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40. 異世界341日目 上位の魔獣を狩りながらサクラを目指す
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40. 異世界341日目 上位の魔獣を狩りながらサクラを目指す
年始の休みの後、再び訓練を開始しているけど、今回はそれぞれ槌と杖の鍛錬の比重を上げている。やっぱりこっちの武器もある程度レベルを上げておかないと、レベルの高い相手には使えないからね。
良階位の魔獣を考えるともっとパーティーメンバーを増やすのもありなんだけど、高階位のレベルに二人だけのパーティーがいないわけではないんだよね。それに人数が増えるといろいろと問題も出てきそうなこともあり、ジェンと二人でやっていくことにした。
それに自分達が突然元の世界に戻ってしまうという可能性もあるし、それが魔獣と戦っている時とかだと残ったメンバーは最悪だしね。
「おはよう。真剣な表情でどうしたの?」
朝早めに起きてしまったのでソファーで考え事しているとジェンが起きてきた。
「ああ、おはよう。ごめん、起こしたかな?パーティーメンバーのことを考えていたんだ。」
「パーティーは二人で頑張るってことにしたんじゃなかった?私たちの秘密もあるし、変な人に入られても困るからね。」
「うん、それはそうなんだけど、せめてゴーレムとか従魔みたいなことはできないのかなって思ってね。欲しいのは盾役だから、少々動きが鈍くても、それだけでも優位にはなるかなあと思ったんだ。」
今は土魔法である程度誘導しているけど、魔獣のレベルが上がってくるとさすがに土魔法の壁だと効果があまりないように思う。そう考えると最初の突撃とかに耐えられる盾役が何とかならないかと考えている。
「そういうことね。でもそんな魔法はなかったでしょ?」
「確かにないようだけど、魔法はイメージの産物だからもしかしたらと思ったんだよ。」
「まあ、どっちにしてもすぐには無理だろうから、まずは私たちのレベルを上げるのが最優先なのは変わらないわね。」
「まあね。」
「あぁ、あと町を移動する話だけど、今日バスの予約にいこうと思ってるよ。サクラの方はまだ残雪があるので厳しいみたいだけど、オーマトまではもう雪もないみたいだからね。」
「わかったわ。」
「バスの日程にもよるけど、今日が最後の訓練になって、明日からは挨拶や買い出しとかをする感じになるかもしれないよ。」
「まあ1日あれば十分だと思うけど、少なくとも今日までは訓練をするって事でいいのよね?」
「うん、バスは長くても5日おきくらいには出ているみたいだから大丈夫だと思う。すぐにバスがとれない場合は訓練の日程を延ばすことになるかもしれないけどね。」
着替えを済ませてから宿で朝食をとった後、バス乗り場へと向かう。
バスの予定を確認すると、この時期はまだ移動する人が少ないせいかバスの本数が前よりも少なかった。雪解けを待つ間に魔獣も増えているのでその掃討にも時間がかかっていると言うこともあるようだ。
値段もちょっと高くなっているのは護衛の人数が多くなっているせいみたい。それでも3日後に出発の便を予約することができたのでよかった。
ジェンを送り届けてから自分も通っている道場へ。夕方までみっちり訓練をしてから終了となる。
「短い間でしたがお世話になりました。」
道場主のカテナさんと師範代のカルタニックさんに挨拶する。
「もし良かったら道場の練習生だったことの証明にここにサインをしてもらえないか?上階位以上の冒険者にはお願いしているんだ。ぶっちゃけていうと道場の宣伝を兼ねているんだよ。」
カルタニックさんがそう言って木の板を出してきた。
「宣伝になるんですか?」
「まあ青田刈りのような感じなんだが、ある程度名前が売れると名前を掲載させてもらっている。そうそう、全員ではないが、紹介してもらったという蠍の尾のメンバーのサインもあるぞ。」
そういえば道場の隅の壁に名前が掛かった札があったな。練習生のものかと思っていたんだけど、ここで習った人のものだったのか。あまり見ていなかったな。
「えっと、イントさんのがこれだな。」
そこに書かれていたのは「インマルトチカ」と書かれた名札とその横に良階位冒険者蠍の尾メンバーという説明があった。
他のサインも見てみると、どうやら良階位以上の冒険者や世間的に有名になった人のものが掲載されているみたい。有名人のサイン色紙みたいなものなのかな?うちの道場はこんな有名な人が習ったところなんだぞと言うアピールなんだろうな。
「インマルトチカというのがイントさんの本名と言うことなんですか?」
「ああ、私もこれを書いてもらうときに初めて知ったんだけどな。」
まあ名前が長いからそういう通称で呼ぶのもありだろうけど、最初の自己紹介から通称だったんだよね。冒険者間では通称の方が重要というのも分かる。
挨拶を終えてからジェンを迎えに行くと、ジェンも同じようにサインを求められたようだ。
「スレインさんの名前が『スレーインチカ』ってなっていたので別人かと思ったわ。」
「イントさんもインマルトチカってなってたよ。チカっていうのが名字みたいなものなのかな?ということは姉妹なのか?」
「そうかもしれないわね。でも何も言ってこないのならあえて聞かなくてもいいんじゃないかな?話したくないこともあるかもしれないしね。」
「まあそうだよね。それを知ったからと言って付き合い方が変わるわけでもないしね。」
翌日から旅の準備と挨拶回りをすることにした。しばらく海から離れるので海産物はある程度確保しておきたい。内陸の町でも売っているけど、やっぱり鮮度や種類が違うからね。
港に行ってガバナンさんを訪ねると、ちょうど漁から戻ってきたところだった。町を移動するので新鮮な海鮮を購入したいことを説明すると、他の漁師にも声をかけてくれた。
小さいけど収納バッグがあるので鮮度だけは大丈夫と説明すると、半端ないくらい持ってきて困ってしまったくらいだ。そのまま話が終わらなくてお昼までごちそうになってしまったけどね。
お陰で新鮮な魚や貝がかなりいっぱい手に入ったのでしばらくは海産物には困らないだろう。代金もかなりおまけしてくれたので助かったよ。
そのあとカサス商会に行って受付に行くとすぐにステファーさんがやって来て支店長室に連れて行かれてしまった。
「こんにちは。今日は挨拶と今後の予定について確認に来ました。」
「なんか新しいものでもできたって訳ではなさそうだね。ちょっとは期待していたんだけどね。」
「いろいろとやってはいるんですが、なかなか売れそうなものが出来ないんですよね。
えっと、実はそろそろ町を移ろうと思ってまして、その場合魔符核はどのように納入すればいいのかを確認したいと思いまして。」
「季候も良くなって来たから、そろそろそんな話が来るかとは思っていたがね。
コーランも冒険者なのでその辺りは織り込み済みだったみたいでね、前に来たときに伝えるのを忘れていたので話すように言われてたのさ。
それで魔符核はどこの町でもいいからカサス商会に下ろしもらえればいいさ。ただ輸送とかのことを考えるなら出来るだけ大きな町の方がありがたいね。もともと納期についてもかなりアバウトだったから、二人の予定に合わせて下ろしてもらえればいいさ。
あと他の国に行く場合は納品などについては相談してくれと言っていたからそこはお願いするよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「ただ、他になにかいいものがあったらすぐに言っておくれ。あたしに言ってもらうのが一番ありがたいんだが、さすがにそういうわけにはいかないだろうからね。ただこのことについては大きな町のお店限定だね。
サクラ、ラーマト、アーマト、ターマト、オーマト、オカニウム、ルイサレムくらいで国境の町サイレウムもぎりぎり大丈夫というところかね。」
「何か出来たらそのときは連絡しるようにしますよ。」
ちなみに重量軽減バッグの売れ行きはかなりいいみたいで、最初は買い替えのタイミングで買っていく感じだったけど、その性能を確認した人から口コミで広がっているらしい。
同業者が研究を始めたみたいだけど、もちろんそんな簡単にはできないようだ。まあ、重さを軽くする概念と文字で二重に分からなくなっているだろうからね。
翌日、カルミーラ商会に行き、ショウバンさんに取り次いでもらう。町を移動すること、サクラの町に着いたらオークションに出品することをお願いしておく。ショウバンさんから手紙を預かり、名刺と一緒に手紙を渡せば分かるはずだと言ってくれた。
オークションは2月の末くらいなので少なくとも10日前には持っていくように改めて言われる。検品があるので、普通はもっと前に出さないといけないようだけど、そこは老舗の店なのでなんとかしてくれるらしい。
役場では知り合った冒険者達にも声をかけていく。他の冒険者達の大半は2月以降に移動するらしく、もうしばらくはこの町に滞在するみたいだ。
ルイサレムの町を出てから何事もなく5日後にオーマトの町に到着する。途中の宿ではひたすら魔符核を作っていた。もう移動中に特別なことが起こるということはほぼないと思っている。
オーマトの町に到着してから役場で登録を済ませたけど、この近郊で狩りをするわけではない。周辺は初階位レベルの魔獣しかいないので、ここから東に車で二日ほど行ったところにあるクレラニアという町を考えている。
その町から移動出来る範囲に上階位や良階位の魔獣が生息しているみたいで、そこからさらに奥に行くと優階位の魔獣までいるようだ。もともとが魔獣狩りの拠点から発展した町らしいからね。
今のところ上階位上位の魔獣までは狩ることができたけど、出来れば良階位の魔獣にも挑戦してみたいと考えている。素材回収を無視して全力で魔法とか使えばなんとかならないかとも考えているけど、上位クラスの魔獣になると魔法耐性があったり、避けたりしてくるようなので甘く考えたら不味いのは間違いない。なので自分たちでも対応出来そうな魔獣がいればと考えている。
付近の魔獣の詳細について役場に置いている資料を見て確認してみる。クレラニアに行けばもっと生の声が聞けるかもしれないけど、とりあえずある程度知識を持ってないと話しにくいからね。
良階位の魔獣でも倒せそうな魔獣もいるんだけど、この中で金属蜥蜴や金属蠍などの岩場に住む金属系の魔獣に目を引かれた。この魔獣達には雷魔法による攻撃がかなり有効みたいだ。
通常は硬い皮膚で剣での攻撃は効かないけど、地面に接しているお腹の方はまだ柔らかいらしい。このため効きやすい雷魔法で痺れさせている間におなか側を切り裂けば倒すことが出来るようだ。
「ジェン、この金属蜥蜴や金属蠍は良階位だけど、雷魔法で麻痺させることが出来るみたいだから腕試しにはいいんじゃないかな?
