【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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41. 異世界366日目 1年過ぎた春

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41. 異世界366日目 1年過ぎた春
 今日は2月5日だ。これはこっちの世界に転移されてきた日である。もう1年たったんだなあ。

「おはよう。」
「おはよう!」

ジェンに声をかけると元気な挨拶が帰ってきた。

「今日がこの世界に来て1年目だよ。最初はどうなるかと思ったけど、なんだかんだいいながら異世界生活を楽しんでいるんだよなあ・・・。」

「そうね。私も最初はどうなるのか、そして帰れなかったときはかなり落ち込んだけど、今は楽しめるようになっているわ。イチのおかげね。」

「いやいや、自分のおかげというわけでもないだろう。」

「ううん、たぶん一人だったらどうなっていたか分からないもの。同じところの出身の人がいるだけでも安心感が違うし、いろいろと助かっているわ。ありがとう。」

「どういたしまして?」

「どうして疑問形なのよ!

 もう!

 でも今日はこの世界に来たというのもあるけど、私たちが会った記念日でもあるのよね。会話はしていないけど。」

「まあそう言われてみればそうだね。」

 一年前にこの世界に来た時は旅行気分で楽しむだけだった。それがまさかそのまま居つくことになるとは思わなかったよ。いずれ戻れるという期待があるからまだ落ち着いているんだろうけどね。
 ただ、元の世界に戻ったら記憶がなくなるというのがつらいよなあ。ジェンのことも忘れてしまうのかな?ただ、ここまで長く異世界にいることもなかっただろうから、もしかしたら少しは記憶に残るかもしれないしね。

「どうしたの?急に黙り込んじゃって。」

「あぁ、一年経ったんだなあって、一年前からのこと思い出していたんだ。いろいろあったなあって。」

「ほんとね。会った時にまさか一緒に住むことになるとは思わなかったわ。ふふふ・・・。」

「なんか言い方が怪しい感じだけど、自分もまさかこんなことになるとは思わなかったよ。」



 朝食を食べながら今後の予定について話をする。

「そろそろ季候も良くなってきたから、他の国に行ってみてもいいかもしれないと思っているんだけど、どう思う?」

「いいわね。国の情勢を考えたら東の大陸はちょっとハードルが高そうだから、この大陸の他の国か、足を伸ばしてナンホウ大陸の国かしらね。
 でもまずはこの大陸のアルモニアかハクセンのどちらかがいいと思うわ。この国との交流も深いから情報も多いし、文化もそれほど大きく違わないみたいだからね。
 あとアルモニアはヤーマン語だけどハクセンはハクセン語なのよね。かなり近い言葉なのでヤーマン語でもある程度は通じるみたいだけどね。ハクセンでも公用語もあるからなんとかなると思うけど、もう少しハクセン語を上達したいところね。」

「たしかにあまり知らない土地に行くのは怖い面はあるね。どっちにしろいったんサクラに行ってから情報収集してから決めた方がいいかな。車の購入とか、装備の更新もしないといけないからね。」

 お金もある程度そろってきたので装備の更新や車の購入を考えているんだけど、やっぱりサクラの方が選択肢が多そうなんだよね。

「そうね。まずはサクラに移動することからね。この後バスの確認に行きましょう。あともう少し本腰入れて言葉を勉強していったほうがいいかもね。特にイチは・・・。」

「が、がんばります。」

 語学の習得速度についてはジェンにはかなわないから何も言えない。



 バスの状況を確認すると2日後にちょうどいい便があったのでこれで移動することにした。今回は通常のバスではなく、特別便で行くのでサクラまでは5日間で到着できるし、バスの乗り換えもないので大分楽になるはずだ。
 お金はかかるけど、今はそこまで気にしなくていいだろう。それよりも移動時間を短くして時間を有意義に使った方がいい。以前とは考えられないくらいのお金の使い方だね。お金も重要だけど、「一番重要なものは時間だから、少しのお金で時間を短縮出来るなら使った方がいい」というのは小さい頃から言われてきたからね。
 バスの予約をしたあとは、オーマトの町を散策していろいろと買い物を済ませる。香辛料関係はこっちの方が安くて充実しているからね。

 翌日は宿でひたすら魔符核を制作する。効率も大分上がってきているんだけど、連続だと精神的にきついので間で稽古をしたり買い物に行ったりして気分転換をする。
 明日には移動なんだけどオーマトの町はあまり縁がなかった感じだなあ。悪い町でもないんだけど特に特徴もなかった感じだ。最初がこの町だったらまた違ったんだろうけどね。



 翌朝は起きてから荷物の確認をしてバスに持ち込むものを選別する。人前であまり収納バッグを使うのはまずいからね。
 朝食をとった後、バス乗り場に向かうと、すでにバスの準備は出来ていた。早速乗り込んでみると今回乗るバスは中央に通路があってその両側に1席ずつの8列で16人乗りだ。バスの大きさは今までのとあまり差が無いのでかなりゆったりとした造りになっている。
 もちろんトイレも完備されていて、前のものよりも広くて助かる。各席にはカーテンも付けられているので個室感覚になるようだ。護衛には2名が乗っているので何かあっても大丈夫だろう。
 もちろん走る速度は速いんだけど、走っている時間も長くなるので朝の出発も早いし、夜の到着も遅くなる。その分バスでの時間が快適に過ごせるようにシートもかなり考えられているようだ。

 酔い止めの魔法はすでに習得しているので、バスではいつも通り勉強をしていた。今は高校で習う基本的な勉強は終わり、応用に入っている。分野によっては大学の内容も確認していかないといけないだろう。

 医学についても専門書を読み始めているんだけど、本が英語なのでなかなか大変だ。英語は喋られるようにはなったけど専門書は知らない単語も多いので時間がかかるのはしょうがない。これはジェンも同じようだ。
 こちらの医学書も読んでみたんだけど、自分達が読めるところの本だとレベルが低すぎて役に立たないからね。

 神学については正直これ以上どうやって上がるのかわからない。神の教えや神話や伝承とか読んでここまで上がってきたけど、あらかたの本は読んでしまったんだよなあ。失われた伝承とかがあるんだろうか?あとは祈りの回数とかっていうのはやめてほしいよな。
 おそらく教会とか国とかに保管されている本とかを読まないとだめだと思う。正直読むのは諦めるしかないだろうな。

 一番の問題はどの程度でレベルが5になるのか分からない事だ。次のレベルまでの経験値とかが出てくれたらいいのにね。そしたらどれをしたら上がるのかわかるのになあ。鑑定5でそんな機能がつけばいいのに・・・。ゲーム的な考えが抜けない・・・。

 夜は宿で魔符核の制作を行い、サクラに到着する前に収める予定だった残りの500個分の制作を達成する。かなり疲れたけどなんとか全部作れてよかったよ。

 そしてサクラに到着する前に医学のレベルがあがり、自分も鑑定レベルが4になった。やっと遠くから鑑定できるようになったよ。鑑定は使う回数でレベルが上がるわけではないから大変なんだよな。



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