにくくしなければならない。
土魔法でかまどを作ってから今日狩った蛇の肉を調理する。蛇肉に塩胡椒をふってから小麦粉をまぶしてフライパンでひたひたに炒めた蛇肉の唐揚げだ。あまりこった料理は作れないのはしょうがない。これにサラダと携帯食のビスケットで済ませることにした。
ジェンはあまり料理は得意ではないみたいなのと、こういう外で料理はしたことがないようだったので自分が担当することになった。
自分は家でも少し料理は手伝っていたし、家族でキャンプに行っていたときには両親から色々と野外料理について聞いていたからよかった。
「味はそんなに悪くないとは思うけど、ここではこれくらいが限度だよ。」
「うん、これだけ出来れば十分よ。ありがとう。」
できたての蛇の唐揚げを頬張りながら返事をしてくれるジェン。蛇肉なので嫌がられるかと思ったんだが、あちこち旅行に行ったときに蛇肉だけでなくいろいろな動物の肉を食べていたみたいなので抵抗はないらしい。
「思ったよりもおいしいな。捌くのがちょっと面倒だったけど、これなら十分いけるね。」
「いまはそれがネックよね。解体時間も結構かかるから・・・。水魔法で血抜きも出来るし、解体魔法を覚えたら解体時間はかなり短縮されて狩りの効率は上がりそう。」
「たしかにね。解体時間を全部合わせたら結構な時間になるからなあ。そうは言っても解体しないと赤字になるからねえ。解体魔法は解体の数をこなさないとダメだから地道にやっていくしかないよね。」
野営で料理をすると匂いで魔獣が寄ってきてしまうので、あまり匂いの出ない料理をすることが多いけど、風魔法で匂いが拡散しないように囲うことで対応は可能だ。慣れるまでは神経も使うんだけど、慣れてしまうとあまり意識しなくてもできるのでとてもありがたい。
魔法があると火もつけられるし、飲み水も問題ないし大分楽になる。特に飲み水を持ち歩かなくて良くなるのは重量的にはとてもありがたい。土魔法ももう少しレベルアップしたら、家みたいなものが作れるようになるんだろうか?そしたらテントもいらなくなるな。ただ竈レベルでも結構時間がかかるので大変だろうな。
食事の後は浄化魔法で体や荷物をきれいにして、武器の手入れをする。浄化魔法はジェンも使っていたようで、やはり最初は簡単な汚れを落とすくらいしかならなかったけど、今では自分と同じくシャワー並みにきれいになるらしい。ありがたい魔法だ。
ただ、このレベルの浄化魔法を使える人はあまりいないようで、普通は最初の頃のタオルで拭いたくらいのレベルらしい。汚れを分子まで分解するイメージで魔法をかけることでかなりきれいになっているんだけど、分子という概念がないのであくまで拭いたり流したりするイメージなので汚れが落ちないのだろう。正直今は洗濯するよりもキレイになっているような気もする。
あたりに魔獣がいないとはいえ、何があるかわからないのでやはり見張りは必要だ。魔物を近づけない魔道具はあるみたいだけどさすがに高くて購入はしていない。ただ魔物除けの魔道具があってもやはり見張りはするみたいだけどね。
近くに盗賊がいるという話しは聞いていないけど、他の冒険者に襲われる可能性も否定は出来ないんだよねえ。女性は特にその辺の注意が必要みたいなのでぱっと見は女性と分からないような格好をするのが普通だ。
薪集めから食事、片付けなどをしているとすでに時間は7時を回ってしまっていた。今回の見張りは前半は自分がやることになっているので7時半にジェンが眠りについた。交代は10時で2.5時間の睡眠となる。もとの世界でいう5時間なので十分とはいえないが、しょうがない。
治癒魔法で疲労は抑えられているとはいえ、眠いものは眠い。眠らないようにガイド本で勉強しながら交代時間を待つ。たき火とかをしていると目印になってしまうし、魔獣が特に火を恐れて近づいてこないと言うこともないからね。
さすがに魔獣の生息地から離れているせいか魔獣がやってくることなく、10時にジェンと交代。すぐに眠りに落ちていった。
0時半にジェンに起こされたけど、やはり眠い。さすがに寝袋だと眠りが浅かったのも影響しているのかもしれない。寝袋で寝るなんてキャンプの時くらいしか経験ないから慣れていないんだよね。一応地面を土魔法で耕して柔らかくしたりしていたんだけど、ベッドに比べるまでもない。やっぱりマットは必要なのかね。
火をおこしてから昨日の残りをスープにして携帯食と一緒に食べて簡単に朝食を終わらせる。荷物を撤収してから狩りに出発すると、すでに結構な時間がたっていた。
昨日と同じように狩りを開始したけど、寝不足のせいか索敵も甘いし、集中力があまり上がらなくて魔法の威力や精度も低い。このままだと変なミスをして怪我をしてしまう可能性も高いかも。
「ごめん。やっぱり寝不足のせいか、ちょっと集中力が散漫になってる。もう休憩にしていいかな?変なミスをして怪我してしまいそうだよ。」
「そうね、私も集中力が続かなくて魔法の精度がかなり落ちているわ。休憩をとっても今日は狩りが出来る状態にはならないかもしれないわ。いったんどうするかを考える必要がありそうだから一度町に戻らない?」
たしかにこのまま続けて、もう一泊してもまともに狩りが出来る保証はないな。
「それじゃあ、お昼を食べてから町に戻ろう。もう一度狩りの方法を検討した方が良さそうだ。」
ジェンとも意見が一致したのでお昼ご飯を食べてから撤収することにした。
今日倒せたのは昨日よりも時間は短かったとは言え、山猫1、巨蟷螂5、吸血蝙蝠3だけだった。成果は昨日の4分1くらいになっている。
帰りも精神が続かなくて、荷物の軽減が精一杯となり、2時間ちかくかけて町に戻ることになった。疲れた・・・。
持って帰った素材を売却すると全部で5650ドールとなったんだけど、2日目の稼ぎは1000ドールくらいとかなり低い。一日狩ったとしても初日の半分くらいになっていただろうな。これだと近くで狩りをしたのとあまり変わらないよなあ。
いったん宿に戻ると、ルミナは怪我でもしたのかと心配してくれた。単に危なそうだから戻ってきたと説明するとほっとしていたけどね。早めの夕食をとりながら今後のことを話す。
「もう少し野営や見張りに慣れて初日のペースくらいは確保できるようにならないと遠征する意味が無いよね。」
「そうね。でもそう簡単に慣れるわけでもないからそれまでは近場で狩りをする?」
「うーん・・・。ちょっとまって、ざっくり計算してみるから。」
今は夏が近づいてきて日が長いので0~7時までは明るい。野営の場合は準備もあるけど6時に狩りを完了するとして、準備と夕食で寝るのは7時くらい。0時まで寝れば一人あたり2.5時間なので地球時間で5時間だから、十分ではないがなんとかなるくらいか?
