【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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21. 異世界165日目 初めて体験すること・・・

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21. 異世界165日目 初めて体験すること・・・
 朝食をとってからカサス商会の前に行くと、準備が大体終わっていた。ここからの護衛は”蠍の尾”という女性だけのパーティーと聞いている。良階位のパーティーで、メンバーは4名のようだ。

 支店長のユニスさんにリーダーのスレインさんを紹介してもらう。

「おはようございます。今回サクラまで同行させていただきますアースのジュンイチと言います。こちらはパーティーを組んでいるジェニファーです。よろしくお願いします。」

「ああ、そうか。蠍の尾のリーダーをやっているスレインだ。あなたたちを含めて護衛はきちんとするので心配しなくても良い。それでは出発準備があるので失礼するよ。」

 そう言って準備に戻っていった。えっと、護衛の時の対応を話したかっただけど、なんか気に障ることをしたのかな?

 こちらの状況が気になったのか、コーランさんがすぐにやってきてスレインさんと話すと、すぐにスレインさんが謝ってきた。
 どうやら金持ちの実績稼ぎに入った護衛で、実質的には護衛対象となると思っていたらしい。まあ確かに並階位の冒険者が護衛として入ってきたらそう思うだろうな。

 実力は並階位相応なのであまり期待しないでほしいこと、現在までに倒してきた魔獣のこと、簡単なこちらの戦い方などを話しておく。
 自分たちの実力については追々確認してもらうことにして、戦闘は基本的に蠍の尾の人たちで対応し、場合により自分たちも加わることになった。ただ連携の問題もあるのでやはり戦うときは分かれて戦うことになる。


 スレインさんから簡単にパーティーメンバーの紹介をしてもらった。蠍の尾パーティーは南方の大陸出身の4人の女性のパーティーで、サクラを拠点にして活動しているようだ。装備を見る感じでは前衛2人、後衛2人かな?年齢は25歳くらいに見えるけど、恐ろしくて聞けないな。

 リーダーがスレインさんで魔法と治癒を担当しているようだ。赤い髪をした端整な顔立ちの女性で、スレンダーな体型をしている。短剣と盾と皮鎧を装備しており、ジェンに近いスタイルという感じがする。かなり参考になりそうなのでジェンにも稽古をつけてほしいところだ。

 アルドさんは190cmくらいの大柄の女性でいかにも前衛という感じ。朱色の髪をしており、かなりがっしりとした体型だ。大きな鎚と150cmくらいの大盾を装備しており、上半身には金属の鎧を身につけている。

 イントさんは剣と短剣を両方使うスタイルみたいで、場合により両手に剣を持って戦うらしい。皮鎧のようなものを身につけている。盾を使うので若干異なるが、自分に一番戦闘スタイルが近いかな?スレインさんと同じような赤い髪をしており、なんか色気がすごい。

 デルタさんは剣を持っているが、魔法がメインのようだ。指輪か何かが発動媒体かな?薄手のローブのような服を着ている。服と言っても金属が編み込まれているようだけどね。赤い髪をしており、身長はかなり低く150cmくらいか?なんか言葉使いが男の子のような感じでいわゆる僕っ娘なのかな?

 見た目はそれぞれ異なるけど、全員美人と言ってもいい顔立ちだな。この人達が相手だと気後れしてしまいそうだ。


 今回は運転席側が広いトラック2台と大きなトラック2台と車が1台となっている。2台のトラックに蠍の尾メンバーが2人ずつ乗って先頭と最後尾。その前後に運転手のみのトラックが一台ずつ、中央に自分たちの乗る車が走る陣形のようだ。

 街道が整備されているせいか、今までよりも移動速度が速いけど、途中の山を越える付近はかなりペースが落ちてしまうらしい。一番の難所はこの山越えで、強い魔獣も結構いるらしく、倒すには少なくとも上階位くらいの実力が必要らしい。
 もちろん山を迂回するルートはあるんだけど、かかる日数がかなり長くなってしまうので、ある程度の大きな商会は護衛を雇って山を越えるルートを選択することが多いみたい。

 また最近は盗賊が出ている情報もあるので注意が必要なようだ。スレインさんからも盗賊が出たときに心構えについて聞かれたので、討伐の経験はないが、現在の自分たちの考えについて話しておいた。


 移動中はいつもと同じく、仮眠をとったり、学識スキルを得るために勉強したりして過ごした。途中でてきた魔獣は自分たちも一緒に討伐したが、初めて見る芋虫系と昆虫系の魔獣は数が多いので大変だった。

