【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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49. 異世界401日目 他の国に行くことにした

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49. 異世界401日目 他の国に行くことにした
 3月になってそろそろ北上もできるようになってきたので準備を開始する。初めての他の国への移動である。

 国王陛下から紹介状を書いてもらったこともあり、今回行くのはこの国ともかなり交流の多い北のアルモニアだ。アルモニアは魔法の技術に力を入れている国で、現代では最高レベルといわれる魔法使いのジョニーファン様がいるところだ。この人を中心に魔法に関する研究が行われていて、最新魔法技術はここから発信されているといっても過言ではないらしい。

 普通に考えると、ただの平民が簡単に会えないだろうけど、今回はヤーマン国国王陛下の紹介状があるので少しは会ってくれるのではないだろうかと期待している。できれば魔法の扉のことや魔法の威力アップについて話を聞いてみたい。

 他にもヤーマン国との関係もよく、アルモニアでは共通語としてヤーマン語と同じ言葉が使われているという点も大きい。一応アルモニア語と言われるが一般的にはヤーマン語と言って問題ない。元々ヤーマン国の人間がその地域にいる人々をまとめ上げて興した国なので当たり前だ。

 アルモニアが国の樹立を宣言したとき、国として認めるかどうかは色々と揉めたらしいけど、最終的に武力では無く平和的に解決したため関係も悪くないようだ。
 当時のヤーマン国王がこのことについてかかなり寛容で、国として認めることを推し進めたらしい。鉱石の採掘などの利権などいろいろ大人の事情もあったらしいけどね。

 ハクセンはヤーマン語に近いとはいえ、若干言葉が異なるため、もっとハクセン語を勉強してからにしたいという思いもある。
 ライハンドリア共通語でも宿泊とか買い物は大丈夫なんだけど、やはりその国の言葉を最低限は話せた方がいい。加護のおかげか習得スピードも上がっているしね。


 アルモニアも王政をとっているけど、象徴的な王になってきているヤーマンよりも王政は強いらしい。また各領地も貴族によって統治されているみたいだ。
 ただ各領地で絶対的な権限があるわけではなく、ひどい統治をしていると領主の罷免やその家の取り潰しもあるらしい。詳細は公開されていないけど、いろいろと調査する機関があるのだろう。「貴族に娘がさらわれた」とか「すごい税金を搾取されている」とかいうことはないと信じたい。


 ちなみにこの国では奴隷制は採用されているようだけど、奴隷の人権はある程度は保証されているようだ。まあ精神的に奴属させる魔法とかもないみたいだからね。

 奴隷・・・自由にできる女奴隷・・・。ジェンがいるから無理だし、それ以前にそんな奴隷を買う勇気もない。異世界ものでは成り行きで買うことになるんだけどね。盾役として雇うとしてもやっぱり秘密にしなければならないことが多いのでやめた方がいいだろうなあ。



 国は北の方になるため、3月頃までは寒いし、雪も深いようなので、移動できるのは雪が溶ける4月以降になるだろうな。あとは遅くとも9月初旬には南下しておかないと動けなくなるので、滞在期間は長くても5ヶ月くらいか?まあ状況によっては冬の間閉じこもるのもありだけどね。

 ちなみに北の国なので農作物とか大丈夫かと気になったんだけど、今は寒冷地に強い品種などができたため問題ないようだ。もともと農地に向く平地は多かったみたいだしね。北海道みたいな感じかなあ。

 とりあえずある程度早めに北の国境の町サイレウムに移動してタイミングを見てから入国する流れかな?今回はバスじゃないのでいつでも出発できるのがいいね。



 今日までは訓練の予定を入れていたので道場へと向かう。訓練終了後に町を出ることを伝えたけど、またサクラに来たときにはお世話になるかもしれないのでそのことも伝えておく。ここでも指導を受けたサインを書かされることになった。そんな有名にはならないと思うけどね。