効きやすいという表現なのでどのくらいの威力がいるのか正直分からないけど、自分とジェンの二人が使えるからうまく麻痺出来れば十分倒せるんじゃないかな?役割を交代することも出来るしね。」
「そうね。雷魔法の威力を出すにはかなり近づかないとだめだけど、やってみる価値はあるかもしれないわね。一応全力で走れば逃げることは出来そうだし。」
「うん。前衛は弱い雷魔法を使いながら相手をしている間に後衛が強いのをたたき込めばいけるんじゃないかな?麻痺させるまで耐えられるだけの技量に届いているかはやってみないと分からないけどね。」
「蠍の方は毒持ちなので中級回復薬か中級回復魔法がないと危ないみたいだけど、自分たちは魔法で回復出来そうだから問題はなさそうね。」
「まあ、試してダメそうだったらすぐに諦めよう。金銭的に困窮しているわけでもないし、また訓練して技量をあげればいいからね。」
「死んだら意味がないから、慎重にやっていくのは必要だけど、あまりに安全にやりすぎるのもね。」
「細かいことはクレアニアに行ってから確認しないといけないだろうから、とりあえず予定通り移動することにしよう。」
今日はオニオンという名前の宿に泊まることにした。ツイン一泊1200ドールとなっているのでまあ妥当なとこだろう。朝食も付いているしね。
翌日は町の見学をかねて買い物をする。クレラニアはムライオカのような前線基地ではなく、ちゃんとした町と聞いているので大丈夫とは思うけど、場合によっては宿ではなく野営する可能性もあるので食材も買い出ししておかないといけないからね。
カサス商会にも顔を出してアドバイザーの名刺を出して店長を呼んでもらい、魔符核を200個納めておく。自分達のことは聞いていたようだけど、やはり思った以上に若くて驚いたようだった。
すぐにクレラニアの町に移動するので納品だけと断っておいた。クレラニアにも店舗はあるようだけど、規模はかなり小さいので、納品があるのならオーマトでとお願いされる。
オーマトの町で2泊したあと、バスに乗ってクレラニアの町に移動する。移動するバスはあまり大きくないのは仕方がないか。
バスで2日かかるとは聞いていたんだけど、2日間かかる理由は魔獣が出るために車の速度が遅いせいのようだ。途中何度か魔獣が出てきて退治することになったんだけど、瞬殺だった。護衛の人が乗っているんだけど、乗客のほとんどが冒険者だったので戦力は十分だったからね。2日目の昼過ぎには到着できた。
町は森から少し離れたところで、前線基地が元になっているせいか町の周りに農地は見えない。小さな町かと思っていたんだけど、思ったよりも大きな町で城壁はかなり立派なものだった。それだけ魔獣が多いのだろう。
町に入ってから蠍の宿というところに行ってみる。ツイン一泊で1000ドールだけど、食事は付いていない。部屋のレベルはまだ許せる程度だった。やはり町に魔獣が出ることもあるようなので危険手当のようなものなのかもしれない。
部屋の広さは少し狭いくらいだけど、基本的に寝るだけだから十分だろう。ベッドは少し硬いけど、ベッドの上に持っているマットを置けば全く問題ないだろう。
まずは役場に行って魔獣や狩り場の情報を確認する。オーマトの情報とそれほど差はなかったけど、ちょっと情報が更新されているところもあった。
登録のために受付に行くと、カードを見て声をかけられる。
「ここに出る魔獣は上階位の魔獣もいますが、基本的に良階位以上と考えてください。失礼ですが、まだ上階位みたいですが大丈夫ですか?」
やはりメインは良階位以上みたいで、上階位のパーティーもいるけど、人数がある程度多いところがほとんどみたいだ。まあ冒険者になって1年もたっていない上階位の2人パーティーだからね。
「あくまで実力確認の為なので、危ないと思ったらすぐに逃げますよ。一応勝算があってきているので出来るところまで頑張ってみるつもりです。」
とりあえず知らずにきたわけでもないのでそう説明しておく。
「わかりました。くれぐれも無理はなさらないようにお願いします。無理と思ったらあきらめるのも一つの選択です。」
このあと店を見て回ったけど、やっぱり冒険者向けの店が多かった。鍛冶屋とかには困らなそうだ。食事をとってから宿に戻ってシャワーを浴びる。今日はバスでの移動が多かったのでそうそうに眠りについた。
翌朝、外に食べに行くのも面倒だったので宿に併設の食堂で朝食をとってから準備に取りかかる。収納バッグの荷物はほとんど入れたままだけど容量は十分なのでこのままでも問題ないだろう。
狩り場はここから60分ほど東に行ったところにある岩場になるんだけど、自分達が走って行くと15分くらいで到着できた。
索敵すると、それなりに冒険者もやってきているけど、エリアも広いので獲物の取り合いの心配はしなくて良さそうだ。とりあえずは単体の魔獣を誘導して戦ってみよう。
このレベルになってくると一撃で倒せる魔獣はそうそういないので倒すのには時間がかかる。ただ今回の金属蜥蜴は顎の下から剣を刺すと簡単に脳に届くらしく、うまくやれば一気に倒すことが出来るようだ。このため雷魔法がちゃんと効くようであればいけると思っている。
しばらくして金属蜥蜴を見つけたんだけど、その姿は思った以上に大きくてちょっとびびる。コモドドラゴンを大きくしたような感じで一応四足歩行なんだけど、体長は2キヤルドくらいある。
口と前足と尻尾で攻撃してくるので、武器で攻撃する場合は前足の攻撃の隙をついてお腹などを攻撃しなければならないようだ。頭や背中は硬い皮膚なのでなかなかダメージを与えられないし、打撃しか通じない。
土魔法を使いトゲのようなもので下から攻撃できればいいんだけど、そこまで殺傷能力のある強度と形にはまだできない。とりあえず剣だと意味がなさそうなので戦鎚に持ち替えてから待ち受ける。
近くまで来たところで土魔法で浅い穴を掘り、一瞬動きが止まったところで雷魔法をたたき込む。すると動きが少し遅くなったので自分が動きを押さえている間にジェンが準備していた雷魔法を蜥蜴の身体に流し込む。高い威力のものはスタンガンのように直接身体に触れなければならないのがつらいところだ。
動きが完全に止まったところで土魔法で体を傾けてから蹴り倒して体をひっくり返し、顎の下から短剣を突き刺してとどめを刺した。
「よし、思ったよりもあっさりと仕留められたね。顎の下が急所と言っていたけど、思った以上にダメージが入ったみたい。」
「まあ動きが止められなかったら簡単にはいかないと思うけど、これだったら何とかなりそうね。」
続いて少し離れたところに蜥蜴を見つけて近づいていくと、こちらに襲いかかってきた。ただ近くの穴の中にもいたみたいで3匹が襲いかかってきた。まずい・・・。
「ジェン、すまない。他に2匹隠れていた。とりあえず1匹目をさっきと同じように倒してからそのあとはなんとか防いでおくから順次詠唱してくれ!」
「分かったわ!!」
最初の1匹は先ほどと同じように、うまく穴に誘導してから雷魔法をたたき込み、ジェンが魔法で動きを止めたところでとどめを刺す。しかしすぐに2匹がこっちにやってきて準備が間に合わない。
小さな雷魔法で攻撃しながら二匹の攻撃を防ぐ。さすがに防御しながらのせいで魔法の威力もかなり弱くなってしまうけど、動きが鈍くなっているのでしないよりはまだましだろう。さすがに無傷とは言わないけど、とりあえず大きなダメージは避けている。
「いくわよ!!」
「よしっ!こっちはとどめを刺すのでそっちの相手を頼む!!」
雷魔法を受けた方にとどめを刺そうとしたけど、先ほどよりは魔法の威力が弱かったのか完全に動きが止まっていなくて身体をひっくり返すのに手間取ってしまって危うく攻撃されるところだった。なんとかとどめを刺してから雷魔法に集中する。
「きゃっ!!」
ジェンが残っていた蜥蜴の体当たりを裁けずに吹っ飛ばされてしまったけど、とりあえず盾でガードだけは出来ていたようでほっとする。
まだ威力は貯まっていないけど、蜥蜴に近づいて雷魔法をたたき込む。それでも動きが鈍くなったのでそのままとどめを刺そうと思ったんだけど、麻痺が切れたのかとどめを刺すまでにはいかなかった。
「ジェン!!大丈夫か!?」
ジェンはすでに治癒魔法をかけていたようで、怪我の治療は終わっていたようだ。このあとはジェンが雷魔法をかけて無事に討伐出来た。
「ごめん。突進に驚いてうまく裁けなかったわ。やっぱり焦ってしまうとだめね。」
「ちゃんとガードしていたので十分だよ。
だけど危なかったなあ・・・。素直に距離を取ってから順番にやった方が良かったかな?」
「その方が良かったかもしれないわね。なんか焦ってしまって倒さないとと思ってしまったわ。」
危ないときは逃げると決めていたのにそれが抜け落ちていたよ。走ってる間に空に浮かべば逃げられたのになあ。
索敵にかからなかったのは地中にいたせいのようだ。隠密も持っているので索敵に元々引っかかりにくいしね。隠密レベルはおそらく2~3レベルを持っているのだろう。魔法頼りだとこんなこともあるんだな。気をつけないといけない。もう少し周りにも目を配ろう。