 芋虫系は大きなものは子供くらいの大きさの巨虫と言われるものも出てきた。粘液を吐き出して攻撃してくるのでうまくよけないと皮膚がやられてしまうようだ。弱酸くらいの感じか?人数が多い場合は問題ないけど、束縛するような粘液も出してくるので注意が必要らしい。
 正直巨大な芋虫はかなり気持ちが悪い。これにやられると、生きたまま体を溶かされて食べられてしまうらしい。しゃれにならないな。

 あまり食べる気もしないけど、毒が含まれているので元々食べることはできないらしく、素材にも使えるところがないようだ。

 昆虫系はカナブンの大きなものという感じで形はいろいろとある。小さなもので握りこぶしくらい、大きなものでバスケットボールくらいの大きさになり、カブトムシのように角があるタイプや、クワガタのようにハサミがあるタイプもいる。

 スピードが早く、対象も小さいため、剣で倒すには結構大変だが、魔法を使うとかなり楽に倒すことができる。

 外皮が買い取り対象となっているんだけど、かなり程度が良くないと買い取りにはならない上、金額も安いので、持って帰る人は少ないらしい。駆け出しの冒険者がこれを防具代わりに自分で加工して使うことも多いようだ。

 昆虫系は数も多いのに、お金にならないためにいやがる冒険者が多い。魔獣石もせっかくなのである程度は回収しておく。良階位とかだとはした金レベルだろうけど、数が数なのでこれだけでもちょっとした小遣いだ。


 3日ほどは途中の町や村に宿泊したけど、またジェンと同じ部屋にさせられてしまうのは悪意を感じる。そういう関係ではないと何度言っても「はいはい、ごちそうさま」といって相手にしてくれない。ジェンも嫌がるそぶりを見せないので余計にだ。

 途中でスレインさん達から剣や魔法の指導を受けたり、魔獣の解体について助言を行ってもらったりといろいろと指導してもらった。高レベルの人からここまで丁寧に指導してもらうとはかなりありがたいことだ。
 特に自分のスタイルに近いイントさんからの助言はかなり役に立つ。盾の使い方は正直よく分かっていなかったので、いろいろと使い方を聞いてだいぶ形になってきたと思う。

 魔獣との戦闘では思ったよりも役にたっていたようで、蠍の尾のメンバーからも褒めてもらえた。これだったら上階位の試験も十分クリアできるだろうと言われてちょっとほっとした。ちなみに最初はやはり並階位なのであまり期待していなかったようだ。


 4日目から山越えとなるため、ここから数日は野営となるようだ。山の奥に入っていくと、道幅も結構狭くなってきて車がなんとか離合できるくらいになってきた。しばらく走っていくと、山の中腹くらいのところに野営用の場所が作られていた。場所と言っても木が倒されて周りが囲まれて広場になっているところにかまどがあるくらいだけどね。

 テントを設置してから夕食の準備に取りかかる。夕食は途中で出てきた大魔牛の肉を使った焼き肉になるみたいだ。臭いについては魔道具で消臭するみたいなので屋外でも大丈夫らしい。
 出てきたときはかなり焦ったけど、結構あっさりと倒すのはさすが良階位である。せっかくなので指導を受けながら捌かせてもらった。魔牛は解体したことがあったのでやり方はそれと大きな差がなかった。

 夜は魔獣よけの魔道具を使っているんだけど、完全ではないこと、盗賊が出てくる可能性もあることから見張りの必要がある。見張りは2交代で寝ることになっていたので自分とジェンも交代でやることにした。時間は8時から10時と10時から0時の2時間交代である。

 最初にジェンがスレインさんとアルドさんと一緒に対応し、残りが後番だ。さすがに眠いけど、前よりはだいぶマシになっている。宿に泊まっているときに交代で仮眠をとったりとか、寝袋で寝たりとかお試しでやっていたので少しは効果があったのかもしれない。まあ甘い考えではあるんだけどね。



 翌朝朝食を取ってから山道を進んでいたんだけど、途中で倒木があって進めなくなっていた。「木をどけないといけないなあ。」とか考えていると、車に乗せている連絡用の無線(魔法で会話を飛ばす機械なので原理はわからない)から連絡が入る。

