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38. 異世界267日目 鍛錬の日々
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38. 異世界267日目 鍛錬の日々
サクラにいたときにスレインさん達にいろいろと聞いていた情報と、役場や他の冒険者から聞いた情報からいくつか武術の道場はピックアップしていたので、それらを中心に道場の規模や指導内容を確認していく。
二人だけのパーティーで剣と短剣しか使えないというのはまずい場面もありそうなので自分は槌、ジェンは杖についても少し習ってみることにしている。
このためそれぞれの武器を購入したので結構な出費となってしまった。自分の鋼の戦鎚(高)が15万ドール、ジェンの鋼の錫杖(高)が18万ドールと結構したからね。錫杖は魔法媒体じゃなかったからこの値段だけどそうでなかったら値段は数倍だ。打撃系なので付与魔法も強度を重視したものにした。
お金は大分使ってしまったけど、この間の海賊関係で結構お金をもらっていたので問題は無い。これを買ってもまだ残りは100万ドールほどあるし魔符核の納入代でかなりお金も入る予定だからね。
使う武器が違うので同じ道場だとどちらかの指導レベルが劣ることと、指導員の数の問題があってジェンと同じ道場に通うのはあきらめた。
自分が行くのはカテナ剣術というところで、通常は5~10人の練習生を相手に行っているところだ。今回個人指導してくれるのは師範代のカルタニックという方だ。
最初に握手した時にこっそり鑑定したところ、片手剣のスキルレベルはなんと5、盾が4だった。それ以外も2~3のスキルを持っており、クラスも戦士レベル-3になっていた。あまり時間がなかったので武術のところしか見ることができなかったけど、かなりのレベルの人だった。体験で簡単に指導してもらったんだけど、的確でわかりやすかったのでこの人に決めた。
1日あたりの訓練の費用は自分が1000ドール、ジェンが800ドール。まずは15日間の短期集中のトレーニングを受けることにした。
一日の指導時間は休憩を入れて3時間なので地球で言うと時給あたり1700円くらいとなる。全体練習が1日200ドールなので個人レッスンと考えるとこれでも安いとみるべきなんだろうか?
武器は普段使っているものの重さや形状を複製したようなものを使って行うようだ。ほとんど切れない上にさらに効果を落としているので防具は練習用のかなり簡易のものだ。ただ重さとかだけは持っているもに合わせている。
好きに打ち込んでこいと言われたので斬りかかるが、簡単に流されてしまう。ある程度こっちの実力を把握できたところで指導が始まった。若干変な癖が付いているみたいで、その辺りの矯正からとなった。
戦い方は魔獣を相手にする場合と人を相手にする場合で異なるのでその辺りは戦い方や使い方を変えていかなければならない。魔獣も魔獣の種類によって戦い方は変わってくるしね。また対人の場合は魔法を使ってくる場合もあるし、魔獣でも高階位になれば魔法を使うものがいるらしい。
剣と盾を使うスタイルの場合、盾をどれだけうまく使うかで剣が生きてくる。今まではそれがチグハグだったようだ。まあ盾なんて使うことがなかったからねえ。個人指導のあとは全体練習が1時間あり、この時にいろいろな人と対戦して対人の鍛錬する感じとなる。
1時半から5時半まで練習をした後、ジェンを迎えに行き、夕食を食べて宿に戻るというサイクルだ。ジェンも日々の成長を感じているみたいで、大変だけど充実しているようだ。
ただ、ジェンを迎えに行った時の他の練習生の視線がきつい。まあ普通だったら彼氏と思われるから嫉妬の目線なのかと思う。
宿に戻ってからも勉強や付与魔法、魔法の鍛錬などは欠かさない。最初の頃はさすがにすぐに眠りについていたけどね。
~ジェンSide~
今日からイチとは別の道場で短剣と盾の鍛錬となった。私塾だと教える人がそれほどいないので個人レッスンは一人が限度みたいだから仕方が無いわよね。ちょっと寂しいけど、訓練はがんばらないとね。
私が行くのはカルイサ武術という道場で、体術と短剣をメインとしたとこで、指導をしてくれるのはカルイサさんという道場主だ。あまり大きなところではなく、練習生も5人以下で、通常の指導は師範代クラスの人が行っているくらいなので、指導者は2人しかいない。
イチがレベルを確認したところ、短剣はレベル5、体術と盾はレベル4とかなり高かったらしい。あとは片手剣や槌、杖などが3くらいだったようだ。
道場には毎日ではないが女性も通っていることと話した感じで指導者が好印象だったのがここを選んだ理由だ。
休憩を入れて1日3時間の個別指導と1時間の全体練習と結構ハードだけど、その分実力が上がっているのが体感出来た。戦い方は前面に出て戦うわけではないので、一撃離脱が基本となるのだけど、盾を使って攻撃の捌き方はできないと危ないので普通に戦い方を習うことになった。併せて体術もやっているのでなかなか大変だ。
下見の時から他の練習生の視線が少し気になっていたけど、できるだけ気にしないようにしている。初日の練習が終わった後、他の練習生から「食事でもどうか?」と声をかけられたので、そのときは何とか断ったけど、翌日からはイチに迎えに来てもらうようにした。
結局帰りに迎えに来てもらうだけでなく、行きも送ってくれることになった。イチの道場の方が宿から近いのでちょっと申し訳ないけどとても嬉しい。帰りにいろいろなお店によって食事をしたり買い物をしたりするのも楽しかった。
さすがに迎えに来てもらうと声をかけてくることはなくなったけど、かなりの嫉妬の目でイチが睨まれていた。「なんであんな奴が・・・」とか聞こえてきたがイチのことを何も知らない人にそんなこと言われる筋合いはないわ。