 今回の訓練でも結構スキルは上がったことは実感できるんだけど、やっぱりスキルレベルは上がっていない。どのくらいの技量になれば4に上がるんだか。ちなみにスレインさん達がレベル4なので良階位になるには最低限そのくらいは必要なんだろう。


 翌日はお世話になった店を回り、カサス商会にも顔を出す。カルニアさんに面談を申し込むとすぐに時間をとってくれた。

「そうですか、アルモニアに行かれるんですね。」

「ええ、魔法について行き詰まっていることもあって、なにかのきっかけになればと思っているんですよ。」

「わかりました。ところで重量軽減バッグなんですが、前にお話しましたように、売れ行きは好調なんですが、ある程度行き渡ったみたいで、売れるペースは落ち着いてきています。
 今はこの大陸のアルモニア、ハクセン、タイガで販売しているんですが、近々ナンホウ大陸にも出荷しようと思っているんですよ。それで申し訳ないのですが、追加で魔符核を500個納めてほしいのですが、国を出る前に可能でしょうか?」

「一応ある程度作っておいたのでとりあえず200個までは今納められますよ。残りの300個はすぐには無理ですが、できる限り国を出る前にサイレウムで納めるということでよいでしょうか?」

 最近は作るペースもかなり上がってきているからね。実は時間をかければもっと小さく刻むことができるようになっているんだけど、納入用には同じレベルのものを作っている。ある程度行き渡ったところで高級版として売り出せばいいと思っているからね。

「それで十分です。ありがとうございます。また何かあれば連絡しますので、もし追加納入がある場合はどこかの支店に卸して下さると助かります。」

「承知しました。」

「通常であれば新しい魔道具が出ると、その数ヶ月後には似たようなものが他の商会からも販売されるものなんですが、このバッグについてはまだ類似品すら出ていません。まだしばらくは独占販売ができると思いますよ。」


 他の状況を確認すると、インスタントラーメンの販売はかなり順調で、未だに売り上げは上がっているようだ。このため現在も生産が追いつかず、作った分だけ出て行く状態のようだけど、即売れではなくなってきており、生産量についておおよそのめどが付きそうだと言うことだった。
 このため、徐々に他の国での販売にも踏み切るつもりのようなので、売り上げは期待してくださいと言われる。

「そうそう、先日販売を始めたピーラーや計量カップなどですが、かなり好評で生産が全く追いつかないくらいです。こちらはすでに他の国でも販売を始めていますが、どこの国でも評判がすごくて一気に広まっていますよ。」

「まあ特にピーラーは使ってみたら便利さに驚きますからね。」

「形は単純なものなんですが、そのとおりですね。計量カップや計量スプーンもレシピ本と併せてかなり売れ行きが好調です。今はイベントで料理教室を行ったりしているんですが、そのときの説明がかなり楽になったと講師の方達から言われていますよ。」

 今まで発行されていたレシピ本もこの道具を使った形に書き換えられて出版されているようで、かなりの速度で広がっているようだ。

 ショッピングモールやフードコートは他の主要都市でも営業を始めており、盛況らしい。事前にいくつかの有名店と専属契約を結んでいて出店の際にはその店も出してもらっているようだ。フードコートだけでなく、食堂街として少し高級なエリアも作り出したようだ。
 そのエリアにはインスタントラーメンの販売の他、無料コンサートなどのイベントを行うことでかなりの人がやってきているようだ。子供向けのイベントはかなり人気らしく、整理券を配るくらいになっている状態らしい。

 そろそろ他の商会もノウハウを身につけて競争に参加してくると思うのでそこは頑張ってくださいと言っておく。
 イベントのアイデアや店を出す場合の注意点などいろいろと伝えておいたけどね。「どこでそんなアイデアを思いつくのですか?」と言われても、地球では普通だったからねえ・・・。しかもこっちでは魔法まであるし。



 今日は夕方からクリスさんやスレインさん達と食事をすることにしている。今回もスレインさんの家に招待されたので行ってみると、クリスさんはすでに到着していた。今日は護衛の人が建物を監視してくれると言うことでクリスさんも泊まっていけるようだ。

