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34. 異世界256日目 海賊の遺産を発見
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34. 異世界256日目 海賊の遺産を発見
島上陸7日目
雨は昨日の夜に上がっていたので今日は調査が出来そうだ。まずは海岸近くに行って確認してみると、特に岩盤のような物はなく地中の確認が出来た。そこから拠点に向かって調査していくと、途中から岩盤のようなものがでてきた。普通の岩だったら透過出来るのでかなり堅いものがあると言うことなんだろうか?
まずは大まかに調査していこうと言うことになり、50キヤルド間隔くらいで地下の探索をやってみる。深さ10キヤルドくらいのところで堅いものがあってその先が探知できないところが結構ある。とりあえずその堅いエリアを把握していこうと言うことになり、地図の上に地下の状況を記入していく。
森以外は二人で手分けして島の全体を調査してみると、島の4割くらいに固い岩盤のようなところがあった。この岩盤の中に空洞でもあるのかなあ?ただ断崖の近くはうまく調査出来ないのは仕方が無いか。
続いて間隔を狭めてから岩盤のような位置を細かく調査していったんだけど、さすがに時間がかかって、島全体の調査をするのに3日ほどかかってしまった。
一通りの調査が終わると、西の草原の方に通路のようになっているところがあった。山や森を後回しにしていたらもっと早く発見できていたかもしれないけど、まあしょうがない。
「この通路みたいなところをたどっていけば入口があるかもしれないね。」
「ええ、断崖付近は分からないけど、まっすぐに伸びているから途中まで分かれば位置は予想出来そうだわ。」
おおよその位置を確認したあと、ロープを身体に縛り付けてから土魔法で階段を作りながら降りていく。ただ予想された深さのところまで降りても特に入口らしきものはみつからない。とりあえず掘ってみるしかないか?
土魔法を使って掘り進もうかと思ったらすぐに壁のようなところが崩れて中に空洞が見えた。どうなっているのかと穴を広げていくと、中が思ったよりも広い空間になっていた。もしかしてわからないように隠されていたのか?
「み、みつけた~~~!!」
つい声が出てしまった。
「えっ!!!ほんとに!!!すぐ行くからロープ固定して!!!」
「ちょっとまって!!」
ジェンにも聞こえていたみたいだけど、このまま降りてこられても困る。まずは壁を取り除いてから足場が出来たところでジェンに来てもらう。
「うわ~~~っ!!!間違いなさそうね!!!」
崖の中腹くらいに穴が空いていて踊り場のようになったところの奥にドアがあった。かなり朽ち果てているんだけど、中を覗くと通路が奥に延びていた。
「海賊の隠れ家かどうかまではまだ分からないけど、何かしらあるのは間違いなさそうだね。」
「それじゃあ入ってみる?」
「うーん、入りたいのは山々だけど、もう結構遅い時間だし、入ってしまったら調査にどのくらいかかるか分からないから明日出直そうよ。」
「え~~~!!!ここまで来ているのに明日にするの?」
「中に魔獣がいることも考えられるし、休憩出来るようなところかも分からないからね。その分明日は夜明けにすぐにやってこようよ。」
「分かったわよ。今日は早く寝ましょう。」
簡単に入口をふさいでからロープを登る。明日のことを考えながら拠点に戻り、夕食をとる。二人でどんなところだろうと興奮しながら話をして、早々に眠りに就いたんだけど、興奮してあまり寝られないので魔法を使って眠りに就くことになった。
島上陸10日目
予定通りに起きてから簡単に朝食を済ませて昨日の場所へ。設置されているドアは錆びてぼろぼろになっているせいでドアを開けようとしたらドアごと外れてしまった。
中からはこもった空気ではなく、風かすかに感じるので酸欠などの心配はなさそうだ。一応魔道具で安全君という検知器のようなものも持ってきているのでなにか危険なものがあれば分かるだろう。空気中に酸素というものの存在は分かっているようなので、それが少なくなるとランプが付くというものだ。
あと毒ガスと言われるものも一応関知するらしい。鉱山などではアラームタイプがあるらしいけど、さすがに冒険者には危険なのでライトで知らせるタイプを買っている。
通路を少し進むと、壁や天井の質感が変わって通路のようになる。しかも照明のようなものが付いていて、通路が明るい。罠に注意しながらしばらく歩いて行くと、ここにも半分朽ち果てたドアがあった。
その手前の壁にスイッチがあるんだけど、どう考えても電気のスイッチみたい。罠の確認をしても特に異常もないのでスイッチを切り替えると電気が消えた。
ドアを開けて中に入ると、少し広めの部屋になっていて、テーブルなどが置かれていたのか朽ち果てた木材の破片などが転がっていた。割れたお皿などもあるので一応生活していたような感じだ。その奥にも扉があったけど、こっちのドアもかなりボロボロになっていた。まあ潮風に晒されていたら劣化も早いよな。
ドアを出ると真っ暗な通路がつながっていた。ドアの横にスイッチがあったので確認してから切り替えると通路に電気がついた。
通路はその先で右に曲がっており、徐々に下に下っている。注意しながら進んでいくと、通路の先に明かりが見えてきた。
「外?」
慎重に通路を進み、外を見ると、そこは港のようになっていた。
「ここか!!」
もし誰かいたら困るので小さな声で話す。
「イチ、やったね。間違いなく海賊の拠点よ!!」
ジェンもかなり興奮しているようだ。
索敵をしても何も反応がないので、あたりを確認しながら扉を出る。かなり明るいので外に出たのかと思ったんだけど、まだ洞窟の中だった。天井部分にかなり明るい照明のようなものが付いているために外にいると思ってしまったようだ。
通路を出たところの南側が湾のようになっていて水があり、埠頭が4つあって船が止められるようになっている。その奥には壁になっているんだけどそっちの方に出入り口がありそうな感じだ。埠頭と今出てきた通路の出入り口がある北の壁の間は結構広い広場になっていて、こっちの壁にはいくつかの扉があった。
「外かと思ったらまさかの室内とは思わなかったよ。正直外にいるのと変わらないくらいの明るさだよね。」
「ええ、それだけの魔素が補給されていると思うけど、ずっと補充され続けているというのはどういう原理なのかしらね。いまだに魔素を取り込む効率的な魔道具は開発されてないし、古代遺跡からも発見されてないわよね。」
たしかに魔素の供給源は気になるな。
「まあとりあえず魔獣とかの心配はなさそうだ。古代遺跡なので魔獣が出ないような対策はしているのかもしれない。もちろん注意は必要だけど、すごく危ないという感じではなさそう。」
湾になっている埠頭の先の壁に沿って回り込むように通路になっているんだけど、ちょうど真ん中辺りは通路がないのでそこが出入り口なのかな?
「おそらくあそこが外に出る水路だと思うけど、外側に出口のようなところとかあったかな?」
「船で周りを見たときはなかったから、うまく偽装されているって事なのかしらね。」
湾の壁に沿ってある通路を歩いて行くと、行き止まりになっていた。水路は外につながる感じになっているんだけど、どういうことだろうと調べてみると、壁のところにスイッチらしきものを発見する。
「なんかスイッチがあるけど・・・どうする?とりあえず罠はなさそうなんだけど、正直言ってどうなるかは分からないよ。」
「とりあえず注意して押してみる?途中にあったスイッチも単に電気を付けるだけのものだったし、普通に生活で使っているものみたいだから大丈夫じゃない?」
「何か起きても困るので警戒はしておいてね。」
周りを警戒しながらスイッチを入れてみると、壁が上に上がっていき、外の風景が見えてきた。
「おお~~~、すごい!!やっぱり隠し通路だったのか。」
そこから先は岩場のような感じの通路になっていたので出てみると、出てきたところが岩場になってしまった。
「えっ?外に出たら戻れないの?」
「イチ、どうかしたの?」
そういう声と共にジェンが岩の中から現れた。
「うわっ!!」
まじでびびった・・・。
「どうしたの?」と不思議そうな顔をしていたが、後ろを振り返って驚いていた。
「えっ?今出てきたところよね?どういうこと?」
そう言って岩に触ろうとすると手が岩の中に埋もれていった。そのまま姿が見えなくなったんだけど、すぐに顔を出してきた。
「うっわー!!!おもしろいわね。単に外からだと岩に見えるように投影している感じみたいね。光魔法か何かかしら?」
入るときは特に障害もなく中には入れるし、中からだと普通に外は見ることができた。なんかすごい技術だな。もしかして海賊達は遭難とかしてここに流れ着いて発見したのだろうか?きっとそのときは扉が開いていたのだろう。外にも岩場に隠れるようにスイッチが設置されていて、ボタンを押すと入口を開閉出来るみたい。
先ほどの出入り口のところまで戻ってから改めて確認してみると、左右の壁際にそれぞれ大きめの扉があって、真ん中付近に5つの扉があった。その中の一番左が先ほど出てきた通路だ。
まずは一番左側の大きな扉に行ってみたけど鍵がかかっていて開けることができなかった。鍵穴はなくて、扉の横にプレートのようなものが埋め込まれているので、もしかしたらここでカードとかで認証させたら開くとか言うやつなのかもしれない。
その隣は入ってきた通路で、よく見てみると壁にドア部分がはまっているようだった。ドアの横には同じようにプレートもあるので、開いた状態で壊れてしまったとかなのかな?