移動は行きに1時間、帰りに2時間かかるとすると、1日目の狩りは0時に出発して1時に到着し、1時から5時間くらい。2日目は朝の準備もあるけど1日狩りをしたとして5.5時間。3日目は帰ることを考えると4.5時間となる。そうすると3日間合計で15時間だけど、夕食を調理の必要が無いものにしてしまえばプラス0.5時間で最大で16.5時間というところだろう。
日帰りで狩りをすると考えた場合、0時に出発するとして1時に到着、5時まで狩りをして戻ってくるとすれば1日4時間だ。帰りに1時間で帰ることができれば6時まで狩りをするとして5時間なので3日間狩りをするのであれば最大で15時間くらいと見ていいか?
「移動時間がかなり短縮できることを考えたら日帰りと現地で泊まる場合で1日あたり60分くらいの差だね。
もちろん向こうに滞在する日数が長くなれば差は大きくなってくるけど、素材の日持ちのことを考えたらそんなに長期の遠征も出来ないよね。」
計算した紙を見せながらジェンに説明する。
「たしかに3日間で時間的には1、2時間の差はあるけど、野営するのと宿に泊まるのではやっぱり疲れ方が全く違うと思うわ。見張りもいらないから睡眠時間も多くとれるわけだしね。」
「それと1日で帰ってくるとすれば素材もすべて持って帰ることができるというのも大きいかもしれない。遠征だと最初の頃の肉関係はどう考えても無理だしね。夏になればさらに厳しくなるだろうし。」
「それも大きいわね。まだ行き帰りの移動時間がどのくらいかかるか正確には分からないけど、効率を考えると日帰りの方が断然良さそうね。」
「もちろん今後のことを考えて野営にも慣れておく必要はあるけど、それはもう少し後でもいいかと思う。今は4時間近く寝ることに慣れているけど、そこは調整していく感じかな。あと野営の時にも寝られるようにしておかないといけないしね。」
狩りの効率も頑張れば一日で4000~5000くらい稼げそうな気もする。毎日は厳しいかもしれないので3日のあとで1日休みを取っても1ヶ月で6~8万ドールくらい。経費を差し引いてもざっくりと3~5万ドールほどプラスとなる。他に経費がかかったとしても十分かもしれない。
「それじゃあ、今日は早めに休んで、明日から日帰りで遠征に行くことにしよう。
行き帰りの移動時間や休みをどの間隔で取らなければならないかはやってみないと分からないけど、とりあえずいろいろと試してみよう。毎回遠征するんじゃなくて、途中で近場での狩りを挟んでもいいしね。」
「近場の狩りの時は宿の手伝いもできるだろうから、割引もしてくれると思うわ。」
「それじゃあ、その内容でやっていこう。」
夕食の後は部屋に戻り早々に寝ることにした。やはりベッドはいいなあと思っていると、速攻で眠りに落ちてしまったようだ。
~魔獣紹介~
山猫:
並階位上位の魔獣。森に生息し、大半を木の上で過ごす。体長は800ヤルドくらいあり、木の上から襲いかかってくる。隠密スキルを持っているみたいで発見しにくいが、体長も大きいため注意深く見れば発見できる。
鋭い牙と爪で攻撃してくるが、防御力が低いため剣や魔法だけでなく弓矢による攻撃も有効である。かむ力が強く、指をかまれると食いちぎられる可能性が高いため注意が必要。
素材として毛皮が買い取り対象となっており、毛皮の模様により買い取り価格に若干差が出る。肉は食べることはできるが、食用には向かない。
二頭蛇:
並階位上位の魔獣。岩場や森に生息する二股の蛇の形をした魔獣。大きなものは大人の身長くらいあり、小型の魔獣や動物を麻痺させてから丸呑みする。物陰や木の上から突然襲ってくることがあり、隠密のスキルを持っているのか索敵に引っかかりにくいため注意が必要。
弱い麻痺系の毒を持っているため、かみつき攻撃には注意。かまれるとかまれた部位がしびれてちゃんと動かせなくなる。頭が二つあるので攻撃力は高くなるが、その分動きは遅い。
素材としての買い取り対象は皮と肉となるため、素材確保の場合は頭を潰すのが一番よい。ただし皮は上手に処理を行わないと買い取り対象外となるため、自信がないのであれば専門家に任せる方がいいだろう。
巨蟷螂:
並階位上位の魔獣。林や草原に生息している1キヤルドくらいの大きさの蟷螂の形をした昆虫型の魔獣。5~10匹で行動していることが多い。
両手の鎌で攻撃してくるため、数が多い場合は場所取りが重要となる。できれば何かを背にして戦った方がよい。装甲はそれなりに固いため、関節部分を狙うのが有効。
素材としての買い取り対象は両手の鎌の部分となるが、綺麗な状態でないと買い取り対象外となる。
吸血蝙蝠:
並階位上位の魔獣。森に生息している大きさ300ヤルドくらいの大きさで、5~10匹くらいの集団で行動している。羽を使って飛ぶことができるが、飛行距離はそれほど長くない。首筋などにかみついて血を吸われるが、その際に病原菌を移されることがあるため、もし血を吸われた場合はすぐにに回復薬や回復魔法を使った方がよい。もし治療を怠れば数日間の発熱を起こす場合がある。
素材としての買い取り対象は羽の部分となるが、羽は根本から綺麗にとらなければ買い取りの対象外となる。肉は食用不可。
目を覚ましてから改めてパーティーについて考えてみるが、まずはどのくらいの収入が見込めるのかを確認することからだよな。
冒険者として生きていくと決めたからにはその生活基盤をきっちりと確かめておく必要があるからね。両親からはお金のことはきっちりと考えるように言われていたからなあ。
先日はたしかに一日で3000ドールちょっと稼ぐことができたんだけど、一日稼いだからといってずっとその収入があるわけでもない。とりあえずはしばらく収支について確認しないといけないだろうな。
