【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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42. 異世界372日目 蠍の尾メンバーと遭遇すると・・・

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42. 異世界372日目 蠍の尾メンバーと遭遇すると・・・
 久しぶりにサクラに戻ってきたので役場に顔を出す。役場には知っている顔がちらほらいて、スレインさん達の顔もあった。こんな時間に珍しいなと思ったんだけど、なにか絡まれているような雰囲気だ。大丈夫か?

 スレインさんがこちらに気がついたみたいで、他の3人と一緒にこちらにやってきた。

「ジュンイチにジェン!久しぶり!! こっちに戻ってきたんだな。え、そうかそうか、そういうことならここでは無理だな。うちの家で話すことにしようか。みんないくよ!!」

 一気にまくし立てられてそのまま拉致されてしまう。どうしたんだ?なんか絡んでいたと思われる人たちもあっけにとられている感じだった。
 なにか事情があるようだったのでそのまままっすぐ家まで同行することになった。途中特に会話もないまま早足で家に向かう。

「は~~~~、ジュンイチ、ジェン、助かったよ。」

 家に入るとスレインさんがため息をつきながら言ってきた。

「事情が分かりませんが、何があったんですか?」

「とりあえずお茶を用意させるからそこで話そう。」

 リビングのテーブルに座って少し落ち着いたところでスレインさんが今回の事情を話し出した。

「話は2週間前くらいになるんだが、少し南の方の町から魔獣の討伐依頼が出たので行ってきたんだよ。冬の間に増えた魔獣の間引きみたいなものだな。
 数パーティーでの討伐でいろいろあったが他のパーティーで少し負傷者が出たくらいで目的は達成はできたんだ。それは問題なかったんだけど・・・そこで出会った男性にだな・・・えっと・・・まあ、はっきり言うと求婚されたんだ。」

「そ、それは、おめでとうございます?って、誰が求婚されたんですか?」

「「「「4人だ(よ)。」」」」

「4人?」

「そう、4人全員だ。」

「えっと・・・みなさん全員がそれぞれ求婚されたってことでいいのかな?」

「そうだ。ただ、相手は一人だ。」

 頭が追い付かない。

「えっと、確認なんですが、一人の男性がスレインさん達全員に求婚してきたということでいいのでしょうか?」

「そうだ。」

「かなりの女好きで何人にも求婚するような男性だったとか、すでに結婚していて妾に欲しいとか?」

 たしかこの国では重婚は認められていて、養う財力さえあれば問題ないということだったと思う。裕福な商人とかで妻が複数いたり、妾がいたりしていた筈だ。

「今まで他の女性に求婚したという話は聞いたことがないし、立場的にも簡単にはできない筈だ。求婚してほしいと思っている女性は多いと思う。」

「有名な人なんですか?」

「有名といえば有名だな。この国の第二王子なんだ。」

「第二王子!!」

 たしかこの間の建国祭でいた人の一人だよな。第二王妃の息子で21か22歳くらいだったと思う。

「経緯はよくわかりませんが、その第二王子に気に入られて王家に嫁ぐと?」

「いや、彼はいずれ王家から離れると言っているから、結婚することになれば平民ということになる。まあ、普通の平民と言うわけでもないがな。」

 貴族は形骸化しているから新たな爵位はできないってことかな?昔だと公爵家とかいうものになりそうだけどね。

「ちなみにスレインさん達の気持ちはどうなんですか?」

「「「「特に嫌いというわけではないし、好感は持てる(わ)。」」」」

 4人とも考えた後に出てきた言葉は同じだった。

「立場を利用して強引に迫ってくるわけでも、裏から手を回すわけでもなく、真摯に対応してくれているので悪い気分じゃないし、私たちを好きになった理由やどこが好きなのかなんかも一人一人にきちんと説明してくれている。
 4人と結婚しても十分養う財力はあるみたいだが、結婚してもそのままパーティーとして冒険者は続けてもいいと言っている。ただ、毎回ではないかもしれないが彼も一緒に同行したいと言っているんだ。」

