【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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33. 異世界250日目 宝探し

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33. 異世界250日目 宝探し
 朝準備をしてから港に行き、ガバナンさんの船で出発。ここから1時間ほど船を走らせて、目星をつけた島の隣の島に上陸する。あくまでこの島が目的の島と言うことで話しておいた方がいいという判断だ。島の大きさは両方とも変わらない感じ。

「岩礁の位置もわからんので、これ以上は近づけん。すまんがここからはボートで渡ってくれ。」

 そう言ってゴムボートのようなものを海面に下ろしてくれた。

「漕ぎ方は分かるか?」

 ボートの中にオールが置いている。

「風魔法で動くので大丈夫です。」

「わかった。ボートは流されないようにしておいてくれ。出来れば陸に揚げてくれていると助かるな。
 15日後の3時には迎えに来る。シケで来られない場合はシケが過ぎたらすぐにくるつもりだ。そのあとは5日おきだ。日にちと時間は間違えないようにな。」

「「分かりました。」」

「ああ、あと今朝捕れたばかりの魚だ。一応血抜きはしているが、そっちでやり直した方がいいだろう。生で食べるなら早めに食べろよ。」

「ありがとうございます。」

 そういって今朝とれた魚を数匹渡してくれたので、あとで収納バッグに入れておこう。
 ちなみに魚は生きたまま入れられれば一番いいんだが、収納バッグには生きているものは入れることができないようになっている。安全装置なのかどうかは不明だけど、どういう理屈か生き物と認識しているものは入らないようになっている。
 ただおそらく細菌とかは収納されていると思うので、その辺りの区別についてはよく分からない。死ぬと魔素が出なくなるとか言われているので、魔素をまとっているとかいうのが基準になっているのかもしれない。収納するとおそらく細菌とかも死んでしまうので、消毒とかにはもしかしたらいいのかもしれないね。


 島に渡ってガバナンさんを見送ったあと、再びボートに乗って隣の島に移動する。島までは200mくらいなので風魔法を使って移動するとすぐに到着できた。

 島の近くに行くと波が高くなって危ないんだけど、タイミングを見て一番低そうな断崖の下の岩場に上陸。ボートは収納バッグに入れておく。

「この断崖を登っていかないといけないけど・・・とりあえず土魔法で出っ張りを造りながら行ってみようか。」

「それしかなさそうね。重量軽減の魔法を使えば結構楽に行けるかな?」

 とっかかりがあるところはジャンプしながら登っていく。重量軽減魔法も最大まで使うと身体の重さをほとんど感じないので思ったよりも楽だった。ただ高くなってくると落っこちそうになるのが怖かったけどね。


 地図と船から見た感じでは、島の大きさは南北に2メヤルド(2km)、東西に1.5メヤルドくらいの卵形になっている。なので島の外周は5メヤルドくらいだろう。断崖は30~50キヤルドくらいありそうな感じだ。

「もっとごつごつしたところかと思ったけど、思ったよりも平坦な感じだね。岩場や小さな森のようなところもあるとは思わなかった。」

 島の周りは断崖なんだけど、テーブルマウンテンのように断崖の上は比較的平らなスペースとなっていた。北側に少し高くなっている岩場、南側に山とは言わないくらいの丘がある。その間が比較的平坦になっていて北半分は草原、南半分は森という感じで、島の周りは岩場だ。南方向の森はそこそこ高い木々も見えるので、森の向こうがどうなっているかは分からない。

「こんな高台の島の割には木々が結構茂っているわね。どこかで水とかでも湧いているのかしら。」

 索敵で魔獣を探してみると、森の方はやはりそれなりに多いけど、岩場や草原の方はそんなにいない印象だ。

「魔獣のレベルは並~上階位くらいかなあ?視界に見える魔獣だけは先に狩って拠点作りかな。」

 まずは島の少し東寄りの岩場付近に場所を決める。森にも近いけど、まあ魔獣のレベルを考えると問題ないだろう。
 地面に直径10キヤルドくらいの円を描き、ジェンと二人でその線に沿って高さ2キヤルドくらいの壁を作っていく。硬化しないと意味がないので思ったよりは時間がかかってしまった。若干外側に反りを造っているので、壊れる場合は外に倒れるので大丈夫だろう。
 途中襲ってくる魔牛や大角兎を倒しながらひたすら拠点作り。今の自分たちにはこのレベルの魔獣であれば不意を突かれなければ十分に倒せるので正直いい食料という感じでしかない。