 アルドさんがメインとなって作ってくれた食事を堪能し、ジェンの提供するお酒に特にデルタさんは大興奮していた。夕食の後はみんなでいろいろと話をする。スレインさんたちもクリスさんと普通に話しているので大分慣れてきたのかもしれない。

 途中でクリスさんとこっそり話をしたところ、今のところ付き合いはうまくいっているみたい。商売の方もかなり順調らしく、収入も上がってきているので王族を抜けても十分やっていくめどが立ったらしい。
 一緒に販売しているレシピ本の売り上げもかなりの額になっているようだ。相変わらずこの本の売り上げの一部をといってくるが、それはお断りしている。

「順調にいけば来年の春頃には王族から抜ける予定だ。それでそのあとで結婚しようかと思っている。」

「ほんとですか!でもえらく早くないですか?まだ付き合いだして1ヶ月くらいだし、知り合ってからでも2ヶ月くらいですよね?」

「たしかに付き合っている期間は短いが、一緒に行動する時間は結構長いからね。彼女たちとの相性も問題ないようだから大丈夫だと思うんだ。」

 こっちの世界ではある程度相性を把握できるみたいで、直感を結婚の指標としている人たちも多いらしい。このため出会ってから数週間で結婚するということも多く、実際離婚率は低いらしい。

「本当はもっと早く結婚したいのだが、王族を抜けるには手続きが結構かかってしまうんだ。王族として結婚すると結構面倒だからね。
 それでできれば結婚式にはジュンイチとジェニファーにも参加してほしいと思っているのだが大丈夫か?」

「招待してくれるのならもちろん参加しますよ。それまでにはこちらの国に戻ってくるようにしますね。正式に決まったら連絡してくれると助かります。」

「わかった。日取りが決まったら連絡するようにするよ。今後もお互い頑張ろうな。」

「もちろん頑張りますよ。まずはクリスさんたちと同じ良階位を目指しますよ。」

「・・・そういう意味じゃないんだけどな。」

 なぜかクリスさんがため息をつきながら複雑な顔をしていた。



 翌日もお昼までいろいろと話をしてから家を出る。その後店で色々と買い出しをしてから夕方に役場に行って町を移動する連絡をしておく。
 他の冒険者にも挨拶をしてから夕食を食べて宿に戻る。ここの冒険者は遠征に出ていることが多いのであまり交流がなかったんだよね。まあ上階位の自分たちだと合同イベントのようなこともなかったしね。お風呂に入ってから早々に就寝。明日は朝から出発だ。



 ベッドに入って寝ようとしていると、頭の中に声が聞こえてきた。

「聞こえるかしら?私はこの世界の神の1柱のイギナよ。」

「「えっ?」」

 ジェンにも聞こえているみたいで驚きの声が聞こえてきた。

「新たな道具の申請を受けたわ。今後も頑張ってほしいと言うことで、私の祝福を与えることにしたの。今後も頑張ってね。」

 なんかまた祝福をもらえたようだ。

「こんなにいっぱい祝福をもらってもいいのか?」

「特許のような申請がそもそもなかなか通らないみたいだから普通はあまりないってことなんだろうけど、3つももらっているというのはちょっと怖いわねえ。まあ一つは今回の件のお詫びだしね。」

 スキルを確認すると、イギナの祝福の「芸術吸収上昇」がついていた。芸術は今のところあまりやる機会がないからそこまで恩恵がないなあ・・・。もう少し落ち着いてからだね。

「イチ!!!クラスのところを見てみて!!」

 ジェンがなぜかかなり興奮している。クラスのところを見てみると、神の祝福の効果が「物理耐性上昇-3、魔法耐性上昇-3」と順当に上がっているのは今までと同じなんだけど、「能力吸収上昇-1」というのが追加されていた。

「能力ってことはすべての能力が上昇しやすくなるってこと?」

「そう考えていいのかも。」

「どのくらい上がるかわからないけど、武術と魔術についても能力が上がりやすくなったってことなのかな?さらに知識、技術、芸術については上乗せか?まあ、あくまで補助的なものだとは思うけど、これはかなりうれしいね。」