~~~~~
15日間の鍛錬が終わった後、ジェンと模擬戦をやってみたところ、お互いに実力が上がっているのが実感できた。剣さばきや鋭さが全く違っている。やった成果が実感できるのはうれしいね。
最初に考えていた通りこの後は狩りと道場での鍛錬を続けていく予定にしている。さすがに翌日に出かけるのはきついので1日休息をとってから狩りに出かけることにした。
ルイサレムの西の方には結構深い森があって、奥の方に行くと上~良階位の魔獣が出てくるらしい。ここからだと歩いて4~5時間かかるところなんだけど、軽減魔法を使うと1~2時間くらいで到着出来そうな感じ。それでも往復で3~4時間と考えるとさすがに日帰りは厳しいだろう。
森の近くには町という規模ではないけど、狩りをするムライオカという前線基地のようなところがあるようだ。そこからだと狩場まで60分ほどで着けるし、一応宿もあるらしい。ただ、元々野営地が集落のようになったとこで、ちゃんとした管理地ではないことからあまり治安は良くないようだ。
その辺りで狩りをする場合の拠点はさらに西に行ったところにあるムライという町なんだけど、ルイサレムまで戻ってくることを考えるとこっちからのバス路線はないのでちょっと厳しい。
「とりあえずムライオカに行ってみて良さそうだったらそこで、不味そうだったらどこかに拠点を建てることにしよう。」
走って移動している途中で今後の予定について話をする。
「今回は島で造った拠点を持って帰って来ているし、いろいろと魔道具も買ってるから場所さえちゃんと選べば見張りがなくても何とかなるんじゃないかと思っているんだ。」
「最初はちょっと警戒しないといけないけどね。でも本当に見張りが必要なくなればかなり楽になるわよね。」
「森からある程度離れたらたぶん大丈夫だと思うんだよね。もし魔獣がいたとしても離れたところならレベルも低いはずだしね。」
「とりあえず狙ってみたい魔獣は上階位上位の牙猪、大角牛、銀狼あたりかな?このレベルからは討伐すると討伐報酬が出るものも出てくるし、実績ポイントも今までのよりも多くなるんだよね。それに討伐の実績を作ると、素材収集の特別依頼を受けることもあるらしい。」
「まあ無理はしないつもりだけど、そのくらいの魔獣は倒してみたいわね。」
1時間半ほどかかって前線基地のムライオカに到着する。確かに町というよりは野営地という感じで周りに簡単な木の柵があり、いくつかの木造の建物とテントが設営されていた。バンガローのあるキャンプ場という印象だな。
宿は2軒あったんだけど、どちらも個室はなく大部屋での雑魚寝となるようだ。一応男女で部屋は分かれているけど、そのレベルなのに一泊一人500ドールとかなり高い。テントを張る場合も300ドール取られるようだ。どうやらこの町の護衛用に人を雇っているらしく、その代金が含まれるようだ。
食事ができるところもあるけど、こっちも値段がかなり高い。まあ、こんなところで商売するので危険手当とかまで入っているんだろうな。
「ここに泊まるならどこかで拠点出して泊まった方がいいと思うけどどう?」
「選択の余地なしね。」
「それじゃあ、拠点を建てられる場所を探しながら狩り場に行こう。」
ジェンも同じ考えだったので、すぐに狩場へと向かう。ルートから少し外れて野営できそうな場所を探しながらだったので急いだにもかかわらず30分ほどかかってしまった。
魔獣の多くは森の奥の方にいるけど、森の周辺まで出てくることもあるので、拠点を造るのはそこから少し離れたところがいいだろう。今日は4時頃まで狩りをしてから拠点を建てる場所に行くことにしよう。
レベルの高い魔獣は基本的には森の外周にはいないんだけど、例外もあるので索敵はちゃんとしないといけない。レベルの高い森の魔獣は隠密のスキルが高いことも多いのでより慎重にしなければならない。
あと他の冒険者と近すぎるのも獲物の取り合いとか、変なトラブルに巻き込まれる可能性もあるのでそちらにも注意しないといけない。獲物の横取りや場合によっては襲われる可能性も否定出来ないしね。
索敵で辺りを確認しながら少しずつ森に中を進んでいく。しばらくして見つけたのは牙猪だ。大きさは牛くらいとかなり大きい。
まず他に魔獣はいないかを注意深く確認。とりあえず戦闘中に後ろとかから襲われることはなさそうだ。頭への攻撃が有効らしいけど、表皮が堅くてなかなか貫けないみたい。ここは剣よりも打撃の方が良さそうなので武器を戦鎚に持ち替える。
ジェンとタイミングを合わせて魔獣の頭に風魔法で攻撃するとこちらに気がついて突進してきた。頭の一部がぱっくり割れているのでダメージは入っているみたい。突撃してくる進路に合わせて土魔法で足下に穴を掘り、足を引っかけたところで、ジェンが水魔法で押さえつける。このタイミングで近づいてから頭を槌鎚で殴りつけてとどめを刺す。
「とりあえず単体であればこのレベルでもまだ楽に倒せる感じだね。」
「魔法からの攻撃なので型にはまればかなり楽になるわね。」
「素材回収を無視したらもっと魔法で攻撃して楽にはなるんだけど、折角なら素材は確保しておきたいんだよね。まあ複数いる場合は調整していく感じかな。」
「ええ。とりあえず今のパターンで攻撃するけど、危ないと感じたときは魔法で直接攻撃するわ。」
その後も牙猪を1匹倒したところで銀狼を発見。狼なんだけど、集団行動をしないのでまだ上階位レベルになっているだけで、集団でいたらしゃれにならないというレベルになる。すばしっこい上に簡単な魔法も使ってくるらしい。
ある程度近づくと、こちらに気がついたみたいで襲いかかってきた。風魔法で攻撃を仕掛けたけど避けられてしまう。風魔法を使うらしいので読まれやすいのか?
