【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ

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55. 異世界487日目 保護した二人のその後・・・

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55. 異世界487日目 保護した二人のその後・・・
 朝食をとった後、サルマンさんやデイストリフさんに挨拶をしてから出発する。護衛をつけようかという話も出ていたんだけど、それはお断りしておいた。どう考えてもペースが合わないからね。
 行きにも通った道なので索敵で倒さないといけない魔獣のみ狩りながら一日走ってトルイトの町に戻ってきた。さすがに夜も遅かったのでこの日は前に泊まった宿に泊まる。


 翌朝にまずは素材関係を売り払い、装備を整えるため鍛冶屋へと向かう。王都の方が品揃えはいいとは思うんだけど、いったん装備を更新しておかないと心許ないからね。
 そう思ってこの間装備を売りに来た店に来てみたんだけど、思った以上に装備がそろっていた。ある意味前線基地のようなのでそろっているのかな?あのときは時間も無いので商品をあまり見ていなかったからね。

 前と同じクラスの装備を探していたんだけど、ミスリルの装備が置いてあることに気がついた。ミスリルは特注品が多いので普通においていることは珍しい。しかも中古品とはいえ、値段がかなり安い。

「すみません、このミスリルの装備の値段がかなり安いように思うんですが、なにか理由があるんですか?」

「ああ、これな。ミスリルを使った装備なのはいいんだが、ミスリルの装備にしては付与魔法が中途半端でな、付与魔法をし直すくらいなら新しいものを買った方がいいという事でなかなか売れないんだ。」

 確かに付与魔法のレベルが低いな。普通は付与魔法のもう1ランク上のものが付与されるものなのに、これは並しかない。このためミスリル装備にしては珍しくレベルが高となっている。ただ品質や耐久性は良なのでもの自体は良さそうだ。二つが良でも一つが並だと総合評価は高になってしまうんだな。

「たしかにミスリル装備は通常レベルが良のものなのでレベルが高のものは普通みないですね。」

「もの自体は悪くはないんだが、ミスリル装備のこのランクになると良階位には中途半端だし、かといって上階位には高価すぎるという状態なんだ。」

「もう少し値引きもするし、サイズの調整代もサービスするから買ってくれるとありがたいな。」

 見てみると、鎧、盾、籠手、兜があり、ブーツは売れてしまったらしい。サイズを確認してみると、自分が盾、ジェンが鎧と籠手と兜のサイズが合いそうだった。

「これって使っていた人が女性だったんですか?結構小さいような感じですけど。」

「ああ、そのとおりだ。そのせいもあってさらに買い手がいないんだ。」

 ミスリルとはなっているけど、もちろんすべてミスリルで出来ているというわけではなく、関節など動く部分には革が使われていて、それほど動きが制約されるわけではない。鎧については一部にミスリルが使われているという形の突牛のハーフ鎧だし、盾もすべてがミスリルというわけではなく、鋼の盾の表面にミスリルが一部使われているという感じだ。値段次第では買ってもいいか?
 今の時点で結構値引きをしているようなんだけど、全部を購入するとさらに値引きをしてくれるというのでまとめて購入することにした。

 巨猪の革の籠手(高)=14万ドール
 鋼の小盾(高)=17万ドール
 巨角牛の鎧(高)=36万ドール
 ミスリルの籠手(高)=38万ドール
 ミスリルの盾(高)=78万ドール
 ミスリルの兜(高)=42万ドール
 突牛のミスリルハーフ鎧(高)=85万ドール

 これで300万ドールと結構な出費となってしまったので残りのお金が150万ドールくらいになってしまった。今回の依頼で手に入った分がすべて飛んでいく感じだな。ある程度の装備がそろったら装備のメンテナンス代に費やすくらいになるのでお金は貯まっていくとは思うけど、また色々ほしくなるのかねえ。
 まあ、これでかなりの防御力向上となるからこれはこれで仕方がないかな。ミスリルでこの値段とか普通はあり得ないし。付与魔法のスキルが上がったら改造はできるのかなあ?
 あと壊れた防具関係だけど、修理して使えるものもあったみたいでかなり安いけど下取りとして引き取ってくれた。まあ鋼の小盾とか鋼の盾とかはまだ使えそうではあったからね。

