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46. 異世界391日目 いろいろとやってみる
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46. 異世界391日目 いろいろとやってみる
現存する古代遺跡は無人島で見たんだけど、果たして他に今も稼働している遺跡はないのだろうか?本当にないのか、もしあったとしても見つかっていないのか、もしかしたら秘匿されている可能性もある。気になったので普通に稼働していない遺跡についてどんなものかについても調べてみた。
遺跡は昔から冒険者達によって主に魔道具など使用できるものを手に入れることを目的に調査されてきた。現在も新しい遺跡の発見を冒険者に依頼している人たちもいるくらいだ。
埋もれてしまっていた遺跡については国が中心となって調査されたものも多かったけど、国の調査でも遺物を探すことに注力されていただけで、遺跡自体の調査や保存についてはほとんどされていなかったらしい。
最近になって古代文明についての調査を行う団体ができたけど、遺跡の大半がすでに荒らされていることもあり、なかなか調査が進まないようだ。
新しく遺跡が見つかってもすでに主要な遺物は無くなっていることがほとんどで、手付かずの遺跡が見つかることはほとんどないようだ。残っているのは秘境と言われているところくらいだろうと言われている。
古代文明はかなり高度な文明であったらしいが、大きな戦争でその当時の知識や技術が失われてしまったと言われている。おそらく2000~4000年ほど前ではないかと言われているけれど、地学などがあまり進んでいないみたいで年代の特定がまだできていないようだ。現在の文明で残っている資料で遡れるのは2000年くらいなのでそれ以前という解釈だ。
遺跡の壁などに文字が書かれていたりもするんだけど、文字の存在は圧倒的に少なく、文字の解明はなかなか進んでいない。主要なものは紙のようなものに書かれていたのではないかと言われている。
遺跡の特徴の一つにかなり強化された壁があるようだ。壁に魔力を通すようになっているようで、通っていない状態でもかなりの強度なので魔力が通っていた場合は破壊不可能だったのではないかと言われている。あの島の壁がそれなんだろうな。
本でいろいろと読んではみたんだけど、実物を見てみないとよく分からないと言うことでサクラの近くにある古代遺跡に行ってみることにした。
場所はサクラから歩いて2時間ほどかかるところで、遺跡のほとんどが埋まっていたので掘り起こされた感じだ。遺跡の保存という概念はないみたいで放置されているけど、今でも何か見つからないかと冒険者達が来ることはあるようだ。
遺跡の中を見ていくと、扉のようなところがあって、同じように認証が必要なパネルがあったようだ。ただすでに取り外されているので詳細は分からない。遺跡では配線を含めて金属関係はすべて取り除かれているという感じ。
建物に使われている壁などは普通に固められたものみたいだけど、所々強化された建物もある。強化されているけど、島のように全く傷がつかないわけではなく、少しずつであるが削ることができた。ただそのような壁があるところはすでに穴が開けられて中は全て調査されてしまっている。
建物の中を見ると機械のようなものが設置されていたような跡もあった。回収されて魔道具や金属として処理されたのかな?
建物の位置を考えると町の大半は消滅したのか不自然な感じで建物が残っている。本当はもっと大きな町だったけど、戦争で町の大半がなくなり、一部の残ったエリアがこの遺跡なんだろう。蒼き衣を纏った人の旧世界のように巨大な兵器で完全に世界が滅びてしまったんだろうか?
もし遺跡を見つけたら調査する価値はありそうだ。うまくいけば高価な遺物を見つけることもできそうだしね。あの島のように古代文明の遺跡がまだ稼働しているところもあるかもしれない。道しるべの玉に登録されている場所でまだ遺跡の調査が行われていないような場所もあるから行ってみたいものだなあ。
今日はオークションが開催される日だ。先日オークションの話をするためにカルミーラ商会へ顔を出してオークションの出品するものはお願いしておいた。
~~~~~
受付にショウバンさんからの名刺と手紙と渡して状況を説明すると、受付はすぐに連絡を取ってくれて、部屋に案内され、スミエラさんという女性がやってきた。主に食べ物や飲み物について担当しているようで、オークションについても詳しいらしい。
オークションは2/30に開催されるみたいで、話は事前に聞いていたので準備はしてくれていたようだ。すぐに出品手続きを進めてくれるらしい。ただ、手紙ではジェンが10本確保して残りの156本提供することになっていたんだが、100本に変更してもらった。
試しに飲んだボトルが美味しかったせいで、もう二度と手に入らないかもしれないからと、いろいろと調べて気になったものを残すことにしたようだ。
とりあえず出品する予定の100本を出して引き渡しとなったけど、間違いがあっても困るということで1本1本中身と容器などを確認していく。当時の安いお酒もあるんだけど、それでも年数がたっているので希少性がある上、いくつかは幻と言われているお酒も混じっているらしい。
チェックが終わったところで、少し雑談となったんだけど、かなりお酒に興味があるようだったので、ジェンが「飲みかけでよければ鑑定の参考にしてください。」と1/3ほど残っている瓶を出してきた。さすがに例のお酒ではなかったけどね。
「中身が入れ替わっていると言われてしまえばそれまでですが、入れ替わっていないという証明はできません。」
瓶を見たスミエラさんはちょっと驚いていた。
「少しいただいてもよろしいでしょうか?」
「仕事に問題ないのでしたらどうぞ。話をする際にもどんなものかわかっていた方がいいと思いますので。」
小さな瓶に少し入れてから香りを嗅ぎ、口に入れると、かなり緩んだ顔になった。
「まさしく、マルグレニア地方のブランデーですわ。以前同じ20年ものを飲んだことがありますが、それよりも芳醇な香り・・・。」
このあとしばらく感想と説明が続いていたんだが、途中で我に返って謝ってきた。入れ替えるにしてもこのレベルのお酒を用意する方が難しいだろうと言うことだった。同じ熟成時間でも味が違っているようだ。瓶では熟成は進まないと聞いたことがあるけど、何かしら変化が起きているんだろうか?