「盗賊がいる可能性が高い。みんな準備しろ!」

 まじか!!
 索敵範囲を広げると確かに反応があったので、さらに集中して確認する。最初から索敵の範囲を広げておけば良かったよ。

「前方の左右に8人ずつ16人、かなり後方に6人。前方のグループのうち2名はかなり強そうです。」

 すぐにこちらからも連絡を入れてからできる限り車を固めて迎撃態勢をとる。

 30キヤルドほど離れたところにバラバラと姿を見せる盗賊と思われる人たち。2人はまだ森の中にいるので弓か何かで狙いをつけているんだろう。

「俺たちのことに気がついたみたいだから出てきてやったが、誰かと思えば蠍の尾のメンバーじゃねえか。元気にしてたか?」

「レイストフ・・・。」

 スレインさん達の顔色が悪い。

「良階位まで上がったと聞いていたが、あのお嬢ちゃんたちがよく頑張ったもんだなあ。まあ、おとなしくしていたら命だけは助けてやるぜ。俺たちを満足させることができたならな。がはははは。」

「く・・・。昔の私たちだと思うなよ。」

 どうも知っている人らしいが、言動からするとかなり強いようだ。
 後方にいる盗賊は車で逃げるのを防ぐためにいるようで、いまのところこちらにはやってこないみたいだけど、自分たちが後退したら不意打ちする感じなのかもしれない。ただ時間が経てばどうなるか分からないな。

「みなさん。うまくいくかわかりませんが、一つ試してみます。チャンスと思ったら攻め込んでください。あと、前方の森の中に2人残っていますが、後方の6人は今のところ動く様子がありません。」

 もしかしてと用意していた袋を土魔法と風魔法を使って上空へ持ち上げる。奴らの上まで来たところで魔法と思われる攻撃を受けて落とされてしまった。中に入っていた水滴が奴らの上に降り注ぐが、ダメージは受けていない。

「なにをしようとしたのかわからないが、残念だったな小僧!!動きはバレバレだぞ!おとなしく聞く気がないならこちらから行かせてもらうぞ!!」

「くそ!!アルドはレイストフを、イントはカヌサイムを足止めして!防御に徹して無理しないで!私とジュンイチで他の奴らに対応。ジェンとデルタは状況を見て援護をお願い。」

 スレインさんがそう叫んだとき、盗賊たちの様子がおかしくなった。

「なんだこれは。目が痛え!!」
「痛い!!!」
「前が見えない!!」

 あちこちで悲鳴が上がっている。もしもの時のために作っておいたカプサイシンの目潰しだ。

「みなさん、今です!!奴らは目があまり見えないはずですが、しばらくすれば回復してきます。一気にけりをつけましょう!風魔法で奴らの周りの空気を一掃するので突っ込んでも大丈夫です!」

 そう言って広範囲の風魔法で奴らの周りに漂う空気を一掃する。

「わかった。私とアルドでレイストフを、イントとデルタでカヌサイムを倒す。ジュンイチとジェンはできる範囲で他のやつらを頼む!!」

 いくら実力があるとはいえ、不意を突かれて混乱している上に目が見えない状況では気配を察知することもできないようで二人がかりに一気に押さえ込まれている。

 盗賊たちはのたうち回って闇雲に剣を振るっているので同士討ちも起きている。まずはジェンと二人で森の中にいる二人を魔法で攻撃して動きを止める。軽減魔法を使って一気に近づいたので弓を射るタイミングがあわなかったみたいであっさりと倒すことができた。
 このあとまだ目が見えない盗賊達には魔法を打ち込み、ひるんだところで奴らの首筋を切り裂いていく。この間に例の二人は首をはねられたみたいで、スレインさん達と一緒に残りの盗賊を倒していく。こちらにいた16人をすべて討ち取ったところで、後方にいた6人はこちらの状況に気がついたのか逃げ始めたようだ。

「追いますか?」

「索敵エリアが広そうだからギリギリの範囲で追いかけられるか?」

「はい、やってみます。」

 こちらの後始末は任せてイントさんと一緒に逃げていった6人を追いかけることになった。道からそれて10分ほど走ったところで盗賊たちの動きが止まり、その先にいる3人と合流したようだ。3人もそれほど強いようには思えない。ただ索敵の精度が急に悪くなってしまった。
 ある程度近くまで行くと、洞窟を改造して住処にしていることがわかった。どおりで索敵がうまくいかないはずだな。他の仲間がやられたため、すぐに動き出すかもしれないので、いったん自分だけ引き返してみんなのところに戻る。