とりあえず死体を収納バッグに収納してから傷の手当てをする。自分の方はとりあえず擦り傷と、少しの打撲くらいだったので治癒魔法で治しておく。ジェンはガードした腕がかなり腫れていたようだ。
ここまで危なかったのははじめてだなあ。まあ今までがかなり安全サイドでやっていたこともあるし、良階位から一気に魔獣も強くなると言う話だったからね。冬の間訓練していなかったら危なかったかもしれない。
治療したとはいえダメージも大きいのでいったん休憩を取る。防具に関してはジェンの盾が少しやられてしまっていた。うまく受けないと防具もやられるし、体へのダメージも大きいからなあ。まだ使えないことはないし、ある程度修復はできるけど、町に戻ったらいったん鍛冶屋に出した方がいいだろう。
「やっぱり良階位は厳しいかなあ?」
「危なかったとはいえ、無事に倒せたんだし、慎重に行けば大丈夫じゃない?安全すぎるのも成長できないしね。」
「わかった。より注意して索敵して行こう。」
このあとも索敵しながら狩りをつづける。周りに気をつけてうまく誘導することで単体で倒していけたのでよかった。
他に狩ったのは金属蠍だ。体長1キヤルドくらいだけど、尻尾まで入れると2キヤルドくらいになってしまう。手のハサミよりこの尻尾攻撃が厄介だ。これも雷魔法で麻痺させている間にひっくり返して倒すのが一番効率的だ。
油断したつもりはないんだけど、途中で尻尾の攻撃で毒を受けてしまった。結構強い毒だったみたいで自分だとうまく回復できず、ジェンに回復してもらうことになった。まあ急性の毒ではなかったので良かったけどね。やはり毒治療もなんとかしないといけないな。
少し早く狩りをやめたとはいえ、一日で倒したのは金属蜥蜴が5匹、金属蠍が3匹だった。とりあえず狩場から少し離れてから解体をすることにした。
金属蜥蜴と蠍の解体は一応説明を読んで来たんだけど、かなり大変そうだ。うまく解体しないと刃物の方がいかれてしまうからね。
大きさが大きさなので普通はなかなか全部を持って帰れないらしい。このため高い部位のみ持って帰ることが多いようだ。
金属蜥蜴の一番高い部分は爪の部分と頭のところで、あとは背中の部分だ。肉も食べられるようだけど、値段は他の部位に比べると落ちるので破棄されることが多い。味はいいらしいけどね。食べられる部位の肉は決まっているのでこの大きさでも食べられるのは20キグムくらいしかない。
金属蠍の方も解体したけど、こっちは尻尾と外骨格のみが買取対象で、肉は食べられないようだった。尻尾はそこにある毒が薬の材料となるらしい。
ジェンと二人で解体していくけど、時間がかかるのは仕方がない。でもこれをやっていかないと解体スキルのレベルも上がらないからなあ。10匹くらい解体したら解体魔法が使えるはずなので頑張るしかない。
解体を終えてから町に戻り、役場の買い取りのコーナーへ。買い取りはパーティー別に個室で行っていて、他の人には分からないようになっている。このクラスの討伐になると収納バッグを持っていることが普通となってくるので、サイズについての秘密を守るためだ。このためここで見たことは基本的に漏れることはない筈だ。
「今回金属蜥蜴と金属蠍を狩ってきました。一応解体は行っていますが、うまく出来ているかは分かりません。」
そう言って収納バッグから素材を出していく。
「か、かなり大きな収納バッグのようですね。金属蜥蜴が5匹、金属蠍が3匹ですか?蜥蜴の肉もあるようですね。
一応確認なのですが、これは本日狩ったものでしょうか?上階位にしてはかなり数が多いように思いますが、どのようにやったのか説明してもらえますか?」
「えっと、自分とジェンの二人が雷魔法を・・・」
上階位にしては良階位の魔獣の討伐数が多いのでやはり説明を求められた。他の担当者がやって来て討伐方法を説明した後、訓練場で雷魔法について実演すると納得してくれたようだ。
「お手数をおかけしました。実力は問題ないと判断されたようですね。買い取りの素材についてですが、申し訳ありませんがいくつかの素材については若干買い取り価格が低くなります。」
「最初に二人でやった素材だと思いますが、それは仕方が無いと思っていますので大丈夫です。」
最初の一体目はいろいろと試行錯誤しながらの解体だったので、素材の状態が悪くなっていたのは自覚していたからしょうが無い。
「ご理解いただきありがとうございます。他の素材については十分なレベルでしたので、今回の買い取り額は全部で43000ドールとなりました。」
「そんなになるんですか?」
ここでの買い取り額って最低額だよな?それでこの金額ってかなり大きいんだけど、これが良階位レベルの収入って事なんだな。
「ええ。あと実績ポイントも加算されますので確認しておいてください。」
実績ポイントを確認してから役場を出る。
「思った以上に素材の買い取り額が大きかったね。店売りすれば5万ドールは超えていったことだよね。」
「ええ、ほんとうに良階位の魔獣の素材の買い取り額はすごいわね。以前の収入に比べたら10倍くらいだもんね。でも雷魔法が効くから倒せるのであって、自分たちの実力的にはまだ厳しいというのは把握していないとね。」
「調子に乗って命を落とすというのは良く聞く話しだからなあ。でも折角だから今回の魔獣はしっかり狩って稼いでおこう。」
この後、鍛冶屋に行って盾の修理をお願いする。そこまで時間はかからないようだったんだけど、持ち込んだのが遅かったので、明日の昼くらいまで待ってほしいと言われる。さすがに明日は狩りを休むしかないな。
他にもいくつか店を見て回り、宿に戻る。折角もらった金属蜥蜴の調理方法について受付で話を聞いてみる。材料を提供してくれれば調理代だけでやってくれるらしい。とりあえず3キグムほど渡して料理してもらう。残った肉は使っていいというと、調理代をただにしてくれた。
ステーキに煮込み料理などいろいろと作ってくれてかなり満足できた。肉は思ったよりもどっしりとしていておいしかった。蜥蜴というからもっとワニみたいに淡白かと思っていたんだけどね。確かに絶賛されるだけあるな。肉はもう少し確保しておいていいかもしれないね。
おなかも満足したところで、シャワーを浴びてから眠りにつく。今日はさすがに疲れたので魔法の訓練はなしだ。
翌日は朝食をとった後、鍛錬と魔法の訓練を行う。昼食の後で鍛冶屋に行って修理したものを受け取ったけど、他にもいくつか修理を出していたので全部で8300ドールくらいかかってしまった。思っていたよりも装備には負荷が溜まっていたようだ。でもこの辺りはちゃんとしておかないとまずいからね。
せっかくなので持って帰っていた金属蠍の毒で回復の練習をすることにした。本当は自分で飲むつもりだったんだけど、回復に集中できないだろうからとジェンがやってくれるようだ。
「いいの?もしもの時にジェンが回復してくれると安心なんだけど・・・」
「そんな心づもりだとうまく出来ないわよ。がんばってね。イチならきっとうまく出来るわ。」
いいのか?信頼しているからと言われるが、とても心配だ。
最初はかなり焦ってしまったけど、何度かやっていると回復にも慣れてきた。このあと自分も毒を飲んで自分で回復してみる。ゲームとかではよくやっていたけど、現実の世界でやるのは結構大変だよなあ。まあ訓練にはちょうどいいくらいの毒だったからいいけど、あまりやりたくはない・・・。
「治癒魔法のレベルを上げるならこういうことも時々やっていかないといけないのかねえ。あんまり強い毒ではやりたくはないけど・・・。」
「もしもの事を考えるといろいろな毒の治療が出来るようになっているといいんだけど、確かに自分からはやりたくないことだよね。だけど毒の治療については毒の種類が一緒だったら治療は出来ると思うわ。」
「まあ治療方法は基本的に同じだからね。ただ、飲んだ場合と身体に刺した場合で治療方法は違っていたから、イメージはちゃんと持たないといけないね。」
「弱めの毒が手には入ったらいろいろと試していきましょう。」
ちなみにちゃんと治療ができれば基本的に後遺症はないらしい。そのあとは魔符核をつくったり、魔法の練習をしたりした。
翌日からしばらく金属蜥蜴と金属蠍の狩りに明け暮れた。初日に失敗したこともあって、かなり慎重に索敵し、落とし穴などの罠も作成して倒していく。しばらくすると解体魔法も覚えたのでだいぶ楽になった。
魔獣狩りを開始して数日たったころに役場から連絡が入ったので翌朝役場に行ってみる。役場の方から連絡というのはなかなかないんだけど、なんだろう?朝一で並んでいるのはみんな良階位以上のパーティーばかりだ。
「おはようございます。アースのジュンイチです。こちらから連絡が入ったのですが、ご用件は何でしょうか?」
「おはようございます。魔獣の素材集めの特別依頼が出ていますので、受けるかどうかの確認になります。」
「特別依頼?自分たちは上階位ですよ?」