その隣には少し大きめの扉があるけど、ここも鍵がかかっていた。さらにその隣に少し小さなサイズの扉が3つあって、一番右の扉は開いていたけど、他の2つは鍵がかかっていて開けることができなかった。
「通路は結構長そうなので先に他の扉を確認してからこっちを見てみよう。」
「わかったわ。」
一番右側の大きな扉は開いたままになっていて、中は大きな倉庫のような空間になっていた。20m×50mくらいありそうだ。朽ち果てた木材や布団のようなものが散乱しているので居住区にしていたのかもしれない。
「ここは居住区だったのかな?こっちの区画は倉庫として使ってたのかな?この木箱は食べ物関係でも入れていたみたいだけど、もう形も残ってないね。」
「まあ時間を考えたら仕方ないわね。こっちの箱はお酒かしら?」
「ラベルは読めないものも多いけど、瓶にも刻印されているから何となくは分かるね。お酒関係と言うことで間違いなさそう。」
いくつか割れているものもあるんだけど、それでも200本くらいはありそうだ。
「これってまだ飲めるのかな?」
「うーん、どうだろう。何百年前のお酒がと言う話もあるから飲めるものもあるかもしれないわよ。でもさすがにこの量は収納バッグに入るかしら?」
「まあ無理だったら持って帰れるものだけ持って帰ってもいいし、それは後で考えよう。」
その奥にも同じような扉になっているんだけど、こっちには鍵がかかっていて開けることができなかった。地上で調査したときにはこの奥にもかなりの広さの空間がありそうなんだけどね。
試しに壁を土魔法で壊そうとしてみたけど、強化されているのか、全く崩れなかった。何かの付与魔法でも施されているのかもしれない。
最後に先ほど開いていた真ん中付近の扉の中に入ってみる。スイッチのようなものがあったので、おそらく大丈夫だろうと押してみると通路に明かりが付いた。
一番手前にある扉の中に入ると、広さは10m四方くらいとかなり広い部屋になっていた。
「ここって台所なのかな?これはコンロだよね?こっちは冷蔵庫みたいだけど・・・中はもう何が入っていたのか分からないな。においももうなくなっているよ。」
冷蔵庫の中はひんやりしていてまだ動いているんだけど、中に入っていた食糧と思われるものは黒い塊になってこびりついていた。いくつか瓶に液体が入っているんだけど、さすがにちょっとやばそうな感じ。コンロを見てみるとスイッチを入れるとちゃんと火が付くので今でも十分使えるみたい。
「この辺りが動いているってことはやっぱりどこからか魔素が供給されているって事だよね?」
「うーん、コードみたいなものが壁から出ているからどこかにあるんでしょうね。でもこんなに長い間魔素を供給出来る魔獣石なんて無理よ。あと考えられるのは魔素を集める魔道具って事になるわね。」
「だけど古代遺跡でもそんなものは見つかっていないよね?あくまで補助的なレベルのものだけだったように思うんだけど。」
「そうなのよね。古代文明がそれを作っていたとしたら何かしら痕跡があっても良さそうなのよね。
ま、そうは言っても考えても分からない事だし、使えるというならそれでいいんじゃない?」
隣の部屋はさらに広い部屋で、食堂のような感じがする。テーブルとかが置いてあるけどほとんどが朽ち果てているのは仕方がないだろう。
その隣にはシャワールームがあって、こっちもちゃんと水も出るようになっていた。魔道具からの給水なので配管がさびるということもないのが救いだね。その横にはトイレルームもあり、水も流れるようになっていた。
「これだけそろっているんだったら、わざわざ上の拠点でなくてこっちに移ってきても良さそうだね。」
「安全に問題なさそうだったらそれはありかもしれないわ。」
そこからさらに奥につながってる通路にはホテルの廊下のように扉が左右に並んでいる。一番手前の扉を開けようとしたら鍵がかかっていた。反対の扉に比べるとこの扉はちょっと頑丈な造りになっている。
反対の扉の鍵はかかっていなかったので、注意しながら中に入ってみると、ベッドや机と思われる残骸が残っていた。個室になっていたと言うことなのかな?
「さっきの倉庫も居住区みたいだったけど、こっちは海賊の中でも上のクラスの人たちが住んでいたのかもしれないね。」
「まあ海賊の中でも全員が船に乗って戦いに行っていたわけでもないでしょうし、でもそう考えると生き残りっていなかったのかしらね?」
「どうなんだろう。生き残りがいたらこの島のことは分かっていてもおかしくないんだよねえ。船がなくても移動しようと思えば何とでもなったはずなんだよねえ。」
順番に部屋を見ていったけど、このあとは鍵のかかった部屋はなく、造りはだいたい同じ感じだった。2部屋だけベッドに寝たまま亡くなったのか亡骸があったくらいだ。見た瞬間はびっくりしたけど、ほとんど風化しているのでまだ良かったよ。
一通り見た後、最初の鍵のついた部屋に戻る。魔法の鍵ではなく、通常の鍵だけだった。特に罠もなさそうなので開けようかと思ったけど、鍵がさび付いていてどうしようもない。しょうがないので力業でドアを壊すことにした。
木の部分が腐りかけていたこともあり、簡単にドアは外れてくれた。部屋の中には大きさ的にちょっと豪華だったと思われるベッドと机があり、机の椅子には遺体が座っていた。
遺体の主は机に覆い被さる感じで亡くなっているみたい。ふと見ると椅子のそばには5cmくらいの紫色の玉が転がっていた。この人物が持っていた物だろうか?宝石という感じではないんだけど、魔道具なのかな?
名称:道しるべの玉(良)
詳細:現在地を表示する。10個までの地点を登録することができる。転移魔法を使うときの道しるべとなる。必要魔素がある場合に限り、1回のみ登録地点に転移することができる。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:現在地表示-2、地点登録-2、転移-3(使用不可)
「おお~~~!!」
「ど、どうしたの?」
「いや、これ、これ。鑑定してみて!!」
「・・・・。
え?これって・・・魔道具の一種?説明に書いているのが本当なら、転移魔法を使うのに必要なものってことなの?そして1回だけ転移ができたってことは、物語に書いていたとおりこの転移でこの島に戻ってきたと言うこと?」
「多分物語で書かれているとおりだったんだと思うよ。本人は意識していたか分からないけど、逃げたいと思ってここに戻ってきたと言うことなのかもしれないね。」
「一回だけ有効ってなっているからもう使えないのね。」
「まあ何回も使えたらいいけど、さすがにそれは無理だったぽいね。
あと、おそらく経緯度の拠点となるところに魔道具が置いていてそれを受診するシステムなんだと思うよ。地球で言うGPSの受信機のようなものかな?衛星のようなものがあるのかは分からないけどね。
転移魔法がどんなものなのか分からないけど、もし覚えたらこの装置で登録した場所であれば転移できるって言うことなのかな?」
「転移魔法って簡単に言ってもやっぱり空間移動って考えるとそんなに単純ではないはずだからね。」
玉に魔素を流してみると、位置が表示された。
「古代ライハン語で『とい、めい、うら』の3つが書かれているね。“とい”と“めい”は経度と緯度だろうけど、“うら”はなんなんだろう?」
「普通に位置と考えたら標高とかじゃないかな?それはあとで検証してみましょう。」
登録場所と念じると、10カ所登録されていた。
「登録されているのは10カ所だね。数字を見る限りは、ここ以外の9カ所は世界中のいろいろな場所を示している感じだね。折角だからだいたいの位置を地図と照らし合わせてみようか。」
といとめいの位置を確認するときに作った地図とガイド本の地図を確認しながら位置を特定すると、5カ所は発見されている遺跡のある場所のようだけど、4箇所はまだ調査が行われていない場所っぽい。おそらく遺跡があるのだろう。2カ所は海の上となっているのは島なのか、海底遺跡なのか、沈んでしまったのかというところか?いずれ調べてみたいものだな。
ここの登録されている場所は位置的にこの部屋ではなく、港のあたりのような感じだ。後で場所を調べてみよう。
「地点の登録方法は分からないけど、下手に場所を消してしまうのもちょっと怖いから余計なことはしない方がいいよね。」
「近い場所だったら再登録も出来るかもしれないけど、どっちにしろ転移魔法は使えないから今のところは考えなくていいんじゃないかな?」
「そう考えると、このアイテムはもっとほしいよなあ。そうしたら移動がかなり楽になるのにね。」
あとは転移魔法の道しるべに使えると書いているけど、使い方がよく分からない。そもそも転移魔法も原理がよく分からないし、転移して「石の中にいる」とかなってしまうのもいやだ。そこに人がいた場合とかにでたら殺人事件だと思う。転移していい場所とかがちゃんと規定していないと怖い。
収納バッグのような感じになるとは思うんだけど、それでも転移先がどうなっているのかを確認していないところに行くのは怖すぎだよ。
他に何かないか見てみると、腰のベルトに小さなバッグが付いていた。これって収納バッグかな?収納バッグを手に取り確認してみると、「時間を過ぎたため中のものは分解されました」と聞こえてきた。
「マジかぁーーー!!」
「どうしたの?いいものでも入ってた?」
「いや、時間過ぎて中のものが消失してたよ。」
「えーーー!!」
もしかしたら中にはかなりお宝が入っていたのかもしれないけど、魔素が供給されていないので時間切れになってしまったんだろう。
「多分、この持ち主はお宝を他の人に渡さないと願っていたために消失してしまったんだと思う。」
どのくらいのお宝が入っていたのかは分からないけど、こればかりはどうしようもない。もし残っていたら結構な収入になっていたかもしれないけどね。
「残念ねえ。」
「まあお宝はなかったけど、収納バッグだけでも結構大きな収入だと考えよう。」
容量を後で確認してみようと思っていたんだけど、ふと鑑定できるんじゃないかと思い立った。収納バッグは持っていたのに今まで鑑定をするということを考えてなかったよ。せっかくなので持っている収納バッグも鑑定してみる。
名称:収納バッグ(良)
詳細:生物以外のものを収納するバッグ。収納の際に分解され、取り出す際に収納時の状態に再構成される。空間拡張により分解後の**に相当する***容量分を収納できる。重量は収納した重量を1万分の1まで軽減する。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:分解、構成、空間拡張-3、重量軽減-2
名称:収納バッグ(並)
詳細:生物以外のものを収納するバッグ。収納の際に分解され、取り出す際に収納時の状態に再構成される。空間拡張により分解後の**に相当する***容量分を収納できる。重量は収納した重量を1000分の1まで軽減する。
品質:並
耐久性:並
効果:並
効力:分解、構成、空間拡張-1、重量軽減-1
残念ながら容量は解読できなかった。そもそもの概念が分からないからしょうがないか。ただやはり生物が入らないということは、収納した際に微生物や寄生虫などは取り込まれないと言うことなんだろうか?寄生虫とかが出てきたという認識もないんだけど、気がついていないだけなのかな?