「一緒にパーティーで戦ってもうまくいくんですか?」

「討伐の時に一緒に戦う機会があったんだが、彼は剣士で前衛ができるのでいい感じで連携が出来ていたんだ。なので一緒に戦うには問題はない。」

「えっと・・・どうしたいと思っているんですか?」

 「「「「どうすればいい?」」」」

 そう言われても、自分も恋愛関係なんて分からないよ・・・。でも嫌いではなく、好感が持てるのであれば前向きに考えてもいいのでは?

 今まで話を聞いた限りでは全員男性と付き合ったこともないようなのでどうしていいのかが分からないといった感じがするんだよね。

「わ、私に言われてもちゃんとした助言は出来ないわよ。」

 ジェンの方を見ると先に言ってきた。

「ジャニーとルリアンにも話しを聞いたんだが、相手が王子と言うこともあってうまく助言が出来ないと言われているんだ。」

「正直自分も恋愛についてはよくわからないんですが、自分の両親の話をしますね。人には長所と短所があるけど、短所を補うくらい長所があれば、そして一緒にいることが苦ではなく楽しいのであれば付き合ってもいいのではないか?と言っていました。
 もしだめだったらそのときに別れたらいいだけですし、付き合って初めて見えてくることもあると思うんですよ。
 「付き合う=結婚する」となるのであれば難しいかもしれませんが、検討期間ということができるのであれば付き合ってみてもいいのではないでしょうか?」

 とりあえず両親から聞いたことを話してみる。どれが正解なのか正直わからないよ。スレインさん達もかなり悩んでいるようだ。


 話をしているとお客が来たみたいなんだけど、ジャニーさんがどうするのか対応を聞きにやってきた。どうやら渦中の人のようだ。
 とりあえず部屋に通すことになったようで、しばらくすると3人の男性が入ってきた。後ろの二人は護衛のようだ。部屋にいる自分たちを見て驚いている。

「こんにちは。急な訪問申し訳ありません。ただ、どうしても確認しておきたくて寄らせてもらいました。
 不躾な質問で申し訳ありませんが、彼はどういう方なのでしょうか?あなたたちがあんなに親しげにしているというのはほとんどないと聞いています。」

 そう言ってこっちをにらんできた。まあ、とりあえず挨拶だろう。

「初めまして、ジュンイチと言います。こちらはジェニファーと言い、アースというパーティーを組んでいます。
 スレインさん達とは護衛任務でご一緒させていただいてからの縁で、時々訓練などにも付き合ってもらっています。」

 こちらの自己紹介を受けて慌てて返事をしてきた。

「ああ、申し訳ない。ちょっと混乱していて挨拶を忘れていたな。私はクリストフ・ヤーマンと言う。今はこの国の第二王子という立場だ。いろいろと事業もやっているが、冒険者としても活動を行っている。」

「・・・・」

「・・・・」

「ちょっと二人で話はできませんか?」

「いいだろう。」


 スレインさん達に確認してから客室を借りることになった。護衛と思われる人たちはさすがに初対面の人と話すのに殿下から離れるわけにはいかないと言うことらしい。ただここでの話は他言しないと言うことで納得する。

「ヤーマン国の第2王子ということですが、申し訳ありませんが、王族に対する言葉使いなどは分かりません。もしかしたら無作法があるかもしれませんが、ご容赦ください。」

「気にしなくていい。もう少ししたら王族からは外れることになるし、私自身も特に気にしないのでかしこまる必要はない。護衛の二人もその点は理解しているのでいきなり切りつけるようなことは絶対にない。」