 みんなのところに戻ると、盗賊達はすでに全員息の根を止められたみたいだった。コーランさんと相談したところ、強くないとはいえ、盗賊を残しておくと危険という判断ですぐに討伐に向かうことになった。こちらも危険があるかもしれないため、アルドさん、デルタさん、ジェンが残り、スレインさんと自分で先ほどのところに戻る。

 イントさんと合流して話を聞くと、まだ特に動きはないらしい。扉の近くまで移動してみるが、索敵能力を持った人間がいないのか全く気がついていない。洞窟内を索敵すると、どうもここからの移動を考えて荷物をまとめているような感じだった。

「どうやら荷物をまとめている感じですね。」

「ああ、そんな感じだな。実力的にはかなり劣るが、盗賊だとしたら放っておくわけにもいかないだろう。私とイントで突撃するからジュンイチは入口で辺りの警戒と逃げ出したものの対応を頼む。」

「わかりました。」

 簡単に打ち合わせをしてから二人が洞窟内に突入していった。しばらく盗賊の声と思われる悲鳴がした後、静かになった。

「ジュンイチさん、一応片付いたんだが、中に入って他に問題ないか確認してくれないか?」

 スレインさんの声を聞いて洞窟内に入っていく。さすがに血のにおいが充満しているので、血のにおいになれたとは言え、さすがに密閉空間ではちょっと気にはなるね。

「大丈夫でしたか?」

「ああ、特に抵抗らしい抵抗もなかったのであっさりと片付けることが出来たよ。」

 住処の中を一応確認してみたが、とらわれている人はいないようだ。

「特に索敵には引っかからないですね。おそらく全員倒されていると思います。」

 洞窟内部を見て回ると、とらわれてきた人はいなかったが、とらわれてきた人がいたんだろうなと言う形跡があったので、すでに殺されたのかもしれない。
 逃亡を考えて貴重品がまとめられていたようなので、それだけを持ってみんなのところにいったん戻る。

 すでに遺体は焼却処分されているみたいで使えそうな装備がまとめられていた。身分証明証も回収しているようだ。時間はまだ早いんだけど、状況の整理もあるので今日はこの辺りで野営することにしたようだ。道路に倒された木を取り除いてから少し先にある広場で野営の準備に取りかかる。


 盗賊の住処に戻って荷物と死体の処理をするため、もう一度一緒に行くことにした。今回はコーランさんも同行するようだ。

 強かった二人は元々良階位の冒険者だったけど、3人パーティーの一人が亡くなってからうまく回らなくなってしまい、盗賊に身を落としてしまったらしい。以前は別の地域で盗賊をやっていて討伐隊にやられたという話を聞いたことがあるようだがけど、おそらく逃げ延びていたんだろう。
 以前はかなり大きな盗賊団だったらしいけど、こっちではまだ人数が少ないので手頃な規模の集団を狙っていたのかもしれない。おそらく山の入口にも見張りがいてタイミングなどを見計らって襲っていたのだろう。

 先ほどの住処に戻り、遺体を焼却処分してから荷物を確認してみる。改めて確認すると、住処の広さから先ほど倒した人数と差はないと考えて良さそうだった。とりあえず殲滅できたと考えていいようだな。
 奪った荷物はすでに換金したのか、もともとそんなにため込んでいなかったのかわからないけど、めぼしいものはほとんどなかった。先ほどの貴重品くらいなものなのかな?

 こちらの盗賊達の装備品は低級レベルのものばかりで価値はなさそうだったけど、いくつか剣やアクセサリーがあったのでこれも追加でもらっていくことになった。一応できる範囲で鑑定をしていったけど、思ったよりもめぼしいものはない。まあすごいお宝をもっていたらそもそも盗賊なんてやってないよな。



 みんなのところに戻って、やっと一息ついたけど、興奮から冷めてくると人を殺したんだという実感がやってきた。ただ思ったほど嫌悪感はない。やはりやらなければやられるという認識があるせいなのか?それとも異世界に来るときに精神を書き換えられているのだろうか?