 防具はそろえたんだけど、武器はなかなかいいものがないんだよなあ。まあこっちの国は魔法が主体だからしょうがないと言えばしょうがないんだけど・・・。

 防具の調整に思ったよりも時間がかかったので遅めの昼食をとってから町の中を適当に見て回る。いくつか買い物も済ませてから準備を整えて、夕食へ。夕食はちょっと有名な店らしいところに行ってこっちの料理を堪能する。やっぱり寒いところはシチュー関係が美味しいような気もするなあ。


~ジェンSide~
 治療のあと、イチとは少しギクシャクしてしまった。どうもイチのことを意識しすぎてうまく会話ができないんだけど、イチもいつもと違ってちょっとよそよそしい感じがするのよね。まあ色々あったので照れているのかな?

 3日ほど休養をとった後、リハビリをかねて魔獣の狩りに行くことになった。心配したデイストリフさんが護衛をつけてくれたので申し訳なかったけれど、同行した兵士達は「ずっと調査とかだったから、気分転換になってよかったよ。」と言ってくれたので気持ちはだいぶ楽になった。

 さっそく狩りを始めたんだけど、やっぱり精神的に参っているのか、体が思うように動かない。このままじゃだめだと思ってできるだけ前に出て魔獣を倒していくことで気持ちを高ぶらせた。
 でも氷狼を見たときは全身が硬直してしまった。なんとか気力を奮い立たせて討伐できたけど、やっぱり白狼のことが気になっているのかな。

 2日目にはなんとか体の調子も元に戻ってきた感じがした。氷狼も少し気にはなるけど討伐は問題なくできるようになった。でも完全にこの気持ちを払拭するには力量を上げて白狼を倒さなければ無理なんだろうな。

 白狼がいたと思われる部屋にも行ってみた。部屋に入ったときにはかなりの量の魔獣石があったらしい。魔獣石を貯めていたわけではなく、魔獣が死んでいって貯まったような感じだったらしいので、この部屋に魔獣が湧きやすい仕組みでもあったのかな?何かの実験に使うためだったんだろうか?


 調査の後、イチと今後のことを含めて色々と話をした。イチはなにか決心したのか表情が変わったように感じた。ただ私のことを前よりも優しい目で見ているようにも感じる。

 とりあえず私の気持ちは封印することにした。やっぱり今の気持ちを伝えるのはちょっと怖いから。誰かに相談できればいいんだけど、こういうことを相談する相手がいない。
 マラル達やスレインさん達になら相談できるかな?ヤーマンに戻ったらオカニウムに行ってみるようにイチとも相談してみようかな?


~購入した装備の詳細~
名称:ミスリルの籠手(高)=38万ドール
詳細:ミスリルと突猪の革から製作された籠手。製品の強度が10%向上する。耐久性が10%向上する。筋力が10%向上する。
品質:良
耐久性:良
効果:並
効力:強度向上-1、耐久性向上-1

名称:ミスリルの盾(高)=78万ドール
詳細:ミスリルと鋼で作りあげられた盾。製品の強度が10%向上する。重量を10%軽減する。
品質:良
耐久性:良
効果:並
効力:強度向上-1、重量軽減-1

名称:ミスリルの兜(高)=42万ドール
詳細:ミスリルと突牛の革から製作された帽子。製品の強度が10%向上する。耐久性が10%向上する。
品質:良
耐久性:良
効果:並
効力:強度向上-1、耐久性向上-1

名称:突牛のミスリルハーフ鎧(高)=85万ドール
詳細:突牛の革から製作されたハーフ鎧で要所にミスリルが使用されている。製品の強度が10%向上する。重量を10%軽減する。
品質:良
耐久性:良
効果:並
効力:強度向上-1、重量軽減-1