すぐに自分が前に出て水魔法と風魔法の盾を展開してさらに自分の盾で最初の衝撃を受ける。さすがに三重の盾だと衝撃はかなり緩和できる。
このあとは盾で攻撃を防ぎながら攻撃を加えてみるけど、なかなか致命傷にはならない。この間にジェンが風と水魔法で攻撃してもらい、ひるんだところで首筋に剣をたたき込むことができた。さすがに切り落とすとかは出来なかったけど、致命傷を与えることが出来たようで、そのあと無事に倒すことが出来た。
正面からの戦いだったけど、大きな怪我もなく倒せたので上出来かな?さすがに治癒しないといけないレベルだけどね。普通だったらここで薬を使って出費がかかるんだろうけど魔法を使えるのは大きい。
最後の銀狼の毛皮は結構傷が入ってしまったのでその買取額はあまり期待できないが、3匹の大物を倒せてちょっとテンションも高い。普通に考えると大物は1日1匹倒せればいい方だしね。それ以前に収納バッグがなかったらこんなに狩っても持って帰られない。
結局この日は牙猪2匹、銀狼1匹、大偽狼、大狼、牙兎、大山猫を結構な数討伐することができた。今日だけで1万ドール近くはいきそうだ。
「やっぱりまだ決定力に欠けるなあ。一撃とは言わないけどもう少し攻撃力がないと集団で来られたらまずいんだよね。」
「でも、それはしょうがないんじゃない?素材確保を無視したらもっと強力な魔法を打てるんだし、素材をかなりいい状態で確保できるだけ十分だと思うわ。
前に他の人が狩った魔獣を見たけど結構酷いものも多かったわよ。階位と同じレベルの魔獣は倒すことができるという目安というだけで素材確保は別だからね。」
「まあ上階位になったばかりで上階位上位の魔獣を素材確保レベルで狩れるだけよしとすべきか。魔法がなければアウトだけどね。でも魔法がなくても戦えるくらいにはなっておきたいね。」
いったん街道から離れたところにある岩場の陰に移動する。ここだったら遠目には岩に見えるし、わざわざ見に来ないだろう。
拠点を出してから夕食の準備に取りかかる。今日は出来合のもので済ませることにしたけど、お湯を沸かしたりして一応温めて食べる。電子レンジが欲しいなあ。
快適に寝るために魔獣よけと、今回購入した防犯ブザーをセットしておく。一定の範囲に魔素を持つ何かが入ってきた場合に反応するようにセットすることができるものだ。消費する魔素が一晩で100ドールくらいというものだけど、何かにいきなり襲われるよりもいいし、睡眠を十分にとれるようになると考えると安いものだ。
今回は拠点のベッド用に今までのものよりも質のいいマットを購入してきていたので寝るのも快適だ。一つ7000ドールってかなりの出費になってしまったけどね。ジェンは「このくらいは欲しかったのよね。」と余裕な発言をしていたけど。
とりあえずいきなり襲撃されることはないだろうと言うことで防具関係もある程度外して眠りに就く。さすがにブーツは履いたままなのはしょうが無いけどね。もしもの時は一人が先に対応してもう一人が防具を身につけて交代するということにしている。
少し心配ではあったんだけど、襲撃もなく朝を迎えることができた。まだ眠りは浅い感じだったけど、あそこの相部屋より断然いいと思う。
昨日と同じように狩りをするが、やはり奥の方に行くと良階位の魔獣もいるみたいでちょっと危ないみたい。いずれは挑戦したいけど、今は上階位の魔獣で経験を積んだ方がいいだろう。索敵レベルが広がったので魔獣を探すのが大分楽になったのはありがたい。
5日間の狩りで牙猪、大角牛、銀狼だけでなく、このクラスで最強となる大熊も討伐できた。索敵でかなり大きな反応がでたので良階位の魔獣かと思ったんだけど、遠目に確認して分かった。ここでやらなければいつまでたってもできないと思い、攻撃をしかけることにした。
さすがに素材のことを気にしたらやられる可能性も高いので初っぱなから最大の魔力で風魔法攻撃を仕掛ける。この攻撃でうまい具合に片手を切り落とすことができたのはラッキーだった。このあと土魔法で誘導しながら魔法で攻撃を続け、最後は剣でとどめを刺す。狼や猪よりも突進力が低いので魔法を使って倒すのはまだ楽な方かもしれない。近づいてきたときにはかなり瀕死状態だったからね。
食事を作る手間はしょうがないけど、出来合のものを食べるようにするなら正直宿とあまり変わらない生活という感じだった。まあ食事だけがそのままだと冷たいというのだけが難点だ。
早めに狩りを終えた時は調理をしたりはしたけどね。でも簡単なコンロだけだとなかなか難しい。屋外で使えるいいコンロのようなものがあれば買うのもありかな?