ちなみにこの世界での熟成は、魔素によって進んでいると考えられており、瓶に入れると魔素が入らないため、木や瓶などでないと熟成が進まないとされている。魔法で熟成を加速できるかいろいろと試した人もいるようだけど、残念ながらそれは成功していないようだ。
「中身によって当たり外れがあるかもしれませんが、かなりの金額が期待できると思います。もしオークションの会場に行かれるのであれば入場券を手配しますがいかがいたしますか?」
「お願いします。気に入ったものがあれば自分たちも落札できるのでしょうか?」
「ええ、もちろん落札もできます。2日前に出品される商品の下見ができますので2/28の1時半にこちらに来ていただけますか?そのときにオークションの参加方法など簡単に案内させていただきます。」
「ありがとうございます。それではよろしくお願いします。」
とりあえず、それなりの金額にはなりそうでよかった。これで価値がないと言われたら悲しすぎだ。まあ収納バッグがあったからたいした手間ではなかったんだけどね。
~~~~~~~
オークション会場では誰が落札したか分からないように確認が終わった人は仮面のようなものを付け、服の上からガウンを掛けるようになっている。
仮面も意味あるのか?という仮面舞踏会のような目を隠すだけのものではなく、視覚妨害の機能の付いた仮面なので基本的に分からないようになっているらしい。会場ではすべて番号で呼ばれることになる。
2日前にオークションに出品されるものの下見が開催されていたのでそれに参加してある程度目星はつけている。建物では盗難防止のために魔法関係や収納バッグが使えないようになっていたんだけど、鑑定はできたので助かった。さすがに鑑定までできないと真贋がはっきりできないからね。
ミスリルやオリハルコン製の装備でそれも良レベル以上のものなどかなりいいものもあったけど、値段的に無理だろうなあ。まあこれらの製品で並階位とかいうのがそもそもないんだけどね。
一般的に価値があると理解されているものはおそらく無理だと思うので、もし落札するとしても鑑定とかでもよく分からないものなどにターゲットを絞った方がいいだろう。
「どう?何か手に入れたいものはあった?」
「いいものは多いけど普通の鑑定でも分かるくらいだから安く買うのはおそらく無理だね。とりあえず使い道がわからないものもあるけど古代遺跡の異物をいくつか狙ってみるつもりだよ。」
「私の方は特にないかなあ・・・。まあ値段次第というものはあるけどね。」
「とりあえずそれぞれの相場がどんな物かを確認しておくのも重要だよ。」
ちなみに自分たちが出品しているお酒はいくつかの種類別に10本ずつの出品となっていた。参考として渡していた試飲用のお酒は鑑定の人たちも飲んだらしく、参考意見としてコメントが書かれていた。
同じ年代物でもさらに熟成が進んでいると考えられ、製造年からも100年以上経過しているのは間違いないだろうと評価されていた。ただし、ものによってはダメになっている可能性もあることは理解した上で入札するように注意書きもあった。
オークションが始まりいろいろと出品されていく。いいものがあったら購入を考えていたんだけど、やっぱり値段が高くて手が出ない。スタートが100万ドールを超えているとか、最初の価格の段階で諦めなければならないものが多いからなあ。
一応チェックしておいた武器や防具に入札はしてみたけど、あっさりと上を行かれて断念するしかなかった。
まあ上階位の冒険者でミスリル装備とかは贅沢すぎるか。スレインさん達も持ってないからね。クリスさんは持っているけど。
けど 収納バッグは5キリルの物が出品されていたが、かなりの価格になっていた。5キリルで500万ドールちかくになっていたからね。
いよいよ自分が出したお酒の順番となった。ワインについては正直年代的な希少性のみと言う感じのようだ。古いものなのでダメなものもあるかもしれないという前提でのオークションになっている。
数万ドールになればうれしいと思っていたんだけど、開始直後から値段がどんどん上がっていく。こんなに上がるものなのか?最初の10本の価格が8万ドールって・・・。
後半ほどいいお酒を入れていたのか、さらに金額が上乗せされていく。最後の10本はスタートで50万とかなっていて、最後は158万ドールまで上がっていた。
周りの声を拾ったところ、どうやらその中には幻と言われるお酒が混じっていたようだ。ジェンが2本確保しているやつだな。お酒の情報は後で確認しておいた方が良さそうだ。しかもこの金額なのに、こんな安く落札した奴はラッキーだったなとか言われているし・・・。
結局、お酒は全部で400万ドール越えという、しゃれにならない金額になってしまった。うれしいけど、ちょっと怖いよ。手数料として10%はとられるが、それでも十分な収入だな。
「ジェン、この間確保したお酒の中にあの高いのがあったよね?」
「あったけど、売らないからね。」
「一本50万ドール超えるくらいだよ。」
「売ってしまったらもう二度と飲めないってことじゃない。いやだからね。」
「まあ、お金にそんなに困っているわけじゃないからいいけど・・・。」
まあ予想通りの反応だけどね。二本で良レベルの装備になるんだけど、まあしょうがないか。まあどうしようもなくなったらジェンもわがまま言わないだろう。