情報交換を兼ねてジェンと一緒に朝食を取ることにしていたんだけど、ジェンは朝早くから宿の手伝いをしていたみたい。
「おはよう。結局朝からの手伝いは続けているんだね。」
「おはよう。ええ、いろいろとお世話になってきたし、出来る範囲ではやろうと思っているのよ。」
朝食は一緒に取るみたいで、自分と同じテーブルにやって来た。今日のメニューはサンドイッチとサラダとコーヒーだ。
「いろいろとお金のことを考えたんだけど、冒険者として生活しようと思ったらやっぱり一日に2000ドールは稼ぎたいところかな。これは生活費だけでなく、装備の更新とか整備も含めての話しだけどね。」
宿と食事は1日あたり一人600ドールとすると1日1200ドールいるので余裕を見て1500ドールくらいと考えていいだろう。ジェンの宿泊費は安くなっているけど、それは今のところは考えないほうがいい。
そして装備については今使っているものを再度一式そろえようとしたら一人頭最低でも10,000ドールくらいは考えていた方がいい。武器はまだ整備していれば長持ちはすると思うけど、今のレベルの防具だと半年~1年で買い換える感じになる。もっといいものだと整備しながら使えばかなりの期間使えるらしいけどね。
ということは半年で20,000ドールをためなければならないと言うことだ。グレードアップすることを考えるとその倍なので一日あたりに換算すると300ドールくらいになる。
「それは毎日その金額が必要という前提の話しなの?」
「いやさすがに毎日というわけにもいかないし、雨の日の狩りは正直やめておいた方がいい。なので月に狩りに行くのは15~20日くらいになるんじゃないかと思ってるんだ。そう考えると一日2500ドールくらいはほしいけど、まあ最低ラインは2000ドールという感じかな。
ただ装備のグレードアップとかを考えていくと3000ドールくらいはほしい感じはするね。」
本当は宿や食事のランクを下げればもう少し目標は下げてもいいんだけど、最初から目標を下げると大変なことになるからね。
これでも月の稼ぎで一人15~20万を目標にするわけだから結構な稼ぎという額だ。まあ実際には必要経費みたいなものもかかるから、得られた額の7~8割くらいが収益という感じだろうな。
「実際にはどのくらい経費とかがかかるか分からないけど、やっていけば徐々に効率も上がっていくと思うし、まずはその辺りを目標に置くのがいいかもしれないわね。
前に聞いた時にちゃんと活動している並階位の冒険者の1日の収入は一人当たり500~1500ドールくらいと言っていたから二人で2500ドールならできないことはないというレベルね。」
「それに自分たちは治療系の魔法が使えるので薬代がかからないのが強みかな。他の人たちは薬代の負担が結構大きいみたいだし、怪我のリスクもあるからね、
ただ大けがの時のことまで考えていたらしょうがないし、さすがに保険に入るのは金額的に負担が大きすぎるんだよね。」
「治療系の魔法はイメージが重要みたいだから、正直骨折とかも治せるような気がするのよね。怪我をしないのが一番だけどね。」
「ああ、あと、お金を稼ぐ手段としては骨董店やのみの市での転売も考えてるよ。のみの市は月に1回やっているので、もしかしたら装備分くらいは稼げるかもしれないし、そのまま装備の強化が出来るかもしれない。
ただあまりおおっぴらにやってしまうと変な人たちに目をつけられかねないというのが怖いからほどほどにしないといけないけどね。」
「それは鑑定を持っている強みね。私も早く鑑定レベルを上げないといけないわね。」
朝食を終えてから準備をしてすぐに町の外へ移動する。とりあえず3日間くらいどのくらいまで稼げるかを確認するつもりだ。
この間と同じように二人でひたすら魔獣を狩っていく。魔獣を倒して解体、魔獣を倒して解体・・・。お昼を食べてから魔獣を倒して解体・・・。ひたすらこれの繰り返しだ。
さすがに何度も倒した魔獣なので大丈夫とは思うんだが、緊張感が薄れてしまうことには気をつけないといけない。
戦闘をしながら魔法についてもいろいろと試している。イメージを膨らませて使っているが、なかなかこれという感じにはならない。まあこの辺りのイメージはぼちぼちやっていくしかない。
今のところ使える魔法系統は火、風、水、土の4つなんだけど、土に関しては落ちている石を使っている。魔法としては塊を飛ばしてダメージを与える”火弾””風弾””水弾”、石を飛ばす”石弾”、切り裂くイメージの”風斬””水斬”、壁や盾となる”水壁””土壁”という感じだ。
いろいろと本を読んだんだけど、戦闘につかっている魔法は大体同じようなもので、それぞれの種類の玉として打ち出す、それぞれの威力で斬る、エリアに発生させて範囲攻撃する、壁で防ぐという感じだった。
それぞれの種類や威力の違いで呼び方がいろいろとあるんだけど、たんに威力が違うものを別の呼び名にしているだけのような気もする。
できるだけ遠くから攻撃できればいいんだけど、やっぱり遠くなればなるほど精度も威力も落ちてしまうので、実際に効果の出る距離は10キヤルドくらいしかない。それ以上だと精度以前に威力が落ちすぎてしまう。ただ5キヤルドくらいまで近くになったら目や足など効果のある場所を狙うようにしている。
並階位の魔獣まではまだいいんだけど、上階位からは魔法攻撃でも躱してくるようなので高階位の魔獣を狩るにはもっと精度や速度や威力を上げなければならないだろう。
魔法のスキルレベルアップもかねてできるだけまんべんなく使いたいんだけど、狩りには火属性の魔法は難しい。火事の危険もあるし、素材もだめになってしまうからね。
