356 / 430
再編集版
43. 異世界374日目 車の購入を検討する
しおりを挟む
43. 異世界374日目 車の購入を検討する
翌日、車の購入を考えていたのでカサス商会へ。受付にアドバイザーの名刺を出すと、すぐに部屋に通されてカルニアさんがやってきた。まずは残りの魔符核を500個納めることにした。
「とりあえず言われていた魔符核の残り500個を作ってきましたので納めさせていただきます。」
「おお、ありがとうございます。まさかこんなに早く納めてくれるとは思っていませんでした。」
「実はですね、このあと他の国に行こうと思っているので、先に依頼分を収めようと思ったんです。さすがに今回のペースで納めてくれと言われても対応はできませんので、もし追加の場合は連絡してください。」
「そうでしたか、ちなみにどちらの国に行く予定なのでしょうか?」
「まだはっきりとは決めていないのですが、アルモニアかハクセンのどちらかを考えています。いろいろと情報を集めているところなので、おすすめの国とかありますか?」
「そうですね、その二つの国に行くという目的であれば見るところは大きく異なりますね。アルモニアは魔術、ハクセンは武術に力を入れている国ですから。」
「そうみたいですね。ただ今回は特に目的ははっきりしているわけではないですし、その辺の伝があるわけではないのでどこまで勉強になるのかは分かりませんけどね。」
「その二つの国であれば大きな都市にはうちの支店もありますので、少しは力になれるかもしれません。こちらも出来れば連絡を取りたいと思っていますので、お店がある町に着いたときにはご連絡を願いします。あとで支店のリストをお渡ししますね。」
「分かりました。ありがとうございます。
「国の形態は両方ともヤーマンと同じ王制ですが、ヤーマンよりは領を治める貴族の権限が強い感じですね。ナンホウ大陸や特にトウセイ大陸ほどではありませんけどね。
あとは季節を考えて移動しないと動けなくなる可能性もあります。ハクセンはまだ雪が少ないのですが、アルモニアは雪が多いですからね。どのくらい滞在されるか分かりませんが、季節を考えるとアルモニアに先に言った方がいいかもしれませんね。」
他にもいろいろとそれぞれの国について話しを聞いた後、車のことについて話しを聞く。車の運転には免許が必要らしいけど、運転自体は簡単なこと、試乗だけであれば免許がなくてもできること、新車購入の場合は納入に時間がかかることから先に車を頼んでも問題は無いようだ。
現在車を販売目的で生産している商会は世界でもまだ5社しかなく、この国で取り扱っているのはそのうちの3社のみのようだ。
販売だけは多くの店で行っており、購入を決めた後の注文生産と言うことになっている。カサス商会はそのうち1社に出資しているみたい。
「一応うちの店でも注文することは出来ますが、はじめて車を購入されると言うことですので、折角なら車の専門店でいろいろと見られた方がよろしいかと思いますよ。懇意にしている店がありますので行ってみてください。」
たしかにこっちの車のことはあまり分からないし、折角ならいろいろと比較するのはありかな?
「結構な値段もするみたいだし、紹介してもらったところの方が安心出来ると思うわ。」
「紹介状もお渡ししますので、変なことにはならないと思いますよ。」
「ありがとうございます。それではそこに行ってみようと思います。」
紹介状を受け取った後、簡単に食事にしましょうと誘われておごってもらう。
紹介された車の店はチューリッヒ商会という車関係のものを主に取り扱っている店だ。さすがに車が高級品となっているだけあって店もちょっと高級志向で入りにくい感じがする。
店に入ると、店員が出迎えてくれたんだけど、ちょっと場違いな感じ。店員も笑顔なんだが、ちょっと微妙な感じをしている。なんか両親に聞いた話が思い出される。
海外に旅行に行ったときに結構ラフな格好で行くことが多く、店に入っても半分放置される感じだったらしい。ゆっくり見ることができて楽だったけど、買うと言ったらかなり驚かれて、店員の態度が一変し、いろいろと勧められたりしたようだ。
高級店だとそれなりの格好をしているにもかかわらず、年齢的なものなのか、露骨にその態度は見えないが、やはり同じような感じだったみたい。
店内には車が数台展示されているんだけど、勝手に見ていいのかなあ?どうしようかと思っていると、若い担当者がやってきた。
「いらっしゃいませ。お車をお探しでしょうか?中古車でしょうか?新車でしょうか?」
うん、ここに来て車購入じゃなかったら何だというのだろう?さりげなく中古車を先に勧めてきたね。まあ自分でもこんな若い普通の服を着た男女がきても購入するとは思わないよね。
「とりあえずいろいろと見せてほしいんだけど。あ、これ紹介してもらった店から店長に渡してもらうように言われた手紙なんですが、お願いできますか?」
「???店長宛ですか?失礼ですが、どなたからの紹介でしょうか?」
「カサス商会のカルニアさんからです。」
「え?カルニアさんですか?支店長の?」
「支店長?店長とは聞いているけど、どうなんだろう?たぶんその方だと思います。」
「一応確認させていただいてもいいでしょうか?」
「いいですけど、開封はしないでくださいね。店長に直接渡すように言われていますので。」