 壁ができると、その手前には使った土の分の穴ができるので、高さ2.5m位の壁となっている。そこまで強そうな魔獣もいないのでこれである程度は防ぐことができるだろう。

「入口を作ると面倒だし、魔獣の対応も考えないといけないから無くてもいいよね?」

「ええ、簡単な足場さえあればこのくらいだったら簡単に飛び越えられるでしょ。」

 最終的にはすべて塀で囲うつもりだけど、とりあえず中の作る材料を運び込むためまだ一部は完成していない。あと地面の高さの数カ所に小さな穴を開けて排水もできる様にしておく。雨が降ったら水がたまって堀みたいになるかな?


 続いて塀の中に4キヤルド四方くらいの広さで高さ300ヤルドくらいの土台を作り、高さ2キヤルドくらいの建物を作っていく。こっちの壁は強度を見てから厚さ30ヤルドくらいの薄い感じで作っていく。中はベッドと荷物置きに使うだけなのでこれだけの広さがあれば十分だ。

「とりあえず広さはこのくらいかな?とりあえずこのくらいじゃないと屋根とかの強度が心配になってくるからね。」

「まあ基本的に寝るだけだしね。食事は外でする感じなんでしょ?」

「そのつもりだよ。それじゃあ、ちょっと狭くなるけど真ん中に壁を作るよ。」

 さすがにお金の問題もあるから宿では同じ部屋で生活しているけど、仕切れるのであれば部屋は仕切った方がいいよな。

「せまくなるからやだ。このままでいいわよ。仕切りはいらないからね。」

 有無を言わせない圧力を感じるので素直に従うことにした。まあジェンがいいなら問題ないけど、普通は女性の方が仕切りを作ろうとするんじゃないのか?

 屋根は土魔法で10ヤルドの薄い板を作り固定しておく。これで雨は防げるだろう。厚さはないけど、結構強いので簡単に割れることはないはずだ。一応中央に柱も立てて補強しておく。

 壁には雨が入らないように角度を付けて窓代わりの明かり取りを作り、いくつか換気口も開けておく。夜はある程度冷えてきているけど、寝袋などもあるのでその辺りは大丈夫だろう。寒い場合は最悪暖炉のようなものを作る手もある。ドアは薄い板のようなものを作ってはめ込むことにした。さすがにちゃんとしたドアを作るのは面倒だ。

 今回はまずは15日間の予定なので夜はちゃんと寝ることにしようと考えている。昼は探索もあるので、夜を交代で寝ていたらかなりきついからね。とりあえず塀とこの建物があれば、魔獣が来たとしてもいきなり襲われると言うことはないはずだ。
 それに魔獣よけの魔道具も持ってきているので魔獣もよほどでなければ近寄ってこないだろう。索敵した感じではそんなに強い魔獣もいなそうなのでこれだけで十分対応できると信じたい。

 家の前にはテーブルを作り、使うときにはテーブルクロスをかければいいだろう。かまどや作業台も作ってコンロを設置し、持ってきたパラソル二つをテーブルとかまどの上に立てて完成だ。
 基本的には現地調達のもので食事をするつもりだけど、本格的に雨が降っているときは、部屋の中で出来合のものを食べてもいいだろう。残飯関係は収納バッグに入れておいて、まとめて海に捨てれば問題ない。収納バッグがこういうときには便利だ。

 トイレは塀の中の離れたところに小さめの部屋を作って穴を堀り、便器を設置しておく。ジェンが気になるかもしれないので、建物にはサイレントの風魔法を出す魔道具を設置しておく。終わった後は浄化魔法があるのでトイレはこれで完璧だろう。

 一通り建物ができたところで持ってきたマットや寝袋を敷いてベッドは完成。その他に探索に持って行かないものについては部屋の中の棚にしまっていくことにした。自作した魔道具で簡単な冷凍冷蔵庫もできているので狩った肉などはこの中に保存しておくこともできる。期間が長そうだったら収納バッグに入れておくこともできるし、それは臨機応変に行こう。
 いろいろと魔道具をセットしているので、魔獣石が消費されるのは仕方がないところか?合計で1日100ドールくらいは消費されていく感じだけど、快適な生活を送るにはしょうがないと割り切ろう。


 さすがにここまで本格的な拠点を作ったのは初めてだったので、休憩しながらで作るのに3時間近くかかってしまった。なんかこり出したら止まらなくなってしまったんだなもんなあ。まあ少なくとも15日間は拠点にするところだからこれで良かったんだと納得することにした。魔力操作や土魔法のレベルが上がってきたらもっと短時間で作れるようになるのかねえ?