防御として使う壁関係はまだ薄くしか作れないので強度的にはかなり厳しい。まあそれでも目隠しにはなるし、いきなり目の前に出すので魔獣も驚いて突進の勢いが下がるだけでも効果があると考えている。
このほか攻撃ではないけど、ジェンの使っていた風魔法で空気の振動を制限することで防音効果のエリアを作ったり、土魔法で簡単なテーブルやかまどのようなものを作ったりとか、重量軽減をしたりとか、水魔法で魔獣の血を吸い出すとかいろいろと使っている。
魔法についてはジェンも魔法のレベルアップのために常に魔素をまとわせたり、放出をしたりとやっていたらしい。自分と同じように異世界ものの小説からの知識だったみたい。比較できないのでやらない場合と比べて効果があるかどうかは正直わからないけど、半分無意識にやってきているので負担もないからとやっているようだ。
これに加えてちょっと時間があると魔法で遊んでいた。今では2種の魔法を同時に使うことが出来るらしい。同時に2つの属性魔法が使えるのであれば複合技ができないかとか考えている。自分はまだ一つしか使えないけど、今後検討していく価値はありそう。
重量軽減の魔法はかなり驚いていた。原理はすぐに理解できたみたいで、魔素使用による負担もあまりなく使いこなしている。いまのところ魔素の使用量から大体3割まで軽減するくらいが負担かからないようだ。
自分は慣れているせいか、さらに軽くできるんだけど、二人で50キグムくらい、無理すれば60~70キグムくらいは運ぶことができるので、狩った魔獣の素材は全部運べている。普通は運搬の関係で買い取り額の安い肉などは持って帰れないので貴重な部位のみを持って帰ることが多いようだ。
重さは軽減できるとはいえ、あまりにかさばるとやはり邪魔になってしまうのはしょうがないところだ。魔法を使うときとかには重量軽減魔法は切ることになるので、狩りの際には荷物を下ろしてやっている。収納魔法がほしい・・・。
毛皮とかが特にかさばるので数を狩るようになったら狩る魔獣も選ばないといけないかもしれない。
あと遠征した場合はさらに持ち帰るのはかなり厳しいだろうなあ。遠征の時は鮮度の問題から肉の持ち帰りも制約がかかってしまうしね。
ちなみに魔獣の血抜きについてもかなり驚いていた。これをするだけで解体も楽になるし、肉の質の維持にも役に立っている。きっちり抜けるので軽くなるので、運搬の時にもかなり効果があるからね。
3日間1時から5時まで4時間(地球時間で8時間)、途中休憩は取ったりしたがひたすら狩りをした結果、収入は2900、2400、2300で平均が2500ドールとなった。
「とりあえず目標の2500ドールは達成できたけど、気合い入れてやったにしては厳しい数値かもしれないんだよね。」
「休憩時間も短くとってやったくらいだからね。今回は3日間と期間を決めてやったからがんばれたけど、これがずっとだとなると厳しいかもしれないわね。」
「まあ魔獣を狩るのは問題ないんだけど、やっぱり探すのに時間がかかっているというのが効率が上がらない理由だろうね。」
魔獣を探すのは魔獣の痕跡を追ったりするというわけではなく、索敵で探りながらというのに頼っているので効率が悪いのだろう。
「そうは言っても索敵範囲がいきなり広がるわけでもないし、魔獣の痕跡とかはなかなかわかりにくいのよね。」
「でも痕跡とかを探すことを勉強するよりは索敵のエリア拡大に力を入れた方が早そうなんだよなあ・・・。」
ちなみに他の人たちはというと、魔獣の痕跡を追う人たちと索敵を使って狩りをする人たちとほんとに運任せの人たちがいるようだ。場所によっては魔獣の方からよってくるところもあるのでその場合は探す必要もないらしい。ただその分危険がかなり高い。
「そうは言っても並階位で2500ドール稼いでいるというのはすごいことだとは思うわよ。近くの魔獣のレベルを考えたらこのくらいが限度なのかもしれないわ。」
「たしかにそれはあるんだよね。もう少し遠くに行けば魔獣のレベルも上がるし、数も増えるので効率は上がるかもしれないね。ただその場合は日帰りはきつそう・・・。」
「もう少し余裕を持ってやっても最低限と言っていた2000ドールは稼げそうだし、前も話したように徐々に効率も上がっていくと思うから今の段階ではこのくらいの稼ぎでもいいんじゃないかな?
もともと並階位くらいまでは冒険者だけの収入だけだと生活が厳しいというレベルだったわけじゃない。そう考えたら一日で3000ドール超える日もあれば十分じゃないかな?」
「そうだね。最初からそんなに稼げるとは思っていなかったし、やり方を考えながら一番いい方法を探していこう。」
この3日間はひたすら狩りをするのみだったけど、宿に戻って、夕方から宿の手伝いをしていた。流れ的に自分も片付けなど手伝っていたんだが、そのおかげで自分の分の宿代も半額にしてくれたので良かったかな。
この値段だったら一日の生活費は1000ドールもいらないので、2000ドール稼げれば十分という感じかもしれない。
狩りを終えた翌日もジェンと一緒に朝食をとりながら今後の話しをする。
「とりあえず近場での報酬の目安は付いたんだけど、一回は遠征してどのくらい稼げるかやってみようと思うんだ。」
「遠征と言うことは泊まりがけって事よね?野営するの?」
「行こうと思っているところの近くには村とか泊まれるところはないので野営をする感じで考えているけどどうだろう?」
二人きりになるのでジェンがどう思うかだよなあ・・・。他にも盗賊とか他のたちの悪い冒険者とかの対応も考えないといけないしね。
「・・・うん、分かったわ。一番ベストな方法はやってみないと分からないしね。とりあえず野営をするならいろいろと買わないといけないわよね。」
とりあえず自分のことは信用してくれているということなのかな?