~装備~
ジュンイチの装備:
鋼の剣(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3、耐久性向上-1
鋼の戦鎚(高) 高/高/高 強度向上-2
巨角牛の革パンツ(高) 高/高/高 強度向上-2
巨角牛の鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
巨猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2
ミスリルの盾(高) 良/良/並 強度向上-1、重量軽減-1
巨猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2
鉄の兜(高) 高/高/高 強度向上-2
力のネックレス(高) 高/並/高 筋力向上-2
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2、治癒力強化-1
堅牢の腕輪(高) 高/高/高 肉体硬化-2

ジェニファーの装備:
鉄の短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3、耐久性向上-1
鋼の錫杖(高) 高/高/高 強度向上-2
巨角牛の革パンツ(高) 高/高/高 強度向上-2
突牛のミスリルハーフ鎧(高) 良/良/並 強度向上-1、重量軽減-1
ミスリルの籠手(高) 良/良/並 強度向上-1、耐久性向上-1
鋼の小盾(高) 高/高/高 強度向上-2
巨猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2
ミスリルの兜(高) 良/良/並 強度向上-1、耐久性向上-1
魔術の指輪(良) 良/良/良 魔力強化-3、治癒力強化-2
俊敏の腕輪(高) 並/並/高 俊敏強化-2
堅牢の腕輪(良) 良/良/良 肉体硬化-3