「ええ、わかっています。緊急性の高いものではありませんし、他のパーティーにも同じ依頼を出しているのでもし達成出来なくても問題ありません。上階位のパーティーですが、最近の実績を見てあなた方にも依頼をすることになりました。」
どうやら金属蜥蜴30匹を3日以内に納めてほしいという依頼があったらしい。解体はせずに1匹まるごとほしいようだけど、鮮度と程度がそれなりに良くないと買い取り対象外となるみたい。
買い取り額は通常素材で売る値段の倍くらいになっている。肉がなければ倍以上の価格かも知れないけど、そもそもまるごと持って帰るのが大変なのでこの価格が適正らしい。
「魔獣の鮮度と程度ってどのくらいあればいいでしょうか?」
「見てみないことには分かりませんが、今納めていただいている素材の程度もいいので、同じ程度であればおそらく大丈夫だと思いますよ。鮮度については本日中のものであればよほど保管状況が悪くなければ大丈夫ですね。
あと、引き取りの数の上限が30体となっていますので、早い者勝ちになります。もし規定数を超えたとしても通常の素材としては引き取れますが、その場合は解体を依頼してもらうか自分で解体することになります。」
「わかりました。頑張ってみます。」
さっそく狩り場へと向かい狩りを開始する。さすがにここ最近同じ狩りをしていたので、かなり効率はいい。今回は蜥蜴だけをターゲットに索敵をして討伐していく。かなりの移動距離となったけど、10体狩ったところで時間切れ。
町に戻ってから狩ってきた金属蜥蜴を納入すると、まだ規定数には達していなかった。それ以前に10体も収納バッグに入れて持って帰ってこれたことに驚いているようだ。持ち物についての詮索は御法度なので何も言ってこなかったけど、なんでそんな収納バッグを持っているんだと聞きたいところなんだろう。
普通は車や荷台に載せて1~2体、収納バッグでも2~3体くらいの納品がほとんどみたいだ。それを繰り返すんだけど、1日2往復くらいしかできないらしい。通常は5パーティーに依頼することが多いため、3日間ほどかかるらしい。
通常よりは気を使って倒さないといけない上、往復時間などを考えると1日の稼ぎは逆に少なくなる場合もあるようだけど、実績ポイントなどを考えて受けるパーティーは多いようだ。
金属蜥蜴の状態について確認すると、問題ないどころか程度は最上クラスになるようだ。まあ傷と言っても頭の下の部分からの刺し傷くらいだからね。
通常は体の部分に結構傷が入っているものが多いようだ。雷魔法を使える人も少ないし、使えても麻痺させるまでの威力はないというのが大きいのだろう。雷魔法の威力については電気のイメージの問題かなあ?
翌日も狩りをして5体倒したところで早々に町に戻って納品する。ちょうど収めた分で30体となったところだった。よかった、早めに切り上げて正解だった。結局15体を納入してかなりの収入となった。実績ポイントも結構稼げたと思う。期間限定の素材集めは結構ポイントが高かったはずだ。
役場で手続きをしていると、「もう規定数になったのか?いつもだったら3日目に達成するくらいだろう?」という声が聞こえてきた。ごめんね・・・自分たちで15匹納めたからねえ。
「危なかったなあ。ギリギリだったよ。」
「本当ね。最後まで狩していたら多分ダメだったわね。」
「実績ポイントは通常狩りをするのに比較して数倍になるのでかなりおいしい依頼だったなあ。
まだまだ技量的には昇格には厳しいけど、ポイントはあげられる時に上げておきたいしね。」
「その通りね。技量が足りないならある程度は試験を遅らせることはできるけど、技量があってもポイントが足りなければ上がれないからね。」
まだ時間があるのでもう一度狩り場に戻って狩りをして戻る。
翌日に狩りに行くと、依頼が終わって意気消沈したのか他の冒険者がいなかったので狩れるだけ狩っていく。蜥蜴を20匹、蠍を5匹とかなりの数倒すことができた。
ちなみに肉については持って帰る人も少ないのであまり手に入らないようなので収納バッグに保存済みだ。食料関係の保存分はジェンのバッグの方に入れている。
このあとも数日狩りをしてからオーマトに戻ることにした。ここで狩りをすると金銭的に美味しいのは間違い無いんだけど、この狩りばかりだと上達がないからね。これで良階位の魔獣が狩れると勘違いしないようにしないといけない。今回のは特別だしね。
バスで戻ることも考えたんだけど、行きの行程を考えて帰りはバスではなく走って帰ることにした。自分達の移動速度を考えると走った方が早いと思うからね。
宿を朝早くに出発し、索敵を展開して魔獣を避けながら結構な速度で行くことができた。途中出てきた魔獣はついでに狩って行くので小遣い稼ぎにもなるしね。このためその日の夕方ギリギリにはオーマトの町に到着することができた。
~魔獣紹介~
金属蜥蜴:
良階位下位の魔獣。岩場の多いエリアに多く生息している蜥蜴の形をした魔獣。体長は2キヤルドほどで、体の半分は強靱な尻尾となっている。
鋭い牙を持っており、唾液に多くの病原菌が含まれているため、かまれると炎症を起こし、数日間高熱を出す場合がある。子供は死亡する事例も報告されている。また鋭い爪を持った前足と、強靱な尾を使って攻撃をしてくる。
皮膚には金属が含まれており、普通の剣などの武器ではダメージを与えられないため鈍器での攻撃が有効。ある程度ダメージを与えて動きが弱くなってきたらおなか側の皮膚は柔らかいため、剣や短剣などでとどめを刺すとよい。首の付け根あたりに刺すと一撃で倒すことができる。
魔法攻撃もダメージをあまり与えられないが、唯一雷魔法が有効で、強力な雷魔法であればかなり動きを止めることができる。動きを止めている間に攻撃をすれば反撃のリスクも軽減できる。ただし雷魔法が効くと言っても油断してはいけない。止めていられる時間は数秒がいいところだ。複数の雷魔法使いがいれば連続して動きを止めることができるかもしれない。
素材としての買い取り対象は爪と皮膚で、頭のところはもっとも価値が高い。肉はとれる量が少ないが高級食材とされており、かなり濃厚で食べ応えのあるものとなる。
金属蠍:
良階位下位の魔獣。岩場の多いエリアに多く生息している蠍の形をした魔獣。体長は2キヤルドくらいだが、毒を持つ尻尾だけでも1キヤルドある。
鋏と尻尾で攻撃してしてくるが、特に尻尾にある毒には注意しなければならない。即効性はないが毒の回復には中級回復薬以上が必要となる。回復しなければ徐々に体力が奪われ、数日後には死亡してしまう。
外骨格には金属が含まれており、普通の剣などの武器ではダメージを与えられないため鈍器での攻撃が有効。ある程度ダメージを与えて動きが弱くなってきたらおなか側の皮膚は柔らかいため、剣や短剣などでとどめを刺すとよい。おなか側の外骨格は剣が通るくらいなので剣や短剣などでとどめを刺すとよい。
魔法攻撃もダメージをあまり与えられないが、唯一雷魔法が有効で、強力な雷魔法であればかなり動きを止めることができる。動きを止めている間に攻撃をすれば反撃のリスクも軽減できる。ただし雷魔法が効くと言っても油断してはいけない。止めていられる時間は数秒がいいところだ。複数の雷魔法使いがいれば連続して動きを止めることができるかもしれない。
素材としての買い取り対象は外骨格部分と尻尾が対象となっており、尻尾の毒は薬の材料として使われる。死んだ後でも毒の効果は失われないため、取り扱いには注意が必要。間違っても尻尾の毒腺を破らないようにしなければならない。
年始の休みの後、再び訓練を開始しているけど、今回はそれぞれ槌と杖の鍛錬の比重を上げている。やっぱりこっちの武器もある程度レベルを上げておかないと、レベルの高い相手には使えないからね。
良階位の魔獣を考えるともっとパーティーメンバーを増やすのもありなんだけど、高階位のレベルに二人だけのパーティーがいないわけではないんだよね。それに人数が増えるといろいろと問題も出てきそうなこともあり、ジェンと二人でやっていくことにした。
それに自分達が突然元の世界に戻ってしまうという可能性もあるし、それが魔獣と戦っている時とかだと残ったメンバーは最悪だしね。
「おはよう。真剣な表情でどうしたの?」
朝早めに起きてしまったのでソファーで考え事しているとジェンが起きてきた。
「ああ、おはよう。ごめん、起こしたかな?パーティーメンバーのことを考えていたんだ。」
「パーティーは二人で頑張るってことにしたんじゃなかった?私たちの秘密もあるし、変な人に入られても困るからね。」
「うん、それはそうなんだけど、せめてゴーレムとか従魔みたいなことはできないのかなって思ってね。欲しいのは盾役だから、少々動きが鈍くても、それだけでも優位にはなるかなあと思ったんだ。」
今は土魔法である程度誘導しているけど、魔獣のレベルが上がってくるとさすがに土魔法の壁だと効果があまりないように思う。そう考えると最初の突撃とかに耐えられる盾役が何とかならないかと考えている。