「ほんと、よかった。イミザ神とカムヒ神についてはなかなか祝福をもらうのは難しそうだしね。」

 身分証明証のクラスの表示は変わらないからまだ大丈夫かな。神の祝福自体はそれなりにはいるみたいだしね。



 翌朝、朝食をとってから宿をチェックアウトして町の外へ。サクラの町とはしばらくお別れだな。町から少し歩いたところで収納バッグから車を取り出して出発する。やはりあまり大々的に車を収納バッグから出すのはねえ。

 最近は荷物を収納バッグに入れているので結構早く走れるようになっていたんだけど、さすがに車は走って行くよりもペースがかなり速い。まあ走るのと変わらないなら車買う意味がなかったけどね。
 ずっと一人で運転していると結構疲れるので途中休憩しながら交代で走って行く。1時間おきくらいに小休憩を取り、お昼は眺めのいいところで食べる。収納バッグ様々だ。

「なあ、途中の泊まりはどうする?」

「普通に町に泊まればいいんじゃないの?」

「いや、町の間隔がバスの移動とかに合わせているから、泊まっていくと距離的にちょっともったいないことになってしまうんだ。バスよりも走る時間も長いし、速度も速いからね。」

「それじゃあ、拠点に泊まるってことでいいんじゃない?拠点はいろいろ改造してかなり快適になったし、防犯関係の魔道具もつけたから大丈夫でしょ。」

「わかった、そうしよう。5時頃まで走った後は町までの距離(町と町の間の距離は大体わかっているし、車に走行距離は出る)を確認して、ちょうどよければ町に泊まり、ない場合は拠点を出すのにいい場所を見つけて泊まっていくことにするよ。なのでよさそうな場所があったら言ってね。」


 一日に走るのは通常は300メヤルドくらいなんだけど、走る時間が長いことと、重量軽減魔法があることでペースも上がり、400~500メヤルドくらい走れそうだ。索敵も使っているので魔獣に衝突する危険性は低いしね。
 索敵に引っかかって避けられない場合は、遠距離からの火魔法で一気に片付けている。まあそうそう強い魔獣は出てこないから素材の買い取り額もしれているし、それだったら先に進んだ方がいい。

 魔獣石の消費は軽減魔法の効果はあるけど、それでも1日7000ドールくらいかかってしまう。まあこのあたりはしょうがないと言えばしょうがないのか。どう考えても一般の人がもてるものではないな。普通は1日に7万円使うなんてとてもではないが無理だ。良階位以上の魔獣だったら1~2匹でそのくらいの収入が得られるので元は取れるんだろうけどね。