「ここまで作れば十分だろう。というかここまできっちり作らなくても良かったかもしれないというレベルになってしまった感もあるけど・・・。」

「そうね。まあやり過ぎた感はあるけど、これなら宿と同じくらいには過ごせそう。」

「寝るときは装備は外しておいてもいいと思っているけど、最初はある程度着けたままで寝た方がいいかもね。まあ島の魔獣のレベルを考えても壁を崩したりは出来ないと思うし、屋根もつけたから飛行する魔獣も簡単には来ないとは思うけど。」

「とりあえずちゃんと寝られそうなのが一番助かるかな。出来れば防具は全部外して寝たいわよねえ。」

 持ってきた野菜と今日手に入れた魔牛肉のスープを作り、あとは肉を焼いていく。かなり豪華な内容だけど、しっかり体力をつけておかないと気力が続かないからなあ。
 明かりは光魔法で照明の代わりになるし、食べ物の匂いも風魔法で拡散を防げるし、魔法を使えるようになってほんと良かった。この程度の魔法だったら常時使っているレベルなので精神的な負担もほぼないしね。

 食事の後は持ってきた珈琲を入れてちょっとくつろぐ。

「明日からはエリアを分割して探索していくけど、まずは島の全貌を見たいので南の山からと思ってるよ。」

「それがいいわね。山と言うよりは丘みたいなところだけど、それでもあの高さなら島を一望出来るはずよね。」

「まずは島をざっくり調べてから気になるところを詳細に調べていく感じかな?簡単に地図を書いて行く感じになると思う。」

「わかったわ。」

 一息ついたところで建物の中に入り、眠りにつくが、慣れない場所のせいか、気分が高揚しているのかなかなか眠れなかった。ジェンも寝袋には入っているがもぞもぞしている。

「なあ、起きてるか?」

「うん、なんか眠れなくてね。なに?」

「知り合ってからそれなりに時間もたつけど、まだ1年もたっていないのに自分と二人でいても不安はないのか?これでも一応男だよ。こんなところで二人きりだから何をされても助けなんてこないぞ。」

「うーん・・・。私ね、小さな頃からいろいろあって人間関係には勘が働くんだ。もちろん知り合った後で変わってしまった人もいっぱいいたけどね。イチはずっといるけど信用できると思ってるの。だからね、ずっと信用できるままだったらうれしいな。」

「そんなこと言われたら変なことはできないじゃないか。まあしないけどさあ。」

「別に私を・・・・・」

「???なに?」

 最後は言葉がかなり小さくなって聞き取れなかった。

「何でもない!!イチは不誠実なことはしないと信じているからね。」

 なんかよく分からないけど、まあ信用されているようだからこちらも変なことはできないよなあ。前に地球に大事な人がいると言っていたから手を出すわけにはいかないしね。

 さて、寝よ、寝よ。気にしたらダメだ。


 島上陸2日目

 いつものように0時に起きてから探索の準備をする。着替えのあと、朝食は昨日のスープと持ってきたパンで簡単に済ませる。今日のルートを大体確認してから出発。

 拠点から南に向かい、森の中へと入っていく。森は熱帯雨林地方の植物という感じだけど、所詮は島にあるレベルなのですごく生い茂っているわけではない。まあそれでも歩きにくいのは変わりないんだけど、身体を軽くしてはねるようにして移動するからまだましだ。

「まだ冬で良かったよねえ。」

「ほんと、これが夏だったらもっと虫とかが多くていやになっていると思う。」

 気温も高くないのと虫も少ないのが救いだ。まあ虫に関しては魔法でなんとかなるんだけどね。今では普通なんだけど、常に風魔法をまとっているからね。こっちの世界にも蚊はいるので正直夏だったらかなり面倒だった。

 森の中を索敵しながら進むので奇襲を受けるわけでもなく、出てきた魔獣も順調に倒して行くことができる。さすがに孤島では普通の動物は生き延びられないのか、目に付くのは虫と魔獣だけだ。
 魔獣は並~上階位くらいのレベルで毒大蜘蛛、巨蟷螂、大角甲虫などの虫系や二頭蛇、狂蛙などだ。そんなに頻繁に出てくるわけではないのでまだ大丈夫。解体は後ですることにして、素材になりそうなものはとりあえず収納バッグに入れていく。