気になった古代遺跡の遺物は使用目的が分からなくても収集したがる人もそれなりにいるみたい。金額はあってないようなものなのでのみの市で安く売られていることもあるんだけど、今回のオークションでも出品されていた。
古代遺跡から発掘されたケーブルのスタート価格は5000ドールからだった。入札する場合は番号札をあげていくんだけど、一度確定してしまった場合には支払いは確実に行わなければ色々と罰則がある。参加の際に最低限のお金を提示する必要があるのもそのためだ。今回は商会が保証してくれたのでいらなかったけどね。
自分の他に3名ほど入札していたんだけど、そこまで競ることもなく3万5千ドールで落札できた。ケーブルとしてそのまま使用できるけど、このままだとそんなに効率が良いものではないのでそこまで貴重なものではないようだ。
全部で20キグムくらいらしいので車を買ったら配線し直すのに良さそうだ。微量とは言え必要なミスリルとかどうしようと思っていたからちょうどよかった。
島から持って帰ってきた配線を参考におそらく酸化されたものを元に戻せば完全とは言えなくてもある程度は元の性能に戻ると思っている。どのくらい効率が上がるのかはやってみないとわからないけどね。
他にも使えるかどうかわからないけど、いくつか気になるものを落札しておいた。まあどれも数万ドールだから買っておいて問題ないだろう。
「一応目星をつけていたものは落札できたから良かったよ。特に配線については車を買ったらどこかで試さないといけないしね。」
「すぐに改造とかするの?」
「いや、まずは魔素の伝導率とか確認してからになると思うからすぐには出来ないと思う。ちゃんと復元出来るかも分からないしね。でも古代遺跡の配線効率が再現出来れば車の燃費とか格段に良くなると思うよ。」
「それもそうね。まあ先に手に入れておかないとあとで困るしね。」
「そうそう。」
スミエラさんに同行してもらって落札品の支払いを済ませてから出品したものの落札金を受け取る。一気に金持ちになったけど、装備のためにお金は貯めていかないといけない。
いったんカルミーラ商会に戻ってから少し話をして店を後にする。また何かいいものが手に入ったら手続きとかはやってくれるようだ。ありがたい。
この日は結構な金額を手に入れたので祝杯を兼ねてちょっと贅沢に食事をすることにした。最近は結構高めの店で食べていたのでサクラを出た後のことが心配だけどそこは割り切るしかないな。
さすがに高くて遠慮していた店はフレンチのような料理の店だ。一人1500ドールからとかなり高いけど、せっかくなので4000ドールのコースをお願いする。
スープにサラダ、鶏肉のようなものに牛肉のようなものを使った料理で美味しかった。巨鰐や巨角牛の肉らしい。どちらも良階位の魔獣なのか。ジェンは今日もワインを飲んでいる。飲みすぎないように注意したが、これはダメなパターンだな。
食事を堪能して宿に向かうが、やはり少し酔ったジェンに絡まれる。やれやれ。今日は浄化魔法だけでさっさと着替えて眠ることにしたんだけど、着替えの途中でジェンが絡んできたせいで大変だった。いや、眼福だったけどね。
しばらくしてからやっと納車されるというので店に受け取りに行く。スレインさん達も新しい車に興味があると言うことなので店で待ち合わせることにしている。
店に到着すると、すでにスレインさん達がやってきており他の店員に話しかけられていたんだけど自分たちに気がつくとすぐにこっちにやってきた。そのあとクーロンさんと店長ともう一人やってきた。
「どうも初めまして。この車を作っている会社のエラードといいます。このたびはご購入ありがとうございます。」
「あぁ、どうも初めまして。ジュンイチと言います。こっちはパーティーを組んでいるジェニファーです。あとこちらのメンバーは今回の車に興味があると言うことで見に来ていますので一緒に説明を聞いても大丈夫でしょうか?」
「ええ、是非ご覧ください。」
購入の時には自動車メーカーの人がやってきて説明するのかな?と思ったんだが、説明はクーロンさんが行うようだ。
一通りの車の説明の後、追加で付けてもらったミラーや音楽の出る魔道具について説明を受ける。ミラーはイメージ図を渡していたとおりの感じで取り付けられていた。ある程度向きも変えられるようになっているのは指定通りでいい感じ。スレインさん達も取り付けたものをみて「なるほど、いいかも。」と言っている。
一通りの説明を受けた後、エラードさんから提案があった。
「今回取り付けさせていただいたミラーや音楽の出る魔道具についてなんですが、他の車にも採用させていただいてもよろしいでしょうか?」
なんでわざわざ聞いてくるんだろう?いいと思ったら勝手に付ければいいのに。
「ええ、さすがに効果が分かったらみんな勝手に付けるだろうし、問題ないですよ。」
「いいのですか?」
「なにか問題でもあるのでしょうか?」
なにが言いたいのかよく分からないなあと思っていると、スレインさんが助言してくれた。
「ジュンイチ。今回のアイデアを採用するに当たって対価をどのくらい払えばいいかと聞いているんだと思うぞ。」
「え?対価って?こんなの少ししたらみんな思いつくことでしょ?別に対価なんていらないですよ。」
なんかエラードさんだけでなく、チューリッヒさんやクロードさんも驚いた顔をしている。なんか変なことを言ったのかな?