それと浄化の魔法が使えるとはいえ、やはり気分的にはシャワーを浴びたい。ほんとに気分の問題だけなんだけどね。贅沢を言うとお風呂もほしい・・・。
やはり外に泊まっているので、魔獣に襲われないか緊張していたようだったけど3日目くらいにはだいぶ慣れてきた。まあ交代で見張りをすることを考えると緊張しているとは言え寝られるのは良い。
ほんとなら5日目の昼に切り上げて町に戻る予定だったんだけど、拠点も快適だったので5日目も狩りをして拠点に泊まってから翌朝に戻ることにした。
町に戻ってから役場に行って精算をしてもらう。買い取りの窓口に行ってから素材を出す場所を確認する。
「収納バッグもちか。結構な量を持ってきたな。お、結構上位の魔獣も狩っているじゃないか。これはこっちで買い取りでいいのか?」
「ええ、たしか牙猪、大角牛、銀狼、大熊の素材は実績ポイントになるんでしたよね?」
「ああそうだ。ただ買い取り価格は他の店よりは低くなるが問題ないか?」
「ええ、それでかまいません。」
「素材の状態も十分合格というレベルだ。これだったら下手に処理した素材を他の店に下ろすよりは高い値段にはなりそうだぞ。まあ100点満点の80点というくらいだがな。」
思ったよりも買い取り価格は満足出来るものだった。さすがに魔獣のレベルが上がってくると収入は変わってくるな。
この日は一日休息を取り、翌日から2日間は二人で復習をして、再び道場に行って鍛錬を行うというサイクルを繰り返すことにした。狩りの時に雨が降った場合は拠点で魔法の訓練などを行った。やっぱり雨の時の狩りはしたくないからね。
この途中でジェンの鑑定レベルがついに4になった。レベル4になると予想通り触らなくても鑑定ができるようだ。その他の効果については特にないみたい。自分も早く4にあげたいなあ。
対象物を見て意識するだけで鑑定できるので、魔獣の鑑定を行ってもらい、特殊なスキルがないかなどのチェックを行ってもらうことにした。もちろん気になるスキルについてはチェックして、討伐の時には気をつけるようにしている。
~魔獣紹介~
牙猪:
上階位上位の魔獣。森や草原に生息している猪の形状をした魔獣。体長は2キヤルドくらいの大きさで、獲物を見つけると突進してくる。
突進力が強力で、風魔法を使って方向を変えることができるみたいで突進を躱すのは難しい。ただし魔法で攻撃をされたという報告はされていないため、あくまで補助的な使い方しかしないと言われている。
頭の頭頂部が弱点だが、かなりの衝撃を加えなければ表皮を貫くことができない。また危険性も高いため、よほど自信が無ければ正面からの攻撃は避けた方がよいだろう。最初の突進を止めた後は周りを囲って徐々に体力を奪っていくのが有効となる。
素材としての買い取り対象は革で、防具の材料として広く使われている。牙は装飾品として加工され、肉はかなりの量がとれる上、人気も高いため買取額は高くなる。この魔獣と大角牛を上手に狩ることができるようになると、収入や能力的に一人前と判断する冒険者も多い。
大角牛:
上階位上位の魔獣。森や草原に生息している牛の形状をした魔獣。体長は2キヤルドくらいの大きさで、獲物を見つけると突進してくる。
突進力が強力で、風魔法を使って方向を変えることができるみたいで突進を躱すのは難しい。ただし魔法で攻撃をされたという報告はされていないため、あくまで補助的な使い方しかしないと言われている。
最初の突進を止めた後は周りを囲って徐々に体力を奪っていくのが有効となる。
素材としての買い取り対象は革で、防具の材料として広く使われている。肉はかなりの量がとれる上、人気も高いため買取額は高くなる。この魔獣と牙猪を上手に狩ることができるようになると、収入や能力的に一人前と判断する冒険者も多い。
銀狼:
上階位上位の魔獣。寒い地域の森に多く生息する狼系の魔獣。集団で行動することは稀で、繁殖期以外は単独行動をする。
牙と爪で攻撃してくるが、風魔法も使えるため遠くにいても油断はできない。木々の間を縦横無尽に動き回るため、魔法や弓の攻撃も当たりにくい。まずは動きを止めて接近戦に持ち込んだ方がよいだろう。
素材として牙と毛皮が使用されるが、毛皮の需要は高く、特に傷がないものは重宝される。肉は固く、臭いもきついため食用にはされていないが、食べることは可能。
大偽狼
上階位下位の魔獣。草原や森に生息する狼系の魔獣。1~3匹で行動することが多く、大きさも狼もどきよりも二回りほど大きいくらいで狼よりは小さい。
牙と爪もそれほど鋭くないが、その分攻撃された後の傷が治りにくい。群れで行動しているため連携されないように1匹ずつ確実に倒していく必要がある。遠距離攻撃が有効となる。
素材としての買い取り対象は上顎の牙と肉となるが、若干臭みがあり人気は低い。ただし思った以上に肉の量がとれるため単価は安いがそれなりの収入となる。
大狼
上階位下位魔獣で、草原や森に多く生息する狼系の魔獣。集団行動をすることが多く、多いときは10匹を超える群れになることがある。群れの数に比例して脅威度は変わり、10匹以上だと上階位上位~良階位下位と脅威度が一気に高くなる。
牙や爪が鋭いため攻撃には注意が必要。集団で襲ってくる場合は連携してくるため、リーダーと思われる個体を優先して倒した方がよい。遠距離攻撃の手段があれば遠くから攻撃して群れを分散させることが有効となる。
素材としての買い取り対象は上顎の牙と毛皮となる。肉は固く、臭いもきついため食用にはされていないが、食べることは可能。
牙兎
上階位中位の魔獣。森に穴を掘って生活しており、角兎の特徴である角はなくなり、体と牙が大きくなっている。耳が大きく、音に敏感なため、先に見つけるのは難しい。
獲物を見つけると一気に突進してくるが、その突進力のまま鋭い牙でかみついてくるため、最初の突進を止めることが重要。装甲は固くないので一度捕まえてしまえば討伐は容易となる。まずは動きを止めることができるかが鍵となる。
素材としての買い取り対象は肉となるが、角兎の肉よりは若干味が落ちる。