「だけど、この魔素でこの頻度で現れるにしては強い魔獣がいないのが気になるなあ。普通だったら淘汰されてもう少し上のレベルの魔獣がいてもおかしくないのに索敵にも引っかからないよ。」

「飛行タイプの魔獣の狩り場にでもなっているのかしらね?」

「それはそれでちょっと怖いなあ。上空にもある程度注意した方がいいね。いきなり襲われたりしたらちょっと怖いよ。」

 魔獣のレベルに違和感を受けながら探索を進める。


 途中から少し上り坂になり、しばらく登ったところで山の頂上に到達する。山と言っても丘程度だが、海面からだと崖の分を含めてそれなりには高さがある。風のせいか、山の上の方には低い木しか生えていないので見晴らしはいい。

「いい眺めーー!」

 ジェンはここからの眺めを見て声を上げている。たしかに眺めはいいけど・・・飛行する魔獣には気をつけないといけないな。

 ここから島を一望できるんだけど、見る限り海賊の拠点となるようなところは見当たらない。周りは断崖となっていて、島の内側に穴が空いているなどと言うような特に目を引くようなところはない。広さは前に家族で行った最南端の島くらいなのかな? 

「とりあえずここから見る範囲では怪しそうなところはないね。」

「そうねえ。あ、あそこは湖か何かかな?」

 島の西の方の森のほとりに小さな湖みたいなところが見える。

「こんな小さな島で湖があるというのも珍しい気がするね。単に雨水がたまっているところなのかもしれないけどね。」

 あと北西方面は草原、北東方面は岩場、南側が森林で最南端が山という感じだ。えらくバラエティーに富んだ島だな。

「あまり細かくは見ていけないけど、とりあえずローラー作戦で一通り島を調べていくしかないだろうね。森が一番時間がかかりそうだけど、数日あれば一通りは見ることが出来ると思う。」

「なにか怪しいところでもあれば良かったんだけど、たしかにしらみつぶしに見ていくしかないわよね。」

 通ってきたところから少し東側を歩いて森を北上する。魔獣に注意しながら怪しいものがないかを確認していくが、特に目を引く物はない。森の中が一番可能性が高いと思うんだけどね。
 森を抜けてから拠点の付近を抜けて岩場方面へ。岩場の陰などを確認しながら一通り歩いてみてみるけど、何も見つからない。ただ、こういう岩場には来たことがなかったので、毒蜥蜴や岩蜘蛛、岩蛙など初めて見る魔獣が多い。
 毒持ちが多いので注意は必要だけど、動きはそんなに速くないので倒すのはそれほど難しくない。まあサイズも小さいしね。ただ素材になるところはないし、肉も食べられないのが残念だ。岩蛙なんかはほとんどが岩のような部位だしね。ただ治癒魔法とか回復魔法がないと相手をしたくない魔獣だろう。
 そのまま草原の方にも進んでいくけど、こっちはさらに何もなかった。魔牛や大角兎を狩るくらいだ。草原の魔獣はすぐに淘汰してしまいそうだな。

 結局一日歩き回って島の北の部分をだいたい探索できた感じ。地面に開いている穴はいくつか見つけたけど、人が下りて行くにはちょっと厳しそうなものだけしかないので、魔獣の住処とかかもしれない。まあ穴についてはまたあとで探索することにしよう。海岸についてはやはり断崖になっていて下りられそうなところは見つからなかった。

 4時には拠点に戻って、狩ってきた魔獣の解体を行う。いらない素材についてはまとめて海に投げ捨てる。海が適当に処分してくれるだろう。

 今日の夕食は角兎の肉を使ったシチューだ。ある程度ベースとなるスープ関係は持ってきているのでそこまで手間はかからない。やはりシチューとかの方が体も温まるし、調理もしやすいからねえ。野菜だけはかなりの量持ってきているので大丈夫だろう。
 さすがに一日歩き続けたので早めに就寝することにしたんだけど、今日も防具は着けたままで寝る。さすがにもう少し建物を強化しないとちょっと怖いからね。