「ああ、最低限テントや寝袋とかは買わないといけないし、携帯の食料もある程度持っていかないといけないと思うんだ。あと現地で簡単に調理できる道具くらいは持って行った方がいいかなと思ってる。
それで急だけど、しばらくは天気が良さそうなので今日のうちに買い出しして、明日には出発しようと思ってるけど大丈夫?」
「分かったわ。ルミナには話しておくね。
荷物も置いていくから部屋は確保しておいた方がいいわよね。さすがに安くしてもらっているのに荷物だけ預かってと言うのは気が引けるわ。」
「うん、それでいいよ。あとで10日分をまとめて支払いしておくよ。」
朝食を終えてから買い物へと出かける。買い物はカサス商会で大体そろいそうなのでそこに行くことにした。アーマトの店よりは小さいけどそれでも十分大きな店舗だ。ちなみにジェンの友人のマラルはこの店で働いているらしい。
キャンプ用品売り場のようなところでいろいろと商品を見ていく。
「荷物をあまり持っていくと素材とかが持って帰れなくなるので必要最低限にした方がいいだろうね。今回は2泊くらいで考えているから携帯食は最低限の3日分くらいかな。」
「交代で見張りをするからテントも一人用で、寝袋も交代で使うから一つあればいいわよね。」
「同じ寝袋で気にならないなら自分はかまわないけど・・・。」
「浄化魔法である程度綺麗に出来るし、それ以前に荷物を出来るだけ少なくするならそんなことは言っていられないでしょう?」
テントはもとの世界にあったようなドーム型テントで支柱を2本クロスして簡単に立てられるタイプだ。布の素材も撥水性のものなので多少の雨であれば水ははじいてくれそう。三角テントだったら立てるのが面倒だったのでよかったよ。
寝袋は夏用で薄手のものを選んだ。下に敷くマットのようなものもあったけど、結構大きいので今回はパスだな。まあ何かしら下に敷けばなんとかなるだろう。エアーマットのようなものは売っていなかったしね。
「携帯食はこの○ロリーメイトのようなものかな?ビーフジャーキーとか缶詰もあるけど、缶詰はさすがに重いからねえ。」
「こっちの魔法で腐るのを防止した非常食はさすがに高いわね。1食で300ドールはさすがに赤字になってしまうわ。しかも結構重いからこれは気軽には買えないわよね。」
「まあ他のものよりおいしそうだけど、その値段だとさすがにねえ・・・。」
保存食のようなものは乾燥系のものや缶詰などであとは腐食防止をかけた食べ物という感じだ。もとの世界にあるものはだいたいそろっている感じだけどインスタントラーメンとかは開発されていないのかな?まあ地球でも開発されたのは50年くらい前だったように思うしね。
魔法の腐食防止があるから、そっち方面の開発がそこまで進んでいないのかもしれない。ちょっと時間ができたら作ってみてもいいかもしれないね。以前博物館でラーメン作りを体験しているし、たしかガイド本に入っている偉人伝の本にいろいろと載っていたと思う。
「あとは現地で倒した魔獣の肉も調理することを考えたら料理道具もいるかな。フライパンまでついている携帯用の食器セット一式とまな板と包丁のセットくらいか?あと調味料も最低限のものがいるなあ。」
「二人で持つとしても結構な量になるわね。帰りに持って帰られる素材も制限されるかもしれないわね。」
ざっと見た感じリュックの半分くらいは埋まってしまうくらいになる。ちなみに着替えは持って行かず、浄化魔法だけで対応する予定だ。最低限キレイにはなるからね。それだけでも荷物が減るので助かる。
あと一番困るのはトイレ関係だ。この世界では排泄を抑えるという魔法薬があり、これを飲むと6時間ほどはトイレに行かなくてよくなるため、日帰りの狩りに出る人はこれをよく使っている。
ただし、汗をかきやすくなったりすることと(水分が汗として出る)、効果が切れるとすぐに行きたくなってしまうと言う問題は出てしまうのだが、やはり便利なので冒険者が狩りに行くときは必需品となっている。
野営の時などはどうするかというと、やはり穴を掘って対応するというのが一般的だ。荷物に余裕がある人は折りたたみ式の個室のようなテントの中でして、用を足すと場所を少しずつ移動していくという形だ。今回はトイレの場所に使う簡易テントも購入することにした。
浄化の魔法が結構一般的なのでほとんどの人がこれで後処理をしているみたい。使えない人はトイレットペーパーのような紙だったり、葉っぱ(使える葉っぱは結構普通に自生している)だったりする。
他にもライトなど細々したものを買ったので、全部で3700ドールもかかってしまったが、これはしょうがないだろう。まあ何回か使ったら元は取れると信じよう。
両親がツーリングを趣味としていたことからギミックについていろいろと聞いておいてよかったよ。最初はとりあえず最低限のものだけをそろえてから、必要と思ったら買い足していく方が一番無駄がないと言っていたからな。最初の頃に買ったはいいが使わなかったものも多かったらしい。
戻ったら向こうでは時間がたっていないことになるようだけど、元気にしているかなあ・・・。まさか息子がこんなところに来ているとは思ってもいないだろう。週末には相変わらずツーリングに行っているのかなあ?