大熊
上階位上位の魔獣。森に生息しており、上階位では最強と言われる魔獣だが遭遇率は低い。最大で3キヤルドを超える体躯をもつものも報告されている。良階位の冒険者でも討伐には注意が必要。
最も恐れられるのは大きな体から振り下ろされる太い腕お攻撃で、爪に引っかかれただけでもかなりの怪我を負ってしまう。威力は岩をも破壊する。遠距離から魔法や弓矢による攻撃でできるだけ弱らせることが鍵となる。ただし、個体により水魔法を使うという報告もあり、遠距離の場合でも注意が必要。
素材としての買い取り対象は毛皮と肉であるが、肉は若干癖があるため買い取りの単価は低い。毛皮も服などには利用できないため、大きさの割には単価が低くなっている。
サクラにいたときにスレインさん達にいろいろと聞いていた情報と、役場や他の冒険者から聞いた情報からいくつか武術の道場はピックアップしていたので、それらを中心に道場の規模や指導内容を確認していく。
二人だけのパーティーで剣と短剣しか使えないというのはまずい場面もありそうなので自分は槌、ジェンは杖についても少し習ってみることにしている。
このためそれぞれの武器を購入したので結構な出費となってしまった。自分の鋼の戦鎚(高)が15万ドール、ジェンの鋼の錫杖(高)が18万ドールと結構したからね。錫杖は魔法媒体じゃなかったからこの値段だけどそうでなかったら値段は数倍だ。打撃系なので付与魔法も強度を重視したものにした。
お金は大分使ってしまったけど、この間の海賊関係で結構お金をもらっていたので問題は無い。これを買ってもまだ残りは100万ドールほどあるし魔符核の納入代でかなりお金も入る予定だからね。
使う武器が違うので同じ道場だとどちらかの指導レベルが劣ることと、指導員の数の問題があってジェンと同じ道場に通うのはあきらめた。
自分が行くのはカテナ剣術というところで、通常は5~10人の練習生を相手に行っているところだ。今回個人指導してくれるのは師範代のカルタニックという方だ。
最初に握手した時にこっそり鑑定したところ、片手剣のスキルレベルはなんと5、盾が4だった。それ以外も2~3のスキルを持っており、クラスも戦士レベル-3になっていた。あまり時間がなかったので武術のところしか見ることができなかったけど、かなりのレベルの人だった。体験で簡単に指導してもらったんだけど、的確でわかりやすかったのでこの人に決めた。
1日あたりの訓練の費用は自分が1000ドール、ジェンが800ドール。まずは15日間の短期集中のトレーニングを受けることにした。
一日の指導時間は休憩を入れて3時間なので地球で言うと時給あたり1700円くらいとなる。全体練習が1日200ドールなので個人レッスンと考えるとこれでも安いとみるべきなんだろうか?
武器は普段使っているものの重さや形状を複製したようなものを使って行うようだ。ほとんど切れない上にさらに効果を落としているので防具は練習用のかなり簡易のものだ。ただ重さとかだけは持っているもに合わせている。
好きに打ち込んでこいと言われたので斬りかかるが、簡単に流されてしまう。ある程度こっちの実力を把握できたところで指導が始まった。若干変な癖が付いているみたいで、その辺りの矯正からとなった。
戦い方は魔獣を相手にする場合と人を相手にする場合で異なるのでその辺りは戦い方や使い方を変えていかなければならない。魔獣も魔獣の種類によって戦い方は変わってくるしね。また対人の場合は魔法を使ってくる場合もあるし、魔獣でも高階位になれば魔法を使うものがいるらしい。
剣と盾を使うスタイルの場合、盾をどれだけうまく使うかで剣が生きてくる。今まではそれがチグハグだったようだ。まあ盾なんて使うことがなかったからねえ。個人指導のあとは全体練習が1時間あり、この時にいろいろな人と対戦して対人の鍛錬する感じとなる。
1時半から5時半まで練習をした後、ジェンを迎えに行き、夕食を食べて宿に戻るというサイクルだ。ジェンも日々の成長を感じているみたいで、大変だけど充実しているようだ。
ただ、ジェンを迎えに行った時の他の練習生の視線がきつい。まあ普通だったら彼氏と思われるから嫉妬の目線なのかと思う。
宿に戻ってからも勉強や付与魔法、魔法の鍛錬などは欠かさない。最初の頃はさすがにすぐに眠りについていたけどね。
~ジェンSide~
今日からイチとは別の道場で短剣と盾の鍛錬となった。私塾だと教える人がそれほどいないので個人レッスンは一人が限度みたいだから仕方が無いわよね。ちょっと寂しいけど、訓練はがんばらないとね。
私が行くのはカルイサ武術という道場で、体術と短剣をメインとしたとこで、指導をしてくれるのはカルイサさんという道場主だ。あまり大きなところではなく、練習生も5人以下で、通常の指導は師範代クラスの人が行っているくらいなので、指導者は2人しかいない。
イチがレベルを確認したところ、短剣はレベル5、体術と盾はレベル4とかなり高かったらしい。あとは片手剣や槌、杖などが3くらいだったようだ。
道場には毎日ではないが女性も通っていることと話した感じで指導者が好印象だったのがここを選んだ理由だ。
休憩を入れて1日3時間の個別指導と1時間の全体練習と結構ハードだけど、その分実力が上がっているのが体感出来た。戦い方は前面に出て戦うわけではないので、一撃離脱が基本となるのだけど、盾を使って攻撃の捌き方はできないと危ないので普通に戦い方を習うことになった。併せて体術もやっているのでなかなか大変だ。
下見の時から他の練習生の視線が少し気になっていたけど、できるだけ気にしないようにしている。初日の練習が終わった後、他の練習生から「食事でもどうか?」と声をかけられたので、そのときは何とか断ったけど、翌日からはイチに迎えに来てもらうようにした。
結局帰りに迎えに来てもらうだけでなく、行きも送ってくれることになった。イチの道場の方が宿から近いのでちょっと申し訳ないけどとても嬉しい。帰りにいろいろなお店によって食事をしたり買い物をしたりするのも楽しかった。