「いえ、車ができてかなりたちますが、このような発想をした人がいなかったので今まで付いていなかったんですよ。音楽については車内が静かになったこともあって思いつくかもしれませんが、それでもすぐに思いつくものでもないような・・・。」
うーん、そう言われてもなあ。自分にとっては普通のことなのでこれで対価をもらうと言ってもなんともいえないよ。
「それじゃあ、なにか車の機能で思いついたときに検討、研究してもらうと言うことで良いでしょうか?」
「それはこちらとしては願ってもない申し出なんですが・・・よろしいのでしょうか?」
「ジェン、それでもいいよね?」
「イチがそう思うのならかまわないわ。いろいろと車に付けてもらいたい機能も出てくると思うし、便利になれば移動も楽になるからね。
ああ、そうだ。試験的に付けてもらうのは無料でやってくれるってことでいいんですよね?」
「それはもちろんです。今回の取り付け費用も無料でかまいません。ありがとうございます。
申し訳ありませんが、会社に連絡しないといけませんので、いったん席を外させてもらいますけどよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
このあと確認を含めて少し辺りを走ってみる。スレインさん達も同乗したんだけど、音がかなり静かなことに驚いていた。特に問題ないのでこれで引き取りすることにした。
スレインさん達が乗っている車は他の店で買っていたんだけど、最近少し調子が悪いみたいでそろそろ買い換えてはどうかと言われているらしい。せっかくなのでクーロンさんに見てもらったところ、後輪の車軸の一部がちょっとゆがみ始めているだけみたいで、修理すればそんなにかからず治るらしい。他の店では修理代がかなりかかるので買い換えを勧められていたみたいでちょっと怒っていた。
そのまま修理をしてもらうのかと思ったら、今回の新しい車に興味があるみたいで、クーロンさんに価格の見積もりをお願いしていた。
先ほどの車のオプションのことがあるのでもう少し待ってほしいと言われたのでスレインさん達と一緒に近くの店に昼食を取りに行く。お昼はパスタの店でゆっくりと食事をとった。
ちなみに車で移動をしている場合、単独の車の場合は高レベルの冒険者が乗っていると判断されるため、盗賊に襲われることはほとんどないようだ。ただ注意はしていた方がいいと助言を受ける。
スレインさん達と別れてから店に戻ると、契約書を作成したので署名してほしいと言われた。内容を見ると、車のアイデアに関しての研究や取り付けにかかる費用はすべて無償で行うこと、対価が必要となった場合は別途取り決めを行うことが明記されていた。ほんとにいいのか?と思いながらもジェンにも確認してもらい、こちらに不利な内容はないことを見てからサインを行う。
車が手に入ったのでせっかくだから近くにドライブへ行くことにした。交代で運転をしながら町の近郊を走る。途中で重量軽減魔法をかけるとペースが上がったのでやはり効果がありそうだ。音楽もいい感じに聴くことができるし、何より速い。
確認のため収納バッグに収納してみると特に問題なく収納できた。これで駐車場を借りる必要もないな。もちろん簡単に収納バッグに収納出来ると盗難などの問題が出てしまうので車には制約を付けて簡単に収納出来ないようになっている。このため収納するのであれば事前に登録しておく必要がある。
せっかく外に出たので眺めのいい高台でお湯を沸かしてから収納バッグに入っていた料理でちょっと早めの食事にした。
「こうやって気軽に外に出られるというのもいいね。もちろん最低限の実力が無いと危ないけど。」
「確かにそうね。ピクニックという風習はあるけど、護衛付きというのが当たり前だものね。」
「これで車も手に入ったから町の移動がだいぶん楽になるよ。」
「そうね。それにたまにはこうやって外に出て食事というのもいいかもしれないね。」
まったりとくつろいだ後、暗くなる前に町に戻る。宿に戻ってからお風呂に入ってさっぱりして眠りにつく。
~クーロンSide~
今日はジュンイチさん達の車の引き渡しの日だ。昨日納車されたので間違いがないようにいろいろと確認をしておいた。ジュンイチさんに言われていた音楽の装置やミラーの設置などについても問題ない。
店を開店すると、珍しくすぐに来客があった。たしか蠍の尾というパーティーの人たちだったと思う。美人で有名な4人組のパーティーだ。ただ車は他の店で購入していたと思うんだが、なにかあったのかな?
すぐに先輩が声をかけに行ったんだが、なぜか断られている。たんに知り合いが車を買うというので来ただけと言っているようだ。そう思っているとジュンイチさん達がやってきたんだが、蠍の尾のメンバーがすぐに彼らのところに行っていた。ジュンイチさんって彼女たちの知り合いだったのか?