手紙をチェックしていた店員はかなり慌てた感じで「こちらで少々お待ちください。」と言ってテーブルを勧め、奥に引っ込んでしまった。奥の方で「あの方達にお茶を出してくれ!さい・・・」と聞こえてきた。
少しして女性店員がお茶を出してくれたんだけど、なかなかおいしい紅茶だった。一緒にケーキも出てきてこれまたおいしい。やっぱり高級店だけあって出してくるお茶請けもひと味違うね。
しばらくお茶菓子を堪能していると、先ほどの店員がもう一人年配の人を連れてやってきた。
「ジュンイチ様、ジェニファー様。本日はわざわざご足労いただきありがとうございます。店長をしているチューリッヒといいます。カサス商会のカルニア様からのお手紙を拝見しました。車の購入をご検討されているということでよろしいですか?」
「ええ、中古にするか新車にするか、サイズについてもどうするのかも決めていないのでいろいろと話を聞かせてもらいたくてやってきました。」
「わかりました。私から説明させてもらいますがよろしいですか?」
「いやいや、店長自らだと気を遣いそうですから、最初に来てくれた店員の彼にお願いしたいのですがいいですか?」
「いや、このものはまだ新人でどこまで説明できるか分かりませんので・・・。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。分からないときは聞いてもらいますので。よろしくお願いします。」
「わ、わかりました。クーロン、くれぐれも粗相のないようにな。」
「は、はい。」
要望として冒険者としての狩りに使うことが前提であること、荷物の積載性はそこまで重視しなくていいので、少々悪い道でも走れる方がいいこと、燃費はそれなりにあればいいことなどを伝える。
いくつか候補があるらしく、カタログのようなものを見せてくれる。良い点だけでなく欠点もちゃんと伝えてくれるのでいい店員に当たったのかもしれない。
一番驚いたのは最新の車がかなり静かになっていることだった。以前の車は車軸とタイヤからかなり音が出ていたのでうるさかったんだけど、かなり改善されているようだ。これは期待出来るかもしれない。
やはり一度実物が見てみたいところだけど、残念ながら候補の車すべてが置いているわけではないようだ。現在の候補としては3台なんだけど、中古でも置いているものは2台のみだった。
とりあえず2台を見せてもらい、店の敷地で少し試乗させてもらう。ランクルのような感じの車で最大で5人乗れる上、後ろに荷台も付いている。魔獣を載せるならトラック対応の方が便利なんだけど、通常のパーティーの人数を考えるとこのような形のものが人気らしい。
型は違うけど最新のタイプについては郊外で走らせてもらったんだけど、地球の車くらいまで音が改善されていた。これなら車内でも十分に会話ができるな。
「この騒音を考えると前のタイプはないよね?」
「価格差は気になるけど、出来れば新型にしたいわよね。」
新車価格はそれぞれ180万ドールと280万ドールだ。中古だと程度にもよるけど、普通のレベルで100万ドールと150万ドールとなるようだ。中古ではまだ最新のタイプはないけど、もし出ても新型はあまり値段が下がらないだろうと言うことだった。逆に今の中古は値段が下がっていく可能性が高いようだ。
もう一台はその中間の価格という感じだ。ちなみにもう一台はスレインさん達が持っているものなのでまだ予想はできる。
注文してから納入までは普通は4週間くらいかかるみたいだけど、なんとか2週間で納めてくれるようだ。いったん持ち帰って検討してから明日また来ると連絡してから店を後にする。
「候補の3台は基本的にサイズ感は同じなんだよね。値段は大きさと言うよりは馬力と燃費の差という感じかな?」
「多少は大きくはなっているけど、そこまで使用感に差はなさそうなのよね。二人と言うことに限定すればもっと小さいのでも良いけど、人を乗せたりとかいうことも考えるとやっぱりこのくらいのサイズはほしいわよね。」
「話しを聞いた限りでは馬力は一番下のものでも十分みたいだから、あとは燃費をどう考えるかだね。馬力に比例して燃費は悪くなるからね。とりあえず中古という選択肢はないから新車になるけど、車を買う予算はどれでも大丈夫だよ。」
お金は特許代で毎月5万ドール以上入ってくるし、やっぱり魔符核の収入が大きいね。全部で300万ドールだからね。おかげで今は残金が500万ドールを超えている。ここで車を買ったとしても十分だろう。
「車の形とかまで考えると私が好きなのはスレインさん達が乗っているものかなあ?まあ元の世界ほど洗練はされていないけど、まだかわいい感じなのよね。」
「・・・かわいいの基準がよく分からないけど、まあここまで来たら後は好みなんだよね。一応その当たりで考えておいて、あとはもう一度話しを聞いて決定しよう。
ああ、あとミラーとか音楽かけられるようにとか細かい修正も頼んでみるつもりだよ。なぜかミラーも付いてないんだよね。」
いろいろと話し出したらきりはないけど、おおよその目星は付いたからまたお店に行ってから最終決定かな。
~チューリッヒSide~
二人が店を後にしたと聞いて、ほっとする。案内をしたクーロンも状況が分かっているのでかなり安堵しているようだ。他の店員は「何事か?」という表情をしていたが、クーロンが話をしたみたいでかなり驚いていた。