机の上には本のようなものが置いてあったんだけど、かなりぼろぼろになっている。どうやら手記のようなんだけど、ほとんど読むことが出来ない。読めるところを見てみると、ヤーマン語で書かれていたので読むことは出来た。
もともと海賊だったみたいだけど、嵐にあってこの島に流れ着いたようだ。港の入口が開放されていたので中には入れたのだろう。港には船があったので、それを使って海賊行為を続けたようだ。もしかしたら古代文明の能力を持った船があったのかもしれないね。
海賊の規模を考えると全員がここを拠点として使っていたわけでもなさそうだし、いろいろと秘密がありそうだからこの部屋の人数ぐらいしかこの島のことを知らなかったのかもしれないな。
気がつくとすでに結構な時間がたっていたのでいったん拠点に戻ることにした。ここにいるとずっと明るいので時間がわかりにくい。
「今日はいったん拠点に戻るけど、明日からこっちに移動しようと思っているけどいいかな?空調システムでもあるのか、気温も安定しているし、空気もよどんでないからね。」
「ええ、どう考えてもこっちの方が快適よね。特に危険もなさそうだし。」
地上に戻ってから宝玉で現在地を確認するとうらの数値が大きくなっていた。基準はわからないけど標高みたいなものと考えて良さそうだ。転移の地点だから標高もいるよね。
せっかくなので湖に移動して収納バッグの大きさを確認することにした。水は一部のみ取り込むことはできない。湖が浅いので水魔法で持ち上げて取り込んでいく。すぐにいっぱいになるかと思ったんだけど、思った以上に入る。まじか・・・。
途中でジェンにも手伝ってもらいながらなんとか入らなくなるまで入れることが出来たんだけど、バッグの容量を見てみると26キリルとなっていた。これって3キヤルド四方くらいの容量があるってことなのか?
「結構入ったみたいだけど、どのくらい入った?」
「実は・・・26キリルだったよ。」
「26!?」
「正直価格についてはあまり考えたくないというか知られたら結構怖いことになりそう。たぶん感覚的に数千万ドールはするだろうし、オークションによっては億とか行く可能性もあるくらいだよね。あまり人前では言えないよね。」
水をすべて戻してから拠点に戻る。目的も達成できたのでかなりテンションが高い。今日はバーベキューにしようと肉や野菜を思いっきり食べる。
「お宝はダメだったけど、依頼は達成できたから50万ドールは手に入るわよね。しかも収納バッグもかなりのものだし。」
「そうだね。あまり贅沢言っても仕方がないか。お宝も本当にあったのかはわからないしね。」
「でも海賊の宝・・・どんなものか見てみたかったなあ。」
「まあこればっかりはしょうがないよ。また明日から調査をするから何か見つかるかもしれないしね。」
明日のことを考えると興奮してしまうんだけど、さすがに昨日もあまり寝ていなかったせいかベッドに入ると眠りに落ちていった。
島上陸11日目
新しい収納バッグは自分が持つことにして、普段使いのもの以外はすべてこっちに移すことにした。拠点の荷物もすべて回収したけど、せっかくなので加工したテーブルなども収納バッグに入れて行く。まあ容量は十分だからね。造った拠点についてはこの後どうなるか分からないのでまだ残したままだ。
昨日と同じように崖のところの入口へ行き、ここから調査を再開する。
「この辺りは自然の岩みたいなところはあるけど、加工されたところは土魔法では加工出来ないね。しかもむちゃくちゃ堅いから力任せでも無理そう。」
「たしか金属とか土とか土魔法で加工出来ないようにできる付与魔法があったと思うからそれと同じなんでしょうね。ただそれだと魔素がどこからか付与されているって事なのよね。」
「解除方法を知らないと穴を開けることはできないだろうけど、そもそも簡単に解除出来るものではないだろうしなあ。とりあえず壁に穴を空けて、入れない部屋に行くというのは無理って事だね。」
「それは仕方ないわよ。」
このあと地上からチェックした地図と対比しながら通路を進む。通路には明かりが付いているけど、これは通路の中に埋め込まれた魔道具のようだ。やはり魔素の供給はどこからか行われているのだろう。
途中にあった部屋には特になにもなく、海賊達が使っていたと思われる家具などの残骸だ。もともとそれほど質が良くなかったのと、海風のせいで朽ちてしまったのだろう。
港の埠頭には地球にあったような荷下ろしのクレーンとかはないけど、おそらく魔法があるせいで必要がなかったのかもしれない。天井はかなり高く、上に上がる階段もあった。階段は岩をくりぬいたように作られているので特に朽ちてないので登ってみたところ、上の方にあるスペースのところにつながっているだけだった。ここに小屋とかでもあったのだろうか?
ちょっと気になって道しるべの玉で位置を調べてみると、登録されている場所がここになっていた。
「ここが道しるべの玉に登録されている場所みたい。」
「わざわざこんなところに作ったと言うことはやっぱり転移の時に何かしらのリスクとかがあったのかしらね。それか単に転移先に何かあったら転移が出来ないから人が来にくいようにしていたのかもしれないわね。」
「たぶん人がいたりものがあったりすると転移が出来ないとかの可能性が高いと思うよ。」
もしかしてと思って表示する位置について“とい”、“めい”、“うら”をそれぞれ個別に念じてみると、数字が2桁ではなく、小数点以下の数値も出てきた。
「やっぱり登録地点はかなり細かい位置まで登録されているみたい。それぞれ個別に確認したら細かい数字が出てきたよ。」
「それはそうだよね。あんなおおざっぱな数値で地点を確定出来ないわ。」
港の水路の出口に行って調べてみると、扉を開けたときは幻影だけでなく、風などの侵入も塞いでいるようだった。風魔法と光魔法なのかなあ?壁の方を見てみると刻印がいくつか描かれていた。刻印に使われている文字は何の文字か分からないけど、古代の魔道具などに使われている文字と同じ感じだ。
外から見ると全くわからないし、外に出たところにある岩場も自然な感じなので遠目で見たらここに入れるとは思わないだろう。
「あれ?波が打ち寄せてきているのに、波が建物の中に入っていないわね。」
よく見てみると、扉のある位置で波が一気に収まってそこから先の海面は全く動いていない。実は海に見えるこれも投影したものじゃないよな?水を触ってみるとちゃんと水の感触がある。
「なにかの仕掛けがあるんだろうね。あれ?これって、海水じゃないんじゃない?」
水を触ったときになんか変な感じがしたのでなめてみるとしょっぱくなかった。
「魔法で塩分をここで遮断しているって事なのかな?それで中は潮の香りがしなかったのか。港に海藻とか岸壁に貝殻とかもないので変だと思ってたんだよね。」
どんな管理をしているのか分からないけど、埠頭の海岸がかなり綺麗だったから何かしらの力が働いているとは思ったけど、まさか海水まで入っていないとは思わなかったな。船がここを抜けるときにも船についた異物も取り去られてしまうのかもしれないね。
埠頭には船などもないので特に探すものはない。もしかしたら水の中に何か沈んでいるかもしれないけど、正直潜って探すには厳しすぎるんだよね。水魔法のレベルが上がったらモーゼのように海面を割ることができるのかねえ?
そのあと倉庫に行ってからお酒関係を収納していく。割れているものもあるので割れていないものだけを選んだんだけど、全部で185本あった。ワインやブランデー、ウイスキーなどいろいろなものがあるんだけど、鑑定でカビが生えていたり、腐っているものを除くと166本となった。ただここまで古いものがちゃんと飲めるのかどうかはわからない。
「お酒ってそんなに腐るものではなかったよね?とりあえず全部持って帰ろうか。」
「他の人に聞いてからどうするか考えましょう。ちょっと飲んでみたいしね。ワインとかはもしかしたらダメかもしれないけどブランデーとかの蒸留酒なら大丈夫なはずだわ。」
割れた瓶や中身がダメになったものは錬金でまとめて一つの固まりにしておく。こういうときはかなり便利だな。木材や布団と思われる残骸などはいったん収納バッグに入れておいた。あとでまとめてどこかで処分しよう。
続いて小部屋になっている部屋を調べていく。台所の機能は動いているけど、冷蔵庫などかなり汚れがひどいので浄化魔法をかける。さすがに魔法なので油汚れも一発だ。まあ普通の人はここまできれいにできないだろうけどね。
調理道具や食器なども結構あったんだけど、調理道具は鉄製のものがほとんどだったのでさびて使い物にならなくなっていた。使えないものは錬金でインゴットにしてまとめておく。皿なども壊れていないもの以外はゴミとしてまとめておいた。
食堂もテーブルはほとんど朽ちてしまっている。食堂の片隅が武器置き場になっていたようなんだけど、すでにボロボロのものばかりだ。一応鑑定してみるが、もともと低レベルのものばかりだったみたいで使えるものがない。しょうがないのでこれもインゴットにしておく。なんか収納バッグにゴミばっかり貯まっていくなあ・・・。
このあと各部屋に入って調べていくけど、大体の家具はかなりボロボロになっていた。部屋の中を浄化してから机の引き出しやベッドの下などを見ていくと、ちょこちょこ魔獣石や宝飾品などがでてきた。さすがに部屋の数も多いので思った以上に時間がかかってしまう。
収納して分別できればいいんだけど、さすがにそれはできないので探すのは一つずつやっていくしかない。まあもともとそんなたいしたものがあるとは思えないんだけどね。確認の後はすべて取り込んで部屋を浄化していく。
さすがに部屋数も多いし、見るだけでも結構かかるので、調査は1日で終わらなかった。使える家具はすべて食堂に移動させておく。いくつか使えそうなテーブルやベッドもあったので助かった。とりあえずしばらくはこの部屋を拠点としよう。
台所は大人数用に作られているのでかなり使い勝手がいい。追加で必要な調理用具はインゴットにした鉄から造った。錬金を覚えてきて正解だったよ。
ここだと特に臭いも気にしなくて良さそうなので気が楽だ。ゆっくりと食事を楽しんだ後は、お茶を飲みながら持ってきたデザートでまったりとくつろぐ。
「ここってどう考えても古代文明の遺跡だよね?」
「そうね。どう考えても今の文明よりも高度な魔道具が使われているからね。ただ古代文明の遺跡は稼働しなくて風化が進んでいるという話だったと思うけど、なぜこの遺跡は機能を保っているのかしら。」
「普通に考えると魔素の供給がなくて朽ち果てていくんだろうけど、ここはどこからか魔素が供給されているんだよね。魔獣石を作る技術が一部できあがっていたのかねえ?」
とりあえず現段階ではなんともいえないけど、海賊が拠点にしていた気持ちも分かる。どう考えても空調管理されているし、魔道具も便利だからねえ。
島上陸12日目
この日も朝から家捜しだ。全部で50部屋近くあったので時間がかかったのはしょうがないけど、なんとかすべての部屋の確認を完了する。特に隠し扉などもなかった・・・と思う。
収納していた木やごみなどの残骸関係は地上で焼いてしまうことにした。まずは木片関係を取り出して魔法で粉砕していく。すると中から装飾品が少し見つかった。どこかに隠していたのかな?