「だけど、島で造った拠点をこんな風にずっと使うことになるとは思わなかったね。すぐに捨てることになるかと思っていたのに、今はあまり捨てることを考えられないよ。」

「そうね。土魔法のスキルが上がれば結構簡単に作れるのかと思っていたんだけど、そんなに簡単に作れるものではないみたいだしね。」

 熟練した土魔法使いでも一気に家を作り上げるというのはできず、やはりこの規模のモノを作るには簡単な物でも数時間かかるという話だった。

「収納バッグもあるのでもう割り切って持ち運びのできる家という認識になっているからなあ。魔法の訓練もかねていろいろと手を加えてきているしね。」

「他の冒険者と話をしたことがあるんだけど、こんな拠点を作るという考えがそもそもないみたいなのよね。まあ収納バッグの関係もあるとは思うんだけど。」

「優階位とか高階位の人たちは家を作ってもらってそれを収納して持ち運んでいるみたいだよ。」

 建物の改造は色々やっている。家具関係は基本的にジェンの趣味でそろえている。塀なども強化して上階位の魔獣くらいは対応可能となった。

建物のドア:蝶番にドアノブを取り付け。ガラスをはめ込んで綺麗な装飾まで加工。
建物の窓:窓の数増加。窓ガラスの取り付け(ただし開閉無し)。雨戸の設置。
建物:白っぽい土から薄いタイルのようなものを作って壁に張りつけ。
ベッド:ベッドマット、布団や毛布、枕を新調。
リビング:ソファーと小さなテーブルを設置。
庭:床に綺麗なタイルを敷設。テーブルを加工。雰囲気に合う椅子を購入。
コンロ:いい物が見つからず変更無し。排水とかの関係で家用の物がそのまま利用できない。
シャワー室:シャワーと排水機能の魔道具設置。
塀:厚さを増強。槍のような返しを設置。魔道具で魔法耐性アップ。足場の削除。(飛行で中に入る)屋根:8本の柱を立てて取り外し可能な木の屋根を設置。

 もうここまでやってしまえばかなり高級なバンガローと言った感じだろうか?いろいろと魔道具をとりつけたので、一晩に300ドールほどかかってしまうんだけど、下手な宿に泊まるよりは十分快適なので、このくらいは必要経費だろう。

 朝と昼は買ってきた食べ物で済ませたけど、夕食は簡単ながら料理をしてみた。まあ炒め物とか揚げ物が多いけどね。さすがに煮込み料理は時間的に厳しい。

 収納バッグのお陰で新鮮な刺身とかも食べられるのはありがたい。蟹三昧をした時も最高だった。野営でこんなものを食べていたら他の冒険者に怒られそうだね。
 後片付けは浄化魔法で一発なのでかなり楽だ。乾燥まで終わるのであとは収納バッグに収納するだけ。後片付けって何?っというレベルだ。ゴミもまとめて収納バッグに入れておいて後でまとめて燃やしているので問題はない。

 こうなってくるとやはりもう少し調理用具を充実させたくなってしまう。これからいく国は魔術だけで無く魔道具も充実しているみたいなので何かいいものがあれば買うことにしよう。
 バーベキューセットとかもいいなあ。電子レンジみたいなものがあれば一番いいんだけど、どう考えてもこの世界ではないだろうね。自分で作れるかなあ?オーブンはあるんだけどね。

 夜は明かりも十分なので宿と同じように勉強したり、魔符核を作ったりしていつもと同じ時間に眠りにつく。
 たまにはお茶をしたり話をしたりと、かなりまったりした時間を過ごすこともある。こうやって話す相手がいるというのはいいねえ。

 結局10日目の昼過ぎに州都であるラーマトに到着する。通常だと15日くらいかかるようなのでかなり早いこととなる。北上するにつれて確かに気温も下がってきているけど、まだ長袖を着れば十分なレベルだ。
 結局ちょうどいいタイミングで町に着かなかったこと、拠点の居心地がいいことから町に泊まったのは大雨のときの一回だけでここまでやってきた。



 ラーマトはアーマトやオーマトよりちょっと大きなところだった。おそらく他の国との流通の通り道になるせいもあるのだろう。船よりも陸続きの方が人の往来は頻繁になるだろうしね。

 まずは宿を確保することにしたけど、今回はすぐに出ていく予定なので特に考えず、サクラにあった宿と同じシルバーフローに泊まることにした。サクラと4つの州都に展開している宿らしいので、それほど差はないと思う。さすがにサクラよりも安くて1750ドールと言う値段だった。
 贅沢な宿もここまでと決めているので、このあとは高くても二人で1000ドールくらいのところにする予定だ。

 3泊分予約してから商店を見て回る。魔道具関係や魔法関係のものが結構多いのはアルモニアの影響かな?この後アルモニアに行くのでのでここでわざわざ買う必要はないだろう。

 いつものように骨董屋にも寄って、めぼしいものはないか見ていく。露店とは違って一応鑑定されているけど、時々鑑定ミスでいいものも見つかるんだよね。特に壊れていたりするものについては用途が分からなかったり性能が低く見積もられていたりするからね。