紹介状には二人はカサス商会のアドバイザーと、かなり重要な地位の方達であると書かれていた。無理は言わないが、できるだけ融通してほしいということだった。さらにコーラン会長のお気に入りとか。
カサス商会にはかなり世話になっているので、紹介状まで持ってきてもらったお客をむげにすることはできない。しかも支店長自らの直筆の手紙である。特別扱いはしなくていいと書いているが、どこまで対応すればいいのか・・・。
この後も下手に私が対応するよりは最初に担当したクーロンに任せてしまった方がいいのだろうか?二人は特に気にした風もなく、上機嫌で帰っていったようなので問題ないようだし。もしうまく売れるようだったらクーロンにはボーナスを出してあげないといけないだろうな。
~~~~~~~
翌日、朝食を食べてからすぐにチューリッヒ商会へ向かう。店に到着すると、すぐにクーロンさんがやってきた。
「いろいろと考えたんですが、やっぱり昨日乗った車ではなくて候補にあったクロッサ-2にしようと思います。価格はどのくらいになるのでしょうか?」
「手続きなど含めて新車で220万ドールとなります。」
事前に用意はしていたらしく、すぐに答えてきた。たしかスレインさん達は250万ドールで買ったとか言っていたよなあ。今は値段が少しは下がったんだろうか?でも新型とか言っていたはずだけど・・・。
紹介状を書いてもらったから値引きしてくれているのかもしれない。さすがにこれ以上の値引きをお願いするのはカルニアさんに悪いよな。
「わかりました。それでお願いしたと思います。ただ、いくつか付けて欲しい機能があるんですが対応可能でしょうか?」
「・・・どういったものでしょうか?」
「付けてほしいものは鏡なんですが、この位置とこの位置に付けて欲しいんです。イメージはこんな感じになります。できれば角度とか微調整できるように動かせるようにしてほしいんです。」
そう言ってルームミラーとサイドミラーの説明をする。
「これはどういうことに使うのですか?」
「ここにミラーがあると、走りながらでも後ろを振り返ることもなく確認することができます。なにか追いかけてくるとか言うときにもすぐに分かりますので便利だと思うんです。イメージは描いているとおりです。
あと、音楽の再生の魔道具を設置することは可能でしょうか?静かになるので音楽とかを聴きながら走りたいので。もちろん魔獣石がセットできるタイプでかまいません。」
「ちょっとお待ちください。」と言ってしばらくすると店長をつれて戻ってきた。同じような話をすると、かなり興味を示したようだ。
とりあえず車メーカーと相談してからとなるが、今の時点でどの程度の上乗せになるのかは不明との回答だ。おそらく数万ドールくらいだと言うことなのでお願いすることにした。まあしょうがないな。
契約書を作ってもらい、とりあえず本体分のお金を220万ドール支払うことにした。できあがりは2週間ほどになるようだ。泊まっている宿を伝えて連絡してもらうようにしておいた。
今聞いている話では10km走るのに少なくとも200ドールほどかかるらしい。一日の移動を考えると100~200kmとして経費が2000~4000ドールだ。やっぱり高いんだけどしょうが無いのかな。
ただ車に軽減魔法をかけて、さらに車の配線をこの間手に入れたものに変更すればかなり効率が良くなるのではないかと思っている。問題は配線を作るにはミスリルがいることだなあ。他の金属についてはなんとかなりそうだけど。高いけどミスリルの装備品を購入して使うか?まあそれは追々考えよう。
昼食にはあっさりとしたサンドイッチを食べてから町を散策。サクラに来てからバタバタだったのでなかなかゆっくりできなかったので今日くらいはゆっくりしたい。
いろいろと店を見て回り、衣類や雑貨を購入していく。やはり衣類はサクラが一番いろいろとそろっているようだ。まあ首都だしね。ただ・・・女性の買い物に付き合うのはやはりしんどいね。
夕食はちょっと豪華にステーキを食べに行くことにした。ちょっと格式のある店なので服もそれなりの格好でいかないといけないので、宿に戻って着替えてから行くことにする。一応コース料理となっていてお肉は大角牛のお肉だったが、いい具合に焼き上がっていておいしかった。
値段はやっぱり高かったけど、たまにはこういう料理を食べておきたいものだ。まあ副収入とかもあるからこんな贅沢ができるんだけどね。でもそれに溺れないようにしないといけない。
夕食の後は宿に戻ってからお風呂に入る。そのあと魔法の訓練をしたりしながら今後の予定などを話して就寝。
~クーロンSide~
俺はチューリッヒ商会という車販売店に勤めている。車が好きで、いろいろと勉強してやっと昨年採用されたところだ。まだ入って1年目でなかなか売り上げを出すことができなくて困っている。
車はもともとそんなに数が売れるものではないため、新規のお客は少なく、買い換えのお客が多いのがこの業界だ。ある程度顧客をつかむと定期的に売り上げを出すことができる。
買い換えの顧客にはすでに担当が決まっているため、新人の俺は新規の顧客を見つけるか、引退する先輩から顧客を引き継ぐしかない。車を買うような知り合いはもともといないからな。