他の島から見えても困るので、日が落ちた後で火魔法を使って一気に焼く。何回か魔法を連発すると思ったよりも早く炭になってくれたので助かった。そこまで煙も出ていないと思う。
残った灰の中を調べてみると溶けた金属が少し見つかった。金属は金みたいなのでまだ装飾品とかがあったのかもしれない。まだ木の中に隠し場所とかがあったんだろうなあ。ダイヤとかあったら燃えてしまったかもしれない。
結局手に入れたのは魔獣石が126535ドール、指輪や腕輪などの宝飾品が32個と溶けた金だった。まあこれだけでもそれなりの収入だから労力以上の利益はあったと思っておこう。宝飾品は特に気になるものもなかったのでどこかでまとめて引き取ってもらうかなあ?
部屋もすべて綺麗になったし、気分的にもすっきりだ。シャワールームが分かれていないので交代で入らないといけないが、それでも綺麗なお湯が出てくるシャワーはありがたい。やっぱり敷居とか作った方がいいかなあ?もともとはあったと思うんだけどね。
「の・ぞ・か・な・い・で・よ・ね!」と念押ししていくのは覗けと言うことなのか?もちろんのぞきなんてしないけどね。
島上陸13日目
昨日で海賊が使用していたと思われるエリアの調査は完了したので今日はそれ以外のところの調査をすることにした。まず開いていない扉からだ。
扉には魔力を感知するようなプレートが貼られているのでここに魔力を流し込めば認識して開くのだろう。プレートを鑑定してみると、登録した魔力で解錠できる、または魔力登録の際の暗証番号を入力すると出ている。
試しに自分とジェンが手を当ててみたけど、「登録されていません」とエラーになってしまう。まあしょうが無いだろう。
暗証番号は全部で8桁のようなんだけど、3回間違えるとそれ以上受け付けなくなってしまった。解除まで3日と出ているんだけど、何回も間違えたら完全に受付出来なくなってしまいそうだな。もし解除出来るなら海賊もやっていただろう。
「魔力認証ってたぶん指紋認証とか声認証みたいなものと同じだよね?」
「そうだと思うわ。魔力の波長のようなものに反応する感じだから、魔力が一致しないと開かないと言うことになるわね。」
「これって解除する方法はあるのかな?登録されている魔力を再現できればいいけど、そもそも魔力を調整って出来るのか?」
「普通に考えたらできないでしょうね。それが出来るのならそもそも鍵として使えないわ。
地球でもカード式の鍵はそう簡単には破れないわよ。もしできるとしてもそういうことに詳しい人に聞かないと無理でしょうね。教えてもらえるかは別にして。」
「あとは鍵のようなものを見つけるとか、パスワードを見つけるという方法だけど、あるとしてもこの扉の中だよなあ・・・。
暗証番号も間違え続けたら完全にだめになる可能性もあるし、解除までの時間を考えると8桁の番号とか見付けることは不可能だよ。」
「まあそのための鍵だしね。小部屋のある部屋の入口が開いていたのはもともと開いていたと考えた方が良さそうね。」
とりあえずなんかいい方法が見つかるまでは放置するしかないだろうなあ。魔道具で魔力を調整する道具とかってあるのかね?
昼食の後、入ってきた入口が気になっていたので確認してみることにした。土魔法で加工できる部分を除いていくと、土魔法で加工できない部分が引きちぎられたように残っていることが分かった。
「やっぱりここは元々入口ではなくて、通路の途中だったと言うことかな?ということはここから西にも地面があったと言うことなんだろうか?地殻変動?それとも戦争で吹き飛んだ?」
「どうなのかな?戦争で古代文明が滅びたという話があるから、その可能性が一番高いと思うわ。」
「施設が残っていることから考えると、最低限なにかの防御システムでも働いたのかねえ?」
さらに調べていると、なにやらケーブルのようなものが途中で断線されていた。
「壁の中に埋まっているって事は、もしかしたらこれが魔素を供給するケーブルなのかな?」
ケーブルは腐食が進んでいるんだけど、加工出来ない壁付近のケーブルは大丈夫そうだ。材質を調べてみると、銅、アルミニウムがメインで、その中にミスリルやいくつかの金属が若干含まれている。
「魔獣石から魔符核に魔素を供給するとき、銅をメインとしたケーブルで接続されているけど、配線でもかなり効率が落ちて魔素が無駄になっているって言っていたよね?」
「ええ、伝達能力の高い配線はいろいろと検討されているみたいだけど、なかなか難しいと言っていたわ。」
「もしかしたらこのケーブルだと効率が高いかもしれないよね。持って帰って再現出来ればいろいろと役に立つかもしれないよ。
風化が進んでいる端の方は組成が変わってしまっているから、古代遺跡で発見されたケーブルは錬金魔法でも再現出来なかったんじゃないかな?」
とりあえず綺麗な部分を切り取って収納しておく。
「魔素の伝達についてはこのケーブルというのは理解出来るけど、問題は魔素の供給源だよね。空気中の魔素を効率よく取り込むシステムでもあるのかなあ?」
「今までの調査された遺跡でもそういうものは見つかっていないみたいだし、可能性は低いとは思うけど、どうやって魔素を供給しているのかは気になるわよね。」
古代遺跡の調査からも空気中の魔素を取り込むだけで大型の魔道具を動かす技術はなかったらしく、魔獣石を核としての補助的な使い方がメインだったと言われている。このせいで、古代遺跡は劣化防止の魔法が切れて風化してしまっているらしい。それなのにここはどう考えても劣化防止の魔法が維持できているようにしか思えない。
開いていない扉の中には入れれば何か分かるかもしれないけど、扉が開かないことにはどうしようもないからなあ。
一通り調査は終了したし、やるべきことはやってしまった。迎えが来るまではまだ時間があるので、それまではのんびりするかな?外はそれなりに寒いんだけど、建物の中は快適な温度なので過ごしやすいんだよね。
港の一部は砂浜になっているんだけど、ジェンはなぜか水着になってくつろいでいる。いつの間に用意していたんだ?服が一式入った袋の中に入れていたみたいで何を持ってきていたのかはさすがにわからなかった。
「何やってるんだ?」
「せっかくだからバカンス気分を味わってる。」
「まあいいけどさ。」
デッキチェアみたいなものとテーブルを作って南国風なイメージでくつろいでいる。ビキニじゃないからまだいい方だけど、仰向けになっているので胸の膨らみがかなり強調されているんだけど・・・。
もちろん見ないようにしているんだけど、やっぱり気になってしまうのはしょうが無いよね。ジェンももう少し控えめにしてよ・・・。
さすがにこのままだとちょっとまずいので気分転換にガラスでグラスを作り、ジュースと果物で飾り付けしてトロピカルジュースみたいなものを作ってあげるとかなり喜んでいた。
島上陸14日目
できる範囲の調査は終わってしまって特にやるべきことはないので、今日は朝からのんびりしている。1時半頃に起きてからベーコンエッグとパンと珈琲で朝食をとる。
「ほんとここを拠点にしたいよなあ。」
「もっと近い場所だったらよかったのにね。」
とりあえず明日にはこの島を出るので、いろいろと準備しておかなければならない。今晩まではここに泊まるけど、明日の朝一で隣の島に移動しておいたほうがいいだろう。
まずはせっかく造った拠点は持って行くことにしたのでそれの回収からだ。塀と建物は地面部分で切り取り、収納バッグに入れてみる。出してみるとちゃんともとの形で拠点が出てきたので野営時にはかなり便利になりそうだ。
荷物がいっぱいになるようだったら捨てたらいいから気が楽だ。まあそれ以前に土魔法がもっとうまく使えるようになったら運ぶ必要もなくなるかもしれないけどね。残った穴は少しならしておけば自然に分からなくなるだろう。
このあと崖の階段を取り除きながら入ってきたところを前のように加工してわかりにくくしておく。これで自分たちのように調査をしない限りはそうそう見つかることはないだろう。
とりあえずやることは終わったので、午後からは遺跡内で飛行の訓練をしてみる。部屋の中だと狭いし、外だと人目があるし、なかなかできるところがなかったからねえ。外だと風があってバランス崩しやすいし・・・。
なんとかゆっくり歩くくらいのスピードで移動はできる様にはなったけど、もっと速度を上げられないと意味がないな。
「遅いわよー!」
ジェンは普通に歩くくらいの速度で移動ができる様になっていた。せめて車と同じスピードで移動できるようになるのが目標だ。あとは持続時間も問題だけどね。
夕食はステーキをメインに野菜炒めなどをたっぷりと食べる。食事の後はシャワーも浴びてさっぱりしてからあらかたの荷物を収納しておく。
島上陸7日目
雨は昨日の夜に上がっていたので今日は調査が出来そうだ。まずは海岸近くに行って確認してみると、特に岩盤のような物はなく地中の確認が出来た。そこから拠点に向かって調査していくと、途中から岩盤のようなものがでてきた。普通の岩だったら透過出来るのでかなり堅いものがあると言うことなんだろうか?