 ジェンと話しをしたところ、ジェンは自分よりも現実的な考えのようだった。小さな頃から結構そういうことには巻き込まれていたらしい。そういえば金持ちだったとか言う話をしていたな。

 しばらく二人で話した後、みんなのところに戻る。蠍の尾のメンバーから大丈夫かと声をかけられるが、思ったよりは落ち着いていることを話した。コーランさんも自分たちの様子を見てやっとほっとしたようだった。



 自分たちが落ち着いたのを確認できたせいか、今回の盗賊の討伐についてコーランさんから説明があった。

「おそらく盗賊団には懸賞金がかけられていると思われますが、ご存知のようにその懸賞金は護衛のメンバーの報酬となります。パーティー単位での分配となり、通常であれば階位によって分配率は慣例的にある程度決まっているのですが・・・。」

「ああ、そのとおりですね。ただ今回は慣例は無視して半分ということでどうだろう?」

 おそらく並階位の自分たちには分配がないのが普通なんだろう。そもそも護衛の依頼が無いレベルだからね。ただ今回の貢献度を考えてスレインさんから半分と言うことを提案してくれたんだろうな。

「自分としてはそれだけもらえるのであれば十分すぎるくらいです。ほんとにそれでよろしいのですか?」

「ああ、そのまま戦っていたとしても負けるとは思っていないが、間違いなく負傷者、下手をすれば死者が出ていたことも考えられるくらいだからな。」

「それでは懸賞金についてはこのあと町に行ったときに確認を取ると言うことにしましょう。」

「「わかりました。」」

「それから盗賊達からの接収品についてですが、蠍の尾のメンバーはご存知のように装備品については護衛の方達での分配、その他のものについては我々と護衛側で等分にして分配と言うこととしていますがそれでよろしいでしょうか?」

「えっ?それでいいんですか?」

 盗賊の接収品については通常は護衛を依頼した側がすべて受け取るのが普通らしいのでこの提案にはちょっと驚いた。

「ええ。今回そのことについて事前に説明するのを失念していました。申し訳ありません。
 当商工会では護衛を行ってもらったときの盗賊退治の場合、装備品はすべて護衛の方達に渡すことにしています。複数のパーティーに依頼する場合は事前にパーティーでの分配率について取り決めておくべきでした。」

 なるほど。盗賊退治を行った際の報酬が上乗せされるようになっていれば盗賊退治の際にもがんばってくれるということが期待できるな。

「ジュンイチさん、装備品については価値のこともあるのでその辺りの確認をすませてから考えることにしよう。とりあえず使いたいと思うものがあるかだけは確認しておいてくれ。盗賊が使っていたものなので使いたくないと考える人もいるから無理に使う必要もないぞ。」

「わかりました。」

 スレインさんの言うとおり、盗賊のものなんか使いたくないという人もいるだろうな。まあ安い装備だったらそれもあるかもしれないけど、良いものだったら売り買いの差額を考えるとそんなことを言っていられないような気もするんだけどね。町まではまだ時間があるのでジェンとも話をして使える装備があるか見てみよう。


 夕食には温かいスープを食べてから野営となったけど、どうも興奮して眠れないのでこのまま見張りをすることにした。ジェンも眠れないようなので、何かあったらすぐに起こすからと言うことでスレインさん達にも寝てもらうことになった。自分たちの索敵能力と実力をある程度認めてくれたと言うことなのかな?
 もし眠くなったら他の人を起こすということにしていたんだけど、いろいろととりとめなく話していると、空が明るくなってきた。結局眠気がこなかったのは、やはり興奮していたんだろうな。

~魔獣紹介~
巨虫:
上階位下位の魔獣。岩場や山岳地帯に生息している巨大な芋虫の魔獣。多くの足を細かく動かして移動するが、思った以上に素早い動きをする。大きなものは子供くらいの大きさになる。進化前の大虫を従えて行動することが多い。
体を束縛する糸のような粘液と、消化液のようなものを吐き出して攻撃してくる。体を束縛されてしまうと抜け出すのはかなり厳しいが、人数が多い場合は助けてもらえるためそこまで脅威ではない。ただ一人で自信が無い場合は逃げた方がいいかもしれない。束縛された後、生きたまま消化されていくのは考えたくはない。
素材としての買い取り対象はない。肉も毒が含まれているために食べることはできない。

大角甲虫:
上階位中位の魔獣。山岳地帯に多く生息している硬い外皮を持つ昆虫型の魔獣の総称。大きさは握りこぶしくらいから頭の大きさくらいまで幅があり、形も角があるものや、はさみがあるものなどいろいろとある。
速度が速く小回りも利くためなかなか捕らえるのが難しい。攻撃は硬い外皮を使った突撃とシンプルだが、頭など急所を攻撃されないように注意しなければならない。
昆虫系に共通するが、魔法による攻撃が有効。外皮は硬いがおなかなどはまだ柔ら無いため攻撃する場合はそちらを狙おう。
素材としての買い取り対象は外皮で、外皮を加工して防具代わりに使っている冒険者も多い。


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