このため店の雑用はすべて自分に押しつけられている。売り上げによって順位がつけられているので売り上げのない俺はいつも最下位だ。まあ雑用をすれば最低限の給料をもらえるので文句はないんだが、やっぱり車を売ってみたいものだ。
商会の方針としてお客さんに対しては正直に説明することをモットーとしているので商会の販売実績はそれほど高くないようだが、ここで働いている人達はそれでいいと考えている。知り合いの店の販売員はかなり強引に買い換えを勧めているという話も聞いているが、それは店の方針なので口を出すべきではない。
新規の顧客をつかまないといけないのは山々なんだが、購入しそうなお客が来ると大体は先輩達に先にとられてしまう。販売担当の店員は3人だが、購入しそうなお客が同時に3人も来ることはない。冷やかしでくるお客もいるんだが、対応しない訳にもいかないのがつらいところだ。
今日も若い男女の二人がやってきたが、どう考えても購入しそうな感じではないので冷やかしだろう。女の子はかなりかわいいが、男と一緒に来ている時点で手を出す意味もない。案の定、先輩達に担当を押しつけられてしまった。
「いらっしゃいませ。お車をお探しでしょうか?中古車でしょうか?新車でしょうか?」
どうせ買わないと思うが、ちゃんと対応しなければ店の評判が落ちてしまう。中古車だけでも買ってくれればいいんだが、中古車で安いものでも数十万ドールするので簡単に買えるものではないんだよな。
声をかけると、紹介状を持ってきたので店長に渡してくれないかと言ってきた。店長に?そんな簡単に店長に紹介状を渡すなんてできないぞ。誰からの紹介なのかと聞いてみると、カサス商会のカルニアさんと返事があった。カルニアさんって支店長の?
紹介状を受け取って確認してみると、カサス商会の刻印が目に入った。カサス商会はこの店もお世話になっているところで、この刻印は何度か見たことがあるので間違いはないと思う。もしかして本当なのか?
間違いがあってはまずいと思い、二人にはテーブルを勧め、大急ぎで店長のところへと向かう。係の人には最高級のお茶とケーキを出すように指示しておいた。
店長室に行って経緯を説明するが、やっぱり半信半疑だ。しかし手紙を見ると顔つきが一変し、中に書かれている手紙を読んでさらに顔がこわばっている。自分にも読むように言われて読んでみると、カサス商会のかなり重要な地位の人たちで会長のコーランさんにも一目置かれている人達らしい。あの二人が?見た目は若いが実は年配の人なんだろうか?
大急ぎで二人のところに行き、店長自ら案内を申し出る。もちろん新規顧客はほしいが、自分には荷が勝ちすぎている。そう思ったんだが、「いやいや、店長自らだと気を遣いそうですから、最初に来てくれた店員の彼にお願いしたいのですがいいですか?」と言ってきた。本気か?
結局自分が案内することになるが、緊張してうまくしゃべれない。ジュンイチさんとジェニファーさんも気を遣ってくれてなんとか普通に話をすることができる様になった。自慢ではないが、車に関する知識は他の人に負けない自信はあるのでできる限りその車の特徴と自分なりに気がついた問題点を説明していく。
候補となった車は4~6人乗りくらいのものから3種ほどに絞られた。価格は200~300万ドールとかなりの高額となるが、特に問題ないみたいだ。また維持費についても簡単に説明をしておく。
まだ免許は取得していないため、自分が助手席で指導しながら店内と郊外を少し走らせて体験してもらう。残念ながら候補の3台のうち2台しか試乗できなかったが、もう一台は知り合いが持っていると言うことだったので大丈夫だった。
店長から最速で仕上げるので20日以内にできる様に言ってかまわないと言われているのでそのまま伝えると、明日には返事すると言って帰って行った。
こう言って連絡がない人も結構いるんだが、翌日開店と同時に二人がやってきた。結局試乗はできなかったが、知り合いが乗っているというクロッサ-2にしたようだ。
購入は問題ないんだが、いくつか取り付けてほしいという要望があった。鏡の取り付けについては最初意味が分からなかったが、話を聞くと確かに便利そうなものだった。店長にも確認してもらい、メーカーに相談すると言うことになった。
このあと契約書を作成し、支払いをしてもらった。支払いは一括だったのでちょっと驚いたが、カサス商会の上の人であればそのくらいは持っているだろう。今まで手伝いで契約書を作ったことはあったが、自分の契約書を作れてかなりテンションが上がってしまった。
二人とも俺のことを気に入ってくれたようで、また買い換えるときには来るからと約束してくれた。目的は伝えたとおりなので、お勧めの車があるのならチェックしておいてと言われる。初めての顧客だ、大事にしよう。
翌日、車の購入を考えていたのでカサス商会へ。受付にアドバイザーの名刺を出すと、すぐに部屋に通されてカルニアさんがやってきた。まずは残りの魔符核を500個納めることにした。
「とりあえず言われていた魔符核の残り500個を作ってきましたので納めさせていただきます。」
「おお、ありがとうございます。まさかこんなに早く納めてくれるとは思っていませんでした。」
