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92. 異世界1472日目 ナンホウ大陸を放浪
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92. 異世界1472日目 ナンホウ大陸を放浪
王都のタイカン付近はまだ暖かいのでいいんだけど、今は2月と季節的にはもう秋なので、南下していくのはつらいだろう。なのでここから当初の予定通り、西の海岸沿いに出てから中都市のミントウアリアとルイトウを通って北上していくことにした。北上していくので季節は冬になっても亜熱帯から熱帯の気候となるので問題ないだろう。
途中にいくつか遺跡もあるようなので一応遺跡の調査許可証はもらっておいた。この国でも一級の許可証があれば大体のところには入れると聞いているんだけど、この国にはあまりめぼしい遺跡はなさそうなんだよね。遺跡の近くを通る場合には簡単には調査していくくらいのつもりで考えている。
遺跡調査で見つかった地図にも当時の町の位置などは書かれていたんだけど、すでに発見されているところだけだったからなあ。地下の遺跡とかじゃないと調査しても収穫はないだろうね。
王都のタイカンではいろいろと試食してからかなりの量のお米を購入した。気に入ったお米は3種類で、全部合わせたら何俵くらいになるんだろうか?これで数年はお米を買わなくてもいいくらいだろう。収納していれば劣化もしないからね。まあ気に入ったものがあればまた買ってしまいそうだけど。
ジェンはジェンでかなりの量のお酒を買っていた。酒屋で購入するだけでなく、その産地まで聞いていたので途中で寄っていくつもりだろうな。やっぱり農産物と水のおいしいところのお酒はおいしいんだろうね。おかげで寂しくなっていたお酒を補充できたとかなり喜んでいた。
しかしいろいろと買い込んだせいで収納するスペースがかなり少なくなってしまったなあ。まあまだ収納スペースは普通に考えると十分なんだけどね。それに収納バッグもあるので何かの時には使えば大丈夫だろう。次元魔法がもう一段階レベルアップすればいいんだけどなあ。
タイカン国は全体的に標高が低くて傾斜が少ないところが多いせいか、川幅も広いし、湖などもかなり多い。このため水生の魔獣が結構いるので途中は狩りをしながら進んでいくことにした。水生の魔獣はなかなか倒す機会もないからね。
途中にある町で魔獣の情報を確認しながらだったのでペースは遅くなったけど、いろいろな魔獣を狩っていくことができた。ただ結構街道から離れても上階位の魔獣がせいぜいなので鍛錬にはあまりならなかったけどね。
出てくるのは蛙タイプの土蛙、岩蛙、岩大蛙、大蛙、狂蛙、鰐タイプの大鰐、亀タイプの泥亀、牙亀という魔獣で今までも倒したことのあるものがほとんどだ。このあたりは素材として肉くらいしかないのでそのまま自分たちで使うことにした。
あと川の中にいるので今まで倒したことのなかった水魚、雷魚なども倒していく。普通の魚よりも大きく、水魚は体長1キヤルドくらい、雷魚は大きなものは2キヤルドくらいに達する魚型の魔獣だ。陸上には上がってこないので普段の生活では問題視されないんだけど、やはり水のそばに住んでいる人たちには不安材料なので定期的に討伐される対象となっている。
水魚は並階位なんだが、簡単な水魔法を使う魔獣で、特に血のにおいに敏感で、水の中で血を流すとすぐに襲いかかってくる。ピラニアみたいなものか?