予備の装備:
クロスボウ(低) 良/良/良 耐久性向上-2、風魔法-3
大角牛の革の鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
大角牛の革のハーフ鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
厚手の革パンツ(並) 並/並/並 強度向上-1×2
牙猪の革の籠手(高) 高/高/並 強度向上-1
牙猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2、耐久性向上-1
牙猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2×2
牙猪の革の帽子(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の盾(並) 並/並/並 強度向上-1
鉄の小盾(高) 高/高/高 強度向上-2、筋力増強-2
魔術の指輪(並) 並/並/並 魔力強化-1
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2


~~~~~


 翌朝、朝食をとってからすぐに出発する。この日は一気に走ってから拠点に宿泊。翌日は、気になっていたサクランの町によってみることにした。町の入口に行くと、門番からかなりいやな目で見られる。なんで?前来たときにもいた人かな?

 ミルファーさんの家に行ってみたけど、なんか変な雰囲気だ。この間は留守にしていたから仕方がないけど、なんか家の周りがあれているという感じなんだよね。
 ドアをノックするが返事がない。どこかに出かけているんだろうか?索敵で確認してみると、家の中に二人いるようで、どう考えてもスイートさんとミルファーさんのようなんだがどうしたんだろう?

「ジュンイチとジェニファーです。ミルファーさんいらっしゃいませんか?」

 声をかけると、しばらくしてドアが少し開いて顔が見えた。こちらを確認すると辺りを気にするように中に招かれた。中に案内されて、テーブルに座ってから状況を尋ねてみる。自分たちが出ていった後のことを聞くと、スイートさんが泣きながら話し出した。

「ごめんなさい。私が彼に話したばかりに町中に知れ渡ってミルファーまでこんな目にあわせてしまったのよ。」

「仕方がないことだわ。話さないわけにもいかなかったしね。」

 あのあとスイートさんは彼氏に今回のことを話したらしい。そのときは大丈夫と慰めてくれたんだけど、しばらくしてから「ごめん、やっぱり無理だよ。別れよう。」と告げられたようだ。そしてそのころから町の人たちから変な目で見られるようになってきたみたい。
 どうやら彼氏だった人が今回の件を友人に話したらしく、その話が広がっていったようだ。両親は彼の行動を怒って慰めてくれたんだけど、周りからの対応にかなり神経をすり減らしてしまっているようだ。

 ミルファーさんも両親と義両親に今回の事を話していたみたいだけど、町で噂が広がってしまってからは迷惑になりそうであまり家に近寄れなくなったみたい。それに義両親は息子が亡くなったことにかなり落ち込んでいたようで、なんと声をかけていいのかも悩みの一つらしい。

 友人達もどう付き合っていいのか分からないみたいで、話をしても気を使わせてしまってあまり会わなくなったようだ。あと一番問題なのは、町のガラの悪い男達たちがちょっかいをかけてきていることみたい。一度さらわれかけたことがあって慌てて逃げたらしい。

「どうして被害者がこんな思いをしなければならないの!!つらい目に遭ったのになぜその男はいたわってあげることが出来なかったの!!」

 ジェンがかなり怒っているし、自分も苛立っているのがわかる。

「ミルファーさん、スイートさん。このままこの町にいたら、精神的にも参ってしまうかもしれませんし、ひどい目に遭ってしまうかもしれません。故郷を捨てるというのは辛いかもしれませんが、もしよかったら他の町に移住しませんか?他の町ならきっとやり直すことができると思いますよ。
 幸いなことに自分たちは収納バッグも持っていますので、荷物も全部持っていけると思いますし、車に乗っていくこともできます。」

 どう考えてもこのままこの町にいてもいいことはないだろう。インターネットのようなものがなく伝達手段が限られるこの世界であれば他の町に行けばやり直せるだろう。

「「この町を出るのですか・・・?」」

 さすがにずっとこの町で育ってきたこともあり、移住となるとかなり悩んでしまっている。

「せかすようで申し訳ありませんが、手続きなどもあると思いますので明日の朝までにどうするかだけでも決めていただけますか?」

 時間をかけてもしかたがないので、時間を決めて早めに決断させた方がいいだろう。

「自分たちのことをどこまで信用していただけるかはわかりませんが、もし移住を決心するようであれば自分たちも出来るだけのことは協力します。
 残念ながら自分たちはヤーマンの冒険者なので身分については証明するものがあまりまりませので信用してくれるしかありません。ただ幸いなことに王都にも少しばかり伝がありますので、移住については少しは力になると思います。」

「・・・分かりました。少し考えさせてください。」

 ミルファーさんがそう言ってきたので今日は退散することにした。