「そういうことね。でもそんな魔法はなかったでしょ?」
「確かにないようだけど、魔法はイメージの産物だからもしかしたらと思ったんだよ。」
「まあ、どっちにしてもすぐには無理だろうから、まずは私たちのレベルを上げるのが最優先なのは変わらないわね。」
「まあね。」
「あぁ、あと町を移動する話だけど、今日バスの予約にいこうと思ってるよ。サクラの方はまだ残雪があるので厳しいみたいだけど、オーマトまではもう雪もないみたいだからね。」
「わかったわ。」
「バスの日程にもよるけど、今日が最後の訓練になって、明日からは挨拶や買い出しとかをする感じになるかもしれないよ。」
「まあ1日あれば十分だと思うけど、少なくとも今日までは訓練をするって事でいいのよね?」
「うん、バスは長くても5日おきくらいには出ているみたいだから大丈夫だと思う。すぐにバスがとれない場合は訓練の日程を延ばすことになるかもしれないけどね。」
着替えを済ませてから宿で朝食をとった後、バス乗り場へと向かう。
バスの予定を確認すると、この時期はまだ移動する人が少ないせいかバスの本数が前よりも少なかった。雪解けを待つ間に魔獣も増えているのでその掃討にも時間がかかっていると言うこともあるようだ。
値段もちょっと高くなっているのは護衛の人数が多くなっているせいみたい。それでも3日後に出発の便を予約することができたのでよかった。
ジェンを送り届けてから自分も通っている道場へ。夕方までみっちり訓練をしてから終了となる。
「短い間でしたがお世話になりました。」
道場主のカテナさんと師範代のカルタニックさんに挨拶する。
「もし良かったら道場の練習生だったことの証明にここにサインをしてもらえないか?上階位以上の冒険者にはお願いしているんだ。ぶっちゃけていうと道場の宣伝を兼ねているんだよ。」
カルタニックさんがそう言って木の板を出してきた。
「宣伝になるんですか?」
「まあ青田刈りのような感じなんだが、ある程度名前が売れると名前を掲載させてもらっている。そうそう、全員ではないが、紹介してもらったという蠍の尾のメンバーのサインもあるぞ。」
そういえば道場の隅の壁に名前が掛かった札があったな。練習生のものかと思っていたんだけど、ここで習った人のものだったのか。あまり見ていなかったな。
「えっと、イントさんのがこれだな。」
そこに書かれていたのは「インマルトチカ」と書かれた名札とその横に良階位冒険者蠍の尾メンバーという説明があった。
他のサインも見てみると、どうやら良階位以上の冒険者や世間的に有名になった人のものが掲載されているみたい。有名人のサイン色紙みたいなものなのかな?うちの道場はこんな有名な人が習ったところなんだぞと言うアピールなんだろうな。
「インマルトチカというのがイントさんの本名と言うことなんですか?」
「ああ、私もこれを書いてもらうときに初めて知ったんだけどな。」
まあ名前が長いからそういう通称で呼ぶのもありだろうけど、最初の自己紹介から通称だったんだよね。冒険者間では通称の方が重要というのも分かる。
挨拶を終えてからジェンを迎えに行くと、ジェンも同じようにサインを求められたようだ。
「スレインさんの名前が『スレーインチカ』ってなっていたので別人かと思ったわ。」
「イントさんもインマルトチカってなってたよ。チカっていうのが名字みたいなものなのかな?ということは姉妹なのか?」
「そうかもしれないわね。でも何も言ってこないのならあえて聞かなくてもいいんじゃないかな?話したくないこともあるかもしれないしね。」
「まあそうだよね。それを知ったからと言って付き合い方が変わるわけでもないしね。」
翌日から旅の準備と挨拶回りをすることにした。しばらく海から離れるので海産物はある程度確保しておきたい。内陸の町でも売っているけど、やっぱり鮮度や種類が違うからね。
港に行ってガバナンさんを訪ねると、ちょうど漁から戻ってきたところだった。町を移動するので新鮮な海鮮を購入したいことを説明すると、他の漁師にも声をかけてくれた。
小さいけど収納バッグがあるので鮮度だけは大丈夫と説明すると、半端ないくらい持ってきて困ってしまったくらいだ。そのまま話が終わらなくてお昼までごちそうになってしまったけどね。
お陰で新鮮な魚や貝がかなりいっぱい手に入ったのでしばらくは海産物には困らないだろう。代金もかなりおまけしてくれたので助かったよ。
そのあとカサス商会に行って受付に行くとすぐにステファーさんがやって来て支店長室に連れて行かれてしまった。
「こんにちは。今日は挨拶と今後の予定について確認に来ました。」
「なんか新しいものでもできたって訳ではなさそうだね。ちょっとは期待していたんだけどね。」
「いろいろとやってはいるんですが、なかなか売れそうなものが出来ないんですよね。
えっと、実はそろそろ町を移ろうと思ってまして、その場合魔符核はどのように納入すればいいのかを確認したいと思いまして。」
「季候も良くなって来たから、そろそろそんな話が来るかとは思っていたがね。
コーランも冒険者なのでその辺りは織り込み済みだったみたいでね、前に来たときに伝えるのを忘れていたので話すように言われてたのさ。
それで魔符核はどこの町でもいいからカサス商会に下ろしもらえればいいさ。ただ輸送とかのことを考えるなら出来るだけ大きな町の方がありがたいね。もともと納期についてもかなりアバウトだったから、二人の予定に合わせて下ろしてもらえればいいさ。
あと他の国に行く場合は納品などについては相談してくれと言っていたからそこはお願いするよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「ただ、他になにかいいものがあったらすぐに言っておくれ。あたしに言ってもらうのが一番ありがたいんだが、さすがにそういうわけにはいかないだろうからね。ただこのことについては大きな町のお店限定だね。
サクラ、ラーマト、アーマト、ターマト、オーマト、オカニウム、ルイサレムくらいで国境の町サイレウムもぎりぎり大丈夫というところかね。」
「何か出来たらそのときは連絡しるようにしますよ。」
ちなみに重量軽減バッグの売れ行きはかなりいいみたいで、最初は買い替えのタイミングで買っていく感じだったけど、その性能を確認した人から口コミで広がっているらしい。
同業者が研究を始めたみたいだけど、もちろんそんな簡単にはできないようだ。まあ、重さを軽くする概念と文字で二重に分からなくなっているだろうからね。
翌日、カルミーラ商会に行き、ショウバンさんに取り次いでもらう。町を移動すること、サクラの町に着いたらオークションに出品することをお願いしておく。ショウバンさんから手紙を預かり、名刺と一緒に手紙を渡せば分かるはずだと言ってくれた。
オークションは2月の末くらいなので少なくとも10日前には持っていくように改めて言われる。検品があるので、普通はもっと前に出さないといけないようだけど、そこは老舗の店なのでなんとかしてくれるらしい。
役場では知り合った冒険者達にも声をかけていく。他の冒険者達の大半は2月以降に移動するらしく、もうしばらくはこの町に滞在するみたいだ。
ルイサレムの町を出てから何事もなく5日後にオーマトの町に到着する。途中の宿ではひたすら魔符核を作っていた。もう移動中に特別なことが起こるということはほぼないと思っている。
オーマトの町に到着してから役場で登録を済ませたけど、この近郊で狩りをするわけではない。周辺は初階位レベルの魔獣しかいないので、ここから東に車で二日ほど行ったところにあるクレラニアという町を考えている。
その町から移動出来る範囲に上階位や良階位の魔獣が生息しているみたいで、そこからさらに奥に行くと優階位の魔獣までいるようだ。もともとが魔獣狩りの拠点から発展した町らしいからね。
今のところ上階位上位の魔獣までは狩ることができたけど、出来れば良階位の魔獣にも挑戦してみたいと考えている。素材回収を無視して全力で魔法とか使えばなんとかならないかとも考えているけど、上位クラスの魔獣になると魔法耐性があったり、避けたりしてくるようなので甘く考えたら不味いのは間違いない。なので自分たちでも対応出来そうな魔獣がいればと考えている。
付近の魔獣の詳細について役場に置いている資料を見て確認してみる。クレラニアに行けばもっと生の声が聞けるかもしれないけど、とりあえずある程度知識を持ってないと話しにくいからね。
良階位の魔獣でも倒せそうな魔獣もいるんだけど、この中で金属蜥蜴や金属蠍などの岩場に住む金属系の魔獣に目を引かれた。この魔獣達には雷魔法による攻撃がかなり有効みたいだ。
通常は硬い皮膚で剣での攻撃は効かないけど、地面に接しているお腹の方はまだ柔らかいらしい。このため効きやすい雷魔法で痺れさせている間におなか側を切り裂けば倒すことが出来るようだ。
「ジェン、この金属蜥蜴や金属蠍は良階位だけど、雷魔法で麻痺させることが出来るみたいだから腕試しにはいいんじゃないかな?