「実はですね、このあと他の国に行こうと思っているので、先に依頼分を収めようと思ったんです。さすがに今回のペースで納めてくれと言われても対応はできませんので、もし追加の場合は連絡してください。」
「そうでしたか、ちなみにどちらの国に行く予定なのでしょうか?」
「まだはっきりとは決めていないのですが、アルモニアかハクセンのどちらかを考えています。いろいろと情報を集めているところなので、おすすめの国とかありますか?」
「そうですね、その二つの国に行くという目的であれば見るところは大きく異なりますね。アルモニアは魔術、ハクセンは武術に力を入れている国ですから。」
「そうみたいですね。ただ今回は特に目的ははっきりしているわけではないですし、その辺の伝があるわけではないのでどこまで勉強になるのかは分かりませんけどね。」
「その二つの国であれば大きな都市にはうちの支店もありますので、少しは力になれるかもしれません。こちらも出来れば連絡を取りたいと思っていますので、お店がある町に着いたときにはご連絡を願いします。あとで支店のリストをお渡ししますね。」
「分かりました。ありがとうございます。
「国の形態は両方ともヤーマンと同じ王制ですが、ヤーマンよりは領を治める貴族の権限が強い感じですね。ナンホウ大陸や特にトウセイ大陸ほどではありませんけどね。
あとは季節を考えて移動しないと動けなくなる可能性もあります。ハクセンはまだ雪が少ないのですが、アルモニアは雪が多いですからね。どのくらい滞在されるか分かりませんが、季節を考えるとアルモニアに先に言った方がいいかもしれませんね。」
他にもいろいろとそれぞれの国について話しを聞いた後、車のことについて話しを聞く。車の運転には免許が必要らしいけど、運転自体は簡単なこと、試乗だけであれば免許がなくてもできること、新車購入の場合は納入に時間がかかることから先に車を頼んでも問題は無いようだ。
現在車を販売目的で生産している商会は世界でもまだ5社しかなく、この国で取り扱っているのはそのうちの3社のみのようだ。
販売だけは多くの店で行っており、購入を決めた後の注文生産と言うことになっている。カサス商会はそのうち1社に出資しているみたい。
「一応うちの店でも注文することは出来ますが、はじめて車を購入されると言うことですので、折角なら車の専門店でいろいろと見られた方がよろしいかと思いますよ。懇意にしている店がありますので行ってみてください。」
たしかにこっちの車のことはあまり分からないし、折角ならいろいろと比較するのはありかな?
「結構な値段もするみたいだし、紹介してもらったところの方が安心出来ると思うわ。」
「紹介状もお渡ししますので、変なことにはならないと思いますよ。」
「ありがとうございます。それではそこに行ってみようと思います。」
紹介状を受け取った後、簡単に食事にしましょうと誘われておごってもらう。
紹介された車の店はチューリッヒ商会という車関係のものを主に取り扱っている店だ。さすがに車が高級品となっているだけあって店もちょっと高級志向で入りにくい感じがする。
店に入ると、店員が出迎えてくれたんだけど、ちょっと場違いな感じ。店員も笑顔なんだが、ちょっと微妙な感じをしている。なんか両親に聞いた話が思い出される。
海外に旅行に行ったときに結構ラフな格好で行くことが多く、店に入っても半分放置される感じだったらしい。ゆっくり見ることができて楽だったけど、買うと言ったらかなり驚かれて、店員の態度が一変し、いろいろと勧められたりしたようだ。
高級店だとそれなりの格好をしているにもかかわらず、年齢的なものなのか、露骨にその態度は見えないが、やはり同じような感じだったみたい。
店内には車が数台展示されているんだけど、勝手に見ていいのかなあ?どうしようかと思っていると、若い担当者がやってきた。
「いらっしゃいませ。お車をお探しでしょうか?中古車でしょうか?新車でしょうか?」
うん、ここに来て車購入じゃなかったら何だというのだろう?さりげなく中古車を先に勧めてきたね。まあ自分でもこんな若い普通の服を着た男女がきても購入するとは思わないよね。
「とりあえずいろいろと見せてほしいんだけど。あ、これ紹介してもらった店から店長に渡してもらうように言われた手紙なんですが、お願いできますか?」
「???店長宛ですか?失礼ですが、どなたからの紹介でしょうか?」
「カサス商会のカルニアさんからです。」
「え?カルニアさんですか?支店長の?」
「支店長?店長とは聞いているけど、どうなんだろう?たぶんその方だと思います。」
「一応確認させていただいてもいいでしょうか?」
「いいですけど、開封はしないでくださいね。店長に直接渡すように言われていますので。」
手紙をチェックしていた店員はかなり慌てた感じで「こちらで少々お待ちください。」と言ってテーブルを勧め、奥に引っ込んでしまった。奥の方で「あの方達にお茶を出してくれ!さい・・・」と聞こえてきた。
少しして女性店員がお茶を出してくれたんだけど、なかなかおいしい紅茶だった。一緒にケーキも出てきてこれまたおいしい。やっぱり高級店だけあって出してくるお茶請けもひと味違うね。
しばらくお茶菓子を堪能していると、先ほどの店員がもう一人年配の人を連れてやってきた。