まずは大まかに調査していこうと言うことになり、50キヤルド間隔くらいで地下の探索をやってみる。深さ10キヤルドくらいのところで堅いものがあってその先が探知できないところが結構ある。とりあえずその堅いエリアを把握していこうと言うことになり、地図の上に地下の状況を記入していく。
森以外は二人で手分けして島の全体を調査してみると、島の4割くらいに固い岩盤のようなところがあった。この岩盤の中に空洞でもあるのかなあ?ただ断崖の近くはうまく調査出来ないのは仕方が無いか。
続いて間隔を狭めてから岩盤のような位置を細かく調査していったんだけど、さすがに時間がかかって、島全体の調査をするのに3日ほどかかってしまった。
一通りの調査が終わると、西の草原の方に通路のようになっているところがあった。山や森を後回しにしていたらもっと早く発見できていたかもしれないけど、まあしょうがない。
「この通路みたいなところをたどっていけば入口があるかもしれないね。」
「ええ、断崖付近は分からないけど、まっすぐに伸びているから途中まで分かれば位置は予想出来そうだわ。」
おおよその位置を確認したあと、ロープを身体に縛り付けてから土魔法で階段を作りながら降りていく。ただ予想された深さのところまで降りても特に入口らしきものはみつからない。とりあえず掘ってみるしかないか?
土魔法を使って掘り進もうかと思ったらすぐに壁のようなところが崩れて中に空洞が見えた。どうなっているのかと穴を広げていくと、中が思ったよりも広い空間になっていた。もしかしてわからないように隠されていたのか?
「み、みつけた~~~!!」
つい声が出てしまった。
「えっ!!!ほんとに!!!すぐ行くからロープ固定して!!!」
「ちょっとまって!!」
ジェンにも聞こえていたみたいだけど、このまま降りてこられても困る。まずは壁を取り除いてから足場が出来たところでジェンに来てもらう。
「うわ~~~っ!!!間違いなさそうね!!!」
崖の中腹くらいに穴が空いていて踊り場のようになったところの奥にドアがあった。かなり朽ち果てているんだけど、中を覗くと通路が奥に延びていた。
「海賊の隠れ家かどうかまではまだ分からないけど、何かしらあるのは間違いなさそうだね。」
「それじゃあ入ってみる?」
「うーん、入りたいのは山々だけど、もう結構遅い時間だし、入ってしまったら調査にどのくらいかかるか分からないから明日出直そうよ。」
「え~~~!!!ここまで来ているのに明日にするの?」
「中に魔獣がいることも考えられるし、休憩出来るようなところかも分からないからね。その分明日は夜明けにすぐにやってこようよ。」
「分かったわよ。今日は早く寝ましょう。」
簡単に入口をふさいでからロープを登る。明日のことを考えながら拠点に戻り、夕食をとる。二人でどんなところだろうと興奮しながら話をして、早々に眠りに就いたんだけど、興奮してあまり寝られないので魔法を使って眠りに就くことになった。
島上陸10日目
予定通りに起きてから簡単に朝食を済ませて昨日の場所へ。設置されているドアは錆びてぼろぼろになっているせいでドアを開けようとしたらドアごと外れてしまった。
中からはこもった空気ではなく、風かすかに感じるので酸欠などの心配はなさそうだ。一応魔道具で安全君という検知器のようなものも持ってきているのでなにか危険なものがあれば分かるだろう。空気中に酸素というものの存在は分かっているようなので、それが少なくなるとランプが付くというものだ。
あと毒ガスと言われるものも一応関知するらしい。鉱山などではアラームタイプがあるらしいけど、さすがに冒険者には危険なのでライトで知らせるタイプを買っている。
通路を少し進むと、壁や天井の質感が変わって通路のようになる。しかも照明のようなものが付いていて、通路が明るい。罠に注意しながらしばらく歩いて行くと、ここにも半分朽ち果てたドアがあった。
その手前の壁にスイッチがあるんだけど、どう考えても電気のスイッチみたい。罠の確認をしても特に異常もないのでスイッチを切り替えると電気が消えた。
ドアを開けて中に入ると、少し広めの部屋になっていて、テーブルなどが置かれていたのか朽ち果てた木材の破片などが転がっていた。割れたお皿などもあるので一応生活していたような感じだ。その奥にも扉があったけど、こっちのドアもかなりボロボロになっていた。まあ潮風に晒されていたら劣化も早いよな。
ドアを出ると真っ暗な通路がつながっていた。ドアの横にスイッチがあったので確認してから切り替えると通路に電気がついた。
通路はその先で右に曲がっており、徐々に下に下っている。注意しながら進んでいくと、通路の先に明かりが見えてきた。
「外?」
慎重に通路を進み、外を見ると、そこは港のようになっていた。
「ここか!!」
もし誰かいたら困るので小さな声で話す。
「イチ、やったね。間違いなく海賊の拠点よ!!」
ジェンもかなり興奮しているようだ。
索敵をしても何も反応がないので、あたりを確認しながら扉を出る。かなり明るいので外に出たのかと思ったんだけど、まだ洞窟の中だった。天井部分にかなり明るい照明のようなものが付いているために外にいると思ってしまったようだ。
通路を出たところの南側が湾のようになっていて水があり、埠頭が4つあって船が止められるようになっている。その奥には壁になっているんだけどそっちの方に出入り口がありそうな感じだ。埠頭と今出てきた通路の出入り口がある北の壁の間は結構広い広場になっていて、こっちの壁にはいくつかの扉があった。
「外かと思ったらまさかの室内とは思わなかったよ。正直外にいるのと変わらないくらいの明るさだよね。」
「ええ、それだけの魔素が補給されていると思うけど、ずっと補充され続けているというのはどういう原理なのかしらね。いまだに魔素を取り込む効率的な魔道具は開発されてないし、古代遺跡からも発見されてないわよね。」
たしかに魔素の供給源は気になるな。
「まあとりあえず魔獣とかの心配はなさそうだ。古代遺跡なので魔獣が出ないような対策はしているのかもしれない。もちろん注意は必要だけど、すごく危ないという感じではなさそう。」
湾になっている埠頭の先の壁に沿って回り込むように通路になっているんだけど、ちょうど真ん中辺りは通路がないのでそこが出入り口なのかな?
「おそらくあそこが外に出る水路だと思うけど、外側に出口のようなところとかあったかな?」
「船で周りを見たときはなかったから、うまく偽装されているって事なのかしらね。」
湾の壁に沿ってある通路を歩いて行くと、行き止まりになっていた。水路は外につながる感じになっているんだけど、どういうことだろうと調べてみると、壁のところにスイッチらしきものを発見する。
「なんかスイッチがあるけど・・・どうする?とりあえず罠はなさそうなんだけど、正直言ってどうなるかは分からないよ。」
「とりあえず注意して押してみる?途中にあったスイッチも単に電気を付けるだけのものだったし、普通に生活で使っているものみたいだから大丈夫じゃない?」
「何か起きても困るので警戒はしておいてね。」
周りを警戒しながらスイッチを入れてみると、壁が上に上がっていき、外の風景が見えてきた。
「おお~~~、すごい!!やっぱり隠し通路だったのか。」
そこから先は岩場のような感じの通路になっていたので出てみると、出てきたところが岩場になってしまった。
「えっ?外に出たら戻れないの?」
「イチ、どうかしたの?」
そういう声と共にジェンが岩の中から現れた。
「うわっ!!」
まじでびびった・・・。
「どうしたの?」と不思議そうな顔をしていたが、後ろを振り返って驚いていた。
「えっ?今出てきたところよね?どういうこと?」
そう言って岩に触ろうとすると手が岩の中に埋もれていった。そのまま姿が見えなくなったんだけど、すぐに顔を出してきた。
「うっわー!!!おもしろいわね。単に外からだと岩に見えるように投影している感じみたいね。光魔法か何かかしら?」
入るときは特に障害もなく中には入れるし、中からだと普通に外は見ることができた。なんかすごい技術だな。もしかして海賊達は遭難とかしてここに流れ着いて発見したのだろうか?きっとそのときは扉が開いていたのだろう。外にも岩場に隠れるようにスイッチが設置されていて、ボタンを押すと入口を開閉出来るみたい。
先ほどの出入り口のところまで戻ってから改めて確認してみると、左右の壁際にそれぞれ大きめの扉があって、真ん中付近に5つの扉があった。その中の一番左が先ほど出てきた通路だ。
まずは一番左側の大きな扉に行ってみたけど鍵がかかっていて開けることができなかった。鍵穴はなくて、扉の横にプレートのようなものが埋め込まれているので、もしかしたらここでカードとかで認証させたら開くとか言うやつなのかもしれない。
その隣は入ってきた通路で、よく見てみると壁にドア部分がはまっているようだった。ドアの横には同じようにプレートもあるので、開いた状態で壊れてしまったとかなのかな?