今回車のメーカーからエラードさんという結構偉い方がやってきていた。一通りの説明の後、ミラーなどのことについてアイデアを使いたいと申し出ていた。すると、あっさりと許可してもらい、しかも見返りも必要ないと言われ驚いてしまった。
結局、車のアイデアに関しての研究や取り付けにかかる費用はすべて無償で行うこと、対価が必要となった場合は別途取り決めを行うことなど書かれた契約を行うことになったようだ。店長は自動車メーカーから今後融通できるようにしてくれるという話だったのでかなり喜んでいた。
蠍の尾のメンバーのスレインさんという人から「今の車を買い換えるように言われているんだが、見てくれないか」と言われて点検してみた。単に後輪の軸がゆがみ始めているだけのようなので数万ドールで修理ができそうな感じたった。
他の店では買い換えた方が安いと言われていたらしくかなり怒っていた。ただ今回の新しい車に興味があったみたいで、見積もりを依頼された。ほんとに?今度からこっちに修理とかも持ってくると言われたのでとてもありがたい。
お見送りをした後、店長から臨時ボーナスをもらうことができた。どうもカサス商会の支店長からお礼の手紙をもらったらしい。いい店と店員を紹介してもらってとても助かったと書かれていたようだ。頑張った甲斐があった。
そのあとスレインさん達も車を購入してくれることになったんだが、一緒にクリストフ殿下がやってきたのには驚いた。噂では聞いていたが本当にパーティーを組んでいたんだな。しかもジュンイチさんのことも話していたんだけどどういう関係なんだろう。俺にも運が向いてきたのかな。
現存する古代遺跡は無人島で見たんだけど、果たして他に今も稼働している遺跡はないのだろうか?本当にないのか、もしあったとしても見つかっていないのか、もしかしたら秘匿されている可能性もある。気になったので普通に稼働していない遺跡についてどんなものかについても調べてみた。
遺跡は昔から冒険者達によって主に魔道具など使用できるものを手に入れることを目的に調査されてきた。現在も新しい遺跡の発見を冒険者に依頼している人たちもいるくらいだ。
埋もれてしまっていた遺跡については国が中心となって調査されたものも多かったけど、国の調査でも遺物を探すことに注力されていただけで、遺跡自体の調査や保存についてはほとんどされていなかったらしい。
最近になって古代文明についての調査を行う団体ができたけど、遺跡の大半がすでに荒らされていることもあり、なかなか調査が進まないようだ。
新しく遺跡が見つかってもすでに主要な遺物は無くなっていることがほとんどで、手付かずの遺跡が見つかることはほとんどないようだ。残っているのは秘境と言われているところくらいだろうと言われている。
古代文明はかなり高度な文明であったらしいが、大きな戦争でその当時の知識や技術が失われてしまったと言われている。おそらく2000~4000年ほど前ではないかと言われているけれど、地学などがあまり進んでいないみたいで年代の特定がまだできていないようだ。現在の文明で残っている資料で遡れるのは2000年くらいなのでそれ以前という解釈だ。
遺跡の壁などに文字が書かれていたりもするんだけど、文字の存在は圧倒的に少なく、文字の解明はなかなか進んでいない。主要なものは紙のようなものに書かれていたのではないかと言われている。
遺跡の特徴の一つにかなり強化された壁があるようだ。壁に魔力を通すようになっているようで、通っていない状態でもかなりの強度なので魔力が通っていた場合は破壊不可能だったのではないかと言われている。あの島の壁がそれなんだろうな。
本でいろいろと読んではみたんだけど、実物を見てみないとよく分からないと言うことでサクラの近くにある古代遺跡に行ってみることにした。
場所はサクラから歩いて2時間ほどかかるところで、遺跡のほとんどが埋まっていたので掘り起こされた感じだ。遺跡の保存という概念はないみたいで放置されているけど、今でも何か見つからないかと冒険者達が来ることはあるようだ。
遺跡の中を見ていくと、扉のようなところがあって、同じように認証が必要なパネルがあったようだ。ただすでに取り外されているので詳細は分からない。遺跡では配線を含めて金属関係はすべて取り除かれているという感じ。
建物に使われている壁などは普通に固められたものみたいだけど、所々強化された建物もある。強化されているけど、島のように全く傷がつかないわけではなく、少しずつであるが削ることができた。ただそのような壁があるところはすでに穴が開けられて中は全て調査されてしまっている。
建物の中を見ると機械のようなものが設置されていたような跡もあった。回収されて魔道具や金属として処理されたのかな?
建物の位置を考えると町の大半は消滅したのか不自然な感じで建物が残っている。本当はもっと大きな町だったけど、戦争で町の大半がなくなり、一部の残ったエリアがこの遺跡なんだろう。蒼き衣を纏った人の旧世界のように巨大な兵器で完全に世界が滅びてしまったんだろうか?
もし遺跡を見つけたら調査する価値はありそうだ。うまくいけば高価な遺物を見つけることもできそうだしね。あの島のように古代文明の遺跡がまだ稼働しているところもあるかもしれない。道しるべの玉に登録されている場所でまだ遺跡の調査が行われていないような場所もあるから行ってみたいものだなあ。
今日はオークションが開催される日だ。先日オークションの話をするためにカルミーラ商会へ顔を出してオークションの出品するものはお願いしておいた。
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受付にショウバンさんからの名刺と手紙と渡して状況を説明すると、受付はすぐに連絡を取ってくれて、部屋に案内され、スミエラさんという女性がやってきた。主に食べ物や飲み物について担当しているようで、オークションについても詳しいらしい。
オークションは2/30に開催されるみたいで、話は事前に聞いていたので準備はしてくれていたようだ。すぐに出品手続きを進めてくれるらしい。ただ、手紙ではジェンが10本確保して残りの156本提供することになっていたんだが、100本に変更してもらった。
試しに飲んだボトルが美味しかったせいで、もう二度と手に入らないかもしれないからと、いろいろと調べて気になったものを残すことにしたようだ。
とりあえず出品する予定の100本を出して引き渡しとなったけど、間違いがあっても困るということで1本1本中身と容器などを確認していく。当時の安いお酒もあるんだけど、それでも年数がたっているので希少性がある上、いくつかは幻と言われているお酒も混じっているらしい。
チェックが終わったところで、少し雑談となったんだけど、かなりお酒に興味があるようだったので、ジェンが「飲みかけでよければ鑑定の参考にしてください。」と1/3ほど残っている瓶を出してきた。さすがに例のお酒ではなかったけどね。
「中身が入れ替わっていると言われてしまえばそれまでですが、入れ替わっていないという証明はできません。」
瓶を見たスミエラさんはちょっと驚いていた。
「少しいただいてもよろしいでしょうか?」
「仕事に問題ないのでしたらどうぞ。話をする際にもどんなものかわかっていた方がいいと思いますので。」
小さな瓶に少し入れてから香りを嗅ぎ、口に入れると、かなり緩んだ顔になった。
「まさしく、マルグレニア地方のブランデーですわ。以前同じ20年ものを飲んだことがありますが、それよりも芳醇な香り・・・。」
このあとしばらく感想と説明が続いていたんだが、途中で我に返って謝ってきた。入れ替えるにしてもこのレベルのお酒を用意する方が難しいだろうと言うことだった。同じ熟成時間でも味が違っているようだ。瓶では熟成は進まないと聞いたことがあるけど、何かしら変化が起きているんだろうか?