 この後、混み始める前に夕食を取ることにした。事前に宿や店の人においしい店を聞いていてよかったよ。まだ寒いこともあり、暖かいシチューをお願いする。野菜や肉のたっぷり入ったミルクスープでかなり温まった。

 宿に戻ってからお風呂を堪能して早々に眠りにつく。ここもサクラほどはないけど大きめのお風呂があったのでよかった。



 翌日は朝食を取ってから図書館へ。ここは魔法関係のものが充実しているというのでやってきたんだけど、サクラの図書館と比べると規模が違う。ジャンル的に充実していると言うだけでそこまで目新しいものは見つからなかった。アルモニアに期待しておこう。

 役場に行ってから町や地域の情報の確認と、出てくる魔獣の確認を行う。やはり寒い地域のせいか出てくる魔獣の種類が変わってきている。本格的な狩りをするのはサイレウムのつもりなんだけど、途中で出会う可能性もあるので確認はしておかないといけない。

 他にもいろいろな店を見て回り、道具や食品などめぼしいものがあれば購入していく。寒さ対策の服も購入しておかないといけないしね。
 こうやって買っていくとさすがに収納バッグの容量も気にしないといけなくなってくる。魔獣の素材を持って帰ることを考えるとねえ・・・。はやく収納魔法を覚えたいだけど、覚えても最初は容量が小さいみたいだから結局は容量の制約は出るんだよね。

 夕食は白菜のようなものやネギのようなものと豚肉の入った鍋で体も温まった。こっちの世界ではみんなで鍋をつつくというのがないのは、地域的なものなのかな?こたつに土鍋というのに憧れる・・・。

 宿に戻ってからお風呂に入って早めに眠りにつく。明日はまた朝一から移動開始だ。



 朝食を取ってから早々にラーマトの町を出発。町の外に出てからすぐに車に乗りこんで走っていく。他の地域よりも道がいいのは国境につながっているせいだろうか?

 7日ほどかかり、昼過ぎに国境の町サイレウムの近くまで到着。結局今回も全て拠点に宿泊となってしまった。トイレとかの穴は掘らないといけないけど、楽だし、快適なんだもんなあ。仕方がないよね。


 サイレウムの町に近づいたところで車を収納してから街道を走っていく。門のところでは流石にチェック待ちの行列ができていた。

「やっぱり人が多いわね。」

「他の国に行く人もいるからね。しかもアルモニアとハクセンの二国の出入口だし。」

 初めての町なので身分証明証のチェックを受けないといけないのが面倒なところだ。まあこれはしょうがないことなんだけど、行列が長いのがつらい。

 1時間近くかかるかもしれないと思っていたけど、半分の60分ほどで通ることができた。天気がそれなりによかったからいいけど、これで雨だったらいやだったなあ。
 ちなみにこっちでも傘やカッパは普通に使われているんだけど、地球と形があまり変わらないのでそれ以外に進化できなかったんだろう。ただそこそこの値段の物は付与魔法がつけられたものもあって、雨をはじくのでほぼ雨に濡れることがない。

 案内を見ると、町の規模はオカニウムとかと変わらないくらいなんだけど、それぞれの国の町が併設しているので三つ全部合わせたらかなりの規模になりそうだ。
 もともとヤーマンの街だったけど、国境を決めたときに城壁が設けられ、それぞれの城壁の内側に街が拡張されたらしい。
 特に争っている訳ではないせいか、あくまで国の行き来を制限するための城壁のようで、緩衝地帯などが設けられているわけではない。警備はどういう割り振りでやっているのだろうな。街の外も柵が伸びているけど、そこまで物々しい柵でもないしね。ちゃんと手続きをしていないと他の国に行ったときに面倒になるので、ちゃんと手続きをするのが普通のことだ。

 まずは役場に行って冒険者滞在の登録を済ませてから資料を読んでいく。白兎や氷狼、毛牛、白熊、氷蜥蜴という感じで白や氷と名のついたものが多い。まあ雪が積もるところだしね。ただ、このあたりまでは今までいた魔獣も出没するみたい。
 基本的に今までの魔獣の同系列と同じような感じだけど、同階位の魔獣でも今までより大型のものが多いみたいなので脅威度は高い。