さすがに迎えに来てもらうと声をかけてくることはなくなったけど、かなりの嫉妬の目でイチが睨まれていた。「なんであんな奴が・・・」とか聞こえてきたがイチのことを何も知らない人にそんなこと言われる筋合いはないわ。
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15日間の鍛錬が終わった後、ジェンと模擬戦をやってみたところ、お互いに実力が上がっているのが実感できた。剣さばきや鋭さが全く違っている。やった成果が実感できるのはうれしいね。
最初に考えていた通りこの後は狩りと道場での鍛錬を続けていく予定にしている。さすがに翌日に出かけるのはきついので1日休息をとってから狩りに出かけることにした。
ルイサレムの西の方には結構深い森があって、奥の方に行くと上~良階位の魔獣が出てくるらしい。ここからだと歩いて4~5時間かかるところなんだけど、軽減魔法を使うと1~2時間くらいで到着出来そうな感じ。それでも往復で3~4時間と考えるとさすがに日帰りは厳しいだろう。
森の近くには町という規模ではないけど、狩りをするムライオカという前線基地のようなところがあるようだ。そこからだと狩場まで60分ほどで着けるし、一応宿もあるらしい。ただ、元々野営地が集落のようになったとこで、ちゃんとした管理地ではないことからあまり治安は良くないようだ。
その辺りで狩りをする場合の拠点はさらに西に行ったところにあるムライという町なんだけど、ルイサレムまで戻ってくることを考えるとこっちからのバス路線はないのでちょっと厳しい。
「とりあえずムライオカに行ってみて良さそうだったらそこで、不味そうだったらどこかに拠点を建てることにしよう。」
走って移動している途中で今後の予定について話をする。
「今回は島で造った拠点を持って帰って来ているし、いろいろと魔道具も買ってるから場所さえちゃんと選べば見張りがなくても何とかなるんじゃないかと思っているんだ。」
「最初はちょっと警戒しないといけないけどね。でも本当に見張りが必要なくなればかなり楽になるわよね。」
「森からある程度離れたらたぶん大丈夫だと思うんだよね。もし魔獣がいたとしても離れたところならレベルも低いはずだしね。」
「とりあえず狙ってみたい魔獣は上階位上位の牙猪、大角牛、銀狼あたりかな?このレベルからは討伐すると討伐報酬が出るものも出てくるし、実績ポイントも今までのよりも多くなるんだよね。それに討伐の実績を作ると、素材収集の特別依頼を受けることもあるらしい。」
「まあ無理はしないつもりだけど、そのくらいの魔獣は倒してみたいわね。」
1時間半ほどかかって前線基地のムライオカに到着する。確かに町というよりは野営地という感じで周りに簡単な木の柵があり、いくつかの木造の建物とテントが設営されていた。バンガローのあるキャンプ場という印象だな。
宿は2軒あったんだけど、どちらも個室はなく大部屋での雑魚寝となるようだ。一応男女で部屋は分かれているけど、そのレベルなのに一泊一人500ドールとかなり高い。テントを張る場合も300ドール取られるようだ。どうやらこの町の護衛用に人を雇っているらしく、その代金が含まれるようだ。
食事ができるところもあるけど、こっちも値段がかなり高い。まあ、こんなところで商売するので危険手当とかまで入っているんだろうな。
「ここに泊まるならどこかで拠点出して泊まった方がいいと思うけどどう?」
「選択の余地なしね。」
「それじゃあ、拠点を建てられる場所を探しながら狩り場に行こう。」
ジェンも同じ考えだったので、すぐに狩場へと向かう。ルートから少し外れて野営できそうな場所を探しながらだったので急いだにもかかわらず30分ほどかかってしまった。
魔獣の多くは森の奥の方にいるけど、森の周辺まで出てくることもあるので、拠点を造るのはそこから少し離れたところがいいだろう。今日は4時頃まで狩りをしてから拠点を建てる場所に行くことにしよう。
レベルの高い魔獣は基本的には森の外周にはいないんだけど、例外もあるので索敵はちゃんとしないといけない。レベルの高い森の魔獣は隠密のスキルが高いことも多いのでより慎重にしなければならない。
あと他の冒険者と近すぎるのも獲物の取り合いとか、変なトラブルに巻き込まれる可能性もあるのでそちらにも注意しないといけない。獲物の横取りや場合によっては襲われる可能性も否定出来ないしね。
索敵で辺りを確認しながら少しずつ森に中を進んでいく。しばらくして見つけたのは牙猪だ。大きさは牛くらいとかなり大きい。
まず他に魔獣はいないかを注意深く確認。とりあえず戦闘中に後ろとかから襲われることはなさそうだ。頭への攻撃が有効らしいけど、表皮が堅くてなかなか貫けないみたい。ここは剣よりも打撃の方が良さそうなので武器を戦鎚に持ち替える。
ジェンとタイミングを合わせて魔獣の頭に風魔法で攻撃するとこちらに気がついて突進してきた。頭の一部がぱっくり割れているのでダメージは入っているみたい。突撃してくる進路に合わせて土魔法で足下に穴を掘り、足を引っかけたところで、ジェンが水魔法で押さえつける。このタイミングで近づいてから頭を槌鎚で殴りつけてとどめを刺す。
「とりあえず単体であればこのレベルでもまだ楽に倒せる感じだね。」
「魔法からの攻撃なので型にはまればかなり楽になるわね。」
「素材回収を無視したらもっと魔法で攻撃して楽にはなるんだけど、折角なら素材は確保しておきたいんだよね。まあ複数いる場合は調整していく感じかな。」
「ええ。とりあえず今のパターンで攻撃するけど、危ないと感じたときは魔法で直接攻撃するわ。」
その後も牙猪を1匹倒したところで銀狼を発見。狼なんだけど、集団行動をしないのでまだ上階位レベルになっているだけで、集団でいたらしゃれにならないというレベルになる。すばしっこい上に簡単な魔法も使ってくるらしい。
ある程度近づくと、こちらに気がついたみたいで襲いかかってきた。風魔法で攻撃を仕掛けたけど避けられてしまう。風魔法を使うらしいので読まれやすいのか?