インスタントラーメンのことを考えていたのでラーメンが食べたくなり、ラーメンのようなものを提供している店でお昼をとることにした。スープは醤油ベースでかん水入りの縮れ麺を使ったものでそのまま醤油麺と言われているんだが、自分的にはラーメンと言ってもいいものだ。
味の種類は醤油と塩はあるんだけど、豚骨味はないみたい。豚骨ラーメンも久しぶりに食べてみたいなあ・・・。作り方は分かるけど、目標とする味になるのかは微妙すぎる。時間もかかるしね。
ただフォークで食べるのでちょっと違和感があるんだけど、箸がないのでこれはしょうがないだろう。食べるときに音を立てるのは特に問題はないみたいだけど、ジェンはさすがに苦労していた。
このあとも町中をいろいろ回って買い物をしたり、お茶をしたりして夕方には宿に戻る。夕食の後で宿の手伝いをしてから眠りについた。
翌朝0時に起きてから朝食を取り、早々に出発する。目的の場所は歩いて2時間近くかかる森になるんだけど、町の周りよりも1ランク上の魔獣が多い場所だ。素材の買い取りの対象も多いので効率は結構いいらしい。
残念ながら肉は運搬の関係から持って帰られる量が制限されるので、その分は向こうで消費するか、希少部位のみを持って帰るとかしなければならないだろう。
一応腐るのを軽減できる魔法はあるんだけど、暑くなってくるとその軽減力も小さくなる。今までは狩ってからその日に持ち帰っていたのであまり気にしていなかったんだけどね。初日に狩ったものだとさすがに保管が無理かなあ。
荷物の運搬で最も効率がいいのは収納魔法や収納バッグだ。ただ収納魔法は習得が大変だし、収納バッグは値段もそうだが、そもそもなかなか売りに出ないので持っている人は少ない。
このため、まだ手に入りやすい荷車や車を購入する人もいるけど、車は数百万ドールに維持費も結構かかるものなのでこちらも簡単には手が出ない。それに荷車や車については狩り場にはあまり持って行けないというのが問題となる。
荷物運搬用の人を雇う場合もあるようだけど、かなり収益が大きくないと厳しい。そのくらいのレベルの魔獣を狩れる場合はだいたい収納バッグを手に入れていることが多いため、荷物運搬を職業にしている人はほとんどいなくて、状況によって臨時的に雇われるくらいらしい。
これらの理由で荷物の運搬には普通のリュックや若干重量を軽減できる重量軽減バッグを使う冒険者が多い。ただ値段によって軽減率は違うんだけど10~20%の重量を軽減効果でしかなく、しかも魔獣石を消費するらしい。そう考えたら魔法で重量を軽くしている自分にとってはお金を出してまで買う気は起きないものだ。
「ねえ、ふと思ったんだけど、重量軽減の魔法を私達自身にかけてみたらどうなのかな?身体が軽くなって早く移動できたりしないかな?」
狩り場に向かっている途中でジェンが思いついたように言ってきた。いままで重量軽減は荷物のみを考えていたんだけど、たしかに体を軽くしたら早く移動できるかもしれない。
「たしかにそれはそうかもしれない。ちょっとやってみよう。」
荷物の軽減よりも集中しないといけないけど、重量軽減の魔法を身体と荷物全体にかかるようにすると足にかかる負担が一気に軽くなった。
「これはいけるかも!!」
「ほんと!!」
体が軽いので一歩の距離が一気に長くなる。全力疾走ではないけど、軽く走るくらいの感覚でかなりペースが上がった。
「とりあえず無理ない範囲で走って行ってみよう。」
途中で移動している人たちを追い抜いて走って行くと、狩り場まではある程度早足で2時間くらいかかると聞いていたんだけど、なんと1時間もかからず到着できた。もしかしてこれだったらちょっと無理すれば日帰りもできるようになるんじゃないか?
狩り場がかぶらないように、索敵で人のいないエリアへと進む。ここに出てくる魔獣は山猫、二頭蛇、巨蟷螂、吸血蝙蝠、魔猪、魔牛、魔馬とかの並階位の中、上位となる。
他にも大蟻や大蜂という魔獣もいるようなんだけど、こいつらは団体で襲ってくるのであまり相手をしたくない。毒は即死レベルではないらしいけど、数多く刺されるとやばいらしいし、素材にもならないからね。
あと穴熊や大魔猪とか上階位の魔獣も出る可能性があるようなので、これらがいた場合は逃げた方がよさそうだ。倒すのも厳しいのに、せっかくの素材があまり持って帰られないのでもったいない。
さっそく索敵をしながら森の中を進んでいく。魔獣の強さについても大分分かるようになってきてはいるのでかなわないくらいの魔獣が来たら早々に逃げる方がいいだろう。
大蛇とか毒スライムとか初階位の魔獣もいるんだけど、割合的には並階位の魔獣が圧倒的に多い。そして魔獣も結構いるのでそんなに探すまでもなく遭遇できるのはありがたい。
山猫は普通考える猫よりは二回りほど大きくて小さな豹といった感じだ。木の上に潜んでいることが多く、近くに来たところで襲いかかってくる。隠密のスキルを持っているみたいなので注意は必要だけど、いる場所がわかってしまうと一気に危険性が下がる。
発見したら少し離れたところから風弾と水弾で攻撃して木から落としてからとどめを刺す感じだ。反撃をしてきても最初にダメージを与えているので動きが遅くなっていて、盾で防ぎながら倒すことができる。
毛皮が買い取り対象なのでできるだけ傷つけないように倒さないと買い取り価格が大幅に下がってしまうので風弾や水弾が有効だ。威力的には風斬の方が楽なんだけどね。ただ解体はかなり面倒だった。しかも結構かさばるし・・・。
二頭蛇は大蛇よりも少し大きいくらいの二股の蛇だ。頭が二つあるので攻撃力は確かに高いんだけど、その分動きが遅いので大蛇よりも倒しやすかった。毒は持っているみたいだけど、それほど強くないみたいなので気にしないようにしている。
こちらも倒した後の解体が面倒だった。しかも二股なので余計に難しい。さすがにすべての解体がうまくいくわけではないのはしょうが無いよなあ・・・。肉は食べることができるので今日食べる分だけは確保しておく。
巨蟷螂や吸血蝙蝠は数が多いので面倒なんだけど、強さ自体はそこまではない。特に吸血蝙蝠は病原菌を移されるのが怖いので倒しきった後は安全のため回復魔法をかけておく。病原菌を除去するイメージでやればいいみたいだ。
こっちの素材回収はかなり楽なんだけど、結構かさばるのが問題だ。ただ戦闘中に傷が入って買い取り対象外のものもそれなりに出るのは仕方が無い。
やはり二人で狩りをすると最初の魔法攻撃でかなりダメージを与えることができるのでだいぶ楽になる。魔獣が1匹の場合は囲って攻撃できるので攻撃も通りやすいし、向こうも両方から攻められて困惑するので攻撃も避けやすいからね。おそらく一人だとこのレベルの魔獣を狩るのは結構大変だったと思う。
今回倒した魔獣で食べられるのは蛇肉だけなんだけど、今日食べる分以外は処分するのがちょっともったいない。一匹当たりだいたい50ドールくらいなんだけど、日持ちの問題もあるし、重量の問題もあるのであきらめるしかない。