「誤解があるようなので最初に話しておきますが、自分はスレインさん達とは仲良くさせていただいていますが、別に男女の仲というわけではありません。」

「そうなのか?その言葉に嘘はないだろうな?」

「それは神に誓って間違いありません。確かに魅力的な女性達だとは思いますが、そう言う関係ではありませんよ。先輩の冒険者として尊敬はしていますけどね。」

「それじゃあ一緒にいる女性が彼女なのか?」

「正直なところ、そうだったらうれしいですけどね。
 でも彼女はあくまで同郷というパーティーメンバーです。彼女には大事な人が故郷で待っているらしいので、故郷に帰るまで行動を共にしているという関係です。」

「・・・・」

「それでスレインさん達全員にプロポーズしたと聞いています。失礼を承知で聞きますが、本気ですか?」

「それは本気だ。今まで王族や金持ちと言うことでいろいろと色目を使ってくる女性がほとんどだったが、彼女たちは普通に接してくれた。もちろん自分の立場を知っている上でだ。一人の人間として普通に接してくれた。
 最初はそれだけで興味を持ったくらいだったのだが、接しているうちに彼女たちの魅力に惹かれていった。ただ誰かを選ぶことはできなかったし、今の彼女たちの関係を崩したくもなかったのだ。
 彼女たちはお金を稼ぐ目的もあるだろうが、冒険者としての活動にも人助けをするというはっきりとした目的を持って活動している。それを終わらせたくもないのだ。
 そして彼女達と一緒にパーティーを組んだ時に初めてパーティーとして自分の居場所ができたと思ったのだ。」

「自分の居場所ですか?」

「ああ。私が冒険者としてパーティーを組んでいるのは知っているだろう。そのメンバーは私の護衛の騎士だ。冒険者としてのレベルは私より高く、実力は優階位に相当する。そのため護衛してもらっているという形でしかない。
 戦いになっても私は必要なのか?といつも悩んでいた。
 今回蠍の尾のメンバーと行動した際に、初めてパーティーのメンバーとして役割を果たせたと思った。これが本当のパーティーなのだとわかった。」

「そういえばスレインさん達も初めてなのにいい感じに連携できたとか言っていましたよ。」

「本当か?それは嬉しいな。」

「その結果が4人へのプロポーズなんですね。」

「そうだ。彼女たちは好きだが、冒険者として活動する彼女たちが一番好きなのだと思う。」

 さすがに自分が人を見る目があるとは思わないけど、特に悪い感じはしないんだよね。

「わかりました。恋愛経験のない自分ですので、大層なことは言えませんがひとつだけ言っておきます。彼女たちはこれまで男の人と付き合ったことがないと聞いています。なのでどう対応していいのかわからないのだと思います。いやな感情は持っていないと思いますので、真摯に向き合えばきっと理解してくれると思いますよ。」

「ほんとか?」

「絶対とはいえませんが、自分も短い期間とはいえ、彼女たちとはいろいろと話しましたからね。」

「そうか、その言葉信じるぞ。」

「いえ、こちらも彼女たちには幸せになってほしいと思っていますので。でも彼女たちを不幸にするようだったら一生恨みますよ。」

「わかった。がんばってみるよ。お返しに君とジェニファーさんだったか?二人の関係も進展するように手伝うよ。」

「!!それは気にしないでください。自分たちはそういう関係ではありませんので・・・」

「そうか?まあいいが・・・」

 そのあとしばらくお互いのことを少し話したんだけど、思ったよりも普通の感じだった。母親も冒険者だったと言うことで、平民の生活や常識を持っているようだった。
 ただ彼女の母親は結婚する前に王妃教育がかなり大変だったようだ。第二王妃と言うことでまだ大目に見てもらえていたようだけど、それでも結婚するまで3年ほどかかったらしい。スレインさんたちはそこまで必要は無いらしいけど、最低限のマナーの習得の必要があるかもしれないと言っていた。

 一階に降りるとみんなは普通にお茶会みたいなことをやっていた。なんかえらく落ち着いているな?さっきまでのドタバタは何だったんだろう? 