すぐに自分が前に出て水魔法と風魔法の盾を展開してさらに自分の盾で最初の衝撃を受ける。さすがに三重の盾だと衝撃はかなり緩和できる。
このあとは盾で攻撃を防ぎながら攻撃を加えてみるけど、なかなか致命傷にはならない。この間にジェンが風と水魔法で攻撃してもらい、ひるんだところで首筋に剣をたたき込むことができた。さすがに切り落とすとかは出来なかったけど、致命傷を与えることが出来たようで、そのあと無事に倒すことが出来た。
正面からの戦いだったけど、大きな怪我もなく倒せたので上出来かな?さすがに治癒しないといけないレベルだけどね。普通だったらここで薬を使って出費がかかるんだろうけど魔法を使えるのは大きい。
最後の銀狼の毛皮は結構傷が入ってしまったのでその買取額はあまり期待できないが、3匹の大物を倒せてちょっとテンションも高い。普通に考えると大物は1日1匹倒せればいい方だしね。それ以前に収納バッグがなかったらこんなに狩っても持って帰られない。
結局この日は牙猪2匹、銀狼1匹、大偽狼、大狼、牙兎、大山猫を結構な数討伐することができた。今日だけで1万ドール近くはいきそうだ。
「やっぱりまだ決定力に欠けるなあ。一撃とは言わないけどもう少し攻撃力がないと集団で来られたらまずいんだよね。」
「でも、それはしょうがないんじゃない?素材確保を無視したらもっと強力な魔法を打てるんだし、素材をかなりいい状態で確保できるだけ十分だと思うわ。
前に他の人が狩った魔獣を見たけど結構酷いものも多かったわよ。階位と同じレベルの魔獣は倒すことができるという目安というだけで素材確保は別だからね。」
「まあ上階位になったばかりで上階位上位の魔獣を素材確保レベルで狩れるだけよしとすべきか。魔法がなければアウトだけどね。でも魔法がなくても戦えるくらいにはなっておきたいね。」
いったん街道から離れたところにある岩場の陰に移動する。ここだったら遠目には岩に見えるし、わざわざ見に来ないだろう。
拠点を出してから夕食の準備に取りかかる。今日は出来合のもので済ませることにしたけど、お湯を沸かしたりして一応温めて食べる。電子レンジが欲しいなあ。
快適に寝るために魔獣よけと、今回購入した防犯ブザーをセットしておく。一定の範囲に魔素を持つ何かが入ってきた場合に反応するようにセットすることができるものだ。消費する魔素が一晩で100ドールくらいというものだけど、何かにいきなり襲われるよりもいいし、睡眠を十分にとれるようになると考えると安いものだ。
今回は拠点のベッド用に今までのものよりも質のいいマットを購入してきていたので寝るのも快適だ。一つ7000ドールってかなりの出費になってしまったけどね。ジェンは「このくらいは欲しかったのよね。」と余裕な発言をしていたけど。
とりあえずいきなり襲撃されることはないだろうと言うことで防具関係もある程度外して眠りに就く。さすがにブーツは履いたままなのはしょうが無いけどね。もしもの時は一人が先に対応してもう一人が防具を身につけて交代するということにしている。
少し心配ではあったんだけど、襲撃もなく朝を迎えることができた。まだ眠りは浅い感じだったけど、あそこの相部屋より断然いいと思う。
昨日と同じように狩りをするが、やはり奥の方に行くと良階位の魔獣もいるみたいでちょっと危ないみたい。いずれは挑戦したいけど、今は上階位の魔獣で経験を積んだ方がいいだろう。索敵レベルが広がったので魔獣を探すのが大分楽になったのはありがたい。
5日間の狩りで牙猪、大角牛、銀狼だけでなく、このクラスで最強となる大熊も討伐できた。索敵でかなり大きな反応がでたので良階位の魔獣かと思ったんだけど、遠目に確認して分かった。ここでやらなければいつまでたってもできないと思い、攻撃をしかけることにした。
さすがに素材のことを気にしたらやられる可能性も高いので初っぱなから最大の魔力で風魔法攻撃を仕掛ける。この攻撃でうまい具合に片手を切り落とすことができたのはラッキーだった。このあと土魔法で誘導しながら魔法で攻撃を続け、最後は剣でとどめを刺す。狼や猪よりも突進力が低いので魔法を使って倒すのはまだ楽な方かもしれない。近づいてきたときにはかなり瀕死状態だったからね。
食事を作る手間はしょうがないけど、出来合のものを食べるようにするなら正直宿とあまり変わらない生活という感じだった。まあ食事だけがそのままだと冷たいというのだけが難点だ。
早めに狩りを終えた時は調理をしたりはしたけどね。でも簡単なコンロだけだとなかなか難しい。屋外で使えるいいコンロのようなものがあれば買うのもありかな?
それと浄化の魔法が使えるとはいえ、やはり気分的にはシャワーを浴びたい。ほんとに気分の問題だけなんだけどね。贅沢を言うとお風呂もほしい・・・。
やはり外に泊まっているので、魔獣に襲われないか緊張していたようだったけど3日目くらいにはだいぶ慣れてきた。まあ交代で見張りをすることを考えると緊張しているとは言え寝られるのは良い。
ほんとなら5日目の昼に切り上げて町に戻る予定だったんだけど、拠点も快適だったので5日目も狩りをして拠点に泊まってから翌朝に戻ることにした。
町に戻ってから役場に行って精算をしてもらう。買い取りの窓口に行ってから素材を出す場所を確認する。
「収納バッグもちか。結構な量を持ってきたな。お、結構上位の魔獣も狩っているじゃないか。これはこっちで買い取りでいいのか?」
「ええ、たしか牙猪、大角牛、銀狼、大熊の素材は実績ポイントになるんでしたよね?」
「ああそうだ。ただ買い取り価格は他の店よりは低くなるが問題ないか?」
「ええ、それでかまいません。」
「素材の状態も十分合格というレベルだ。これだったら下手に処理した素材を他の店に下ろすよりは高い値段にはなりそうだぞ。まあ100点満点の80点というくらいだがな。」
思ったよりも買い取り価格は満足出来るものだった。さすがに魔獣のレベルが上がってくると収入は変わってくるな。
この日は一日休息を取り、翌日から2日間は二人で復習をして、再び道場に行って鍛錬を行うというサイクルを繰り返すことにした。狩りの時に雨が降った場合は拠点で魔法の訓練などを行った。やっぱり雨の時の狩りはしたくないからね。
この途中でジェンの鑑定レベルがついに4になった。レベル4になると予想通り触らなくても鑑定ができるようだ。その他の効果については特にないみたい。自分も早く4にあげたいなあ。
対象物を見て意識するだけで鑑定できるので、魔獣の鑑定を行ってもらい、特殊なスキルがないかなどのチェックを行ってもらうことにした。もちろん気になるスキルについてはチェックして、討伐の時には気をつけるようにしている。
~魔獣紹介~
牙猪:
上階位上位の魔獣。森や草原に生息している猪の形状をした魔獣。体長は2キヤルドくらいの大きさで、獲物を見つけると突進してくる。
突進力が強力で、風魔法を使って方向を変えることができるみたいで突進を躱すのは難しい。ただし魔法で攻撃をされたという報告はされていないため、あくまで補助的な使い方しかしないと言われている。
頭の頭頂部が弱点だが、かなりの衝撃を加えなければ表皮を貫くことができない。また危険性も高いため、よほど自信が無ければ正面からの攻撃は避けた方がよいだろう。最初の突進を止めた後は周りを囲って徐々に体力を奪っていくのが有効となる。
素材としての買い取り対象は革で、防具の材料として広く使われている。牙は装飾品として加工され、肉はかなりの量がとれる上、人気も高いため買取額は高くなる。この魔獣と大角牛を上手に狩ることができるようになると、収入や能力的に一人前と判断する冒険者も多い。
大角牛:
上階位上位の魔獣。森や草原に生息している牛の形状をした魔獣。体長は2キヤルドくらいの大きさで、獲物を見つけると突進してくる。
突進力が強力で、風魔法を使って方向を変えることができるみたいで突進を躱すのは難しい。ただし魔法で攻撃をされたという報告はされていないため、あくまで補助的な使い方しかしないと言われている。
最初の突進を止めた後は周りを囲って徐々に体力を奪っていくのが有効となる。
素材としての買い取り対象は革で、防具の材料として広く使われている。肉はかなりの量がとれる上、人気も高いため買取額は高くなる。この魔獣と牙猪を上手に狩ることができるようになると、収入や能力的に一人前と判断する冒険者も多い。
銀狼:
上階位上位の魔獣。寒い地域の森に多く生息する狼系の魔獣。集団で行動することは稀で、繁殖期以外は単独行動をする。
牙と爪で攻撃してくるが、風魔法も使えるため遠くにいても油断はできない。木々の間を縦横無尽に動き回るため、魔法や弓の攻撃も当たりにくい。まずは動きを止めて接近戦に持ち込んだ方がよいだろう。
素材として牙と毛皮が使用されるが、毛皮の需要は高く、特に傷がないものは重宝される。肉は固く、臭いもきついため食用にはされていないが、食べることは可能。
大偽狼
上階位下位の魔獣。草原や森に生息する狼系の魔獣。1~3匹で行動することが多く、大きさも狼もどきよりも二回りほど大きいくらいで狼よりは小さい。
牙と爪もそれほど鋭くないが、その分攻撃された後の傷が治りにくい。群れで行動しているため連携されないように1匹ずつ確実に倒していく必要がある。遠距離攻撃が有効となる。
素材としての買い取り対象は上顎の牙と肉となるが、若干臭みがあり人気は低い。ただし思った以上に肉の量がとれるため単価は安いがそれなりの収入となる。
大狼
上階位下位魔獣で、草原や森に多く生息する狼系の魔獣。集団行動をすることが多く、多いときは10匹を超える群れになることがある。群れの数に比例して脅威度は変わり、10匹以上だと上階位上位~良階位下位と脅威度が一気に高くなる。
牙や爪が鋭いため攻撃には注意が必要。集団で襲ってくる場合は連携してくるため、リーダーと思われる個体を優先して倒した方がよい。遠距離攻撃の手段があれば遠くから攻撃して群れを分散させることが有効となる。
素材としての買い取り対象は上顎の牙と毛皮となる。肉は固く、臭いもきついため食用にはされていないが、食べることは可能。
牙兎
上階位中位の魔獣。森に穴を掘って生活しており、角兎の特徴である角はなくなり、体と牙が大きくなっている。耳が大きく、音に敏感なため、先に見つけるのは難しい。
獲物を見つけると一気に突進してくるが、その突進力のまま鋭い牙でかみついてくるため、最初の突進を止めることが重要。装甲は固くないので一度捕まえてしまえば討伐は容易となる。まずは動きを止めることができるかが鍵となる。
素材としての買い取り対象は肉となるが、角兎の肉よりは若干味が落ちる。
大熊
上階位上位の魔獣。森に生息しており、上階位では最強と言われる魔獣だが遭遇率は低い。最大で3キヤルドを超える体躯をもつものも報告されている。良階位の冒険者でも討伐には注意が必要。
最も恐れられるのは大きな体から振り下ろされる太い腕お攻撃で、爪に引っかかれただけでもかなりの怪我を負ってしまう。威力は岩をも破壊する。遠距離から魔法や弓矢による攻撃でできるだけ弱らせることが鍵となる。ただし、個体により水魔法を使うという報告もあり、遠距離の場合でも注意が必要。
素材としての買い取り対象は毛皮と肉であるが、肉は若干癖があるため買い取りの単価は低い。毛皮も服などには利用できないため、大きさの割には単価が低くなっている。
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