効きやすいという表現なのでどのくらいの威力がいるのか正直分からないけど、自分とジェンの二人が使えるからうまく麻痺出来れば十分倒せるんじゃないかな?役割を交代することも出来るしね。」
「そうね。雷魔法の威力を出すにはかなり近づかないとだめだけど、やってみる価値はあるかもしれないわね。一応全力で走れば逃げることは出来そうだし。」
「うん。前衛は弱い雷魔法を使いながら相手をしている間に後衛が強いのをたたき込めばいけるんじゃないかな?麻痺させるまで耐えられるだけの技量に届いているかはやってみないと分からないけどね。」
「蠍の方は毒持ちなので中級回復薬か中級回復魔法がないと危ないみたいだけど、自分たちは魔法で回復出来そうだから問題はなさそうね。」
「まあ、試してダメそうだったらすぐに諦めよう。金銭的に困窮しているわけでもないし、また訓練して技量をあげればいいからね。」
「死んだら意味がないから、慎重にやっていくのは必要だけど、あまりに安全にやりすぎるのもね。」
「細かいことはクレアニアに行ってから確認しないといけないだろうから、とりあえず予定通り移動することにしよう。」
今日はオニオンという名前の宿に泊まることにした。ツイン一泊1200ドールとなっているのでまあ妥当なとこだろう。朝食も付いているしね。
翌日は町の見学をかねて買い物をする。クレラニアはムライオカのような前線基地ではなく、ちゃんとした町と聞いているので大丈夫とは思うけど、場合によっては宿ではなく野営する可能性もあるので食材も買い出ししておかないといけないからね。
カサス商会にも顔を出してアドバイザーの名刺を出して店長を呼んでもらい、魔符核を200個納めておく。自分達のことは聞いていたようだけど、やはり思った以上に若くて驚いたようだった。
すぐにクレラニアの町に移動するので納品だけと断っておいた。クレラニアにも店舗はあるようだけど、規模はかなり小さいので、納品があるのならオーマトでとお願いされる。
オーマトの町で2泊したあと、バスに乗ってクレラニアの町に移動する。移動するバスはあまり大きくないのは仕方がないか。
バスで2日かかるとは聞いていたんだけど、2日間かかる理由は魔獣が出るために車の速度が遅いせいのようだ。途中何度か魔獣が出てきて退治することになったんだけど、瞬殺だった。護衛の人が乗っているんだけど、乗客のほとんどが冒険者だったので戦力は十分だったからね。2日目の昼過ぎには到着できた。
町は森から少し離れたところで、前線基地が元になっているせいか町の周りに農地は見えない。小さな町かと思っていたんだけど、思ったよりも大きな町で城壁はかなり立派なものだった。それだけ魔獣が多いのだろう。
町に入ってから蠍の宿というところに行ってみる。ツイン一泊で1000ドールだけど、食事は付いていない。部屋のレベルはまだ許せる程度だった。やはり町に魔獣が出ることもあるようなので危険手当のようなものなのかもしれない。
部屋の広さは少し狭いくらいだけど、基本的に寝るだけだから十分だろう。ベッドは少し硬いけど、ベッドの上に持っているマットを置けば全く問題ないだろう。
まずは役場に行って魔獣や狩り場の情報を確認する。オーマトの情報とそれほど差はなかったけど、ちょっと情報が更新されているところもあった。
登録のために受付に行くと、カードを見て声をかけられる。
「ここに出る魔獣は上階位の魔獣もいますが、基本的に良階位以上と考えてください。失礼ですが、まだ上階位みたいですが大丈夫ですか?」
やはりメインは良階位以上みたいで、上階位のパーティーもいるけど、人数がある程度多いところがほとんどみたいだ。まあ冒険者になって1年もたっていない上階位の2人パーティーだからね。
「あくまで実力確認の為なので、危ないと思ったらすぐに逃げますよ。一応勝算があってきているので出来るところまで頑張ってみるつもりです。」
とりあえず知らずにきたわけでもないのでそう説明しておく。
「わかりました。くれぐれも無理はなさらないようにお願いします。無理と思ったらあきらめるのも一つの選択です。」
このあと店を見て回ったけど、やっぱり冒険者向けの店が多かった。鍛冶屋とかには困らなそうだ。食事をとってから宿に戻ってシャワーを浴びる。今日はバスでの移動が多かったのでそうそうに眠りについた。
翌朝、外に食べに行くのも面倒だったので宿に併設の食堂で朝食をとってから準備に取りかかる。収納バッグの荷物はほとんど入れたままだけど容量は十分なのでこのままでも問題ないだろう。
狩り場はここから60分ほど東に行ったところにある岩場になるんだけど、自分達が走って行くと15分くらいで到着できた。
索敵すると、それなりに冒険者もやってきているけど、エリアも広いので獲物の取り合いの心配はしなくて良さそうだ。とりあえずは単体の魔獣を誘導して戦ってみよう。
このレベルになってくると一撃で倒せる魔獣はそうそういないので倒すのには時間がかかる。ただ今回の金属蜥蜴は顎の下から剣を刺すと簡単に脳に届くらしく、うまくやれば一気に倒すことが出来るようだ。このため雷魔法がちゃんと効くようであればいけると思っている。
しばらくして金属蜥蜴を見つけたんだけど、その姿は思った以上に大きくてちょっとびびる。コモドドラゴンを大きくしたような感じで一応四足歩行なんだけど、体長は2キヤルドくらいある。
口と前足と尻尾で攻撃してくるので、武器で攻撃する場合は前足の攻撃の隙をついてお腹などを攻撃しなければならないようだ。頭や背中は硬い皮膚なのでなかなかダメージを与えられないし、打撃しか通じない。
土魔法を使いトゲのようなもので下から攻撃できればいいんだけど、そこまで殺傷能力のある強度と形にはまだできない。とりあえず剣だと意味がなさそうなので戦鎚に持ち替えてから待ち受ける。
近くまで来たところで土魔法で浅い穴を掘り、一瞬動きが止まったところで雷魔法をたたき込む。すると動きが少し遅くなったので自分が動きを押さえている間にジェンが準備していた雷魔法を蜥蜴の身体に流し込む。高い威力のものはスタンガンのように直接身体に触れなければならないのがつらいところだ。
動きが完全に止まったところで土魔法で体を傾けてから蹴り倒して体をひっくり返し、顎の下から短剣を突き刺してとどめを刺した。
「よし、思ったよりもあっさりと仕留められたね。顎の下が急所と言っていたけど、思った以上にダメージが入ったみたい。」
「まあ動きが止められなかったら簡単にはいかないと思うけど、これだったら何とかなりそうね。」
続いて少し離れたところに蜥蜴を見つけて近づいていくと、こちらに襲いかかってきた。ただ近くの穴の中にもいたみたいで3匹が襲いかかってきた。まずい・・・。
「ジェン、すまない。他に2匹隠れていた。とりあえず1匹目をさっきと同じように倒してからそのあとはなんとか防いでおくから順次詠唱してくれ!」
「分かったわ!!」
最初の1匹は先ほどと同じように、うまく穴に誘導してから雷魔法をたたき込み、ジェンが魔法で動きを止めたところでとどめを刺す。しかしすぐに2匹がこっちにやってきて準備が間に合わない。
小さな雷魔法で攻撃しながら二匹の攻撃を防ぐ。さすがに防御しながらのせいで魔法の威力もかなり弱くなってしまうけど、動きが鈍くなっているのでしないよりはまだましだろう。さすがに無傷とは言わないけど、とりあえず大きなダメージは避けている。
「いくわよ!!」
「よしっ!こっちはとどめを刺すのでそっちの相手を頼む!!」
雷魔法を受けた方にとどめを刺そうとしたけど、先ほどよりは魔法の威力が弱かったのか完全に動きが止まっていなくて身体をひっくり返すのに手間取ってしまって危うく攻撃されるところだった。なんとかとどめを刺してから雷魔法に集中する。
「きゃっ!!」
ジェンが残っていた蜥蜴の体当たりを裁けずに吹っ飛ばされてしまったけど、とりあえず盾でガードだけは出来ていたようでほっとする。
まだ威力は貯まっていないけど、蜥蜴に近づいて雷魔法をたたき込む。それでも動きが鈍くなったのでそのままとどめを刺そうと思ったんだけど、麻痺が切れたのかとどめを刺すまでにはいかなかった。
「ジェン!!大丈夫か!?」
ジェンはすでに治癒魔法をかけていたようで、怪我の治療は終わっていたようだ。このあとはジェンが雷魔法をかけて無事に討伐出来た。
「ごめん。突進に驚いてうまく裁けなかったわ。やっぱり焦ってしまうとだめね。」
「ちゃんとガードしていたので十分だよ。
だけど危なかったなあ・・・。素直に距離を取ってから順番にやった方が良かったかな?」