 クリストフ殿下を見送った後は、みんなで少し話をする。話した感じだと、かなり好感を持てる人だったし、特に裏がある感じも受けないのでとりあえず付き合ってもいいんじゃないかといってみた。あくまでパーティーメンバーとして行動を共にする形にすればうまくいかない場合にも対応しやすいだろうと言うことだった。

 4人とも顔を真っ赤にしている。

「「「「そんなこといっても・・・」」」」

 思ったよりも遅くなってしまったし、宿も取っていなかったので今日も泊めてもらうことになった。

 夕食をいただいてからも話は続いたけど、自分は途中でダウン。ジェンにお願いして先に休むことにした。



 翌朝、昨日は遅かったのか、ジェンは起きる気配がない。起こしても悪いので庭に出て一人で鍛錬する。しばらくするとみんなも起きてきたようだ。用意してくれた朝食にパンとベーコンエッグをいただいてから少し話をする。

 ルイサレムの道場に通ったときに、スレインさん達の名前があったことを話すと、ちょっと渋い顔をされてしまったが、ため息をついて話し始めた。

「ジュンイチ、あそこに書かれているのは確かに私の本当の名前だ。他の3人も同じだ。」

「理由を聞いてもいいのですか?」

「ああ、それはかまわないよ。変に気を使われるよりは話してすっきりした方がいい。ただこのことは他言無用だ。」

 一呼吸置いて覚悟を決めたように話し始めた。

「私たちは南のモクニクの国の出身というのは前に話したかな?ただ本当はサビオニアというさらに南の国の出身なんだ。
 私たちはそこではいわゆる貴族と言われる家で育った。名前の最後に付いている”チカ”が家の名前だ。貴族と言っても地方の低い爵位だがな。
 その国はここでは考えられないくらい男尊女卑がひどい国で、女性には発言する権利は全くなかった。家によっては奴隷の扱いと変わらないくらいなこともあり、それでもとがめられることもなかった。娘は言われたとおりに他家に嫁ぎ、子供を産み、老いていくだけ。私の母は数多くいる妻の一人であり、私たち4人は腹違いの姉妹だ。」

「4人とも姉妹だったんだ。」

「家督を継ぐのは男性のみなので、私たちは他家とつながるためだけのただの道具だった。まあ最低限の生活はさせてもらっていたので、それについては領民には申し訳ないと思っている。
 年齢の近かった私たちはよく一緒に遊んでいたんだが、姉が他家に嫁ぐのを見てからいろいろと考えるようになった。そして4人で町を出ようと考えるようになったんだ。女性も普通に暮らせる国を目指すためにな。
 幸いうちの家はまだいい方で、最低限の教育はしてもらえたんだ。そして女性は戦いの捨て駒にされることも多く、武術についても結構やらされていた。それで他の国に行って冒険者になればなんとかやっていけるのではないかというもくろみもあって、そっちにかなり力を入れていたんだ。
 他家に嫁ぐための道具としての投資はしてくれていたのでそれを売ることで資金を貯め、いよいよ私にも結婚の話がくるようになったところでこっそりと町を抜けることにしたんだ。」

「よく無事にこの国まで来ることができましたね?」

「同じように考えている女性も多くてね。他の国に行くための手段はいろいろとあったんだよ。もちろん失敗して連れ戻される人の話もいろいろと聞いていた。私たちはある伝を使って北にあるモクニク国に脱出できたんだ。
 そこで私とアルドが成人するのをまち、冒険者登録を行った。そのあと北に移動しながら冒険者として経験をつみ、全員が成人したところでヤーマン国へやってきたというわけだよ。」

「途中で奴隷にされそうになったり、だまされそうになったりしたことはかなりあった。身の危険を感じたことはもう数えられない。それでヤーマンに来たときにはもう人はあまり信じられないようになっていたというわけさ。まだ女性に対しては普通に話せるようにはなったがな。男性に対してはジュンイチに会うまでは話すらまともにしなかったぐらいだよ。
 身分証明書の名前は変えられないのであくまで通称ということで今の名前にしたんだ。」