ちなみにこの世界での熟成は、魔素によって進んでいると考えられており、瓶に入れると魔素が入らないため、木や瓶などでないと熟成が進まないとされている。魔法で熟成を加速できるかいろいろと試した人もいるようだけど、残念ながらそれは成功していないようだ。
「中身によって当たり外れがあるかもしれませんが、かなりの金額が期待できると思います。もしオークションの会場に行かれるのであれば入場券を手配しますがいかがいたしますか?」
「お願いします。気に入ったものがあれば自分たちも落札できるのでしょうか?」
「ええ、もちろん落札もできます。2日前に出品される商品の下見ができますので2/28の1時半にこちらに来ていただけますか?そのときにオークションの参加方法など簡単に案内させていただきます。」
「ありがとうございます。それではよろしくお願いします。」
とりあえず、それなりの金額にはなりそうでよかった。これで価値がないと言われたら悲しすぎだ。まあ収納バッグがあったからたいした手間ではなかったんだけどね。
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オークション会場では誰が落札したか分からないように確認が終わった人は仮面のようなものを付け、服の上からガウンを掛けるようになっている。
仮面も意味あるのか?という仮面舞踏会のような目を隠すだけのものではなく、視覚妨害の機能の付いた仮面なので基本的に分からないようになっているらしい。会場ではすべて番号で呼ばれることになる。
2日前にオークションに出品されるものの下見が開催されていたのでそれに参加してある程度目星はつけている。建物では盗難防止のために魔法関係や収納バッグが使えないようになっていたんだけど、鑑定はできたので助かった。さすがに鑑定までできないと真贋がはっきりできないからね。
ミスリルやオリハルコン製の装備でそれも良レベル以上のものなどかなりいいものもあったけど、値段的に無理だろうなあ。まあこれらの製品で並階位とかいうのがそもそもないんだけどね。
一般的に価値があると理解されているものはおそらく無理だと思うので、もし落札するとしても鑑定とかでもよく分からないものなどにターゲットを絞った方がいいだろう。
「どう?何か手に入れたいものはあった?」
「いいものは多いけど普通の鑑定でも分かるくらいだから安く買うのはおそらく無理だね。とりあえず使い道がわからないものもあるけど古代遺跡の異物をいくつか狙ってみるつもりだよ。」
「私の方は特にないかなあ・・・。まあ値段次第というものはあるけどね。」
「とりあえずそれぞれの相場がどんな物かを確認しておくのも重要だよ。」
ちなみに自分たちが出品しているお酒はいくつかの種類別に10本ずつの出品となっていた。参考として渡していた試飲用のお酒は鑑定の人たちも飲んだらしく、参考意見としてコメントが書かれていた。
同じ年代物でもさらに熟成が進んでいると考えられ、製造年からも100年以上経過しているのは間違いないだろうと評価されていた。ただし、ものによってはダメになっている可能性もあることは理解した上で入札するように注意書きもあった。
オークションが始まりいろいろと出品されていく。いいものがあったら購入を考えていたんだけど、やっぱり値段が高くて手が出ない。スタートが100万ドールを超えているとか、最初の価格の段階で諦めなければならないものが多いからなあ。
一応チェックしておいた武器や防具に入札はしてみたけど、あっさりと上を行かれて断念するしかなかった。
まあ上階位の冒険者でミスリル装備とかは贅沢すぎるか。スレインさん達も持ってないからね。クリスさんは持っているけど。
けど 収納バッグは5キリルの物が出品されていたが、かなりの価格になっていた。5キリルで500万ドールちかくになっていたからね。
いよいよ自分が出したお酒の順番となった。ワインについては正直年代的な希少性のみと言う感じのようだ。古いものなのでダメなものもあるかもしれないという前提でのオークションになっている。
数万ドールになればうれしいと思っていたんだけど、開始直後から値段がどんどん上がっていく。こんなに上がるものなのか?最初の10本の価格が8万ドールって・・・。
後半ほどいいお酒を入れていたのか、さらに金額が上乗せされていく。最後の10本はスタートで50万とかなっていて、最後は158万ドールまで上がっていた。
周りの声を拾ったところ、どうやらその中には幻と言われるお酒が混じっていたようだ。ジェンが2本確保しているやつだな。お酒の情報は後で確認しておいた方が良さそうだ。しかもこの金額なのに、こんな安く落札した奴はラッキーだったなとか言われているし・・・。
結局、お酒は全部で400万ドール越えという、しゃれにならない金額になってしまった。うれしいけど、ちょっと怖いよ。手数料として10%はとられるが、それでも十分な収入だな。
「ジェン、この間確保したお酒の中にあの高いのがあったよね?」
「あったけど、売らないからね。」
「一本50万ドール超えるくらいだよ。」
「売ってしまったらもう二度と飲めないってことじゃない。いやだからね。」
「まあ、お金にそんなに困っているわけじゃないからいいけど・・・。」
まあ予想通りの反応だけどね。二本で良レベルの装備になるんだけど、まあしょうがないか。まあどうしようもなくなったらジェンもわがまま言わないだろう。