「その方が良かったかもしれないわね。なんか焦ってしまって倒さないとと思ってしまったわ。」
危ないときは逃げると決めていたのにそれが抜け落ちていたよ。走ってる間に空に浮かべば逃げられたのになあ。
索敵にかからなかったのは地中にいたせいのようだ。隠密も持っているので索敵に元々引っかかりにくいしね。隠密レベルはおそらく2~3レベルを持っているのだろう。魔法頼りだとこんなこともあるんだな。気をつけないといけない。もう少し周りにも目を配ろう。
とりあえず死体を収納バッグに収納してから傷の手当てをする。自分の方はとりあえず擦り傷と、少しの打撲くらいだったので治癒魔法で治しておく。ジェンはガードした腕がかなり腫れていたようだ。
ここまで危なかったのははじめてだなあ。まあ今までがかなり安全サイドでやっていたこともあるし、良階位から一気に魔獣も強くなると言う話だったからね。冬の間訓練していなかったら危なかったかもしれない。
治療したとはいえダメージも大きいのでいったん休憩を取る。防具に関してはジェンの盾が少しやられてしまっていた。うまく受けないと防具もやられるし、体へのダメージも大きいからなあ。まだ使えないことはないし、ある程度修復はできるけど、町に戻ったらいったん鍛冶屋に出した方がいいだろう。
「やっぱり良階位は厳しいかなあ?」
「危なかったとはいえ、無事に倒せたんだし、慎重に行けば大丈夫じゃない?安全すぎるのも成長できないしね。」
「わかった。より注意して索敵して行こう。」
このあとも索敵しながら狩りをつづける。周りに気をつけてうまく誘導することで単体で倒していけたのでよかった。
他に狩ったのは金属蠍だ。体長1キヤルドくらいだけど、尻尾まで入れると2キヤルドくらいになってしまう。手のハサミよりこの尻尾攻撃が厄介だ。これも雷魔法で麻痺させている間にひっくり返して倒すのが一番効率的だ。
油断したつもりはないんだけど、途中で尻尾の攻撃で毒を受けてしまった。結構強い毒だったみたいで自分だとうまく回復できず、ジェンに回復してもらうことになった。まあ急性の毒ではなかったので良かったけどね。やはり毒治療もなんとかしないといけないな。
少し早く狩りをやめたとはいえ、一日で倒したのは金属蜥蜴が5匹、金属蠍が3匹だった。とりあえず狩場から少し離れてから解体をすることにした。
金属蜥蜴と蠍の解体は一応説明を読んで来たんだけど、かなり大変そうだ。うまく解体しないと刃物の方がいかれてしまうからね。
大きさが大きさなので普通はなかなか全部を持って帰れないらしい。このため高い部位のみ持って帰ることが多いようだ。
金属蜥蜴の一番高い部分は爪の部分と頭のところで、あとは背中の部分だ。肉も食べられるようだけど、値段は他の部位に比べると落ちるので破棄されることが多い。味はいいらしいけどね。食べられる部位の肉は決まっているのでこの大きさでも食べられるのは20キグムくらいしかない。
金属蠍の方も解体したけど、こっちは尻尾と外骨格のみが買取対象で、肉は食べられないようだった。尻尾はそこにある毒が薬の材料となるらしい。
ジェンと二人で解体していくけど、時間がかかるのは仕方がない。でもこれをやっていかないと解体スキルのレベルも上がらないからなあ。10匹くらい解体したら解体魔法が使えるはずなので頑張るしかない。
解体を終えてから町に戻り、役場の買い取りのコーナーへ。買い取りはパーティー別に個室で行っていて、他の人には分からないようになっている。このクラスの討伐になると収納バッグを持っていることが普通となってくるので、サイズについての秘密を守るためだ。このためここで見たことは基本的に漏れることはない筈だ。
「今回金属蜥蜴と金属蠍を狩ってきました。一応解体は行っていますが、うまく出来ているかは分かりません。」
そう言って収納バッグから素材を出していく。
「か、かなり大きな収納バッグのようですね。金属蜥蜴が5匹、金属蠍が3匹ですか?蜥蜴の肉もあるようですね。
一応確認なのですが、これは本日狩ったものでしょうか?上階位にしてはかなり数が多いように思いますが、どのようにやったのか説明してもらえますか?」
「えっと、自分とジェンの二人が雷魔法を・・・」
上階位にしては良階位の魔獣の討伐数が多いのでやはり説明を求められた。他の担当者がやって来て討伐方法を説明した後、訓練場で雷魔法について実演すると納得してくれたようだ。
「お手数をおかけしました。実力は問題ないと判断されたようですね。買い取りの素材についてですが、申し訳ありませんがいくつかの素材については若干買い取り価格が低くなります。」
「最初に二人でやった素材だと思いますが、それは仕方が無いと思っていますので大丈夫です。」
最初の一体目はいろいろと試行錯誤しながらの解体だったので、素材の状態が悪くなっていたのは自覚していたからしょうが無い。
「ご理解いただきありがとうございます。他の素材については十分なレベルでしたので、今回の買い取り額は全部で43000ドールとなりました。」
「そんなになるんですか?」
ここでの買い取り額って最低額だよな?それでこの金額ってかなり大きいんだけど、これが良階位レベルの収入って事なんだな。
「ええ。あと実績ポイントも加算されますので確認しておいてください。」
実績ポイントを確認してから役場を出る。
「思った以上に素材の買い取り額が大きかったね。店売りすれば5万ドールは超えていったことだよね。」
「ええ、ほんとうに良階位の魔獣の素材の買い取り額はすごいわね。以前の収入に比べたら10倍くらいだもんね。でも雷魔法が効くから倒せるのであって、自分たちの実力的にはまだ厳しいというのは把握していないとね。」
「調子に乗って命を落とすというのは良く聞く話しだからなあ。でも折角だから今回の魔獣はしっかり狩って稼いでおこう。」
この後、鍛冶屋に行って盾の修理をお願いする。そこまで時間はかからないようだったんだけど、持ち込んだのが遅かったので、明日の昼くらいまで待ってほしいと言われる。さすがに明日は狩りを休むしかないな。
他にもいくつか店を見て回り、宿に戻る。折角もらった金属蜥蜴の調理方法について受付で話を聞いてみる。材料を提供してくれれば調理代だけでやってくれるらしい。とりあえず3キグムほど渡して料理してもらう。残った肉は使っていいというと、調理代をただにしてくれた。
ステーキに煮込み料理などいろいろと作ってくれてかなり満足できた。肉は思ったよりもどっしりとしていておいしかった。蜥蜴というからもっとワニみたいに淡白かと思っていたんだけどね。確かに絶賛されるだけあるな。肉はもう少し確保しておいていいかもしれないね。
おなかも満足したところで、シャワーを浴びてから眠りにつく。今日はさすがに疲れたので魔法の訓練はなしだ。
翌日は朝食をとった後、鍛錬と魔法の訓練を行う。昼食の後で鍛冶屋に行って修理したものを受け取ったけど、他にもいくつか修理を出していたので全部で8300ドールくらいかかってしまった。思っていたよりも装備には負荷が溜まっていたようだ。でもこの辺りはちゃんとしておかないとまずいからね。
せっかくなので持って帰っていた金属蠍の毒で回復の練習をすることにした。本当は自分で飲むつもりだったんだけど、回復に集中できないだろうからとジェンがやってくれるようだ。
「いいの?もしもの時にジェンが回復してくれると安心なんだけど・・・」
「そんな心づもりだとうまく出来ないわよ。がんばってね。イチならきっとうまく出来るわ。」
いいのか?信頼しているからと言われるが、とても心配だ。
最初はかなり焦ってしまったけど、何度かやっていると回復にも慣れてきた。このあと自分も毒を飲んで自分で回復してみる。ゲームとかではよくやっていたけど、現実の世界でやるのは結構大変だよなあ。まあ訓練にはちょうどいいくらいの毒だったからいいけど、あまりやりたくはない・・・。
「治癒魔法のレベルを上げるならこういうことも時々やっていかないといけないのかねえ。あんまり強い毒ではやりたくはないけど・・・。」
「もしもの事を考えるといろいろな毒の治療が出来るようになっているといいんだけど、確かに自分からはやりたくないことだよね。だけど毒の治療については毒の種類が一緒だったら治療は出来ると思うわ。」
「まあ治療方法は基本的に同じだからね。ただ、飲んだ場合と身体に刺した場合で治療方法は違っていたから、イメージはちゃんと持たないといけないね。」
「弱めの毒が手には入ったらいろいろと試していきましょう。」