「そんなことがあったんですね。つらいことを思い出させて申し訳ないです。」

「いや、いいんだよ。それもあって彼と付き合うというのにはかなり抵抗があるんだ。」

「いっそのこと彼にも話してみたらどうなんでしょうか?王家を出るとはいえ、王子と結婚することになれば身元を確認されるかもしれません。」

「そうだな。付き合うつもりがあるなら話すべきか。それで付き合えないということになるのなら早めに分かったほうがいいな。
 わかった。四人でもう一度話をしてどうするか決めることにするよ。いろいろありがとう。」

「いい結果になることを祈ってますね。」



 今日の宿を取るために前にも泊まったシルバーフローへと向かう。前と同じくツインの部屋を取ろうとしたんだけど、残念ながら今日は部屋がいっぱいになっているようで、シングルも空いていないようだ。明日からなら部屋の用意ができるらしいのでとりあえずそちらは予約しておく。
 今日は他の宿に泊まるしかないかと思っていると、ジェンがフロントと話をして鍵をもらってきた。

「あれ?空いていたの?」

「他の部屋を確認したら、ダブルの部屋なら一つ開いていたからそこをとってきたわ。値段は同じ2000ドールだって。」

「そうなんだ。別の宿だとまた探すのが大変だったら部屋があってよかったよ。」


 部屋は7階になるのでエレベーターに乗って移動する。部屋に入ると同じような作りなんだけど、ちょっと豪華な感じになっている。そしてなぜか大きなベッドが一つしかない。

「あれ?なんでベッドが1つしかないんだ?」

「ダブルって一つのベッドに二人で寝る部屋って言う意味よ。」

 なにを今更言ってるの?というような顔をしてジェンが答えてきた。

「ええ~~~!それはさすがにまずいって。ツインの部屋でもかなり危ないのに、同じベッドなんて無理、無理!!

 あ、下に敷くマットもあるからそれで寝てもいいか。」

「まあ、それはあとで考えるとしてとりあえず夕食に行きましょう。」


 夕食を終えてからお風呂で久しぶりの大浴場を堪能する。部屋に戻ると、出しておいたはずのマットがなくなっている。どういうことだ?

「さっき係の人がやってきたんだけど、ジュースをこぼしちゃって洗いますと言って速攻でマットを持って行かれてしまったの。」

「ええ~~!魔法の洗浄ですぐに綺麗になるのになんで?」

「言う暇もなく持って行かれたのでしょうがなかったのよ。まあベッドが二つ並んでいると思って寝ればいいだけだから大丈夫よ。」

 たしかに大きなベッドなので二人が寝ても十分な広さはあるけど、同じ布団と言うだけでかなりまずい。寝られるような気もしない・・・。


 魔法の訓練などをしてから寝ることになったんだけど、やっぱりなかなか寝付けそうにない。そう思っていると、布団に入ったジェンはそうそうに眠りについたようだ。「なんだかなあ。」と思っていたんだが、そのまま眠りに落ちていたようだ。



 ふとなんか柔らかい感触で目を覚ます。なんだ?と思うと、ジェンだった。なんでジェンがすぐ横にくっついてきているの?そして胸が当たっているんだけど・・・。夕べ寝る前に枕で仕切っていたはずなのになんで無くなっているんだ?