 メインの街道から外れているし、冒険者もほとんどいないようなところのせいか、宿もあまりいいところがなかったのでいったん町の外に出て拠点に泊まることにした。

「あの二人どういう判断するかなあ?」

「これだばかりは分からないわね。あの二人はずっとこの町で育ってきたみたいだし、マール達もやっぱり故郷から出たがらない感じだったもん。こっちの世界でも移住というのは結構ハードルが高いのかもしれないわね。」

「ただ今回の事を考えるとこの町で生きていくのはつらいと思うんだよなあ。」

「それは本人達も分かっているとは思うわ。ただ、両親もこの町に住んでいるからそれも気にするかもしれないわね。」


 翌朝、朝食をとってから再び町に戻ってミルファーさんの家を訪ねる。すぐに家の中に案内されて話しを聞くことになった。

「お手数をおかけしますが、移住のお手伝いをお願い出来ますか?」

 ミルファーさんとスイートさんは移住することに決めたようだ。

「移住については承知しました。ただ自分からすすめておきながら言うのも何ですが、本当に移住することでいいんですね?」

「ええ、二人で話し合ったんですが、やはりこのままこの町にいてもつらくなるだけだと思うんです。なのでこの町に戻るつもりはありません。両親にも相談しましたが、会いたくなったら両親の方から会いに来てくれると移住に賛成してくれました。」

「分かりました。それではまずは王都に行ってから移住について考えましょう。手続きなどについてはどのような感じでしょうか?あと持っていく荷物があるのなら収納バッグに入れていきますので言ってください。」

「必要な書類は昨日のうちに準備しています。あとこちらで必要な手続きは両親がやってくれるようですので大丈夫です。
 荷物については申し訳ありませんが、私の分はこの家にあるのですが、スイートの分は少ししかありませんが、両親の家に取りに行ってもらえると助かります。」

「わかりました。それじゃあスイートさんの家はジェンに願いできる?変に自分が行くよりはいいと思うんだ。」

「わかったわ。」

 ジェン達を見送ったあと、収納できるならあるもの全部入れてほしいと言われたので全部収納していく。小物関係はある程度まとめてくれていたので収納はかなり楽だった。今はすぐに決められないけど、新しいところに行った後、使えないものは処分するつもりらしい。
 荷物を取り込んだ後、ミルファーさんは家のあちこちを見て回っていた。旦那さんとの思い出の家だからなあ・・・。

 ジェン達が戻ってきたところで車に乗り込んでからそうそうに出発する。ミルファーさんの両親への挨拶は夕べのうちに済ませておいたみたいなのでもういいようだ。会うと決心が揺らいでしまうみたい。

 二人は遠ざかっていく町を見ながら涙を流していた。生まれてからずっと住んでいた町をこんな形で後にするというのはかなりつらいことだろう。

 とりあえず王都のクリアレントにいってからその後のことを考えよう。人の交流を考えると今の町からある程度離れたところに行く方がいいだろう。とりあえず移住するのにいい場所を役場に相談してみるか?



 来るときは拠点に泊まっていたので結構いいペースで走れたんだけど、今回は宿に泊まっていかなければならないのでペース配分が面倒だ。このあたりはしょうがない。

 移住にどのくらいお金がかかるかわからないため、移住までにかかる費用については自分たちが援助することにした。
 盗賊退治の時にアジトで手に入れたお金を元々渡そうと思っていたので心配しなくていいと説得したところ、彼女たちも今後の生活のことがあるので今回は自分たちの提案に乗ることにしたようだ。


 1日の移動距離が短くなってしまったけど、5日目の昼過ぎにクリアレントに戻ってくることができた。今回はジョニーファン様から調査依頼があったので町に入る手続きはすぐだと思ったんだけど、二人がいるので結構時間がかかってしまったのはしょうがない。

 今回の宿も前に泊まったルイミルダンというところにした。

「え?ここに泊まるのですか?」

 なぜかミルファーさんとスイートさんが固まっている。

「ええ、前にこの町にいたときも泊まったところで、なかなかいいところなんですよ。他にどこかいいところをご存じですか?」

「いえ、この町に来るのも初めてですし、知り合いから聞いた宿はもっと小さなところだったので、ちょっと驚いているだけです。高そうなところですが、大丈夫なのでしょうか?」

 結構立派なところだから驚いていたようだ。まあ自分たちがここに泊まって、彼女たちを別の宿というわけにもいかないしね。

「大丈夫ですよ。こう見えてもここに泊まるくらいのお金はあるので気にしないで下さい。」

 部屋を確認してツインの部屋を二つ取ってもらう。宿に入った二人はちょっと興奮している感じだ。まあ自分も最初にこのくらいの宿に泊まったときはテンション上がったしなあ。建物の中の移動方法などを確認してからいったん各々の部屋に分かれる。

「とりあえず二人を連れてきたけど、報告が先だよね。」

「ええ、きっと首を長くして待っていると思うわ。二人のことについてもジョニーファン様にちょっと相談してみましょう。きっと力になってくれるはずよ。」

「確かにね。」

 部屋でいったん休憩を取った後、彼女たちを誘って夕食へと向かう。夕食を食べながらこの後の予定を簡単に話しておく。

「申し訳ありませんが、明日は依頼者に報告に行かなければなりませんので、買い物などをして時間を潰してもらえますか?