「ジュンイチ様、ジェニファー様。本日はわざわざご足労いただきありがとうございます。店長をしているチューリッヒといいます。カサス商会のカルニア様からのお手紙を拝見しました。車の購入をご検討されているということでよろしいですか?」
「ええ、中古にするか新車にするか、サイズについてもどうするのかも決めていないのでいろいろと話を聞かせてもらいたくてやってきました。」
「わかりました。私から説明させてもらいますがよろしいですか?」
「いやいや、店長自らだと気を遣いそうですから、最初に来てくれた店員の彼にお願いしたいのですがいいですか?」
「いや、このものはまだ新人でどこまで説明できるか分かりませんので・・・。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。分からないときは聞いてもらいますので。よろしくお願いします。」
「わ、わかりました。クーロン、くれぐれも粗相のないようにな。」
「は、はい。」
要望として冒険者としての狩りに使うことが前提であること、荷物の積載性はそこまで重視しなくていいので、少々悪い道でも走れる方がいいこと、燃費はそれなりにあればいいことなどを伝える。
いくつか候補があるらしく、カタログのようなものを見せてくれる。良い点だけでなく欠点もちゃんと伝えてくれるのでいい店員に当たったのかもしれない。
一番驚いたのは最新の車がかなり静かになっていることだった。以前の車は車軸とタイヤからかなり音が出ていたのでうるさかったんだけど、かなり改善されているようだ。これは期待出来るかもしれない。
やはり一度実物が見てみたいところだけど、残念ながら候補の車すべてが置いているわけではないようだ。現在の候補としては3台なんだけど、中古でも置いているものは2台のみだった。
とりあえず2台を見せてもらい、店の敷地で少し試乗させてもらう。ランクルのような感じの車で最大で5人乗れる上、後ろに荷台も付いている。魔獣を載せるならトラック対応の方が便利なんだけど、通常のパーティーの人数を考えるとこのような形のものが人気らしい。
型は違うけど最新のタイプについては郊外で走らせてもらったんだけど、地球の車くらいまで音が改善されていた。これなら車内でも十分に会話ができるな。
「この騒音を考えると前のタイプはないよね?」
「価格差は気になるけど、出来れば新型にしたいわよね。」
新車価格はそれぞれ180万ドールと280万ドールだ。中古だと程度にもよるけど、普通のレベルで100万ドールと150万ドールとなるようだ。中古ではまだ最新のタイプはないけど、もし出ても新型はあまり値段が下がらないだろうと言うことだった。逆に今の中古は値段が下がっていく可能性が高いようだ。
もう一台はその中間の価格という感じだ。ちなみにもう一台はスレインさん達が持っているものなのでまだ予想はできる。
注文してから納入までは普通は4週間くらいかかるみたいだけど、なんとか2週間で納めてくれるようだ。いったん持ち帰って検討してから明日また来ると連絡してから店を後にする。
「候補の3台は基本的にサイズ感は同じなんだよね。値段は大きさと言うよりは馬力と燃費の差という感じかな?」
「多少は大きくはなっているけど、そこまで使用感に差はなさそうなのよね。二人と言うことに限定すればもっと小さいのでも良いけど、人を乗せたりとかいうことも考えるとやっぱりこのくらいのサイズはほしいわよね。」
「話しを聞いた限りでは馬力は一番下のものでも十分みたいだから、あとは燃費をどう考えるかだね。馬力に比例して燃費は悪くなるからね。とりあえず中古という選択肢はないから新車になるけど、車を買う予算はどれでも大丈夫だよ。」
お金は特許代で毎月5万ドール以上入ってくるし、やっぱり魔符核の収入が大きいね。全部で300万ドールだからね。おかげで今は残金が500万ドールを超えている。ここで車を買ったとしても十分だろう。
「車の形とかまで考えると私が好きなのはスレインさん達が乗っているものかなあ?まあ元の世界ほど洗練はされていないけど、まだかわいい感じなのよね。」
「・・・かわいいの基準がよく分からないけど、まあここまで来たら後は好みなんだよね。一応その当たりで考えておいて、あとはもう一度話しを聞いて決定しよう。
ああ、あとミラーとか音楽かけられるようにとか細かい修正も頼んでみるつもりだよ。なぜかミラーも付いてないんだよね。」
いろいろと話し出したらきりはないけど、おおよその目星は付いたからまたお店に行ってから最終決定かな。
~チューリッヒSide~
二人が店を後にしたと聞いて、ほっとする。案内をしたクーロンも状況が分かっているのでかなり安堵しているようだ。他の店員は「何事か?」という表情をしていたが、クーロンが話をしたみたいでかなり驚いていた。
紹介状には二人はカサス商会のアドバイザーと、かなり重要な地位の方達であると書かれていた。無理は言わないが、できるだけ融通してほしいということだった。さらにコーラン会長のお気に入りとか。
カサス商会にはかなり世話になっているので、紹介状まで持ってきてもらったお客をむげにすることはできない。しかも支店長自らの直筆の手紙である。特別扱いはしなくていいと書いているが、どこまで対応すればいいのか・・・。