 固まったままどうしようかと思案していると、ジェンの目が開いた。

「あ、おはよ。」

「・・・おはよ・・・。」

「夕べはすごかったわね。」

「・・・わざと言っているだろう。何もしてないぞ。」

「そのくらいいいじゃない。横にこんなかわいい女の子が寝ているのに速攻で寝てしまうなんてちょっと失礼よ。」

「自分でかわいいって言うか・・・。否定はしないけど。昨日もいろいろとあって疲れていたんだからしょうがないだろう。
 それにジェンの方が先に寝てたよね?そしてなんで自分に抱きついているんだ?」

「抱き枕。うーん、抱き心地はイマイチかな?」

 体を擦り付けてくる。まずいよ。

「お願いだから、あまり刺激を与えないでくれ・・・」

 なんとかジェンの手を振りほどいてトイレへ。やばかった・・・。ほんとにやばかった・・・。


 この日の用事を済ませてから再びシルバーフローに戻ってきたけど、今日からはツインの部屋になったので気分は大分楽だ。やはりダブルベッドに寝るのはさすがに精神的にきつい。昨日はその前日あまり寝ていなかったことと、結構疲れていたからすぐに眠れたけどね。

「ダブルの部屋じゃ無くなってなんかうれしそうね。」

 なんかジェンが怒った感じで言っていた。

「いや、それは、やっぱり気になって眠れなくなるからね。」

「昨日ぐっすり眠っていたのは誰だったかしら。ダブルの部屋の方がちょっと豪華なのに・・・。明日からまだダブルの部屋にしない?」

「勘弁してください。あと、それ普通は男の方が言う台詞だからね。何もしないからとか言って。」

「どうせ私には誘惑する魅力がないみたいだから大丈夫でしょ?」

「いや、魅力ありすぎるから困るんだ。って何を言わせるんだ!」

「あ、いや、そうなの・・・?まあ、それならツインの部屋で勘弁しておいてあげるわ。」

 なんなんだか・・・。大切な人がいるというならもっと自分を大事にしてほしいよ。自分が誘惑?に負けて襲い掛かったらどうするつもりなんだよ。


~ジェンSide~
 前にも泊まっていた宿のシルバーフローに泊まろうと行ってみたらツインもシングルも満室と言われてしまった。どうも他国から団体の客が来ているみたいで今日までは空きがないらしい。
 諦めて他の宿にしようかということになったんだけど一応聞いてみたらダブルの部屋なら空いていると言われたので取ってもらうことにした。
 イチに話すとあっさりと泊まることになったので、「ダブルでも気にしないのかな?」と思ったら意味が分かっていないだけだったみたい。そのあとかなりうろたえている姿は面白かったわね。

 拠点用のベッドマットのことに気がついてしまい、これを出すことになってしまったのでイチがお風呂に入っている間に洗浄をお願いして持っていってもらった。
 戻ってきたイチはかなり悩んでいたが、諦めてベッドに入ってきた。しばらくドキドキしていたのだけれど何もしてこない。ふと見ると本気で寝ていた・・・。

「は~~~。」

 まあ、そうなるかもとは思ったけどね。そんなに魅力ないかなあ。同じベッドで寝ているのに速攻で眠られる?手を出して欲しいわけじゃないけど、ちょっと悲しくなってしまう。ご丁寧に間に枕で仕切りまで作ってるし。枕をよけてイチにくっつくと何故か安心できた。やっぱり好きになってるのかなあ?



 翌朝起きるとイチが固まっていた。知らないうちにイチに抱きついたまま寝ていたようだ。ちょっと冗談を言ったら怒られてしまった。でも私のこと可愛いとは思ってくれているみたい。だけどちょっと刺激が強かったみたいだった。イチ、ごめんね。


 この日の夜はツインの部屋になったんだけど、うれしそうにしていたのでちょっと嫌みを言ってしまった。ダブルの部屋にしようかと提案したけど魅力的すぎて困ると言っていた。魅力を感じていないわけではないのね。顔がにやけるのを必死で耐えるしかなかった。

 嫌われてはないと思うけど手を出そうとしないのは奥手だから?私から言わないと進展はしないのかなあ。日本人はあまり積極的に行かない人が多いというのも聞いたことがあるからイチもそうなのかなあ?
 今のままでいいと思っている自分もいるし、なにか進展させたいと思っている自分もいる。私ってこんな性格だったかなあ?



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