気になった古代遺跡の遺物は使用目的が分からなくても収集したがる人もそれなりにいるみたい。金額はあってないようなものなのでのみの市で安く売られていることもあるんだけど、今回のオークションでも出品されていた。
古代遺跡から発掘されたケーブルのスタート価格は5000ドールからだった。入札する場合は番号札をあげていくんだけど、一度確定してしまった場合には支払いは確実に行わなければ色々と罰則がある。参加の際に最低限のお金を提示する必要があるのもそのためだ。今回は商会が保証してくれたのでいらなかったけどね。
自分の他に3名ほど入札していたんだけど、そこまで競ることもなく3万5千ドールで落札できた。ケーブルとしてそのまま使用できるけど、このままだとそんなに効率が良いものではないのでそこまで貴重なものではないようだ。
全部で20キグムくらいらしいので車を買ったら配線し直すのに良さそうだ。微量とは言え必要なミスリルとかどうしようと思っていたからちょうどよかった。
島から持って帰ってきた配線を参考におそらく酸化されたものを元に戻せば完全とは言えなくてもある程度は元の性能に戻ると思っている。どのくらい効率が上がるのかはやってみないとわからないけどね。
他にも使えるかどうかわからないけど、いくつか気になるものを落札しておいた。まあどれも数万ドールだから買っておいて問題ないだろう。
「一応目星をつけていたものは落札できたから良かったよ。特に配線については車を買ったらどこかで試さないといけないしね。」
「すぐに改造とかするの?」
「いや、まずは魔素の伝導率とか確認してからになると思うからすぐには出来ないと思う。ちゃんと復元出来るかも分からないしね。でも古代遺跡の配線効率が再現出来れば車の燃費とか格段に良くなると思うよ。」
「それもそうね。まあ先に手に入れておかないとあとで困るしね。」
「そうそう。」
スミエラさんに同行してもらって落札品の支払いを済ませてから出品したものの落札金を受け取る。一気に金持ちになったけど、装備のためにお金は貯めていかないといけない。
いったんカルミーラ商会に戻ってから少し話をして店を後にする。また何かいいものが手に入ったら手続きとかはやってくれるようだ。ありがたい。
この日は結構な金額を手に入れたので祝杯を兼ねてちょっと贅沢に食事をすることにした。最近は結構高めの店で食べていたのでサクラを出た後のことが心配だけどそこは割り切るしかないな。
さすがに高くて遠慮していた店はフレンチのような料理の店だ。一人1500ドールからとかなり高いけど、せっかくなので4000ドールのコースをお願いする。
スープにサラダ、鶏肉のようなものに牛肉のようなものを使った料理で美味しかった。巨鰐や巨角牛の肉らしい。どちらも良階位の魔獣なのか。ジェンは今日もワインを飲んでいる。飲みすぎないように注意したが、これはダメなパターンだな。
食事を堪能して宿に向かうが、やはり少し酔ったジェンに絡まれる。やれやれ。今日は浄化魔法だけでさっさと着替えて眠ることにしたんだけど、着替えの途中でジェンが絡んできたせいで大変だった。いや、眼福だったけどね。
しばらくしてからやっと納車されるというので店に受け取りに行く。スレインさん達も新しい車に興味があると言うことなので店で待ち合わせることにしている。
店に到着すると、すでにスレインさん達がやってきており他の店員に話しかけられていたんだけど自分たちに気がつくとすぐにこっちにやってきた。そのあとクーロンさんと店長ともう一人やってきた。
「どうも初めまして。この車を作っている会社のエラードといいます。このたびはご購入ありがとうございます。」
「あぁ、どうも初めまして。ジュンイチと言います。こっちはパーティーを組んでいるジェニファーです。あとこちらのメンバーは今回の車に興味があると言うことで見に来ていますので一緒に説明を聞いても大丈夫でしょうか?」
「ええ、是非ご覧ください。」
購入の時には自動車メーカーの人がやってきて説明するのかな?と思ったんだが、説明はクーロンさんが行うようだ。
一通りの車の説明の後、追加で付けてもらったミラーや音楽の出る魔道具について説明を受ける。ミラーはイメージ図を渡していたとおりの感じで取り付けられていた。ある程度向きも変えられるようになっているのは指定通りでいい感じ。スレインさん達も取り付けたものをみて「なるほど、いいかも。」と言っている。
一通りの説明を受けた後、エラードさんから提案があった。
「今回取り付けさせていただいたミラーや音楽の出る魔道具についてなんですが、他の車にも採用させていただいてもよろしいでしょうか?」
なんでわざわざ聞いてくるんだろう?いいと思ったら勝手に付ければいいのに。
「ええ、さすがに効果が分かったらみんな勝手に付けるだろうし、問題ないですよ。」
「いいのですか?」
「なにか問題でもあるのでしょうか?」
なにが言いたいのかよく分からないなあと思っていると、スレインさんが助言してくれた。
「ジュンイチ。今回のアイデアを採用するに当たって対価をどのくらい払えばいいかと聞いているんだと思うぞ。」
「え?対価って?こんなの少ししたらみんな思いつくことでしょ?別に対価なんていらないですよ。」
なんかエラードさんだけでなく、チューリッヒさんやクロードさんも驚いた顔をしている。なんか変なことを言ったのかな?