 朝食と夕食はご一緒するつもりですが、もし6時になっても戻って来られない場合は二人で食事をして下さい。食事をする場所はいくつか候補を挙げておきます。」

「わかりました。ありがとうございます。こんな大きな町に来るのは初めてですので色々と見て回りたいと思います。」

「ただこういう町になると危険な場所もありますので、そのあたりは注意してください。受付に聞けばある程度安全なエリアとかも教えてくれると思います。」

「ええ、そのへんのことについては承知しているので大丈夫です。」

「明後日に役場などに行って今後の対応について相談したいと思っています。移動先が絞り込めれば自分たちがその町まで送っていくつもりですので心配しなくていいですよ。」

 治安はいいようだが、何かあっても困るのでそのあたりについては注意しておいた。さすがにその点はわかっているらしく、大丈夫そうだ。

 夕食を終えた後は部屋に戻り、シャワーを浴びてからゆっくり休むことにした。さすがに移動は疲れるなあ。


~ミルファーside~
 少し前までは幸せな生活を送っていました。幼なじみのカルサイオと結婚し、親友のスイートからも祝福されてこれからも幸せが続いていくと信じていました。そしてまもなく商店を立ち上げる資金も貯まりそうだというところで私たちに不幸が襲いかかりました。

 友人の結婚式に参加するために使った乗り合いの車が盗賊のものだったようなのです。カルサイオは殺され、私たちは盗賊のアジトに連れていかれました。そのあとスイートと二人で毎晩盗賊達の慰み者になってしまいました。
 死ぬ勇気はありませんでした。夜に数人の相手をさせられましたが、食事などはちゃんと与えられました。スイートとは空いた時間に話すことができたこともよかったのかもしれませんが、徐々に心が壊れていくように感じられました。

 何日かたった頃に盗賊達の悲鳴が聞こえてきました。なにがあったのかと驚いていたところ、冒険者のような格好をした男女がやってきました。助けに来たと言われて、ほっとしたのと同時に本当かなとも思いました。

 ジェンと呼ばれている女性が浄化魔法で体を綺麗にしてくれて、そのあと衣類も貸してくれました。もう服もボロボロでしたのでとても助かりました。さすがに100%信用できないと言うことで拘束はされましたが、これは仕方が無いことだと思うので素直に拘束されました。私たちも盗賊にだまされてさらわれたのですから、そのくらい慎重になっておかないといけなかったと反省しました。
 彼女に「何も悪いことをしていないのにそれで人生を諦めるなんてもったいない」と色々と励まされ、頑張って前向きに生きていこうという気持ちになりました。

 彼らはいろいろと世話をしてくれた上、途中の宿泊費まで出してくれて町に戻ることができました。盗賊の持っていたお金を渡してこようとしてくれましたが、さすがにそれは断らせてもらいました。



 町に戻り、二人と別れた後、今回のことを両親に話しました。ごまかしようがないことでしたので仕方がありません。両親は「つらかったね。」と抱きしめてくれました。カルサイオは亡くなりましたが、なんとかやり直すことができるのかな?と思っていました。
 ただ息子を亡くした義両親への報告はかなりつらかったです。二人は私のことを慰めてくれましたが、こちらからなんと言えば良いのか分かりませんでした。あんなに結婚を喜んでいたたった一人の息子だったのだから・・・。

 数日した頃、なぜか周りからの視線を感じるようになりました。そっちを見るとみんな顔をそらすのです。スイートから「彼氏に話したら、彼氏に別れを告げられて、しかも私たちのことを吹聴されたみたい」ということを聞きました。「ごめんなさい。」と謝られましたが、これはスイートのせいじゃありません。なんて男なのでしょうか。
 両親も周りから好奇の目で見られているみたいで、あまり会いに行けなくなってしまいました。友人達も気を使っているのが分かるため、なかなか顔を合わせるのがつらくなりました。
 スイートは町の柄の悪い連中にさらわれかけたこともあり、こっそり私の家に避難してもらいました。私も必要最低限の買い物以外は出かけなくなってしまいました。


 だんだん家から出るのが怖くなり、「なんかもうこのまま死んでしまった方がいいのでしょうか?」と考えるようになりました。
 しばらくした頃にあのとき助けてくれたジュンイチさんとジェニファーさんがやってきました。二人に家に入ってきてもらい、事情を話すと他の町に移住することを提案されました。

 「きっと他の町に行けばやり直せる、せっかくの人生をこんなことで終わらせてはだめだ!」といろいろと励ましてくれました。ほんとにやり直せるのでしょうか?スイートととも話して最後にもう一度この二人を信じてみることにしました。


 途中の町で泊まりながら初めて王都にやってきました。今日はここに泊まると言ってやってきたのはかなり立派なところで驚きました。あとで値段を聞いてさらに驚きました。普通に考えていたところの3倍くらいの値段です。

 明日は一日依頼者への報告があるみたいで、自由に買い物するなりしてくれと言われたのでとても楽しみにしています。
 スイートと明日の計画を考えているとかなり夜更かしをしてしまいました。ちょっと前までは死のうかと思っていたのに、ジュンイチさん達と数日過ごしたことで大分前向きになっているような感じがします。


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