「いったんこの町で、初めて見る魔獣に少しでも慣れてから行った方がいいかなあ?」

「そうねえ、国が変わると何かあったときに困る可能性もあるからこっちで試した方がいいかも。なにか必要なものがあるかもしれないしね。」

「それじゃあ、期間にもよるけど上階位の魔獣を一通り退治出来たらアルモニアに行く感じで考えようか。」

「わかったわ。それでいきましょう。」

 そう決めたのはいいけど、日帰りエリアでは並階位までの魔獣しかいないようだ。もっと上位のレベルとなるとやはり遠征が必要か。

「やろうと思ったら日帰りはできそうだけど、拠点と収納バッグがあると日帰りにこだわらなくてもいいんだよね。狩場から自分たちの足で30分ほど離れたらほとんど出なくなるし。ムライオカのような前線基地のようなところはあるようだけど、それならば野営の方がいいよね。」

「ええ、あの拠点だったら変なところに泊まるよりはいいわ。」

 大体の目星をつけてから役場を後にする。ほんとは他の冒険者から生の声を聞きたかったんだけど、さすがにこの時間は冒険者もいないので無理だった。

 この後カサス商会に挨拶をしていく。受付に名刺を出すとすぐに部屋に通してくれて支店長を呼んでくれた。

「初めまして、ジュンイチと言います。こちらはジェニファーです。いつもお世話になっています。」

「初めまして、ヌレアウムという。こちらこそよろしく頼む。」

 ちょっとぶっきらぼうな言い方だが、元々のしゃべり方のようで態度が悪いわけではない。冒険者と言っても良さそうな体格をしている。

「こちらが依頼のあった魔符核の残りの300個です。とりあえずこれで依頼分は納入となりますが、もし追加の依頼があってもおそらく他の国で納めることになることになると思います。」

「話は聞いている。魔符核については後で確認してもらうので、支払いをしておこう。追加依頼があった場合は他の国に納めてもらってかまわない。あとでどの町に支店があるのかと可能であれば納めてほしい町を記載したリストを渡すので確認してほしい。」

「わかりました。」

 アルモニアでも大きな町には商店があるみたいなので店のことのほか、それぞれの町の情報なども確認していく。

「すみませんが、車の改造を行いたいのでどこかで工房を借りることができないでしょうか?」

「工房か・・・急がないのであればカサス商会の持っている工房を貸すことができるが、どうだ?今使っているので4日後から3日以内であれば特にお金は取らないぞ。」

「それはありがたいです。おそらく1日で終わると思いますのでその予定で使わせてもらっていいですか?」

「わかった。それでは4日後にこの店に工房の鍵を取りに来てくれ。工房にはだいたいの道具はおいているので自由に使ってかまわない。」

「ありがとうございます。」

 このあとカサス商会だけでなく他の店も見て回り、変わった食材やお酒などを仕入れていく。夕方に役場に行って資料室のところで他の冒険者と情報交換をする。お酒は禁止だけど、他の人たちも情報交換のために夕食前にここでくつろいでいるのですぐに情報交換できて楽だ。ただ時間がそれほどないので細かい話ができるわけでなく、簡単な情報交換だけだ。


 宿はツインで800ドールの北の大地という宿にした。食事は別払いだけど、宿のレベルはなかなかのところだ。ここはお風呂に入れるというのがいい。残念ながら温泉ではないし、大浴場というわけではないけどね。

 夕食は宿に併設の食堂でボルシチのようなものを食べる。このあと魔法の練習や魔符核作りをしてから眠りにつく。
 魔符核はすでに規定数納入したんだけど、まだ追加受注の可能性もあるので在庫で作っておいた方がいいと思ってやっている。今は気分転換にさらに効率を上げたものや他のものもいろいろと試しているけどね。拠点に使っている魔道具も改良をしていて、いくつかは魔獣石をほとんど使わなくても稼働するようになってきている。

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