その隣には少し大きめの扉があるけど、ここも鍵がかかっていた。さらにその隣に少し小さなサイズの扉が3つあって、一番右の扉は開いていたけど、他の2つは鍵がかかっていて開けることができなかった。
「通路は結構長そうなので先に他の扉を確認してからこっちを見てみよう。」
「わかったわ。」
一番右側の大きな扉は開いたままになっていて、中は大きな倉庫のような空間になっていた。20m×50mくらいありそうだ。朽ち果てた木材や布団のようなものが散乱しているので居住区にしていたのかもしれない。
「ここは居住区だったのかな?こっちの区画は倉庫として使ってたのかな?この木箱は食べ物関係でも入れていたみたいだけど、もう形も残ってないね。」
「まあ時間を考えたら仕方ないわね。こっちの箱はお酒かしら?」
「ラベルは読めないものも多いけど、瓶にも刻印されているから何となくは分かるね。お酒関係と言うことで間違いなさそう。」
いくつか割れているものもあるんだけど、それでも200本くらいはありそうだ。
「これってまだ飲めるのかな?」
「うーん、どうだろう。何百年前のお酒がと言う話もあるから飲めるものもあるかもしれないわよ。でもさすがにこの量は収納バッグに入るかしら?」
「まあ無理だったら持って帰れるものだけ持って帰ってもいいし、それは後で考えよう。」
その奥にも同じような扉になっているんだけど、こっちには鍵がかかっていて開けることができなかった。地上で調査したときにはこの奥にもかなりの広さの空間がありそうなんだけどね。
試しに壁を土魔法で壊そうとしてみたけど、強化されているのか、全く崩れなかった。何かの付与魔法でも施されているのかもしれない。
最後に先ほど開いていた真ん中付近の扉の中に入ってみる。スイッチのようなものがあったので、おそらく大丈夫だろうと押してみると通路に明かりが付いた。
一番手前にある扉の中に入ると、広さは10m四方くらいとかなり広い部屋になっていた。
「ここって台所なのかな?これはコンロだよね?こっちは冷蔵庫みたいだけど・・・中はもう何が入っていたのか分からないな。においももうなくなっているよ。」
冷蔵庫の中はひんやりしていてまだ動いているんだけど、中に入っていた食糧と思われるものは黒い塊になってこびりついていた。いくつか瓶に液体が入っているんだけど、さすがにちょっとやばそうな感じ。コンロを見てみるとスイッチを入れるとちゃんと火が付くので今でも十分使えるみたい。
「この辺りが動いているってことはやっぱりどこからか魔素が供給されているって事だよね?」
「うーん、コードみたいなものが壁から出ているからどこかにあるんでしょうね。でもこんなに長い間魔素を供給出来る魔獣石なんて無理よ。あと考えられるのは魔素を集める魔道具って事になるわね。」
「だけど古代遺跡でもそんなものは見つかっていないよね?あくまで補助的なレベルのものだけだったように思うんだけど。」
「そうなのよね。古代文明がそれを作っていたとしたら何かしら痕跡があっても良さそうなのよね。
ま、そうは言っても考えても分からない事だし、使えるというならそれでいいんじゃない?」
隣の部屋はさらに広い部屋で、食堂のような感じがする。テーブルとかが置いてあるけどほとんどが朽ち果てているのは仕方がないだろう。
その隣にはシャワールームがあって、こっちもちゃんと水も出るようになっていた。魔道具からの給水なので配管がさびるということもないのが救いだね。その横にはトイレルームもあり、水も流れるようになっていた。
「これだけそろっているんだったら、わざわざ上の拠点でなくてこっちに移ってきても良さそうだね。」
「安全に問題なさそうだったらそれはありかもしれないわ。」
そこからさらに奥につながってる通路にはホテルの廊下のように扉が左右に並んでいる。一番手前の扉を開けようとしたら鍵がかかっていた。反対の扉に比べるとこの扉はちょっと頑丈な造りになっている。
反対の扉の鍵はかかっていなかったので、注意しながら中に入ってみると、ベッドや机と思われる残骸が残っていた。個室になっていたと言うことなのかな?
「さっきの倉庫も居住区みたいだったけど、こっちは海賊の中でも上のクラスの人たちが住んでいたのかもしれないね。」
「まあ海賊の中でも全員が船に乗って戦いに行っていたわけでもないでしょうし、でもそう考えると生き残りっていなかったのかしらね?」
「どうなんだろう。生き残りがいたらこの島のことは分かっていてもおかしくないんだよねえ。船がなくても移動しようと思えば何とでもなったはずなんだよねえ。」
順番に部屋を見ていったけど、このあとは鍵のかかった部屋はなく、造りはだいたい同じ感じだった。2部屋だけベッドに寝たまま亡くなったのか亡骸があったくらいだ。見た瞬間はびっくりしたけど、ほとんど風化しているのでまだ良かったよ。
一通り見た後、最初の鍵のついた部屋に戻る。魔法の鍵ではなく、通常の鍵だけだった。特に罠もなさそうなので開けようかと思ったけど、鍵がさび付いていてどうしようもない。しょうがないので力業でドアを壊すことにした。
木の部分が腐りかけていたこともあり、簡単にドアは外れてくれた。部屋の中には大きさ的にちょっと豪華だったと思われるベッドと机があり、机の椅子には遺体が座っていた。
遺体の主は机に覆い被さる感じで亡くなっているみたい。ふと見ると椅子のそばには5cmくらいの紫色の玉が転がっていた。この人物が持っていた物だろうか?宝石という感じではないんだけど、魔道具なのかな?
名称:道しるべの玉(良)
詳細:現在地を表示する。10個までの地点を登録することができる。転移魔法を使うときの道しるべとなる。必要魔素がある場合に限り、1回のみ登録地点に転移することができる。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:現在地表示-2、地点登録-2、転移-3(使用不可)
「おお~~~!!」
「ど、どうしたの?」
「いや、これ、これ。鑑定してみて!!」
「・・・・。
え?これって・・・魔道具の一種?説明に書いているのが本当なら、転移魔法を使うのに必要なものってことなの?そして1回だけ転移ができたってことは、物語に書いていたとおりこの転移でこの島に戻ってきたと言うこと?」
「多分物語で書かれているとおりだったんだと思うよ。本人は意識していたか分からないけど、逃げたいと思ってここに戻ってきたと言うことなのかもしれないね。」
「一回だけ有効ってなっているからもう使えないのね。」
「まあ何回も使えたらいいけど、さすがにそれは無理だったぽいね。
あと、おそらく経緯度の拠点となるところに魔道具が置いていてそれを受診するシステムなんだと思うよ。地球で言うGPSの受信機のようなものかな?衛星のようなものがあるのかは分からないけどね。
転移魔法がどんなものなのか分からないけど、もし覚えたらこの装置で登録した場所であれば転移できるって言うことなのかな?」
「転移魔法って簡単に言ってもやっぱり空間移動って考えるとそんなに単純ではないはずだからね。」
玉に魔素を流してみると、位置が表示された。
「古代ライハン語で『とい、めい、うら』の3つが書かれているね。“とい”と“めい”は経度と緯度だろうけど、“うら”はなんなんだろう?」
「普通に位置と考えたら標高とかじゃないかな?それはあとで検証してみましょう。」
登録場所と念じると、10カ所登録されていた。
「登録されているのは10カ所だね。数字を見る限りは、ここ以外の9カ所は世界中のいろいろな場所を示している感じだね。折角だからだいたいの位置を地図と照らし合わせてみようか。」
といとめいの位置を確認するときに作った地図とガイド本の地図を確認しながら位置を特定すると、5カ所は発見されている遺跡のある場所のようだけど、4箇所はまだ調査が行われていない場所っぽい。おそらく遺跡があるのだろう。2カ所は海の上となっているのは島なのか、海底遺跡なのか、沈んでしまったのかというところか?いずれ調べてみたいものだな。
ここの登録されている場所は位置的にこの部屋ではなく、港のあたりのような感じだ。後で場所を調べてみよう。
「地点の登録方法は分からないけど、下手に場所を消してしまうのもちょっと怖いから余計なことはしない方がいいよね。」
「近い場所だったら再登録も出来るかもしれないけど、どっちにしろ転移魔法は使えないから今のところは考えなくていいんじゃないかな?」
「そう考えると、このアイテムはもっとほしいよなあ。そうしたら移動がかなり楽になるのにね。」
あとは転移魔法の道しるべに使えると書いているけど、使い方がよく分からない。そもそも転移魔法も原理がよく分からないし、転移して「石の中にいる」とかなってしまうのもいやだ。そこに人がいた場合とかにでたら殺人事件だと思う。転移していい場所とかがちゃんと規定していないと怖い。
収納バッグのような感じになるとは思うんだけど、それでも転移先がどうなっているのかを確認していないところに行くのは怖すぎだよ。
他に何かないか見てみると、腰のベルトに小さなバッグが付いていた。これって収納バッグかな?収納バッグを手に取り確認してみると、「時間を過ぎたため中のものは分解されました」と聞こえてきた。
「マジかぁーーー!!」
「どうしたの?いいものでも入ってた?」
「いや、時間過ぎて中のものが消失してたよ。」
「えーーー!!」
もしかしたら中にはかなりお宝が入っていたのかもしれないけど、魔素が供給されていないので時間切れになってしまったんだろう。
「多分、この持ち主はお宝を他の人に渡さないと願っていたために消失してしまったんだと思う。」
どのくらいのお宝が入っていたのかは分からないけど、こればかりはどうしようもない。もし残っていたら結構な収入になっていたかもしれないけどね。
「残念ねえ。」
「まあお宝はなかったけど、収納バッグだけでも結構大きな収入だと考えよう。」
容量を後で確認してみようと思っていたんだけど、ふと鑑定できるんじゃないかと思い立った。収納バッグは持っていたのに今まで鑑定をするということを考えてなかったよ。せっかくなので持っている収納バッグも鑑定してみる。
名称:収納バッグ(良)
詳細:生物以外のものを収納するバッグ。収納の際に分解され、取り出す際に収納時の状態に再構成される。空間拡張により分解後の**に相当する***容量分を収納できる。重量は収納した重量を1万分の1まで軽減する。
品質:良
耐久性:良
効果:良
効力:分解、構成、空間拡張-3、重量軽減-2
名称:収納バッグ(並)
詳細:生物以外のものを収納するバッグ。収納の際に分解され、取り出す際に収納時の状態に再構成される。空間拡張により分解後の**に相当する***容量分を収納できる。重量は収納した重量を1000分の1まで軽減する。
品質:並
耐久性:並
効果:並
効力:分解、構成、空間拡張-1、重量軽減-1
残念ながら容量は解読できなかった。そもそもの概念が分からないからしょうがないか。ただやはり生物が入らないということは、収納した際に微生物や寄生虫などは取り込まれないと言うことなんだろうか?寄生虫とかが出てきたという認識もないんだけど、気がついていないだけなのかな?