島上陸3日目

 さすがに明け方は大分寒くなってきているので、寝袋から出るのがちょっとつらい。朝には長袖の服を着ないと厳しくなってきたかな。ジェンも寝袋の中で丸まっているようだ。

「おはよう!!」

「う・・・ん、おはよ~~。寒くなってきたわね。」

「できれば防具を外して眠り裸体ところだよね。防具を着けていると余計に寒いよ。」

 朝食に昨日の残りのシチューを食べてから準備をする。初日は夜中に魔獣が来ないか少し心配していたけど、昨日はちゃんと眠れた感じだ。これで防具もなければもっとぐっすり寝られそうなんだけどね。

 今日は東の断崖に沿って南下していき、そこから南側を確認しながら登っていく。山の斜面には低い木があるので見落としなく見ていくのは面倒だ。魔獣はほとんどいないのはいいんだけどね。山を周回しながら山頂まで登ってみたけど、特に目を引くものは見つからなかった。

 このあと森林の中を南北にローラー作戦で調査していくが、特に何も見つからない。魔獣も昨日出てきたようなものが現れるくらいだ。やはり森の中は探索に時間がかかり、全部を見ることはできなかった。

 拠点に戻ってから今日はガバナンさんにもらった魚で刺身と焼き魚にした。とりあえず今日で大体島の2/3くらいは回った感じかな。残りは湖の方だけだけど、正直まったく手がかりになるようなものは見つからない。


島上陸4日目

 昨日と同じ時間に起きて、今日は持ってきたサンドイッチで簡単に済ませる。さすがに連日体力を使っているせいか少し疲れが出てきているかな。

 今日は湖の方に行って確認してみたところ、かなり浅い湖だった。水深は深いところでも300ヤルドくらいしかない。雨水が貯まったところかと思ったんだけど、湖の中心から水が湧き出ていた。ただ水の出る量が少ないせいか、ここから流れ出るわけではなく、地面に浸透しているようだ。

「思ったよりも綺麗な水だね。」

「そうね。まあ水魔法があるのでわざわざこれを使う必要は無いけどね。」

「水がわき出ているってことは、雨水がたまってできた湖というわけではなさそうだね。小さな魚もいるから干上がることはないのかな?」

「まあこればかりは分からないわね。でも海からの高さを考えると水がわき出ているというのはすごいわよね。海水というわけでもないしね。」

 湖を一通り確認したあと、まだ調査していない森林を探索していくけど何も見つからない。

「やっぱり違う島だったのかなあ?断崖の下がえぐれていて上から見えないようになっているとかあるかなあ?でも船で見たときもそんな感じのところはなかったしなあ。」

「なんとも言えないわねえ。とりあえず島を全部確認してみないとまだ結論は出せないわ。もう少しがんばってみましょう。」

 夕食には生姜焼きのようなものとサラダを食べることにしたけど、黙々と食べた後はすぐに眠りについた。さすがにちょっと疲れがたまってきている感じがする。


島上陸5日目

 疲れがちょっと出てきているせいか朝起きるのがつらくなってきている。明日くらいは一日休んだ方がいいかもしれないね。

「明日くらいはちょっと休息日を入れた方がいいかな?」

「そうねえ。ただ今日はちょっと天気が悪いから雨が降るようだったら戻ってきてもいいかもしれないわよ。」

 空を見るとちょっと雲が増えている。午後くらいから雨になるかもしれない。


 島は一通り調べたので今日は島の外周に沿って断崖の方を再度調べてみることにした。崖が切り立っているのでかなり怖いんだけど、崩れないことを確認しながら調査していく。だけどやっぱり船が着けられるような場所は見当たらない。

「物語だと海賊達は結構人数多かったみたいだから船も一隻だけではなかったはずだよなあ。そう考えるとこの岸壁に着けるのは無理があるよね。」

「うーん、かといって隣の島は平坦な島だから船があったらすぐに分かりそうだしね。」

「物語でも目的の島には来たけどなにも見つからなかったと書いているので、やっぱり見つかりにくいようになっていると考えた方がいいんだよなあ。150年もたっているから入口のようなところが埋まったりしているのかなあ?」

「その可能性はゼロじゃないけど、当時でも見つからなかったみたいだから何かしらのからくりがありそうなのよね。」

 島を一周するころには空の雲の厚みも増してきたので拠点に戻ることにした。拠点に戻ってしばらくすると予想通り雨が降ってきた。
 屋根は作っておいたし、自分たちがいるときは風魔法で雨が降り込まないようにしているので濡れてしまう心配はない。雨が降り込んだとしても浄化魔法があるのですぐにきれいにできるし、排水溝も機能しているので水に溺れることもないだろう。