ちなみにちゃんと治療ができれば基本的に後遺症はないらしい。そのあとは魔符核をつくったり、魔法の練習をしたりした。
翌日からしばらく金属蜥蜴と金属蠍の狩りに明け暮れた。初日に失敗したこともあって、かなり慎重に索敵し、落とし穴などの罠も作成して倒していく。しばらくすると解体魔法も覚えたのでだいぶ楽になった。
魔獣狩りを開始して数日たったころに役場から連絡が入ったので翌朝役場に行ってみる。役場の方から連絡というのはなかなかないんだけど、なんだろう?朝一で並んでいるのはみんな良階位以上のパーティーばかりだ。
「おはようございます。アースのジュンイチです。こちらから連絡が入ったのですが、ご用件は何でしょうか?」
「おはようございます。魔獣の素材集めの特別依頼が出ていますので、受けるかどうかの確認になります。」
「特別依頼?自分たちは上階位ですよ?」
「ええ、わかっています。緊急性の高いものではありませんし、他のパーティーにも同じ依頼を出しているのでもし達成出来なくても問題ありません。上階位のパーティーですが、最近の実績を見てあなた方にも依頼をすることになりました。」
どうやら金属蜥蜴30匹を3日以内に納めてほしいという依頼があったらしい。解体はせずに1匹まるごとほしいようだけど、鮮度と程度がそれなりに良くないと買い取り対象外となるみたい。
買い取り額は通常素材で売る値段の倍くらいになっている。肉がなければ倍以上の価格かも知れないけど、そもそもまるごと持って帰るのが大変なのでこの価格が適正らしい。
「魔獣の鮮度と程度ってどのくらいあればいいでしょうか?」
「見てみないことには分かりませんが、今納めていただいている素材の程度もいいので、同じ程度であればおそらく大丈夫だと思いますよ。鮮度については本日中のものであればよほど保管状況が悪くなければ大丈夫ですね。
あと、引き取りの数の上限が30体となっていますので、早い者勝ちになります。もし規定数を超えたとしても通常の素材としては引き取れますが、その場合は解体を依頼してもらうか自分で解体することになります。」
「わかりました。頑張ってみます。」
さっそく狩り場へと向かい狩りを開始する。さすがにここ最近同じ狩りをしていたので、かなり効率はいい。今回は蜥蜴だけをターゲットに索敵をして討伐していく。かなりの移動距離となったけど、10体狩ったところで時間切れ。
町に戻ってから狩ってきた金属蜥蜴を納入すると、まだ規定数には達していなかった。それ以前に10体も収納バッグに入れて持って帰ってこれたことに驚いているようだ。持ち物についての詮索は御法度なので何も言ってこなかったけど、なんでそんな収納バッグを持っているんだと聞きたいところなんだろう。
普通は車や荷台に載せて1~2体、収納バッグでも2~3体くらいの納品がほとんどみたいだ。それを繰り返すんだけど、1日2往復くらいしかできないらしい。通常は5パーティーに依頼することが多いため、3日間ほどかかるらしい。
通常よりは気を使って倒さないといけない上、往復時間などを考えると1日の稼ぎは逆に少なくなる場合もあるようだけど、実績ポイントなどを考えて受けるパーティーは多いようだ。
金属蜥蜴の状態について確認すると、問題ないどころか程度は最上クラスになるようだ。まあ傷と言っても頭の下の部分からの刺し傷くらいだからね。
通常は体の部分に結構傷が入っているものが多いようだ。雷魔法を使える人も少ないし、使えても麻痺させるまでの威力はないというのが大きいのだろう。雷魔法の威力については電気のイメージの問題かなあ?
翌日も狩りをして5体倒したところで早々に町に戻って納品する。ちょうど収めた分で30体となったところだった。よかった、早めに切り上げて正解だった。結局15体を納入してかなりの収入となった。実績ポイントも結構稼げたと思う。期間限定の素材集めは結構ポイントが高かったはずだ。
役場で手続きをしていると、「もう規定数になったのか?いつもだったら3日目に達成するくらいだろう?」という声が聞こえてきた。ごめんね・・・自分たちで15匹納めたからねえ。
「危なかったなあ。ギリギリだったよ。」
「本当ね。最後まで狩していたら多分ダメだったわね。」
「実績ポイントは通常狩りをするのに比較して数倍になるのでかなりおいしい依頼だったなあ。
まだまだ技量的には昇格には厳しいけど、ポイントはあげられる時に上げておきたいしね。」
「その通りね。技量が足りないならある程度は試験を遅らせることはできるけど、技量があってもポイントが足りなければ上がれないからね。」
まだ時間があるのでもう一度狩り場に戻って狩りをして戻る。
翌日に狩りに行くと、依頼が終わって意気消沈したのか他の冒険者がいなかったので狩れるだけ狩っていく。蜥蜴を20匹、蠍を5匹とかなりの数倒すことができた。
ちなみに肉については持って帰る人も少ないのであまり手に入らないようなので収納バッグに保存済みだ。食料関係の保存分はジェンのバッグの方に入れている。
このあとも数日狩りをしてからオーマトに戻ることにした。ここで狩りをすると金銭的に美味しいのは間違い無いんだけど、この狩りばかりだと上達がないからね。これで良階位の魔獣が狩れると勘違いしないようにしないといけない。今回のは特別だしね。
バスで戻ることも考えたんだけど、行きの行程を考えて帰りはバスではなく走って帰ることにした。自分達の移動速度を考えると走った方が早いと思うからね。
宿を朝早くに出発し、索敵を展開して魔獣を避けながら結構な速度で行くことができた。途中出てきた魔獣はついでに狩って行くので小遣い稼ぎにもなるしね。このためその日の夕方ギリギリにはオーマトの町に到着することができた。
~魔獣紹介~
金属蜥蜴:
良階位下位の魔獣。岩場の多いエリアに多く生息している蜥蜴の形をした魔獣。体長は2キヤルドほどで、体の半分は強靱な尻尾となっている。
鋭い牙を持っており、唾液に多くの病原菌が含まれているため、かまれると炎症を起こし、数日間高熱を出す場合がある。子供は死亡する事例も報告されている。また鋭い爪を持った前足と、強靱な尾を使って攻撃をしてくる。
皮膚には金属が含まれており、普通の剣などの武器ではダメージを与えられないため鈍器での攻撃が有効。ある程度ダメージを与えて動きが弱くなってきたらおなか側の皮膚は柔らかいため、剣や短剣などでとどめを刺すとよい。首の付け根あたりに刺すと一撃で倒すことができる。
魔法攻撃もダメージをあまり与えられないが、唯一雷魔法が有効で、強力な雷魔法であればかなり動きを止めることができる。動きを止めている間に攻撃をすれば反撃のリスクも軽減できる。ただし雷魔法が効くと言っても油断してはいけない。止めていられる時間は数秒がいいところだ。複数の雷魔法使いがいれば連続して動きを止めることができるかもしれない。
素材としての買い取り対象は爪と皮膚で、頭のところはもっとも価値が高い。肉はとれる量が少ないが高級食材とされており、かなり濃厚で食べ応えのあるものとなる。
金属蠍:
良階位下位の魔獣。岩場の多いエリアに多く生息している蠍の形をした魔獣。体長は2キヤルドくらいだが、毒を持つ尻尾だけでも1キヤルドある。
鋏と尻尾で攻撃してしてくるが、特に尻尾にある毒には注意しなければならない。即効性はないが毒の回復には中級回復薬以上が必要となる。回復しなければ徐々に体力が奪われ、数日後には死亡してしまう。
外骨格には金属が含まれており、普通の剣などの武器ではダメージを与えられないため鈍器での攻撃が有効。ある程度ダメージを与えて動きが弱くなってきたらおなか側の皮膚は柔らかいため、剣や短剣などでとどめを刺すとよい。おなか側の外骨格は剣が通るくらいなので剣や短剣などでとどめを刺すとよい。
魔法攻撃もダメージをあまり与えられないが、唯一雷魔法が有効で、強力な雷魔法であればかなり動きを止めることができる。動きを止めている間に攻撃をすれば反撃のリスクも軽減できる。ただし雷魔法が効くと言っても油断してはいけない。止めていられる時間は数秒がいいところだ。複数の雷魔法使いがいれば連続して動きを止めることができるかもしれない。
素材としての買い取り対象は外骨格部分と尻尾が対象となっており、尻尾の毒は薬の材料として使われる。死んだ後でも毒の効果は失われないため、取り扱いには注意が必要。間違っても尻尾の毒腺を破らないようにしなければならない。
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