机の上には本のようなものが置いてあったんだけど、かなりぼろぼろになっている。どうやら手記のようなんだけど、ほとんど読むことが出来ない。読めるところを見てみると、ヤーマン語で書かれていたので読むことは出来た。
もともと海賊だったみたいだけど、嵐にあってこの島に流れ着いたようだ。港の入口が開放されていたので中には入れたのだろう。港には船があったので、それを使って海賊行為を続けたようだ。もしかしたら古代文明の能力を持った船があったのかもしれないね。
海賊の規模を考えると全員がここを拠点として使っていたわけでもなさそうだし、いろいろと秘密がありそうだからこの部屋の人数ぐらいしかこの島のことを知らなかったのかもしれないな。
気がつくとすでに結構な時間がたっていたのでいったん拠点に戻ることにした。ここにいるとずっと明るいので時間がわかりにくい。
「今日はいったん拠点に戻るけど、明日からこっちに移動しようと思っているけどいいかな?空調システムでもあるのか、気温も安定しているし、空気もよどんでないからね。」
「ええ、どう考えてもこっちの方が快適よね。特に危険もなさそうだし。」
地上に戻ってから宝玉で現在地を確認するとうらの数値が大きくなっていた。基準はわからないけど標高みたいなものと考えて良さそうだ。転移の地点だから標高もいるよね。
せっかくなので湖に移動して収納バッグの大きさを確認することにした。水は一部のみ取り込むことはできない。湖が浅いので水魔法で持ち上げて取り込んでいく。すぐにいっぱいになるかと思ったんだけど、思った以上に入る。まじか・・・。
途中でジェンにも手伝ってもらいながらなんとか入らなくなるまで入れることが出来たんだけど、バッグの容量を見てみると26キリルとなっていた。これって3キヤルド四方くらいの容量があるってことなのか?
「結構入ったみたいだけど、どのくらい入った?」
「実は・・・26キリルだったよ。」
「26!?」
「正直価格についてはあまり考えたくないというか知られたら結構怖いことになりそう。たぶん感覚的に数千万ドールはするだろうし、オークションによっては億とか行く可能性もあるくらいだよね。あまり人前では言えないよね。」
水をすべて戻してから拠点に戻る。目的も達成できたのでかなりテンションが高い。今日はバーベキューにしようと肉や野菜を思いっきり食べる。
「お宝はダメだったけど、依頼は達成できたから50万ドールは手に入るわよね。しかも収納バッグもかなりのものだし。」
「そうだね。あまり贅沢言っても仕方がないか。お宝も本当にあったのかはわからないしね。」
「でも海賊の宝・・・どんなものか見てみたかったなあ。」
「まあこればっかりはしょうがないよ。また明日から調査をするから何か見つかるかもしれないしね。」
明日のことを考えると興奮してしまうんだけど、さすがに昨日もあまり寝ていなかったせいかベッドに入ると眠りに落ちていった。
島上陸11日目
新しい収納バッグは自分が持つことにして、普段使いのもの以外はすべてこっちに移すことにした。拠点の荷物もすべて回収したけど、せっかくなので加工したテーブルなども収納バッグに入れて行く。まあ容量は十分だからね。造った拠点についてはこの後どうなるか分からないのでまだ残したままだ。
昨日と同じように崖のところの入口へ行き、ここから調査を再開する。
「この辺りは自然の岩みたいなところはあるけど、加工されたところは土魔法では加工出来ないね。しかもむちゃくちゃ堅いから力任せでも無理そう。」
「たしか金属とか土とか土魔法で加工出来ないようにできる付与魔法があったと思うからそれと同じなんでしょうね。ただそれだと魔素がどこからか付与されているって事なのよね。」
「解除方法を知らないと穴を開けることはできないだろうけど、そもそも簡単に解除出来るものではないだろうしなあ。とりあえず壁に穴を空けて、入れない部屋に行くというのは無理って事だね。」
「それは仕方ないわよ。」
このあと地上からチェックした地図と対比しながら通路を進む。通路には明かりが付いているけど、これは通路の中に埋め込まれた魔道具のようだ。やはり魔素の供給はどこからか行われているのだろう。
途中にあった部屋には特になにもなく、海賊達が使っていたと思われる家具などの残骸だ。もともとそれほど質が良くなかったのと、海風のせいで朽ちてしまったのだろう。
港の埠頭には地球にあったような荷下ろしのクレーンとかはないけど、おそらく魔法があるせいで必要がなかったのかもしれない。天井はかなり高く、上に上がる階段もあった。階段は岩をくりぬいたように作られているので特に朽ちてないので登ってみたところ、上の方にあるスペースのところにつながっているだけだった。ここに小屋とかでもあったのだろうか?
ちょっと気になって道しるべの玉で位置を調べてみると、登録されている場所がここになっていた。
「ここが道しるべの玉に登録されている場所みたい。」
「わざわざこんなところに作ったと言うことはやっぱり転移の時に何かしらのリスクとかがあったのかしらね。それか単に転移先に何かあったら転移が出来ないから人が来にくいようにしていたのかもしれないわね。」
「たぶん人がいたりものがあったりすると転移が出来ないとかの可能性が高いと思うよ。」
もしかしてと思って表示する位置について“とい”、“めい”、“うら”をそれぞれ個別に念じてみると、数字が2桁ではなく、小数点以下の数値も出てきた。
「やっぱり登録地点はかなり細かい位置まで登録されているみたい。それぞれ個別に確認したら細かい数字が出てきたよ。」
「それはそうだよね。あんなおおざっぱな数値で地点を確定出来ないわ。」
港の水路の出口に行って調べてみると、扉を開けたときは幻影だけでなく、風などの侵入も塞いでいるようだった。風魔法と光魔法なのかなあ?壁の方を見てみると刻印がいくつか描かれていた。刻印に使われている文字は何の文字か分からないけど、古代の魔道具などに使われている文字と同じ感じだ。
外から見ると全くわからないし、外に出たところにある岩場も自然な感じなので遠目で見たらここに入れるとは思わないだろう。
「あれ?波が打ち寄せてきているのに、波が建物の中に入っていないわね。」
よく見てみると、扉のある位置で波が一気に収まってそこから先の海面は全く動いていない。実は海に見えるこれも投影したものじゃないよな?水を触ってみるとちゃんと水の感触がある。
「なにかの仕掛けがあるんだろうね。あれ?これって、海水じゃないんじゃない?」
水を触ったときになんか変な感じがしたのでなめてみるとしょっぱくなかった。
「魔法で塩分をここで遮断しているって事なのかな?それで中は潮の香りがしなかったのか。港に海藻とか岸壁に貝殻とかもないので変だと思ってたんだよね。」
どんな管理をしているのか分からないけど、埠頭の海岸がかなり綺麗だったから何かしらの力が働いているとは思ったけど、まさか海水まで入っていないとは思わなかったな。船がここを抜けるときにも船についた異物も取り去られてしまうのかもしれないね。
埠頭には船などもないので特に探すものはない。もしかしたら水の中に何か沈んでいるかもしれないけど、正直潜って探すには厳しすぎるんだよね。水魔法のレベルが上がったらモーゼのように海面を割ることができるのかねえ?
そのあと倉庫に行ってからお酒関係を収納していく。割れているものもあるので割れていないものだけを選んだんだけど、全部で185本あった。ワインやブランデー、ウイスキーなどいろいろなものがあるんだけど、鑑定でカビが生えていたり、腐っているものを除くと166本となった。ただここまで古いものがちゃんと飲めるのかどうかはわからない。
「お酒ってそんなに腐るものではなかったよね?とりあえず全部持って帰ろうか。」
「他の人に聞いてからどうするか考えましょう。ちょっと飲んでみたいしね。ワインとかはもしかしたらダメかもしれないけどブランデーとかの蒸留酒なら大丈夫なはずだわ。」
割れた瓶や中身がダメになったものは錬金でまとめて一つの固まりにしておく。こういうときはかなり便利だな。木材や布団と思われる残骸などはいったん収納バッグに入れておいた。あとでまとめてどこかで処分しよう。
続いて小部屋になっている部屋を調べていく。台所の機能は動いているけど、冷蔵庫などかなり汚れがひどいので浄化魔法をかける。さすがに魔法なので油汚れも一発だ。まあ普通の人はここまできれいにできないだろうけどね。
調理道具や食器なども結構あったんだけど、調理道具は鉄製のものがほとんどだったのでさびて使い物にならなくなっていた。使えないものは錬金でインゴットにしてまとめておく。皿なども壊れていないもの以外はゴミとしてまとめておいた。
食堂もテーブルはほとんど朽ちてしまっている。食堂の片隅が武器置き場になっていたようなんだけど、すでにボロボロのものばかりだ。一応鑑定してみるが、もともと低レベルのものばかりだったみたいで使えるものがない。しょうがないのでこれもインゴットにしておく。なんか収納バッグにゴミばっかり貯まっていくなあ・・・。
このあと各部屋に入って調べていくけど、大体の家具はかなりボロボロになっていた。部屋の中を浄化してから机の引き出しやベッドの下などを見ていくと、ちょこちょこ魔獣石や宝飾品などがでてきた。さすがに部屋の数も多いので思った以上に時間がかかってしまう。
収納して分別できればいいんだけど、さすがにそれはできないので探すのは一つずつやっていくしかない。まあもともとそんなたいしたものがあるとは思えないんだけどね。確認の後はすべて取り込んで部屋を浄化していく。
さすがに部屋数も多いし、見るだけでも結構かかるので、調査は1日で終わらなかった。使える家具はすべて食堂に移動させておく。いくつか使えそうなテーブルやベッドもあったので助かった。とりあえずしばらくはこの部屋を拠点としよう。
台所は大人数用に作られているのでかなり使い勝手がいい。追加で必要な調理用具はインゴットにした鉄から造った。錬金を覚えてきて正解だったよ。
ここだと特に臭いも気にしなくて良さそうなので気が楽だ。ゆっくりと食事を楽しんだ後は、お茶を飲みながら持ってきたデザートでまったりとくつろぐ。
「ここってどう考えても古代文明の遺跡だよね?」
「そうね。どう考えても今の文明よりも高度な魔道具が使われているからね。ただ古代文明の遺跡は稼働しなくて風化が進んでいるという話だったと思うけど、なぜこの遺跡は機能を保っているのかしら。」
「普通に考えると魔素の供給がなくて朽ち果てていくんだろうけど、ここはどこからか魔素が供給されているんだよね。魔獣石を作る技術が一部できあがっていたのかねえ?」
とりあえず現段階ではなんともいえないけど、海賊が拠点にしていた気持ちも分かる。どう考えても空調管理されているし、魔道具も便利だからねえ。
島上陸12日目
この日も朝から家捜しだ。全部で50部屋近くあったので時間がかかったのはしょうがないけど、なんとかすべての部屋の確認を完了する。特に隠し扉などもなかった・・・と思う。
収納していた木やごみなどの残骸関係は地上で焼いてしまうことにした。まずは木片関係を取り出して魔法で粉砕していく。すると中から装飾品が少し見つかった。どこかに隠していたのかな?