 さすがに何もしないのも暇なので、魔法や付与魔法の練習をする。魔法はイメージが大事なんだけど、できるだけ自然の現象を利用するようにするだけで消費する魔素が小さくなる。
 この世界には重力の概念がないので、重量軽減がいい例だ。今はカサス商会にサンプルを預けているけど、重量軽減の魔道具は既存のものよりもかなり効率の良いものになっていると思うので、どんな評価になるのか楽しみだなあ。


 今一番やりたいのは土魔法と風魔法で空を飛ぶことだ。重量軽減でほぼ体重を0近くまで持って行くことができるので、あとは風魔法で体をコントロールすれば理論的には飛べるはずだ。
 とりあえず体を浮かべるところまではできる様になってはいるんだけど、あくまで浮いて移動するというレベルでしかない。土魔法を維持しながら風魔法の威力をあげていけばいけると思っている。ちなみにこのコントロールはジェンの方がうまくて自分よりも空中の移動は早い。
 ただもし使えるようになったとしてもあまり人前では使えないかもしれない。空を飛ぶことのできる魔道具はあるみたいだけど、一部古代の魔道具を利用しているからね。現代では飛行の魔道具は作ることができないようだ。

 他にも新たに覚えた魔法もいろいろと試しているんだけど、一朝一夕でレベルが上がらないのはしょうがないところか? 


 夕食は気分転換を兼ねて鍋にすることにした。魔猪を使ったぼたん鍋という感じのものを作る。やっぱり寒くなってくると鍋はいいねえ。とにかく、こういう野営の時はできるだけいつものような生活が維持できると気分も気力も維持できるものだ。
 料理をするときにジェンも手伝ってくれるんだけど、味付けに関してはちょっと大味になってしまうので、味付けは基本自分がやっている。包丁さばきとかの手際はいいんだけどね。

 雨も降っているので魔獣の動きも少なそうなこともあり、今日は防具をあらかた外して寝ることにした。武器だけはすぐに手を取ることが出来るようにしているけどね。


島上陸6日目

 雨がやまないので今日は拠点に缶詰だ。時間つぶしに付与魔法の訓練をかねて土魔法で作ったテーブルなどに模様を入れたりとかしている。何をやっているんだか・・・。おかげでただの土を固めたテーブルが彫刻の施された立派なテーブルになってしまった。


 昼過ぎに雨もやっと小ぶりになってきた。

「まだ雨は降っているけど、ちょっと湖を確認に行こうと思ってる。どうもあの湖に違和感があるんだよね。」

「たしかにこの地形で泉が湧いているのはなかなか珍しいわよね。湖の周りの環境もちょっと変な感じだったしね。」

 水が湧き出している湖としてもあまりにも綺麗だし、湖の周りの植生も違和感があったんだよね。

「雨が降っているときだったら何かちょっと違いが分かるかもしれないからね。」

 風魔法を身体にまとうことで傘を差さなくてもぬれずに歩いて行くことが出来るのはありがたい。もちろん戦闘になったら無理があるけどね。

 湖までやって来たんだけど、結構雨が降ったのに湖の大きさは変わっていなかった。よく見てみると湖のほとりに穴が開いていてそこに水が流れ込んでいるみたいだ。

「これって土にしみこんでいるわけではないよね?」

「ええ、よく見たら湖の周りに空洞があるわね。」

 どうやら湖からあふれた水はすべてこの空洞に落ち込んでいるみたいだ。もしかしたら鍾乳洞のようなところがあってそこが隠れ家になっている可能性もある。


 いったん拠点に戻ってからジェンと話をする。

「とりあえず地上には何もなかったから、明日から地下に空洞がないか調査してしてみよう。」

「でもどうやって?」

「採掘をしたときに探知スキルのようなことをやったんだ。それを応用すれば魚群探知機のように何かしら分かるんじゃないかな?」

 このあと拠点の中から地面に向かっていろいろと試していると何かしらの岩盤のようなものがあることが分かるので、これを試してみよう。


~ジェンSide~
 ルイサレムにやってきて宝探しという依頼を受けることになった。地球にいたときにはこんな冒険譚のようなことをするなんて事はあり得なかったのでちょっとわくわくしている。