お昼は携帯食を食べてから5時に狩りを終了する。今日狩ったのは山猫5、二頭蛇8、巨蟷螂8、吸血蝙蝠12で大体4000ドールくらいになりそう。肉も持って帰っていたらプラス500ドールくらいだけど、これはしょうがないだろう。
いったん森から出て少し離れたところの岩陰に移動してからテントを設営。魔獣の注意も必要だけど、盗賊とかにも注意しなければならないので出来るだけ遠くから見つかりにくくしなければならない。
土魔法でかまどを作ってから今日狩った蛇の肉を調理する。蛇肉に塩胡椒をふってから小麦粉をまぶしてフライパンでひたひたに炒めた蛇肉の唐揚げだ。あまりこった料理は作れないのはしょうがない。これにサラダと携帯食のビスケットで済ませることにした。
ジェンはあまり料理は得意ではないみたいなのと、こういう外で料理はしたことがないようだったので自分が担当することになった。
自分は家でも少し料理は手伝っていたし、家族でキャンプに行っていたときには両親から色々と野外料理について聞いていたからよかった。
「味はそんなに悪くないとは思うけど、ここではこれくらいが限度だよ。」
「うん、これだけ出来れば十分よ。ありがとう。」
できたての蛇の唐揚げを頬張りながら返事をしてくれるジェン。蛇肉なので嫌がられるかと思ったんだが、あちこち旅行に行ったときに蛇肉だけでなくいろいろな動物の肉を食べていたみたいなので抵抗はないらしい。
「思ったよりもおいしいな。捌くのがちょっと面倒だったけど、これなら十分いけるね。」
「いまはそれがネックよね。解体時間も結構かかるから・・・。水魔法で血抜きも出来るし、解体魔法を覚えたら解体時間はかなり短縮されて狩りの効率は上がりそう。」
「たしかにね。解体時間を全部合わせたら結構な時間になるからなあ。そうは言っても解体しないと赤字になるからねえ。解体魔法は解体の数をこなさないとダメだから地道にやっていくしかないよね。」
野営で料理をすると匂いで魔獣が寄ってきてしまうので、あまり匂いの出ない料理をすることが多いけど、風魔法で匂いが拡散しないように囲うことで対応は可能だ。慣れるまでは神経も使うんだけど、慣れてしまうとあまり意識しなくてもできるのでとてもありがたい。
魔法があると火もつけられるし、飲み水も問題ないし大分楽になる。特に飲み水を持ち歩かなくて良くなるのは重量的にはとてもありがたい。土魔法ももう少しレベルアップしたら、家みたいなものが作れるようになるんだろうか?そしたらテントもいらなくなるな。ただ竈レベルでも結構時間がかかるので大変だろうな。
食事の後は浄化魔法で体や荷物をきれいにして、武器の手入れをする。浄化魔法はジェンも使っていたようで、やはり最初は簡単な汚れを落とすくらいしかならなかったけど、今では自分と同じくシャワー並みにきれいになるらしい。ありがたい魔法だ。
ただ、このレベルの浄化魔法を使える人はあまりいないようで、普通は最初の頃のタオルで拭いたくらいのレベルらしい。汚れを分子まで分解するイメージで魔法をかけることでかなりきれいになっているんだけど、分子という概念がないのであくまで拭いたり流したりするイメージなので汚れが落ちないのだろう。正直今は洗濯するよりもキレイになっているような気もする。
あたりに魔獣がいないとはいえ、何があるかわからないのでやはり見張りは必要だ。魔物を近づけない魔道具はあるみたいだけどさすがに高くて購入はしていない。ただ魔物除けの魔道具があってもやはり見張りはするみたいだけどね。
近くに盗賊がいるという話しは聞いていないけど、他の冒険者に襲われる可能性も否定は出来ないんだよねえ。女性は特にその辺の注意が必要みたいなのでぱっと見は女性と分からないような格好をするのが普通だ。
薪集めから食事、片付けなどをしているとすでに時間は7時を回ってしまっていた。今回の見張りは前半は自分がやることになっているので7時半にジェンが眠りについた。交代は10時で2.5時間の睡眠となる。もとの世界でいう5時間なので十分とはいえないが、しょうがない。
治癒魔法で疲労は抑えられているとはいえ、眠いものは眠い。眠らないようにガイド本で勉強しながら交代時間を待つ。たき火とかをしていると目印になってしまうし、魔獣が特に火を恐れて近づいてこないと言うこともないからね。
さすがに魔獣の生息地から離れているせいか魔獣がやってくることなく、10時にジェンと交代。すぐに眠りに落ちていった。
0時半にジェンに起こされたけど、やはり眠い。さすがに寝袋だと眠りが浅かったのも影響しているのかもしれない。寝袋で寝るなんてキャンプの時くらいしか経験ないから慣れていないんだよね。一応地面を土魔法で耕して柔らかくしたりしていたんだけど、ベッドに比べるまでもない。やっぱりマットは必要なのかね。
火をおこしてから昨日の残りをスープにして携帯食と一緒に食べて簡単に朝食を終わらせる。荷物を撤収してから狩りに出発すると、すでに結構な時間がたっていた。
昨日と同じように狩りを開始したけど、寝不足のせいか索敵も甘いし、集中力があまり上がらなくて魔法の威力や精度も低い。このままだと変なミスをして怪我をしてしまう可能性も高いかも。
「ごめん。やっぱり寝不足のせいか、ちょっと集中力が散漫になってる。もう休憩にしていいかな?変なミスをして怪我してしまいそうだよ。」
「そうね、私も集中力が続かなくて魔法の精度がかなり落ちているわ。休憩をとっても今日は狩りが出来る状態にはならないかもしれないわ。いったんどうするかを考える必要がありそうだから一度町に戻らない?」
たしかにこのまま続けて、もう一泊してもまともに狩りが出来る保証はないな。
「それじゃあ、お昼を食べてから町に戻ろう。もう一度狩りの方法を検討した方が良さそうだ。」
ジェンとも意見が一致したのでお昼ご飯を食べてから撤収することにした。
今日倒せたのは昨日よりも時間は短かったとは言え、山猫1、巨蟷螂5、吸血蝙蝠3だけだった。成果は昨日の4分1くらいになっている。
帰りも精神が続かなくて、荷物の軽減が精一杯となり、2時間ちかくかけて町に戻ることになった。疲れた・・・。
持って帰った素材を売却すると全部で5650ドールとなったんだけど、2日目の稼ぎは1000ドールくらいとかなり低い。一日狩ったとしても初日の半分くらいになっていただろうな。これだと近くで狩りをしたのとあまり変わらないよなあ。
いったん宿に戻ると、ルミナは怪我でもしたのかと心配してくれた。単に危なそうだから戻ってきたと説明するとほっとしていたけどね。早めの夕食をとりながら今後のことを話す。
「もう少し野営や見張りに慣れて初日のペースくらいは確保できるようにならないと遠征する意味が無いよね。」
「そうね。でもそう簡単に慣れるわけでもないからそれまでは近場で狩りをする?」
「うーん・・・。ちょっとまって、ざっくり計算してみるから。」
今は夏が近づいてきて日が長いので0~7時までは明るい。野営の場合は準備もあるけど6時に狩りを完了するとして、準備と夕食で寝るのは7時くらい。0時まで寝れば一人あたり2.5時間なので地球時間で5時間だから、十分ではないがなんとかなるくらいか?