他の島から見えても困るので、日が落ちた後で火魔法を使って一気に焼く。何回か魔法を連発すると思ったよりも早く炭になってくれたので助かった。そこまで煙も出ていないと思う。
残った灰の中を調べてみると溶けた金属が少し見つかった。金属は金みたいなのでまだ装飾品とかがあったのかもしれない。まだ木の中に隠し場所とかがあったんだろうなあ。ダイヤとかあったら燃えてしまったかもしれない。
結局手に入れたのは魔獣石が126535ドール、指輪や腕輪などの宝飾品が32個と溶けた金だった。まあこれだけでもそれなりの収入だから労力以上の利益はあったと思っておこう。宝飾品は特に気になるものもなかったのでどこかでまとめて引き取ってもらうかなあ?
部屋もすべて綺麗になったし、気分的にもすっきりだ。シャワールームが分かれていないので交代で入らないといけないが、それでも綺麗なお湯が出てくるシャワーはありがたい。やっぱり敷居とか作った方がいいかなあ?もともとはあったと思うんだけどね。
「の・ぞ・か・な・い・で・よ・ね!」と念押ししていくのは覗けと言うことなのか?もちろんのぞきなんてしないけどね。
島上陸13日目
昨日で海賊が使用していたと思われるエリアの調査は完了したので今日はそれ以外のところの調査をすることにした。まず開いていない扉からだ。
扉には魔力を感知するようなプレートが貼られているのでここに魔力を流し込めば認識して開くのだろう。プレートを鑑定してみると、登録した魔力で解錠できる、または魔力登録の際の暗証番号を入力すると出ている。
試しに自分とジェンが手を当ててみたけど、「登録されていません」とエラーになってしまう。まあしょうが無いだろう。
暗証番号は全部で8桁のようなんだけど、3回間違えるとそれ以上受け付けなくなってしまった。解除まで3日と出ているんだけど、何回も間違えたら完全に受付出来なくなってしまいそうだな。もし解除出来るなら海賊もやっていただろう。
「魔力認証ってたぶん指紋認証とか声認証みたいなものと同じだよね?」
「そうだと思うわ。魔力の波長のようなものに反応する感じだから、魔力が一致しないと開かないと言うことになるわね。」
「これって解除する方法はあるのかな?登録されている魔力を再現できればいいけど、そもそも魔力を調整って出来るのか?」
「普通に考えたらできないでしょうね。それが出来るのならそもそも鍵として使えないわ。
地球でもカード式の鍵はそう簡単には破れないわよ。もしできるとしてもそういうことに詳しい人に聞かないと無理でしょうね。教えてもらえるかは別にして。」
「あとは鍵のようなものを見つけるとか、パスワードを見つけるという方法だけど、あるとしてもこの扉の中だよなあ・・・。
暗証番号も間違え続けたら完全にだめになる可能性もあるし、解除までの時間を考えると8桁の番号とか見付けることは不可能だよ。」
「まあそのための鍵だしね。小部屋のある部屋の入口が開いていたのはもともと開いていたと考えた方が良さそうね。」
とりあえずなんかいい方法が見つかるまでは放置するしかないだろうなあ。魔道具で魔力を調整する道具とかってあるのかね?
昼食の後、入ってきた入口が気になっていたので確認してみることにした。土魔法で加工できる部分を除いていくと、土魔法で加工できない部分が引きちぎられたように残っていることが分かった。
「やっぱりここは元々入口ではなくて、通路の途中だったと言うことかな?ということはここから西にも地面があったと言うことなんだろうか?地殻変動?それとも戦争で吹き飛んだ?」
「どうなのかな?戦争で古代文明が滅びたという話があるから、その可能性が一番高いと思うわ。」
「施設が残っていることから考えると、最低限なにかの防御システムでも働いたのかねえ?」
さらに調べていると、なにやらケーブルのようなものが途中で断線されていた。
「壁の中に埋まっているって事は、もしかしたらこれが魔素を供給するケーブルなのかな?」
ケーブルは腐食が進んでいるんだけど、加工出来ない壁付近のケーブルは大丈夫そうだ。材質を調べてみると、銅、アルミニウムがメインで、その中にミスリルやいくつかの金属が若干含まれている。
「魔獣石から魔符核に魔素を供給するとき、銅をメインとしたケーブルで接続されているけど、配線でもかなり効率が落ちて魔素が無駄になっているって言っていたよね?」
「ええ、伝達能力の高い配線はいろいろと検討されているみたいだけど、なかなか難しいと言っていたわ。」
「もしかしたらこのケーブルだと効率が高いかもしれないよね。持って帰って再現出来ればいろいろと役に立つかもしれないよ。
風化が進んでいる端の方は組成が変わってしまっているから、古代遺跡で発見されたケーブルは錬金魔法でも再現出来なかったんじゃないかな?」
とりあえず綺麗な部分を切り取って収納しておく。
「魔素の伝達についてはこのケーブルというのは理解出来るけど、問題は魔素の供給源だよね。空気中の魔素を効率よく取り込むシステムでもあるのかなあ?」
「今までの調査された遺跡でもそういうものは見つかっていないみたいだし、可能性は低いとは思うけど、どうやって魔素を供給しているのかは気になるわよね。」
古代遺跡の調査からも空気中の魔素を取り込むだけで大型の魔道具を動かす技術はなかったらしく、魔獣石を核としての補助的な使い方がメインだったと言われている。このせいで、古代遺跡は劣化防止の魔法が切れて風化してしまっているらしい。それなのにここはどう考えても劣化防止の魔法が維持できているようにしか思えない。
開いていない扉の中には入れれば何か分かるかもしれないけど、扉が開かないことにはどうしようもないからなあ。
一通り調査は終了したし、やるべきことはやってしまった。迎えが来るまではまだ時間があるので、それまではのんびりするかな?外はそれなりに寒いんだけど、建物の中は快適な温度なので過ごしやすいんだよね。
港の一部は砂浜になっているんだけど、ジェンはなぜか水着になってくつろいでいる。いつの間に用意していたんだ?服が一式入った袋の中に入れていたみたいで何を持ってきていたのかはさすがにわからなかった。
「何やってるんだ?」
「せっかくだからバカンス気分を味わってる。」
「まあいいけどさ。」
デッキチェアみたいなものとテーブルを作って南国風なイメージでくつろいでいる。ビキニじゃないからまだいい方だけど、仰向けになっているので胸の膨らみがかなり強調されているんだけど・・・。
もちろん見ないようにしているんだけど、やっぱり気になってしまうのはしょうが無いよね。ジェンももう少し控えめにしてよ・・・。
さすがにこのままだとちょっとまずいので気分転換にガラスでグラスを作り、ジュースと果物で飾り付けしてトロピカルジュースみたいなものを作ってあげるとかなり喜んでいた。
島上陸14日目
できる範囲の調査は終わってしまって特にやるべきことはないので、今日は朝からのんびりしている。1時半頃に起きてからベーコンエッグとパンと珈琲で朝食をとる。
「ほんとここを拠点にしたいよなあ。」
「もっと近い場所だったらよかったのにね。」
とりあえず明日にはこの島を出るので、いろいろと準備しておかなければならない。今晩まではここに泊まるけど、明日の朝一で隣の島に移動しておいたほうがいいだろう。
まずはせっかく造った拠点は持って行くことにしたのでそれの回収からだ。塀と建物は地面部分で切り取り、収納バッグに入れてみる。出してみるとちゃんともとの形で拠点が出てきたので野営時にはかなり便利になりそうだ。
荷物がいっぱいになるようだったら捨てたらいいから気が楽だ。まあそれ以前に土魔法がもっとうまく使えるようになったら運ぶ必要もなくなるかもしれないけどね。残った穴は少しならしておけば自然に分からなくなるだろう。
このあと崖の階段を取り除きながら入ってきたところを前のように加工してわかりにくくしておく。これで自分たちのように調査をしない限りはそうそう見つかることはないだろう。
とりあえずやることは終わったので、午後からは遺跡内で飛行の訓練をしてみる。部屋の中だと狭いし、外だと人目があるし、なかなかできるところがなかったからねえ。外だと風があってバランス崩しやすいし・・・。
なんとかゆっくり歩くくらいのスピードで移動はできる様にはなったけど、もっと速度を上げられないと意味がないな。
「遅いわよー!」
ジェンは普通に歩くくらいの速度で移動ができる様になっていた。せめて車と同じスピードで移動できるようになるのが目標だ。あとは持続時間も問題だけどね。
夕食はステーキをメインに野菜炒めなどをたっぷりと食べる。食事の後はシャワーも浴びてさっぱりしてからあらかたの荷物を収納しておく。
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