 依頼を受けたのはいいけど、なかなか手がかりが見つからなかった。5年たっても見つかっていないものなのでそう簡単に見つかるものではないのは当たり前だけどね。でもガイド本のおかげでヒントを見つけることができたけど、これってこっちの人たちにはまず考えが及ばないわよね。

 予想したことがあっているのかは現地に行ってみないと分からないので船に乗って移動することになった。目的の地点と思われる場所に島はあったんだけど、どう考えても拠点になるようには思えない地形だ。でも地図からはこことしか思えないのよね。

 船を出してくれたガバナンさんが刺身を食べていたのでイチは大喜びで食べていた。私も食べさせてもらったけど、この間のものよりさらにおいしくて驚いた。刺身を理解する人がうれしかったのか、夜は宴会に誘われてお酒までいただいて楽しかったわ。

 島に行く準備をしている途中でカサス商会の店長に呼び止められた。ここでイチは試作していた魔符核を渡していた。イチはそこまで重要なものと思っていないようだけど、これを見たステファーさんの目の色が変わった。コーランさんのことを考えると無茶な要求はしてこないとは思うけど、注意はしておかないといけないわね。


 島に移動してから拠点を作ることになったのだけど、思ったよりも立派なものができたと思う。気を遣っているのか、寝るところを分けようとしていたのでそれはやめてもらった。イチは何か言っていたけど、いまさらよ。

 寝るときにいろいろと私たちのことについて話をした。イチは知り合って間もないのにこんなに信頼していいのか?と聞いてきたけれど、何か企んでいる人はそもそもそんなことを聞いてこないよ。いつまでも信頼させてほしいなあ。
 イチは遊びで手を出してくるとは思えないので、そのときはちゃんと責任をとってくれると思う。ほんとにイチが私に迫ってきたら・・・私はどう対応するんだろう。
・・・
・・・
・・・
 まあ、それ以前にそういうことがあるのかな?これでも結構もてていたと思うんだけど、イチの好みとは違うのかなあ?


~魔獣紹介~
毒蜥蜴:
並階位中位の魔獣。岩場の多いエリアに多く生息している蜥蜴の形をした魔獣。体長は500ヤルドほどで、体の半分は強靱な尻尾となっている。
鋭い牙を持っており、唾液に多くの病原菌が含まれているため、かまれると炎症を起こし、数日間高熱を出す場合がある。子供は死亡する事例も報告されている。また強靱な尾を使って攻撃をしてくる。
思ったよりも動きが素早いが、装甲がそれほど厚いわけでもないため、口の動きを注意していれば一撃で倒すことも可能。できるだけ口と反対側に陣取り攻撃するとよい。
素材としての買い取り対象はない。見た目的に食べられそうであるが、肉にも毒が含まれているため食用にはならない。

岩蜘蛛:
並階位上位の魔獣。岩場の多いエリアに生息している蜘蛛の形をした魔獣。大きなものは大人の頭くらいの大きさで、巣を張るわけではなく、岩に擬態して獲物が通るのを待ち襲いかかる。
わずかな水でも生き抜くことができる。岩に擬態している上、さらに索敵に引っかかりにくいため突然攻撃を受ける場合があるので注意。
毒を持っており、大人でも全身がしびれて動きにくくなる。見つけた際にはできるだけ退治しておくことが推奨される。麻痺した獲物は糸で縛ってから食べられるため、生きたままという恐怖と痛みを味わうこととなる。全身が岩のように見えるが、実際にはそれほど固いわけではないため普通に切りつけることができる。
素材としての買い取り対象はない。

岩蛙:
並階位上位の魔獣。岩場の多いエリアに生息している蛙の形をした魔物。子犬ほどの大きさで岩に擬態して獲物が通るのを待つ。
わずかな水でも生き抜くことができ、雨がほとんど降らない場合は冬眠のように体を動かさずに雨を待つこともあり、半年程度水なしで生きていたという記録もある。
岩に擬態しているため、そのままだと気がつかない場合が多いが、索敵にはすぐに反応する。舌が麻痺毒を分泌するため、注意が必要。全身が岩のような皮膚に覆われているため、関節部分を狙うか、槌などの武器で潰したほうがよい。剣などは欠けてしまう可能性もあるため注意が必要。
素材としての買い取り対象はない。体のほとんどが石のような部位であり、それをつなぐ関節や消化器系のみがある感じなので食べられる部位がない。


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