この後も下手に私が対応するよりは最初に担当したクーロンに任せてしまった方がいいのだろうか?二人は特に気にした風もなく、上機嫌で帰っていったようなので問題ないようだし。もしうまく売れるようだったらクーロンにはボーナスを出してあげないといけないだろうな。
~~~~~~~
翌日、朝食を食べてからすぐにチューリッヒ商会へ向かう。店に到着すると、すぐにクーロンさんがやってきた。
「いろいろと考えたんですが、やっぱり昨日乗った車ではなくて候補にあったクロッサ-2にしようと思います。価格はどのくらいになるのでしょうか?」
「手続きなど含めて新車で220万ドールとなります。」
事前に用意はしていたらしく、すぐに答えてきた。たしかスレインさん達は250万ドールで買ったとか言っていたよなあ。今は値段が少しは下がったんだろうか?でも新型とか言っていたはずだけど・・・。
紹介状を書いてもらったから値引きしてくれているのかもしれない。さすがにこれ以上の値引きをお願いするのはカルニアさんに悪いよな。
「わかりました。それでお願いしたと思います。ただ、いくつか付けて欲しい機能があるんですが対応可能でしょうか?」
「・・・どういったものでしょうか?」
「付けてほしいものは鏡なんですが、この位置とこの位置に付けて欲しいんです。イメージはこんな感じになります。できれば角度とか微調整できるように動かせるようにしてほしいんです。」
そう言ってルームミラーとサイドミラーの説明をする。
「これはどういうことに使うのですか?」
「ここにミラーがあると、走りながらでも後ろを振り返ることもなく確認することができます。なにか追いかけてくるとか言うときにもすぐに分かりますので便利だと思うんです。イメージは描いているとおりです。
あと、音楽の再生の魔道具を設置することは可能でしょうか?静かになるので音楽とかを聴きながら走りたいので。もちろん魔獣石がセットできるタイプでかまいません。」
「ちょっとお待ちください。」と言ってしばらくすると店長をつれて戻ってきた。同じような話をすると、かなり興味を示したようだ。
とりあえず車メーカーと相談してからとなるが、今の時点でどの程度の上乗せになるのかは不明との回答だ。おそらく数万ドールくらいだと言うことなのでお願いすることにした。まあしょうがないな。
契約書を作ってもらい、とりあえず本体分のお金を220万ドール支払うことにした。できあがりは2週間ほどになるようだ。泊まっている宿を伝えて連絡してもらうようにしておいた。
今聞いている話では10km走るのに少なくとも200ドールほどかかるらしい。一日の移動を考えると100~200kmとして経費が2000~4000ドールだ。やっぱり高いんだけどしょうが無いのかな。
ただ車に軽減魔法をかけて、さらに車の配線をこの間手に入れたものに変更すればかなり効率が良くなるのではないかと思っている。問題は配線を作るにはミスリルがいることだなあ。他の金属についてはなんとかなりそうだけど。高いけどミスリルの装備品を購入して使うか?まあそれは追々考えよう。
昼食にはあっさりとしたサンドイッチを食べてから町を散策。サクラに来てからバタバタだったのでなかなかゆっくりできなかったので今日くらいはゆっくりしたい。
いろいろと店を見て回り、衣類や雑貨を購入していく。やはり衣類はサクラが一番いろいろとそろっているようだ。まあ首都だしね。ただ・・・女性の買い物に付き合うのはやはりしんどいね。
夕食はちょっと豪華にステーキを食べに行くことにした。ちょっと格式のある店なので服もそれなりの格好でいかないといけないので、宿に戻って着替えてから行くことにする。一応コース料理となっていてお肉は大角牛のお肉だったが、いい具合に焼き上がっていておいしかった。
値段はやっぱり高かったけど、たまにはこういう料理を食べておきたいものだ。まあ副収入とかもあるからこんな贅沢ができるんだけどね。でもそれに溺れないようにしないといけない。
夕食の後は宿に戻ってからお風呂に入る。そのあと魔法の訓練をしたりしながら今後の予定などを話して就寝。
~クーロンSide~
俺はチューリッヒ商会という車販売店に勤めている。車が好きで、いろいろと勉強してやっと昨年採用されたところだ。まだ入って1年目でなかなか売り上げを出すことができなくて困っている。
車はもともとそんなに数が売れるものではないため、新規のお客は少なく、買い換えのお客が多いのがこの業界だ。ある程度顧客をつかむと定期的に売り上げを出すことができる。
買い換えの顧客にはすでに担当が決まっているため、新人の俺は新規の顧客を見つけるか、引退する先輩から顧客を引き継ぐしかない。車を買うような知り合いはもともといないからな。
このため店の雑用はすべて自分に押しつけられている。売り上げによって順位がつけられているので売り上げのない俺はいつも最下位だ。まあ雑用をすれば最低限の給料をもらえるので文句はないんだが、やっぱり車を売ってみたいものだ。
商会の方針としてお客さんに対しては正直に説明することをモットーとしているので商会の販売実績はそれほど高くないようだが、ここで働いている人達はそれでいいと考えている。知り合いの店の販売員はかなり強引に買い換えを勧めているという話も聞いているが、それは店の方針なので口を出すべきではない。