「いえ、車ができてかなりたちますが、このような発想をした人がいなかったので今まで付いていなかったんですよ。音楽については車内が静かになったこともあって思いつくかもしれませんが、それでもすぐに思いつくものでもないような・・・。」
うーん、そう言われてもなあ。自分にとっては普通のことなのでこれで対価をもらうと言ってもなんともいえないよ。
「それじゃあ、なにか車の機能で思いついたときに検討、研究してもらうと言うことで良いでしょうか?」
「それはこちらとしては願ってもない申し出なんですが・・・よろしいのでしょうか?」
「ジェン、それでもいいよね?」
「イチがそう思うのならかまわないわ。いろいろと車に付けてもらいたい機能も出てくると思うし、便利になれば移動も楽になるからね。
ああ、そうだ。試験的に付けてもらうのは無料でやってくれるってことでいいんですよね?」
「それはもちろんです。今回の取り付け費用も無料でかまいません。ありがとうございます。
申し訳ありませんが、会社に連絡しないといけませんので、いったん席を外させてもらいますけどよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
このあと確認を含めて少し辺りを走ってみる。スレインさん達も同乗したんだけど、音がかなり静かなことに驚いていた。特に問題ないのでこれで引き取りすることにした。
スレインさん達が乗っている車は他の店で買っていたんだけど、最近少し調子が悪いみたいでそろそろ買い換えてはどうかと言われているらしい。せっかくなのでクーロンさんに見てもらったところ、後輪の車軸の一部がちょっとゆがみ始めているだけみたいで、修理すればそんなにかからず治るらしい。他の店では修理代がかなりかかるので買い換えを勧められていたみたいでちょっと怒っていた。
そのまま修理をしてもらうのかと思ったら、今回の新しい車に興味があるみたいで、クーロンさんに価格の見積もりをお願いしていた。
先ほどの車のオプションのことがあるのでもう少し待ってほしいと言われたのでスレインさん達と一緒に近くの店に昼食を取りに行く。お昼はパスタの店でゆっくりと食事をとった。
ちなみに車で移動をしている場合、単独の車の場合は高レベルの冒険者が乗っていると判断されるため、盗賊に襲われることはほとんどないようだ。ただ注意はしていた方がいいと助言を受ける。
スレインさん達と別れてから店に戻ると、契約書を作成したので署名してほしいと言われた。内容を見ると、車のアイデアに関しての研究や取り付けにかかる費用はすべて無償で行うこと、対価が必要となった場合は別途取り決めを行うことが明記されていた。ほんとにいいのか?と思いながらもジェンにも確認してもらい、こちらに不利な内容はないことを見てからサインを行う。
車が手に入ったのでせっかくだから近くにドライブへ行くことにした。交代で運転をしながら町の近郊を走る。途中で重量軽減魔法をかけるとペースが上がったのでやはり効果がありそうだ。音楽もいい感じに聴くことができるし、何より速い。
確認のため収納バッグに収納してみると特に問題なく収納できた。これで駐車場を借りる必要もないな。もちろん簡単に収納バッグに収納出来ると盗難などの問題が出てしまうので車には制約を付けて簡単に収納出来ないようになっている。このため収納するのであれば事前に登録しておく必要がある。
せっかく外に出たので眺めのいい高台でお湯を沸かしてから収納バッグに入っていた料理でちょっと早めの食事にした。
「こうやって気軽に外に出られるというのもいいね。もちろん最低限の実力が無いと危ないけど。」
「確かにそうね。ピクニックという風習はあるけど、護衛付きというのが当たり前だものね。」
「これで車も手に入ったから町の移動がだいぶん楽になるよ。」
「そうね。それにたまにはこうやって外に出て食事というのもいいかもしれないね。」
まったりとくつろいだ後、暗くなる前に町に戻る。宿に戻ってからお風呂に入ってさっぱりして眠りにつく。
~クーロンSide~
今日はジュンイチさん達の車の引き渡しの日だ。昨日納車されたので間違いがないようにいろいろと確認をしておいた。ジュンイチさんに言われていた音楽の装置やミラーの設置などについても問題ない。
店を開店すると、珍しくすぐに来客があった。たしか蠍の尾というパーティーの人たちだったと思う。美人で有名な4人組のパーティーだ。ただ車は他の店で購入していたと思うんだが、なにかあったのかな?
すぐに先輩が声をかけに行ったんだが、なぜか断られている。たんに知り合いが車を買うというので来ただけと言っているようだ。そう思っているとジュンイチさん達がやってきたんだが、蠍の尾のメンバーがすぐに彼らのところに行っていた。ジュンイチさんって彼女たちの知り合いだったのか?
今回車のメーカーからエラードさんという結構偉い方がやってきていた。一通りの説明の後、ミラーなどのことについてアイデアを使いたいと申し出ていた。すると、あっさりと許可してもらい、しかも見返りも必要ないと言われ驚いてしまった。
結局、車のアイデアに関しての研究や取り付けにかかる費用はすべて無償で行うこと、対価が必要となった場合は別途取り決めを行うことなど書かれた契約を行うことになったようだ。店長は自動車メーカーから今後融通できるようにしてくれるという話だったのでかなり喜んでいた。
蠍の尾のメンバーのスレインさんという人から「今の車を買い換えるように言われているんだが、見てくれないか」と言われて点検してみた。単に後輪の軸がゆがみ始めているだけのようなので数万ドールで修理ができそうな感じたった。
他の店では買い換えた方が安いと言われていたらしくかなり怒っていた。ただ今回の新しい車に興味があったみたいで、見積もりを依頼された。ほんとに?今度からこっちに修理とかも持ってくると言われたのでとてもありがたい。
お見送りをした後、店長から臨時ボーナスをもらうことができた。どうもカサス商会の支店長からお礼の手紙をもらったらしい。いい店と店員を紹介してもらってとても助かったと書かれていたようだ。頑張った甲斐があった。
そのあとスレインさん達も車を購入してくれることになったんだが、一緒にクリストフ殿下がやってきたのには驚いた。噂では聞いていたが本当にパーティーを組んでいたんだな。しかもジュンイチさんのことも話していたんだけどどういう関係なんだろう。俺にも運が向いてきたのかな。
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