移動は行きに1時間、帰りに2時間かかるとすると、1日目の狩りは0時に出発して1時に到着し、1時から5時間くらい。2日目は朝の準備もあるけど1日狩りをしたとして5.5時間。3日目は帰ることを考えると4.5時間となる。そうすると3日間合計で15時間だけど、夕食を調理の必要が無いものにしてしまえばプラス0.5時間で最大で16.5時間というところだろう。
日帰りで狩りをすると考えた場合、0時に出発するとして1時に到着、5時まで狩りをして戻ってくるとすれば1日4時間だ。帰りに1時間で帰ることができれば6時まで狩りをするとして5時間なので3日間狩りをするのであれば最大で15時間くらいと見ていいか?
「移動時間がかなり短縮できることを考えたら日帰りと現地で泊まる場合で1日あたり60分くらいの差だね。
もちろん向こうに滞在する日数が長くなれば差は大きくなってくるけど、素材の日持ちのことを考えたらそんなに長期の遠征も出来ないよね。」
計算した紙を見せながらジェンに説明する。
「たしかに3日間で時間的には1、2時間の差はあるけど、野営するのと宿に泊まるのではやっぱり疲れ方が全く違うと思うわ。見張りもいらないから睡眠時間も多くとれるわけだしね。」
「それと1日で帰ってくるとすれば素材もすべて持って帰ることができるというのも大きいかもしれない。遠征だと最初の頃の肉関係はどう考えても無理だしね。夏になればさらに厳しくなるだろうし。」
「それも大きいわね。まだ行き帰りの移動時間がどのくらいかかるか正確には分からないけど、効率を考えると日帰りの方が断然良さそうね。」
「もちろん今後のことを考えて野営にも慣れておく必要はあるけど、それはもう少し後でもいいかと思う。今は4時間近く寝ることに慣れているけど、そこは調整していく感じかな。あと野営の時にも寝られるようにしておかないといけないしね。」
狩りの効率も頑張れば一日で4000~5000くらい稼げそうな気もする。毎日は厳しいかもしれないので3日のあとで1日休みを取っても1ヶ月で6~8万ドールくらい。経費を差し引いてもざっくりと3~5万ドールほどプラスとなる。他に経費がかかったとしても十分かもしれない。
「それじゃあ、今日は早めに休んで、明日から日帰りで遠征に行くことにしよう。
行き帰りの移動時間や休みをどの間隔で取らなければならないかはやってみないと分からないけど、とりあえずいろいろと試してみよう。毎回遠征するんじゃなくて、途中で近場での狩りを挟んでもいいしね。」
「近場の狩りの時は宿の手伝いもできるだろうから、割引もしてくれると思うわ。」
「それじゃあ、その内容でやっていこう。」
夕食の後は部屋に戻り早々に寝ることにした。やはりベッドはいいなあと思っていると、速攻で眠りに落ちてしまったようだ。
~魔獣紹介~
山猫:
並階位上位の魔獣。森に生息し、大半を木の上で過ごす。体長は800ヤルドくらいあり、木の上から襲いかかってくる。隠密スキルを持っているみたいで発見しにくいが、体長も大きいため注意深く見れば発見できる。
鋭い牙と爪で攻撃してくるが、防御力が低いため剣や魔法だけでなく弓矢による攻撃も有効である。かむ力が強く、指をかまれると食いちぎられる可能性が高いため注意が必要。
素材として毛皮が買い取り対象となっており、毛皮の模様により買い取り価格に若干差が出る。肉は食べることはできるが、食用には向かない。
二頭蛇:
並階位上位の魔獣。岩場や森に生息する二股の蛇の形をした魔獣。大きなものは大人の身長くらいあり、小型の魔獣や動物を麻痺させてから丸呑みする。物陰や木の上から突然襲ってくることがあり、隠密のスキルを持っているのか索敵に引っかかりにくいため注意が必要。
弱い麻痺系の毒を持っているため、かみつき攻撃には注意。かまれるとかまれた部位がしびれてちゃんと動かせなくなる。頭が二つあるので攻撃力は高くなるが、その分動きは遅い。
素材としての買い取り対象は皮と肉となるため、素材確保の場合は頭を潰すのが一番よい。ただし皮は上手に処理を行わないと買い取り対象外となるため、自信がないのであれば専門家に任せる方がいいだろう。
巨蟷螂:
並階位上位の魔獣。林や草原に生息している1キヤルドくらいの大きさの蟷螂の形をした昆虫型の魔獣。5~10匹で行動していることが多い。
両手の鎌で攻撃してくるため、数が多い場合は場所取りが重要となる。できれば何かを背にして戦った方がよい。装甲はそれなりに固いため、関節部分を狙うのが有効。
素材としての買い取り対象は両手の鎌の部分となるが、綺麗な状態でないと買い取り対象外となる。
吸血蝙蝠:
並階位上位の魔獣。森に生息している大きさ300ヤルドくらいの大きさで、5~10匹くらいの集団で行動している。羽を使って飛ぶことができるが、飛行距離はそれほど長くない。首筋などにかみついて血を吸われるが、その際に病原菌を移されることがあるため、もし血を吸われた場合はすぐにに回復薬や回復魔法を使った方がよい。もし治療を怠れば数日間の発熱を起こす場合がある。
素材としての買い取り対象は羽の部分となるが、羽は根本から綺麗にとらなければ買い取りの対象外となる。肉は食用不可。
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