新規の顧客をつかまないといけないのは山々なんだが、購入しそうなお客が来ると大体は先輩達に先にとられてしまう。販売担当の店員は3人だが、購入しそうなお客が同時に3人も来ることはない。冷やかしでくるお客もいるんだが、対応しない訳にもいかないのがつらいところだ。
今日も若い男女の二人がやってきたが、どう考えても購入しそうな感じではないので冷やかしだろう。女の子はかなりかわいいが、男と一緒に来ている時点で手を出す意味もない。案の定、先輩達に担当を押しつけられてしまった。
「いらっしゃいませ。お車をお探しでしょうか?中古車でしょうか?新車でしょうか?」
どうせ買わないと思うが、ちゃんと対応しなければ店の評判が落ちてしまう。中古車だけでも買ってくれればいいんだが、中古車で安いものでも数十万ドールするので簡単に買えるものではないんだよな。
声をかけると、紹介状を持ってきたので店長に渡してくれないかと言ってきた。店長に?そんな簡単に店長に紹介状を渡すなんてできないぞ。誰からの紹介なのかと聞いてみると、カサス商会のカルニアさんと返事があった。カルニアさんって支店長の?
紹介状を受け取って確認してみると、カサス商会の刻印が目に入った。カサス商会はこの店もお世話になっているところで、この刻印は何度か見たことがあるので間違いはないと思う。もしかして本当なのか?
間違いがあってはまずいと思い、二人にはテーブルを勧め、大急ぎで店長のところへと向かう。係の人には最高級のお茶とケーキを出すように指示しておいた。
店長室に行って経緯を説明するが、やっぱり半信半疑だ。しかし手紙を見ると顔つきが一変し、中に書かれている手紙を読んでさらに顔がこわばっている。自分にも読むように言われて読んでみると、カサス商会のかなり重要な地位の人たちで会長のコーランさんにも一目置かれている人達らしい。あの二人が?見た目は若いが実は年配の人なんだろうか?
大急ぎで二人のところに行き、店長自ら案内を申し出る。もちろん新規顧客はほしいが、自分には荷が勝ちすぎている。そう思ったんだが、「いやいや、店長自らだと気を遣いそうですから、最初に来てくれた店員の彼にお願いしたいのですがいいですか?」と言ってきた。本気か?
結局自分が案内することになるが、緊張してうまくしゃべれない。ジュンイチさんとジェニファーさんも気を遣ってくれてなんとか普通に話をすることができる様になった。自慢ではないが、車に関する知識は他の人に負けない自信はあるのでできる限りその車の特徴と自分なりに気がついた問題点を説明していく。
候補となった車は4~6人乗りくらいのものから3種ほどに絞られた。価格は200~300万ドールとかなりの高額となるが、特に問題ないみたいだ。また維持費についても簡単に説明をしておく。
まだ免許は取得していないため、自分が助手席で指導しながら店内と郊外を少し走らせて体験してもらう。残念ながら候補の3台のうち2台しか試乗できなかったが、もう一台は知り合いが持っていると言うことだったので大丈夫だった。
店長から最速で仕上げるので20日以内にできる様に言ってかまわないと言われているのでそのまま伝えると、明日には返事すると言って帰って行った。
こう言って連絡がない人も結構いるんだが、翌日開店と同時に二人がやってきた。結局試乗はできなかったが、知り合いが乗っているというクロッサ-2にしたようだ。
購入は問題ないんだが、いくつか取り付けてほしいという要望があった。鏡の取り付けについては最初意味が分からなかったが、話を聞くと確かに便利そうなものだった。店長にも確認してもらい、メーカーに相談すると言うことになった。
このあと契約書を作成し、支払いをしてもらった。支払いは一括だったのでちょっと驚いたが、カサス商会の上の人であればそのくらいは持っているだろう。今まで手伝いで契約書を作ったことはあったが、自分の契約書を作れてかなりテンションが上がってしまった。
二人とも俺のことを気に入ってくれたようで、また買い換えるときには来るからと約束してくれた。目的は伝えたとおりなので、お勧めの車があるのならチェックしておいてと言われる。初めての顧客だ、大事にしよう。
20
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ
壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。
幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。
「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」
泣きじゃくる彼女に、彼は言った。
「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」
「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」
そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。
※2019年10月、完結しました。
※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる