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71. 異世界783日目 王家の結婚式と二人の関係
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71. 異世界783日目 王家の結婚式と二人の関係
さすがに疲れていたのか、起きるとすでに2時を回っていた。ジェンもまだ眠そうにしているが起きるようだ。やっぱり疲れているのは間違いないね。クリスさんたちは大丈夫だろうか?休みたくてもそれほど時間が無いだろうからね。
朝食を食べた後、役場に行って今回の報告のために部屋を取ってもらう。
「わざわざ部屋を取って報告と言うことは無事に達成できたんですね?」
「なんとか無事に達成できましたよ。思ったより大変でしたが、無事に見つけることができてよかったです。」
「わかりました。完了報告証も問題ありません。それでは報酬の支払いとなりますが、今回の報酬は100万ドールとなります。これはすべて貯金と言うことでよろしいでしょうか?」
「はい、それでお願いします。」
「あと、今回の実績で良階位昇格のためのポイントが貯まっています。特別依頼の実績も十分ですので状況を見て昇格の試験を受けてくださいね。
講習会は以前受けているようですが、また受ける場合は言ってください。試験は毎月20日前後に行われますが、月により多少前後しますので日程は都度確認してください。」
「わかりました。まだ技量が足りないと思うのでしばらくは無理だと思いますが、様子を見てから頑張りたいと思います。」
「初階位からまだ2年ほどで良階位となれたとしたらかなりの昇格速度ですよ。」
「そうなんですね。でももっと早い人もいるんですね。」
「そうですね。この国では今は特階位の剣聖レバンド様や北の賢者のジョニーファン様が有名ですね。
昇格期間制限の最短である1年で良階位まであがりましたからね。」
「名前は聞いたことがあります。」
「ただ、彼らは冒険者になる前からすでに名前を知られるほどの実力を持っていましたからね。」
「また、他の方とも相談してからどうするか決めますね。ありがとうございました。」
このあとコーランさんに聞いた宝飾品を扱っている店にやってきた。こういう店は来たことがないからなあ。ただ、店構えからして高そうだ。なんか車買った時を思い出すよ。
「いらっしゃいませ。」
店員がすぐにやってきたんだけど、とりあえずざっと見させてくれと言って案内を断った。ただこっちの方をじっと見ているのはおそらく監視をしているのかもしれないね。
置いている宝石は地球のものとあまり変わらない感じだ。やはりダイヤモンドは高いけど、真珠はそれほどではない。こっちでも真珠の養殖があるのかもね。あれができるまではかなり高かったはずだからね。
値段は安くても1万ドールという感じだ。上はキリがないけど並んでいるものを見ると10万から50万くらいが多い感じだ。店によって扱っている価格帯が違うんだろうけど、コーランさんが紹介する店だからかなり上級の店なんだろうね。
「ジェンはどんなのがいい?」
「うーん、もともとネックレスはあまりしないからなあ。今は装備として効果があるからしてるだけなのよね。」
店員を呼んで服のイメージ図を見せながら話を聞いてもらう。結婚式に参列するときにダメなものとかないか確認してみたけど、特にしてはいけないというものはないらしく、あまり派手すぎないくらいのものがよいらしい。
「今度クリストフ殿下の結婚式があるので、それにあやかって結婚式を挙げる人が多いんですよ。お客さんも見に行かれますか?」
まあ式に参加するんだけど、下手なこと言っても混乱しそうなので「そのつもりですよ。」とだけ答えておいた。
結局ダイヤモンドとルビーを金の台座にあしらったものにした。値段は28万ドールと結構な値段だったけど、このくらいは想定内だ。武器に比べたら安いしね。
「ねえ、ほんとにいいの?結構な値段だよ。」
「こんな機会じゃないとなかなか買ったりすることもないからね。まあ半分はジェンが稼いだお金だから、自分からのプレゼントと言えないのがちょっと残念だけどね。」
購入を決めるとさらに他のものを薦めてきたけど流石にそれは断っておく。あとは服の完成を待って準備は完了という感じか?
衣装ができあがったのは結婚式の5日くらい前で結構焦ったんだけど、なんとか仕上がってよかった。服はそれぞれ3万ドールと4万ドールだったけど、これでも安い方らしい。もちろん普通はもっと安いものでもいいんだけど、クリスさんの結婚式ならせめてこのくらいのものは準備した方がいいと言われたから仕方が無い。
もし作るのが厳しい場合はレンタルもあったらしいけど、せっかくだからねえ。これであれば何かの時には使えるし。まあそうそうこれを着る機会があるとは思えないけどね。
仕上がりはさすがにぴったりでいい感じだった。ジェンもネックレスと合わせていい感じに仕上がっていた。
ちなみに結婚式の時にご祝儀というものはないらしい。ジェンにも話したら「なにそれ?」と言われてしまったしね。もともとそのような風習があるところの方が珍しいのかもしれない。なので当日は招待状くらいを持っていけばいいようだ。
結婚式までは期間も中途半端だったんだけど、ずっとぶらぶらしているのももったいなので前にお世話になったハルト道場で訓練することにした。久しぶりに道場に行くと覚えてくれていたみたいで、1週間ほどみっちりと鍛えてもらった。
他には魔道具についても言われたものを毎日コツコツと作っていった。お金については大分たまってきているけど、装備を更新したらすぐになくなってしまうからねえ。
宿は途中で特別室に移ったんだけど、思った以上に豪華な部屋だった。広さはこっちの世界に来たときにアーマトで泊まったところぐらいなんだけど、置いている家具とかのレベルが違う感じだ。エレベーターも専用のエレベーターになるしね。お風呂も結構広いものがついているけど、やっぱりお風呂は大浴場の方がゆったりしていい。
せっかくなので部屋の夜景を楽しみながらの食事をお願いすると専属の人がついて対応してくれるという充実ぶりだ。なんかジェンとお泊まりデートしている感覚になってちょっとまずい。
結婚式前なのに、クリスさんは時間を作ってくれて何度か相談に乗ってくれた。スレインさん達経由でジェンのことも聞いてもらい、いろいろと助言ももらって自分の中でも決心がついた。
クリスさんはきっと大丈夫だよと言ってくれるけど、ほんとに大丈夫なんだろうか?こんな経験したことがないから全くわからないんだよなあ。
結婚式はサクラにある一番大きな神殿で行われるみたいで、かなりの人数が参加するようだ。今日は天気が良くて良かった。
やはり平民になると言っても王族と言うことで、何かの時に皇族へ復帰できるように王爵という爵位となって、もし子どもが出来た場合、その子ども達までは一応王位の継承権が発生するようだ。ちなみに他国では上位爵相当らしいので、この時点で平民ではないよね。
買った服に着替えて会場に向かうことにしたんだけど、同じように着飾った人達の姿を結構見かける。招待されているのかと思ったんだけど、どうもこういうときには着飾って見に行くらしく、参列するわけではないみたい。まあ、自分たちもあまり目立たなくてよかったかもしれない。
式は4時からなのでまだ1時間ほどあるんだけど、結構人が多い。神殿の近くになるとパレード予定の沿道にかなりの人がやってきていた。なかなかすごいね。これだけの人が見に来るんだったらやっぱりパレードをしないとだめだろうね。だけどパレードってまだ2時間位あとじゃなかったかな?
兵士達は交通整理でかなり忙しそうにしている。神殿の近くは交通整理されていて近づくことができそうにないんだけど、どこで受付をしているんだろう?
兵士に声をかけようとするが、「見学する人は向こうに回って下さい!!」と忙しそうなので声をかけにくい。
ふとみると人垣の一部が開いていて、車が中に入って行っている。入口で招待状のようなものを確認しているようなのであそこからかもしれない。やっぱり車で来た方がよかったのかな?とりあえずそっちにいてみると、途中で兵士に止められる。
「こっちは招待客の確認をする場所だ。見学だったらあっちに回ってくれ。」
「いえ、今日の結婚式に招待されているのでやってきたんです。」
そう言って招待状を見せるとかなり驚いていた。身分証明証の提示を求められたのでそれを見せると、招待状の内容と確認している。
「申し訳ありません。招待状も間違いありませんでした。こちらから進んであちらの受付に招待状を提出してください。」
やはりこんなところに来るときは車なのかな?歩いてきているのは自分たちだけみたいな感じもする。まあしょうが無いよな。他の招待客からもちょっと変な目で見られているのは気のせいではないかもしれないな。
「やっぱり車で来るべきだったかな?」
「なんか雰囲気的にそうみたいね。」
「でもクリスさんも特に何も言っていなかったからねえ。それが普通の認識だからあえて言われなかったのかな?まあ入れたからもうどっちでもいいけどね。」
なんか人がひしめき合っている中を歩いて行くのはちょっとつらい。なんか某映画の表彰のレッドカーペットのような感じだからね。有名な人が来るから見に来ている人が多いんだろうか?
神殿の前に行くと、招待された人たちが受付をしていた。ここでコーランさんを見つけてちょっとほっとする。
「ジュンイチさん、ジェニファーさん、思ったより遅かったですね。」
「ぶらぶらと歩いてきたら思ったよりも時間がかかってしまいました。やっぱりこういうところは車で来るのが普通みたいですね。」
「あ、歩いてきたんですか・・・。まあ確かにこういうところに招待される人は車を持っている人が大半ですし、持っていない場合もレンタルしてやってきますね。すみません、説明しておけばよかったですね。」
「いえ、ちゃんと入れたので大丈夫ですよ。」
「あっちの受付で招待状を出せばいいんですよね?」
そう言って招待状を取り出すと、コーランさんはかなり驚いていた。
「ジュンイチさん、招待状ってそれですか!?」
「え・・・これが何か?ジェンのも同じ感じですよ。なんかかなり立派な招待状をもらったので驚いたんですけどね。」
「もっとちゃんと確認しておくべきでした。今回の招待はクリストフ殿下ではなく蠍の尾のメンバーからの招待と思っていたんですよ。その招待状をもらうと言うことはもしかしてクリストフ殿下ともかなり親しい仲なのでしょうか?」
「スレインさん達のことでいろいろと会うことがあってですね。結構一緒に食事をしたりもしていますよ。」
「そ、そうでしたか・・・。
招待状の色によって招待客のランクが異なるんですよ。通常は白や緑色なのですが、特別招待の方はそのような青色の封筒に入っているのです。結婚式中とはいえ、国王陛下や殿下達王族にはあちらから声をかけられない限りは会話できないのですが、その招待客はこの式の間はこちらから声をかけることが許されているのです。かなりの栄誉と言っても間違いありません。
ちなみに私は白の封筒ですし、かなりの地位の方でも緑色の招待状です。緑色の招待状の方も声をかけることが出来るのですが、優先度は低いので順番は後回しにされます。
こんなことなら服装についてももう少し考えておくべきでした。申し訳ありません。」
「いえ、こちらも何も聞かなかったし、説明もちゃんとしていなかったので特に気にしなくていいですよ。
服装もこれじゃだめってことではないんでしょ?国王陛下や王妃殿下もそんなことを気にする方ではなかったですし・・・。」
「・・・、もしかして国王陛下や王妃殿下にも会われたことがあるのですか?」
「ええ、クリストフ殿下に王宮に招待されたときにお目にかかって、いろいろと話をしてくださいました。他にも依頼を受けたときにも少し・・・。ああ、アルモニアに行くときにも紹介状を出してくださってとても助かったんですよ。」
なぜかコーランさんが天を仰いでいる。
「わかりました・・・。思った以上にジュンイチさんたちの交友関係が広いことがわかりました。とりあえず受付に行った方がよいかと思います。おそらく式までの待合室も私たちとは別の場所になると思いますので。」
「そうなのですね、ありがとうございます。」
受付に行って招待状を見せると、ほかの人たちとは違う別の受付に案内される。身分証明証を見せて確認が終わった後、胸に何やらリボンのようなものをつけられて建物の中に案内された。
会場では20人ほどの招待客が思い思いにくつろいでいた。外の会場よりもかなりゆったりしており、こっちは軽食とかまで準備されている。クリスさんの兄弟達や前に打ち合わせの時にいた身分の高そうな人達の姿があるけど、直接は知らない人ばかりなのでちょっといたたまれない。
言われていたように、ここにいる人の衣装は参考に見せてもらった中で一番派手だったものだった。こっちではこれがいいんだろうけど、あの格好はちょっとつらいよなあ。
「こんにちは!!初めまして、ジュンイチさんとジェニファーさんですよね?」
とりあえずジェンと二人でゆっくりしておくかと思っていると、同年代と思われる二人から声をかけられる。
「ええ、その通りです。もう・・」
「やっぱり!!私はクリベリア、こっちは妹のアリアーナです。クリス兄上からいろいろと冒険の話しを聞いていたので一度話したいと思っていたんですよ。」
「そうそう、アルモニアやハクセンまで行ってきたんでしょ?私達まだ他の国に行ったことがないんですよ。他の兄弟に聞いても王都とかの話とかしかないから楽しくないのよね。」
どうやらクリスさんの弟と妹みたいなんだけど、かなりぐいぐい来るなあ。結局時間になるまでずっと二人に今までの旅の話や他の国についての話すことになった。
しばらくしてから係の人に案内されて神殿にやって来たんだけど、神殿は数百人くらい入れるくらいの広さのところだった。そして自分たちが案内されたのは席の前の方で・・・、並んでいる人達がそうそうたるメンバーみたいなんだけどいいのか?
「ちょっと場違い感が半端ないんだけど・・・」
「確かにそれはそうだけど・・・折角いい席に案内してくれたんだから結婚式を楽しみましょうよ。」
しばらくして音楽が流れ始め、神父の宣誓により結婚式が始まった。そのあと教会の脇のドアからクリスさんが一人で入場してきて、神様への挨拶をする。白を基調としたスーツのような服装だ。
それから反対のドアから花嫁の4人がドレスに身を包んでやってきて神様に挨拶をする。彼女たちは一人一人デザインが若干違うけど、マーメイドだったかな?という感じのウエディングドレスだった。やっぱり白というのはこの世界でも一緒なのね。
神父が神の教えを簡単に朗読していく。朗読方法がちょっと特殊なので正直何を言っているのかわからない。お経を聞いている感じで、おそらくありがたい話なんだろう。
一通りの朗読が終わった後、クリスさんは自分で指輪をはめた後、それぞれの想いを述べながら一人一人に指輪をはめていく。全員の指輪をはめた後、その手を上に掲げて、宣誓をする。
「「「「「私たちは永遠の愛を神の前に誓います!!」」」」」
その宣誓の後、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
5人が席の中央の通路を並んで進み、神殿の外に向かうようだ。その間みんなは拍手をして見送るみたい。このあとそのままパレードに向かうみたいなんだけど、自分たちはそのまま会場の方へと移動となるようだ。
いったん控え室に誘導されたんだけど、ここのテラスからパレードの様子を眺めることができた。オープンカーのような車に乗って沿道の人に手を振りながら走っている。かなりゆっくりなペースで走っているので一周回るのには結構時間がかかりそうだな。
しばらくしたところで披露宴会場へと移動となり、席に誘導してくれた。最初にいるのはこっちの部屋にいた人だけなので他の人達はまだ後になるのだろう。
「こっちの席も結構前の方なんだなあ。大丈夫か?」
「それもあるけど、同じテーブルにあと4人分準備されているのでどういう人が来るのかしらね。たぶんそこは気を使ってくれてると思うわ。」
「とりあえずあの部屋に招待されていた人たちは別のテーブルというのがちょっと救いだね。」
しばらくしてから他の人達が入ってきたんだけど、自分たちの席にやってきたのは王家の剣のメンバーだった。
「おお、ジュンイチにジェニファーか。さすがに二人は別格扱いみたいだな。まあ殿下があそこまで慕っていたらそうだよな。」
「別格扱いはうれしいのはうれしいんですけど、他の人達が特別なメンバー過ぎて正直こまりましたよ。王族の方々が結構気さくな人達だったからよかったですけど・・・。」
「まあそれはしょうが無いさ。もともと呼ばれているのはかなり地位の高い人間が多いからな。俺たちでもこの席に呼ばれるのはかなりの栄誉だからな。殿下と同じパーティーだったから呼ばれたが、他の兵士で呼ばれているのは兵隊長とかかなり上の人達だけだぞ。」
「そうなのですね。まあ王家の結婚だから仕方が無いと言えば仕方が無いのかな。」
「それだけジュンイチ達二人に感謝してるってことだろう。」
しばらく話をしていると披露宴が始まった。最初に国王陛下からの挨拶、乾杯の挨拶、祝辞が次々に述べられていく。基本的にお祝いを述べる場という印象で、よくある結婚式のイベントや余興という物はないみたいだ。
ひたすら祝辞が述べられている間、簡単な軽食が提供され、飲み物は自由に注文することが出来るスタイルとなっている。ちゃんとした食事が提供されるわけではないみたい。
祝辞などがひとまず終わって自由な時間となったみたいで席を移動する人が出てきた。一応席はあるけど、立食パーティーという感じかな?
「ランドリアさん、クリスさん達のところに挨拶に行こうと思っているんですが、ご一緒しませんか?」
「いいのか?ありがたい申し出だが・・・。」
「ええ、クリスさん達もきっと喜ぶと思うんですよ。」
クリスさんたちに声をかけられるのは、リボンをもらっている人と随行者2名だけみたいなのでちょうど4人を連れて行くことが出来る。さすがにここでコーランさんたちを呼ぶわけにもいかないしね。
係の人に言って順番が来たら声をかけてもらうことにすると、しばらくして案内される。
「みなさん、このたびはおめでとうございます。とても幸せそうでうらやましいですよ。」
「スレインさん、アルドさん、イントさん、デルタさん。とても幸せそうでほんとにいい人に出会えてよかったですね。」
このあと王家の剣のメンバーもお祝いの言葉を述べた後、しばらく話をする。やっぱり結婚式の準備はかなり大変だったみたいで、これでやっとゆっくりできると愚痴っていた。結婚式自体はとても楽しみにしていたみたいだけど、やっぱり大変だよね。
「また落ち着いたころに新居にお邪魔させてもらいますよ。」
「ああ、待ってるよ。」
話す時間には制限があるので時間になったところで席にいったん戻る。
「ほんとに幸せそうでよかったなあ。」
「ほんとだよね。うらやましいなあ・・・。」
やっぱり女性にとって結婚式というのはあこがれなのかねえ。
続いて国王陛下の席にも行ってみることにした。さすがにこっちはジェンと二人で行く。
「陛下、このたびはおめでとうございます。今回はクリスさんからご招待いただきましたので参加させていただきました。今日の結婚式はとても楽しみにしていたんです。」
「うむ、こうやって結婚式ができるのも二人のおかげだ。息子達の晴れ姿を見守ってくれ。」
「はい。」
「二人がいなかったらこの結婚自体が怪しかったくらいだからね。二人にはとても感謝してるわ。」
アルフィナ王妃殿下もかなりご機嫌のようだ。他の王族の人達も簡単に紹介されるけど、特に平民と言って見下す感じではなかったのでほっとする。ただ周りからの視線がちょっと怖い感じだけどね。
このあとコーランさんや他に招待されていたショウバンさんに挨拶をしていく。ショウバンさんは自分たちがいたことにかなり驚いていたようだ。
最後になり、新郎のクリスさんからのお礼の言葉が始まった。
「・・・。今回、私が結婚できたのも私の親友の助けがあったからです。私たちを巡り合わせてくれて、さらに命の危機も救ってくれました。この恩は一生忘れないと思います。」
普通に聞いていたんだけど、途中から自分のことを言い出して焦ってしまったよ。名前は出なかったけど、ちょっと勘弁してほしい。「クリストフ殿下が親友というなんて一体だれだ?」とざわざわしていたのがちょっとこわい。それはそうだろう・・・。もと王子の親友って紹介は勘弁してくれよ。
式も無事に終わって、逃げるように退出する。帰りはコーランさんの車に乗せてもらったので助かったけどね。出るときも優先順位があったみたいだけど、自分たちは先に出させてくれたのでよかったよ。そうでなかったらまだ大分遅くなっていたかもしれない。この日は結構遅くまで披露宴があったため、宿に戻ったのはもう7時を回っていたしね。
部屋に戻ってから浄化魔法でさっぱりした後、服を着替えてやっと一息ついた。疲れたけど、皆の幸せな姿を見られてよかったなあ・・・。
結婚式準備で忙しいにも係わらず、クリスさん達はジェンのことでいろいろと相談に乗ってくれた。確認してもらったところ、ジェンの言っていた元の世界にいる大事な人というのは両親のことだったと聞いたときは気が抜けてしまったよ。あそこまで思い詰めた表情で言われたらよほど思い合っている恋人と思ってしまうよ。
そして男友達はいたけど、恋人はいなかったと聞いてすごくほっとした。このときに改めて自分の気持ちがわかってしまった。
クリスさんたちの後押しもあったんだけど、ジェンに本当の気持ちを伝える勇気が出てきた。もし今回断られても、いつかは付き合えるように自分を磨いていけばいい。そう考えることにした。クリスさんたちは絶対に大丈夫と言ってくれたんだけどね。
部屋で少し休憩していたジェンに声をかける。
「ジェン・・・ちょっといいかな?」
自分がいつもより真剣な顔をしているのか、真面目な顔になった。
「え、ええ、なに?」
「もとの世界に戻ったらこの世界のことはすべて忘れてしまうかもしれない。でも自分の気持ちはちゃんと伝えておきたいんだ。
本当は会ったときから少し気になっていた。一緒にいる時間とともにその気持ちは大きくなっていったんだ。でも大事な人がいるから、離ればなれになっている状態でこんな話をするのは卑怯だと思っていたんだ。だからずっとこの気持ちは封印していたんだ。」
「うん。」
「でも、大事な人というのは両親のことだったと聞いて、恋人はいなかったと聞いて、遠慮しなくていいと思ったら言わないと我慢できなくなったんだ。今の関係のままでいたい気持ちもあるけど、それだけでは我慢できなくなったんだ。」
「たしかに最初にそんなことを言っていたかもしれないわ。あのときは戻れないことになってしまったらどうしようと思っていたからそれが声に出ていたのね。まさかその言葉がイチを苦しめていたとは思わなかったわ。ごめんなさい。」
「謝らなくていいよ。たとえ彼氏がいたとしても奪い取ってやるというくらいの勇気が無かっただけだから・・・。
それで、もしもとの世界に戻っても覚えていることができるように、・・・いや忘れないくらいこれからもジェンとの思い出を作っていきたいんだ。
頼りになるかわからないけど、自分と付き合ってくれないか?パーティーメンバーとしてではなく、恋人としてだけど・・・
だめかな?」
「ありがとう・・・。
私もね、
同じ気持ちだよ!イチ!!」
そういうとジェンが自分に抱きついてきた。抱きついたまま頭を首筋にこすりつけてくる。
「時間が許す限り一緒に思い出を作っていこうよ。
絶対に忘れないから・・・。
もし忘れてしまっても絶対に思い出してみせるから・・・。」
しばらく抱きついてから、不意に顔を上げて自分を見つめてくる。いいのかな?と思いながらも、そのまま顔を近づけて唇が触れる。そのあとジェンの口と舌の動きに驚いたが素直に受け入れた。
どのくらいの時間がたったのかわからない。でもとても幸せだった。欲情してくると言うよりもジェンのことが愛おしくてたまらない。もちろんあっちの方は興奮しているけど、いまはこのまま抱き合っている方がよかった。
目を開けるとすぐ横にジェンの顔があった。夕べはベッドで抱き合ったまま眠ってしまったみたいだ。
ジェンのぬくもりがうれしかった。
ジェンの重さを感じることがうれしかった。
ジェンと両思いだったことがとてもうれしかった。
こうやって一緒にいてもいいんだな。好きになってもいいんだ・・・。
ジェンの顔を見ていると、ジェンも目を覚ましたようだ。ジェンに軽く口づけするとジェンからお返しとばかりに抱きつかれた。
こんな自分を好きになってくれるなんて、こんなに愛情を感じられるって幸せだなあ・・・。しばらく抱き合った後、起きることにした。朝から身体の一部が起きているのは仕方が無いよね。
結婚式の翌日だけど、クリスさんたちと会う約束をしていたのでスレインさんたちの屋敷に向かう。昨日結婚式の後で告白するということは伝えていたからね。絶対に報告に来いと言われていたんだけど、もしふられていたらどうすればよかったんだろう。
家に到着すると、すぐに中に案内されて、テーブルに座らされた後、興味津々という顔で皆から注目を浴びる。
「えっと、いろいろとありましたが、このたびジェンと正式に付き合うこととなりました。いろいろと相談にのってくれてありがとうございます。」
「「「「「おめでとう!!!」」」」」
その言葉を聞いてみんなから祝福されたんだけど、すぐに「やっとか・・・」とため息をつかれてしまった。
どうやら二人がお互いに好き合っているのは周りから見るとバレバレだったみたいで、なぜあれで付き合っていないというのかがわからなかったらしい。
「そんなにイチャイチャしていなかったと思うんだけど・・・」
「イチャイチャするというより、普通すぎて夫婦にしか見えなかったってことだよ!」
速攻で突っ込まれてしまった。そうなのか?
しばらく色々と冷やかされたあと、クリスさんに引っ張られて他の部屋へ。
「で?初めてだったんだろう?初めての経験はどうだった?」
「初めてって、キスのこと?」
「とぼけなくていいよ。夕べは一緒に寝たんだろ?」
「うん、二人で抱き合ってそのまま朝までぐっすり眠っていたよ。」
「んんっ?普通に寝たのか?」
「うん。」
「えっと、ジェニファーさんと最後の関係は持たなかったと?」
「関係って・・・ええ~~~!!いやそれはまだ早いと思う、か、ら・・・。昨日やっとお互いの気持ちを確認しただけだから・・・。」
「はぁ・・・いまさらだな。まあジュンイチのペースでやってくれたらいいよ。」
~ジェンSide~
「夕べちゃんと告白されたんだね?」
「うん。」
「だけどやっとなのね。初めて会った時からいつになったらちゃんと付き合うのかって、ほんとヤキモキさせられたわよ。」
「それで朝までベッドで二人でってところかな。体は大丈夫なの?僕は翌日がかなり大変だったからな。」
「うーんと、ベッドで抱き合っていたのは確かだけど、単に抱き合って寝ていただけよ。」
「「「「ええ~~~~!!なにもなかったの?」」」」
「うん、でもとてもいい気持ちで眠れたわ。朝一でイチの方からキスしてくれたしね。」
「ま、まあ、それぞれ付き合うペースもあるからな。」
「そ、そうね。」
「だけど、なんでその状態で最後まで行かないのよ?」
「でも、体の関係が無くてもイチとは十分つながっていることがわかったからいまはそれだけで十分幸せだよ。」
ほんと、まさか抱き合っているだけであんなに幸せな気持ちになれるなんて思わなかったわ。今まで抱き合ったときとは全く違ったわ。
もとの世界に戻っても絶対に忘れないからね。私に告白したんだから覚悟しておいてね。
~クリストフ王爵Side~
「なあ、ジュンイチ達のことは聞いたか?」
「ええ、付き合うことにはなったみたいだけど、昨日はキスで終わったらしいわね。」
「ああ、同じベッドで抱き合って寝ていたらしい。」
「私たちとは大違いね。」
「まあ、ジュンイチ達はジュンイチ達のペースで付き合っていけばいいんじゃないか?お互いの気持ちはわかったはずだからな。」
二人がいわゆる恋人つなぎで出て行ったのを温かい目で見送った5人だった。
~装備~
ジュンイチの装備:
ミスリルの剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3
鉄の短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3、耐久性向上-1
鋼の戦鎚(高) 高/高/高 強度向上-2
突牛の鎧(良) 良/良/良 強度向上-3、魔法耐性向上-3
巨角牛の革パンツ(高) 高/高/高 強度向上-2
巨猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2
ミスリルの盾(高) 良/良/並 強度向上-1、重量軽減-1
巨猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2
ミスリルの兜(良) 良/良/良 強度向上-3、耐久性向上-3
力のネックレス(良) 良/良/良 筋力向上-3
魔術の指輪(良) 良/良/良 魔力強化-3、治癒力強化-2
堅牢の腕輪(高) 高/高/高 肉体硬化-2
耐久のアンクレット(高) 高/高/高 持久力強化-2
ジェニファーの装備:
ミスリルの短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3
鋼の錫杖(高) 高/高/高 強度向上-2
巨角牛の革パンツ(高) 高/高/高 強度向上-2
突牛のミスリルハーフ鎧(高) 良/良/並 強度向上-1、重量軽減-1
ミスリルの籠手(高) 良/良/並 強度向上-1、耐久性向上-1
ミスリルの小盾(良) 良/良/良 強度向上-3、耐久性向上-3
巨猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2
ミスリルの兜(高) 良/良/並 強度向上-1、耐久性向上-1
力のネックレス(高) 高/並/高 筋力向上-2
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2、治癒力強化-1
治癒の指輪(良) 良/良/良 治癒力強化-3
俊敏の腕輪(高) 並/並/高 俊敏強化-2
堅牢の腕輪(良) 良/良/良 肉体硬化-3
耐久のアンクレット(高) 高/高/高 持久力強化-2
予備の装備:
鋼の剣(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3、耐久性向上-1
巨角牛の鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
大角牛の革のハーフ鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
厚手の革パンツ(並) 並/並/並 強度向上-1×2
牙猪の革の籠手(高) 高/高/並 強度向上-1
牙猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2、耐久性向上-1
牙猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2×2
鉄の兜(高) 高/高/高 強度向上-2
牙猪の革の帽子(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の盾(並) 並/並/並 強度向上-1
鋼の小盾(高) 高/高/高 強度向上-2
~ジュンイチとジェニファーのステータス~
名前:ジュンイチ(大岡純一郎)
生年月日:998年10月30日
年齢:19歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(上階位・アース) ハクセン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-1)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-1)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-2)、神の祝福(物理耐性上昇-3、魔法耐性上昇-3、能力吸収上昇-1)
スキル:
体術-3、片手剣-3、両手剣-2、短剣-3、槌-2、盾-3、刀剣-1
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-3、風魔法-4、水魔法-3、土魔法-4、氷魔法-3、雷魔法-3、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-1
治癒魔法-4、回復魔法-3
肉体硬化-2、筋力強化-2、持久力強化-2、俊敏強化-2、魔力強化-1、治癒力強化-1
毒耐性-3、麻痺耐性-3、睡眠耐性-3
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-2、工作-3、料理-2、裁縫-1
日本語-5、英語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-2、サビオニア語-2、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2、スペイン語-2
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-3、罠解除-3、隠密-3
鍛冶-2、調合-2、錬金-3、付与-3、商人-2
採掘-2、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-3
魔法学-4、魔素吸収-3、魔素放出-3、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4-、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-4、鍛冶学-3、調合学-3、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
名前:ジェニファー(ジェニファー・クーコ)
生年月日:998年12月15日
年齢:19歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(上階位・アース) ハクセン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-1)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-1)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-2)、神の祝福(物理耐性上昇-3、魔法耐性上昇-3、能力吸収上昇-1)
スキル:
体術-3、片手剣-2、短剣-3、杖-2、弓-2、盾-3
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-3、風魔法-3、水魔法-4、土魔法-4、氷魔法-3、雷魔法-3、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-1
治癒魔法-4、回復魔法-3
肉体硬化-2、筋力強化-2、持久力強化-2、俊敏強化-2、魔力強化-1、治癒力強化-1
毒耐性-3、麻痺耐性-3、睡眠耐性-3
演奏-3、歌唱-2、絵画-3、彫刻-1、舞踊-3、工作-1、料理-2、裁縫-2
英語-5、スペイン語-4、ドイツ語-3、フランス語-3、中国語-2、日本語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-3、サビオニア語-3、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-1、隠密-3
鍛冶-2、調合-3、錬金-2、付与-3、商人-3
採掘-1、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-3
魔法学-4、魔素吸収-3、魔素放出-3、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-3、鍛冶学-3、調合学-4、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
さすがに疲れていたのか、起きるとすでに2時を回っていた。ジェンもまだ眠そうにしているが起きるようだ。やっぱり疲れているのは間違いないね。クリスさんたちは大丈夫だろうか?休みたくてもそれほど時間が無いだろうからね。
朝食を食べた後、役場に行って今回の報告のために部屋を取ってもらう。
「わざわざ部屋を取って報告と言うことは無事に達成できたんですね?」
「なんとか無事に達成できましたよ。思ったより大変でしたが、無事に見つけることができてよかったです。」
「わかりました。完了報告証も問題ありません。それでは報酬の支払いとなりますが、今回の報酬は100万ドールとなります。これはすべて貯金と言うことでよろしいでしょうか?」
「はい、それでお願いします。」
「あと、今回の実績で良階位昇格のためのポイントが貯まっています。特別依頼の実績も十分ですので状況を見て昇格の試験を受けてくださいね。
講習会は以前受けているようですが、また受ける場合は言ってください。試験は毎月20日前後に行われますが、月により多少前後しますので日程は都度確認してください。」
「わかりました。まだ技量が足りないと思うのでしばらくは無理だと思いますが、様子を見てから頑張りたいと思います。」
「初階位からまだ2年ほどで良階位となれたとしたらかなりの昇格速度ですよ。」
「そうなんですね。でももっと早い人もいるんですね。」
「そうですね。この国では今は特階位の剣聖レバンド様や北の賢者のジョニーファン様が有名ですね。
昇格期間制限の最短である1年で良階位まであがりましたからね。」
「名前は聞いたことがあります。」
「ただ、彼らは冒険者になる前からすでに名前を知られるほどの実力を持っていましたからね。」
「また、他の方とも相談してからどうするか決めますね。ありがとうございました。」
このあとコーランさんに聞いた宝飾品を扱っている店にやってきた。こういう店は来たことがないからなあ。ただ、店構えからして高そうだ。なんか車買った時を思い出すよ。
「いらっしゃいませ。」
店員がすぐにやってきたんだけど、とりあえずざっと見させてくれと言って案内を断った。ただこっちの方をじっと見ているのはおそらく監視をしているのかもしれないね。
置いている宝石は地球のものとあまり変わらない感じだ。やはりダイヤモンドは高いけど、真珠はそれほどではない。こっちでも真珠の養殖があるのかもね。あれができるまではかなり高かったはずだからね。
値段は安くても1万ドールという感じだ。上はキリがないけど並んでいるものを見ると10万から50万くらいが多い感じだ。店によって扱っている価格帯が違うんだろうけど、コーランさんが紹介する店だからかなり上級の店なんだろうね。
「ジェンはどんなのがいい?」
「うーん、もともとネックレスはあまりしないからなあ。今は装備として効果があるからしてるだけなのよね。」
店員を呼んで服のイメージ図を見せながら話を聞いてもらう。結婚式に参列するときにダメなものとかないか確認してみたけど、特にしてはいけないというものはないらしく、あまり派手すぎないくらいのものがよいらしい。
「今度クリストフ殿下の結婚式があるので、それにあやかって結婚式を挙げる人が多いんですよ。お客さんも見に行かれますか?」
まあ式に参加するんだけど、下手なこと言っても混乱しそうなので「そのつもりですよ。」とだけ答えておいた。
結局ダイヤモンドとルビーを金の台座にあしらったものにした。値段は28万ドールと結構な値段だったけど、このくらいは想定内だ。武器に比べたら安いしね。
「ねえ、ほんとにいいの?結構な値段だよ。」
「こんな機会じゃないとなかなか買ったりすることもないからね。まあ半分はジェンが稼いだお金だから、自分からのプレゼントと言えないのがちょっと残念だけどね。」
購入を決めるとさらに他のものを薦めてきたけど流石にそれは断っておく。あとは服の完成を待って準備は完了という感じか?
衣装ができあがったのは結婚式の5日くらい前で結構焦ったんだけど、なんとか仕上がってよかった。服はそれぞれ3万ドールと4万ドールだったけど、これでも安い方らしい。もちろん普通はもっと安いものでもいいんだけど、クリスさんの結婚式ならせめてこのくらいのものは準備した方がいいと言われたから仕方が無い。
もし作るのが厳しい場合はレンタルもあったらしいけど、せっかくだからねえ。これであれば何かの時には使えるし。まあそうそうこれを着る機会があるとは思えないけどね。
仕上がりはさすがにぴったりでいい感じだった。ジェンもネックレスと合わせていい感じに仕上がっていた。
ちなみに結婚式の時にご祝儀というものはないらしい。ジェンにも話したら「なにそれ?」と言われてしまったしね。もともとそのような風習があるところの方が珍しいのかもしれない。なので当日は招待状くらいを持っていけばいいようだ。
結婚式までは期間も中途半端だったんだけど、ずっとぶらぶらしているのももったいなので前にお世話になったハルト道場で訓練することにした。久しぶりに道場に行くと覚えてくれていたみたいで、1週間ほどみっちりと鍛えてもらった。
他には魔道具についても言われたものを毎日コツコツと作っていった。お金については大分たまってきているけど、装備を更新したらすぐになくなってしまうからねえ。
宿は途中で特別室に移ったんだけど、思った以上に豪華な部屋だった。広さはこっちの世界に来たときにアーマトで泊まったところぐらいなんだけど、置いている家具とかのレベルが違う感じだ。エレベーターも専用のエレベーターになるしね。お風呂も結構広いものがついているけど、やっぱりお風呂は大浴場の方がゆったりしていい。
せっかくなので部屋の夜景を楽しみながらの食事をお願いすると専属の人がついて対応してくれるという充実ぶりだ。なんかジェンとお泊まりデートしている感覚になってちょっとまずい。
結婚式前なのに、クリスさんは時間を作ってくれて何度か相談に乗ってくれた。スレインさん達経由でジェンのことも聞いてもらい、いろいろと助言ももらって自分の中でも決心がついた。
クリスさんはきっと大丈夫だよと言ってくれるけど、ほんとに大丈夫なんだろうか?こんな経験したことがないから全くわからないんだよなあ。
結婚式はサクラにある一番大きな神殿で行われるみたいで、かなりの人数が参加するようだ。今日は天気が良くて良かった。
やはり平民になると言っても王族と言うことで、何かの時に皇族へ復帰できるように王爵という爵位となって、もし子どもが出来た場合、その子ども達までは一応王位の継承権が発生するようだ。ちなみに他国では上位爵相当らしいので、この時点で平民ではないよね。
買った服に着替えて会場に向かうことにしたんだけど、同じように着飾った人達の姿を結構見かける。招待されているのかと思ったんだけど、どうもこういうときには着飾って見に行くらしく、参列するわけではないみたい。まあ、自分たちもあまり目立たなくてよかったかもしれない。
式は4時からなのでまだ1時間ほどあるんだけど、結構人が多い。神殿の近くになるとパレード予定の沿道にかなりの人がやってきていた。なかなかすごいね。これだけの人が見に来るんだったらやっぱりパレードをしないとだめだろうね。だけどパレードってまだ2時間位あとじゃなかったかな?
兵士達は交通整理でかなり忙しそうにしている。神殿の近くは交通整理されていて近づくことができそうにないんだけど、どこで受付をしているんだろう?
兵士に声をかけようとするが、「見学する人は向こうに回って下さい!!」と忙しそうなので声をかけにくい。
ふとみると人垣の一部が開いていて、車が中に入って行っている。入口で招待状のようなものを確認しているようなのであそこからかもしれない。やっぱり車で来た方がよかったのかな?とりあえずそっちにいてみると、途中で兵士に止められる。
「こっちは招待客の確認をする場所だ。見学だったらあっちに回ってくれ。」
「いえ、今日の結婚式に招待されているのでやってきたんです。」
そう言って招待状を見せるとかなり驚いていた。身分証明証の提示を求められたのでそれを見せると、招待状の内容と確認している。
「申し訳ありません。招待状も間違いありませんでした。こちらから進んであちらの受付に招待状を提出してください。」
やはりこんなところに来るときは車なのかな?歩いてきているのは自分たちだけみたいな感じもする。まあしょうが無いよな。他の招待客からもちょっと変な目で見られているのは気のせいではないかもしれないな。
「やっぱり車で来るべきだったかな?」
「なんか雰囲気的にそうみたいね。」
「でもクリスさんも特に何も言っていなかったからねえ。それが普通の認識だからあえて言われなかったのかな?まあ入れたからもうどっちでもいいけどね。」
なんか人がひしめき合っている中を歩いて行くのはちょっとつらい。なんか某映画の表彰のレッドカーペットのような感じだからね。有名な人が来るから見に来ている人が多いんだろうか?
神殿の前に行くと、招待された人たちが受付をしていた。ここでコーランさんを見つけてちょっとほっとする。
「ジュンイチさん、ジェニファーさん、思ったより遅かったですね。」
「ぶらぶらと歩いてきたら思ったよりも時間がかかってしまいました。やっぱりこういうところは車で来るのが普通みたいですね。」
「あ、歩いてきたんですか・・・。まあ確かにこういうところに招待される人は車を持っている人が大半ですし、持っていない場合もレンタルしてやってきますね。すみません、説明しておけばよかったですね。」
「いえ、ちゃんと入れたので大丈夫ですよ。」
「あっちの受付で招待状を出せばいいんですよね?」
そう言って招待状を取り出すと、コーランさんはかなり驚いていた。
「ジュンイチさん、招待状ってそれですか!?」
「え・・・これが何か?ジェンのも同じ感じですよ。なんかかなり立派な招待状をもらったので驚いたんですけどね。」
「もっとちゃんと確認しておくべきでした。今回の招待はクリストフ殿下ではなく蠍の尾のメンバーからの招待と思っていたんですよ。その招待状をもらうと言うことはもしかしてクリストフ殿下ともかなり親しい仲なのでしょうか?」
「スレインさん達のことでいろいろと会うことがあってですね。結構一緒に食事をしたりもしていますよ。」
「そ、そうでしたか・・・。
招待状の色によって招待客のランクが異なるんですよ。通常は白や緑色なのですが、特別招待の方はそのような青色の封筒に入っているのです。結婚式中とはいえ、国王陛下や殿下達王族にはあちらから声をかけられない限りは会話できないのですが、その招待客はこの式の間はこちらから声をかけることが許されているのです。かなりの栄誉と言っても間違いありません。
ちなみに私は白の封筒ですし、かなりの地位の方でも緑色の招待状です。緑色の招待状の方も声をかけることが出来るのですが、優先度は低いので順番は後回しにされます。
こんなことなら服装についてももう少し考えておくべきでした。申し訳ありません。」
「いえ、こちらも何も聞かなかったし、説明もちゃんとしていなかったので特に気にしなくていいですよ。
服装もこれじゃだめってことではないんでしょ?国王陛下や王妃殿下もそんなことを気にする方ではなかったですし・・・。」
「・・・、もしかして国王陛下や王妃殿下にも会われたことがあるのですか?」
「ええ、クリストフ殿下に王宮に招待されたときにお目にかかって、いろいろと話をしてくださいました。他にも依頼を受けたときにも少し・・・。ああ、アルモニアに行くときにも紹介状を出してくださってとても助かったんですよ。」
なぜかコーランさんが天を仰いでいる。
「わかりました・・・。思った以上にジュンイチさんたちの交友関係が広いことがわかりました。とりあえず受付に行った方がよいかと思います。おそらく式までの待合室も私たちとは別の場所になると思いますので。」
「そうなのですね、ありがとうございます。」
受付に行って招待状を見せると、ほかの人たちとは違う別の受付に案内される。身分証明証を見せて確認が終わった後、胸に何やらリボンのようなものをつけられて建物の中に案内された。
会場では20人ほどの招待客が思い思いにくつろいでいた。外の会場よりもかなりゆったりしており、こっちは軽食とかまで準備されている。クリスさんの兄弟達や前に打ち合わせの時にいた身分の高そうな人達の姿があるけど、直接は知らない人ばかりなのでちょっといたたまれない。
言われていたように、ここにいる人の衣装は参考に見せてもらった中で一番派手だったものだった。こっちではこれがいいんだろうけど、あの格好はちょっとつらいよなあ。
「こんにちは!!初めまして、ジュンイチさんとジェニファーさんですよね?」
とりあえずジェンと二人でゆっくりしておくかと思っていると、同年代と思われる二人から声をかけられる。
「ええ、その通りです。もう・・」
「やっぱり!!私はクリベリア、こっちは妹のアリアーナです。クリス兄上からいろいろと冒険の話しを聞いていたので一度話したいと思っていたんですよ。」
「そうそう、アルモニアやハクセンまで行ってきたんでしょ?私達まだ他の国に行ったことがないんですよ。他の兄弟に聞いても王都とかの話とかしかないから楽しくないのよね。」
どうやらクリスさんの弟と妹みたいなんだけど、かなりぐいぐい来るなあ。結局時間になるまでずっと二人に今までの旅の話や他の国についての話すことになった。
しばらくしてから係の人に案内されて神殿にやって来たんだけど、神殿は数百人くらい入れるくらいの広さのところだった。そして自分たちが案内されたのは席の前の方で・・・、並んでいる人達がそうそうたるメンバーみたいなんだけどいいのか?
「ちょっと場違い感が半端ないんだけど・・・」
「確かにそれはそうだけど・・・折角いい席に案内してくれたんだから結婚式を楽しみましょうよ。」
しばらくして音楽が流れ始め、神父の宣誓により結婚式が始まった。そのあと教会の脇のドアからクリスさんが一人で入場してきて、神様への挨拶をする。白を基調としたスーツのような服装だ。
それから反対のドアから花嫁の4人がドレスに身を包んでやってきて神様に挨拶をする。彼女たちは一人一人デザインが若干違うけど、マーメイドだったかな?という感じのウエディングドレスだった。やっぱり白というのはこの世界でも一緒なのね。
神父が神の教えを簡単に朗読していく。朗読方法がちょっと特殊なので正直何を言っているのかわからない。お経を聞いている感じで、おそらくありがたい話なんだろう。
一通りの朗読が終わった後、クリスさんは自分で指輪をはめた後、それぞれの想いを述べながら一人一人に指輪をはめていく。全員の指輪をはめた後、その手を上に掲げて、宣誓をする。
「「「「「私たちは永遠の愛を神の前に誓います!!」」」」」
その宣誓の後、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
5人が席の中央の通路を並んで進み、神殿の外に向かうようだ。その間みんなは拍手をして見送るみたい。このあとそのままパレードに向かうみたいなんだけど、自分たちはそのまま会場の方へと移動となるようだ。
いったん控え室に誘導されたんだけど、ここのテラスからパレードの様子を眺めることができた。オープンカーのような車に乗って沿道の人に手を振りながら走っている。かなりゆっくりなペースで走っているので一周回るのには結構時間がかかりそうだな。
しばらくしたところで披露宴会場へと移動となり、席に誘導してくれた。最初にいるのはこっちの部屋にいた人だけなので他の人達はまだ後になるのだろう。
「こっちの席も結構前の方なんだなあ。大丈夫か?」
「それもあるけど、同じテーブルにあと4人分準備されているのでどういう人が来るのかしらね。たぶんそこは気を使ってくれてると思うわ。」
「とりあえずあの部屋に招待されていた人たちは別のテーブルというのがちょっと救いだね。」
しばらくしてから他の人達が入ってきたんだけど、自分たちの席にやってきたのは王家の剣のメンバーだった。
「おお、ジュンイチにジェニファーか。さすがに二人は別格扱いみたいだな。まあ殿下があそこまで慕っていたらそうだよな。」
「別格扱いはうれしいのはうれしいんですけど、他の人達が特別なメンバー過ぎて正直こまりましたよ。王族の方々が結構気さくな人達だったからよかったですけど・・・。」
「まあそれはしょうが無いさ。もともと呼ばれているのはかなり地位の高い人間が多いからな。俺たちでもこの席に呼ばれるのはかなりの栄誉だからな。殿下と同じパーティーだったから呼ばれたが、他の兵士で呼ばれているのは兵隊長とかかなり上の人達だけだぞ。」
「そうなのですね。まあ王家の結婚だから仕方が無いと言えば仕方が無いのかな。」
「それだけジュンイチ達二人に感謝してるってことだろう。」
しばらく話をしていると披露宴が始まった。最初に国王陛下からの挨拶、乾杯の挨拶、祝辞が次々に述べられていく。基本的にお祝いを述べる場という印象で、よくある結婚式のイベントや余興という物はないみたいだ。
ひたすら祝辞が述べられている間、簡単な軽食が提供され、飲み物は自由に注文することが出来るスタイルとなっている。ちゃんとした食事が提供されるわけではないみたい。
祝辞などがひとまず終わって自由な時間となったみたいで席を移動する人が出てきた。一応席はあるけど、立食パーティーという感じかな?
「ランドリアさん、クリスさん達のところに挨拶に行こうと思っているんですが、ご一緒しませんか?」
「いいのか?ありがたい申し出だが・・・。」
「ええ、クリスさん達もきっと喜ぶと思うんですよ。」
クリスさんたちに声をかけられるのは、リボンをもらっている人と随行者2名だけみたいなのでちょうど4人を連れて行くことが出来る。さすがにここでコーランさんたちを呼ぶわけにもいかないしね。
係の人に言って順番が来たら声をかけてもらうことにすると、しばらくして案内される。
「みなさん、このたびはおめでとうございます。とても幸せそうでうらやましいですよ。」
「スレインさん、アルドさん、イントさん、デルタさん。とても幸せそうでほんとにいい人に出会えてよかったですね。」
このあと王家の剣のメンバーもお祝いの言葉を述べた後、しばらく話をする。やっぱり結婚式の準備はかなり大変だったみたいで、これでやっとゆっくりできると愚痴っていた。結婚式自体はとても楽しみにしていたみたいだけど、やっぱり大変だよね。
「また落ち着いたころに新居にお邪魔させてもらいますよ。」
「ああ、待ってるよ。」
話す時間には制限があるので時間になったところで席にいったん戻る。
「ほんとに幸せそうでよかったなあ。」
「ほんとだよね。うらやましいなあ・・・。」
やっぱり女性にとって結婚式というのはあこがれなのかねえ。
続いて国王陛下の席にも行ってみることにした。さすがにこっちはジェンと二人で行く。
「陛下、このたびはおめでとうございます。今回はクリスさんからご招待いただきましたので参加させていただきました。今日の結婚式はとても楽しみにしていたんです。」
「うむ、こうやって結婚式ができるのも二人のおかげだ。息子達の晴れ姿を見守ってくれ。」
「はい。」
「二人がいなかったらこの結婚自体が怪しかったくらいだからね。二人にはとても感謝してるわ。」
アルフィナ王妃殿下もかなりご機嫌のようだ。他の王族の人達も簡単に紹介されるけど、特に平民と言って見下す感じではなかったのでほっとする。ただ周りからの視線がちょっと怖い感じだけどね。
このあとコーランさんや他に招待されていたショウバンさんに挨拶をしていく。ショウバンさんは自分たちがいたことにかなり驚いていたようだ。
最後になり、新郎のクリスさんからのお礼の言葉が始まった。
「・・・。今回、私が結婚できたのも私の親友の助けがあったからです。私たちを巡り合わせてくれて、さらに命の危機も救ってくれました。この恩は一生忘れないと思います。」
普通に聞いていたんだけど、途中から自分のことを言い出して焦ってしまったよ。名前は出なかったけど、ちょっと勘弁してほしい。「クリストフ殿下が親友というなんて一体だれだ?」とざわざわしていたのがちょっとこわい。それはそうだろう・・・。もと王子の親友って紹介は勘弁してくれよ。
式も無事に終わって、逃げるように退出する。帰りはコーランさんの車に乗せてもらったので助かったけどね。出るときも優先順位があったみたいだけど、自分たちは先に出させてくれたのでよかったよ。そうでなかったらまだ大分遅くなっていたかもしれない。この日は結構遅くまで披露宴があったため、宿に戻ったのはもう7時を回っていたしね。
部屋に戻ってから浄化魔法でさっぱりした後、服を着替えてやっと一息ついた。疲れたけど、皆の幸せな姿を見られてよかったなあ・・・。
結婚式準備で忙しいにも係わらず、クリスさん達はジェンのことでいろいろと相談に乗ってくれた。確認してもらったところ、ジェンの言っていた元の世界にいる大事な人というのは両親のことだったと聞いたときは気が抜けてしまったよ。あそこまで思い詰めた表情で言われたらよほど思い合っている恋人と思ってしまうよ。
そして男友達はいたけど、恋人はいなかったと聞いてすごくほっとした。このときに改めて自分の気持ちがわかってしまった。
クリスさんたちの後押しもあったんだけど、ジェンに本当の気持ちを伝える勇気が出てきた。もし今回断られても、いつかは付き合えるように自分を磨いていけばいい。そう考えることにした。クリスさんたちは絶対に大丈夫と言ってくれたんだけどね。
部屋で少し休憩していたジェンに声をかける。
「ジェン・・・ちょっといいかな?」
自分がいつもより真剣な顔をしているのか、真面目な顔になった。
「え、ええ、なに?」
「もとの世界に戻ったらこの世界のことはすべて忘れてしまうかもしれない。でも自分の気持ちはちゃんと伝えておきたいんだ。
本当は会ったときから少し気になっていた。一緒にいる時間とともにその気持ちは大きくなっていったんだ。でも大事な人がいるから、離ればなれになっている状態でこんな話をするのは卑怯だと思っていたんだ。だからずっとこの気持ちは封印していたんだ。」
「うん。」
「でも、大事な人というのは両親のことだったと聞いて、恋人はいなかったと聞いて、遠慮しなくていいと思ったら言わないと我慢できなくなったんだ。今の関係のままでいたい気持ちもあるけど、それだけでは我慢できなくなったんだ。」
「たしかに最初にそんなことを言っていたかもしれないわ。あのときは戻れないことになってしまったらどうしようと思っていたからそれが声に出ていたのね。まさかその言葉がイチを苦しめていたとは思わなかったわ。ごめんなさい。」
「謝らなくていいよ。たとえ彼氏がいたとしても奪い取ってやるというくらいの勇気が無かっただけだから・・・。
それで、もしもとの世界に戻っても覚えていることができるように、・・・いや忘れないくらいこれからもジェンとの思い出を作っていきたいんだ。
頼りになるかわからないけど、自分と付き合ってくれないか?パーティーメンバーとしてではなく、恋人としてだけど・・・
だめかな?」
「ありがとう・・・。
私もね、
同じ気持ちだよ!イチ!!」
そういうとジェンが自分に抱きついてきた。抱きついたまま頭を首筋にこすりつけてくる。
「時間が許す限り一緒に思い出を作っていこうよ。
絶対に忘れないから・・・。
もし忘れてしまっても絶対に思い出してみせるから・・・。」
しばらく抱きついてから、不意に顔を上げて自分を見つめてくる。いいのかな?と思いながらも、そのまま顔を近づけて唇が触れる。そのあとジェンの口と舌の動きに驚いたが素直に受け入れた。
どのくらいの時間がたったのかわからない。でもとても幸せだった。欲情してくると言うよりもジェンのことが愛おしくてたまらない。もちろんあっちの方は興奮しているけど、いまはこのまま抱き合っている方がよかった。
目を開けるとすぐ横にジェンの顔があった。夕べはベッドで抱き合ったまま眠ってしまったみたいだ。
ジェンのぬくもりがうれしかった。
ジェンの重さを感じることがうれしかった。
ジェンと両思いだったことがとてもうれしかった。
こうやって一緒にいてもいいんだな。好きになってもいいんだ・・・。
ジェンの顔を見ていると、ジェンも目を覚ましたようだ。ジェンに軽く口づけするとジェンからお返しとばかりに抱きつかれた。
こんな自分を好きになってくれるなんて、こんなに愛情を感じられるって幸せだなあ・・・。しばらく抱き合った後、起きることにした。朝から身体の一部が起きているのは仕方が無いよね。
結婚式の翌日だけど、クリスさんたちと会う約束をしていたのでスレインさんたちの屋敷に向かう。昨日結婚式の後で告白するということは伝えていたからね。絶対に報告に来いと言われていたんだけど、もしふられていたらどうすればよかったんだろう。
家に到着すると、すぐに中に案内されて、テーブルに座らされた後、興味津々という顔で皆から注目を浴びる。
「えっと、いろいろとありましたが、このたびジェンと正式に付き合うこととなりました。いろいろと相談にのってくれてありがとうございます。」
「「「「「おめでとう!!!」」」」」
その言葉を聞いてみんなから祝福されたんだけど、すぐに「やっとか・・・」とため息をつかれてしまった。
どうやら二人がお互いに好き合っているのは周りから見るとバレバレだったみたいで、なぜあれで付き合っていないというのかがわからなかったらしい。
「そんなにイチャイチャしていなかったと思うんだけど・・・」
「イチャイチャするというより、普通すぎて夫婦にしか見えなかったってことだよ!」
速攻で突っ込まれてしまった。そうなのか?
しばらく色々と冷やかされたあと、クリスさんに引っ張られて他の部屋へ。
「で?初めてだったんだろう?初めての経験はどうだった?」
「初めてって、キスのこと?」
「とぼけなくていいよ。夕べは一緒に寝たんだろ?」
「うん、二人で抱き合ってそのまま朝までぐっすり眠っていたよ。」
「んんっ?普通に寝たのか?」
「うん。」
「えっと、ジェニファーさんと最後の関係は持たなかったと?」
「関係って・・・ええ~~~!!いやそれはまだ早いと思う、か、ら・・・。昨日やっとお互いの気持ちを確認しただけだから・・・。」
「はぁ・・・いまさらだな。まあジュンイチのペースでやってくれたらいいよ。」
~ジェンSide~
「夕べちゃんと告白されたんだね?」
「うん。」
「だけどやっとなのね。初めて会った時からいつになったらちゃんと付き合うのかって、ほんとヤキモキさせられたわよ。」
「それで朝までベッドで二人でってところかな。体は大丈夫なの?僕は翌日がかなり大変だったからな。」
「うーんと、ベッドで抱き合っていたのは確かだけど、単に抱き合って寝ていただけよ。」
「「「「ええ~~~~!!なにもなかったの?」」」」
「うん、でもとてもいい気持ちで眠れたわ。朝一でイチの方からキスしてくれたしね。」
「ま、まあ、それぞれ付き合うペースもあるからな。」
「そ、そうね。」
「だけど、なんでその状態で最後まで行かないのよ?」
「でも、体の関係が無くてもイチとは十分つながっていることがわかったからいまはそれだけで十分幸せだよ。」
ほんと、まさか抱き合っているだけであんなに幸せな気持ちになれるなんて思わなかったわ。今まで抱き合ったときとは全く違ったわ。
もとの世界に戻っても絶対に忘れないからね。私に告白したんだから覚悟しておいてね。
~クリストフ王爵Side~
「なあ、ジュンイチ達のことは聞いたか?」
「ええ、付き合うことにはなったみたいだけど、昨日はキスで終わったらしいわね。」
「ああ、同じベッドで抱き合って寝ていたらしい。」
「私たちとは大違いね。」
「まあ、ジュンイチ達はジュンイチ達のペースで付き合っていけばいいんじゃないか?お互いの気持ちはわかったはずだからな。」
二人がいわゆる恋人つなぎで出て行ったのを温かい目で見送った5人だった。
~装備~
ジュンイチの装備:
ミスリルの剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3
鉄の短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3、耐久性向上-1
鋼の戦鎚(高) 高/高/高 強度向上-2
突牛の鎧(良) 良/良/良 強度向上-3、魔法耐性向上-3
巨角牛の革パンツ(高) 高/高/高 強度向上-2
巨猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2
ミスリルの盾(高) 良/良/並 強度向上-1、重量軽減-1
巨猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2
ミスリルの兜(良) 良/良/良 強度向上-3、耐久性向上-3
力のネックレス(良) 良/良/良 筋力向上-3
魔術の指輪(良) 良/良/良 魔力強化-3、治癒力強化-2
堅牢の腕輪(高) 高/高/高 肉体硬化-2
耐久のアンクレット(高) 高/高/高 持久力強化-2
ジェニファーの装備:
ミスリルの短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3
鋼の錫杖(高) 高/高/高 強度向上-2
巨角牛の革パンツ(高) 高/高/高 強度向上-2
突牛のミスリルハーフ鎧(高) 良/良/並 強度向上-1、重量軽減-1
ミスリルの籠手(高) 良/良/並 強度向上-1、耐久性向上-1
ミスリルの小盾(良) 良/良/良 強度向上-3、耐久性向上-3
巨猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2
ミスリルの兜(高) 良/良/並 強度向上-1、耐久性向上-1
力のネックレス(高) 高/並/高 筋力向上-2
魔術の指輪(高) 高/高/高 魔力強化-2、治癒力強化-1
治癒の指輪(良) 良/良/良 治癒力強化-3
俊敏の腕輪(高) 並/並/高 俊敏強化-2
堅牢の腕輪(良) 良/良/良 肉体硬化-3
耐久のアンクレット(高) 高/高/高 持久力強化-2
予備の装備:
鋼の剣(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の短剣(良) 良/良/良 強度向上-3、鋭利向上-3、耐久性向上-1
巨角牛の鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
大角牛の革のハーフ鎧(高) 高/高/高 強度向上-2
厚手の革パンツ(並) 並/並/並 強度向上-1×2
牙猪の革の籠手(高) 高/高/並 強度向上-1
牙猪の革の籠手(高) 高/高/高 強度向上-2、耐久性向上-1
牙猪の革のブーツ(高) 高/高/高 耐久性向上-2×2
鉄の兜(高) 高/高/高 強度向上-2
牙猪の革の帽子(高) 高/高/高 強度向上-2
鉄の盾(並) 並/並/並 強度向上-1
鋼の小盾(高) 高/高/高 強度向上-2
~ジュンイチとジェニファーのステータス~
名前:ジュンイチ(大岡純一郎)
生年月日:998年10月30日
年齢:19歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(上階位・アース) ハクセン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-1)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-1)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-2)、神の祝福(物理耐性上昇-3、魔法耐性上昇-3、能力吸収上昇-1)
スキル:
体術-3、片手剣-3、両手剣-2、短剣-3、槌-2、盾-3、刀剣-1
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-3、風魔法-4、水魔法-3、土魔法-4、氷魔法-3、雷魔法-3、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-1
治癒魔法-4、回復魔法-3
肉体硬化-2、筋力強化-2、持久力強化-2、俊敏強化-2、魔力強化-1、治癒力強化-1
毒耐性-3、麻痺耐性-3、睡眠耐性-3
演奏-1、歌唱-1、絵画-2、彫刻-2、工作-3、料理-2、裁縫-1
日本語-5、英語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-2、サビオニア語-2、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2、スペイン語-2
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-3、罠解除-3、隠密-3
鍛冶-2、調合-2、錬金-3、付与-3、商人-2
採掘-2、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-3
魔法学-4、魔素吸収-3、魔素放出-3、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4-、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-4、鍛冶学-3、調合学-3、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
名前:ジェニファー(ジェニファー・クーコ)
生年月日:998年12月15日
年齢:19歳
国籍:ヤーマン国
職業:冒険者(上階位・アース) ハクセン下位爵
賞罰:ハクセン緑玉章
資格:車運転
クラス:戦士(武術力向上-1)、魔法使い(魔力向上-3)、治癒士(治癒力向上-1)、学者(思考力向上-3)、技術者(技術力向上-2)、神の祝福(物理耐性上昇-3、魔法耐性上昇-3、能力吸収上昇-1)
スキル:
体術-3、片手剣-2、短剣-3、杖-2、弓-2、盾-3
威圧-3、突撃-3、回避-3
一般魔法-4、火魔法-3、風魔法-3、水魔法-4、土魔法-4、氷魔法-3、雷魔法-3、光魔法-3、闇魔法-3、次元魔法-1
治癒魔法-4、回復魔法-3
肉体硬化-2、筋力強化-2、持久力強化-2、俊敏強化-2、魔力強化-1、治癒力強化-1
毒耐性-3、麻痺耐性-3、睡眠耐性-3
演奏-3、歌唱-2、絵画-3、彫刻-1、舞踊-3、工作-1、料理-2、裁縫-2
英語-5、スペイン語-4、ドイツ語-3、フランス語-3、中国語-2、日本語-5、ヤーマン語-5、ライハンドリア公用語-5、ハクセン語-4、モクニク語-3、サビオニア語-3、古代ライハン語-2、古代ホクサイ語-2
思考強化-3、鑑定-4
索敵-3、罠探知-1、隠密-3
鍛冶-2、調合-3、錬金-2、付与-3、商人-3
採掘-1、採取-2、解体-3、解体魔法-3
知識スキル:
戦学-4、武学-4、防学-3
魔法学-4、魔素吸収-3、魔素放出-3、魔素操作-4
算学-4、自然科学-4、社会科学-4、生物学-4、植物学-4、地学-4、神学-4、医学-4、天文学-4、言語学-5
罠学-3、鍛冶学-3、調合学-4、錬金学-3、付与学-4
ガイド本-3
秘匿スキル:
アミナの祝福(知識吸収上昇)
タミスの祝福(技術吸収上昇)
イギナの祝福(芸術吸収上昇)
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