雷魚は名前の通り雷魔法を使うようなんだけど、説明を見る限り魔法ではなく、デンキナマズとかの類いじゃないのかな?放電することはできないので、水中で感電させるくらいしかできないようだ。こちらはかなり大きなこともあり、子供などは丸呑みされることもあるようだ。
ただどちらも食用としても人気のあるもので、冒険者だけではなくこれを専門に捕っている漁師もいるみたい。
釣りや網などで捕まえるのが普通らしいが、自分たちは索敵でだいたいの位置を確認してからいろいろと魔法で試してみた。
火魔法や風魔法だと効果がないので、使えるとしたら土魔法か水魔法か雷魔法だろう。水魔法は水の中に攻撃しても威力が格段に落ちるので水中の魔獣には意味がない。雷魔法もそこまで効き目がなかった。
結局、土魔法で銛のような石を魔獣めがけて飛ばすという方法にしたが、もちろん水面近くにいないと刺さらないのでなかなか大変だった。それでも索敵能力が高いおかげかそれなりの数を退治することができたのでよかったけどね。
すぐに血抜きをしてから浄化魔法できれいにすると臭みもなくていい感じの身を手に入れることができた。ついでに普通の川魚やウナギなども捕まえたので処理をしておくが、さすがにウナギの処理は大変だったよ。
ちなみに解体魔法は魔獣だけでなく普通の魚とかにも使うことができるのでいったんできるようになるととても便利だ。
途中にあった遺跡にも寄っていったけど、すでに探索し尽くされた後で、建物もすべて壊れてしまっていたので正直何も残っていない状態だった。風雨にさらされて文字などもほとんど残っていなかったからね。やはり遺跡として調査ができるのは地中に残っているものだけだな。
地上に残っているものは基本的にすべて破壊されていると考えた方がいいのかもしれない。今まで調査できた遺跡も大体が地下などに造られた遺跡だったからね。地上にある調査できる遺跡はもしかしたら地下だった遺跡の天井が崩れた後なのかもしれない。
まっすぐ行けば15日くらいで到着できる行程だったのに、いろいろと寄り道したせいで港町のミントウアリアに着いた時には1ヶ月が経っていた。北上していたせいか、気温はあまり変わらず、快適な感じだったのは助かった。
久々の港町なのでちょっとテンションが上がっている。町に到着してからまずは聞いておいた宿を予約してからさっそく港に行ってみると、昼前だったのでまだいろいろと魚が売られていた。魚は温かいところの魚だけではなく、寒い地域の魚も多い。この沖の方で暖流と寒流が混じっているのかもしれないな。
「すみません、ここの魚は生で食べたりはできますか?」
「お、生魚を食べるのかい?それだったら下処理をしたものがあるけどこれでいいか?」
そう言って血抜きをした切り身を出してきたんだが、せっかくなら自分で処理した方が綺麗だよなあ・・・。
「すみません、血抜きは自分でするので、いけすの魚を捌いてもらっていいですか?」
いけすに入っていたハマチのような魚を絞めてもらい、水魔法で綺麗に血抜きをしてから浄化魔法もかける。そのあと三枚に下ろしてもらって、最近購入した甘口の刺身醤油でワルナと一緒に味見をしてみる。
うん、脂ものっていて美味しくて十分に食べ応えがある。他にもいくつか魚を捌いてもらい、近くのテーブルを借りてお昼にすることにした。
浄化魔法や血抜きを見たせいか、店の人が少し味見をさせてくれないかと言ってきたので食べさせるとえらく感激していた。
「あの短時間でここまでちゃんと血抜きができるのか・・・。ここで働く気はないか?」
「いやいや、さすがにそれは無理ですよ。」
「まあそれはそうだろうな。今あるだけでも手伝ってもらうことはできないか?あとでお礼は十分にするからさあ。」
「まあそのくらいなら・・・。」
簡単に引き受けてしまったせいでかなりの魚の処理をやらされることになった。まあサービスと言ってかなりの魚をもらうことができたからいいんだけどね。しかも夕食までごちそうになったし。明日からしばらく買い物に来ることを伝えてから宿に戻る。
宿は1000ドールのツインの部屋で、こざっぱりしてきれいなところだった。朝食も簡単なものは付いているようなのでこの値段なら十分安い方なのかもしれない。
翌日は朝一から港に行って、新鮮な魚介類をいろいろと購入する。貝はアサリやハマグリみたいなものから牡蠣やホタテのようなものまであったので購入したついでにここでも食べていくことにした。やはり牡蠣の炭火焼きは最高だ。ポン酢に醤油でさらにおいしさ倍増。浄化魔法をかけて生でも食べたけどね。
牡蠣の養殖はまだ行われていないみたいで、天然のものしかないのか値段は結構するのは仕方がないところか。魔法があるので殻ムキも楽だし言うことなしだね。牡蠣はジェンも大好物だったみたいで、二人でかなりの量を食べたので、店の人もあきれていた。こんなに食べる人も多くないのだろう。
しばらくの間、毎日港に通って食べまくっていたせいか、店の人に顔を覚えられてしまった。まあ買う量も多かったからね。店の近くを通ったときに、今日のおすすめと言われたときに気に入ったものは大量に買っていたから覚えられるのも当然か。
しばらく通っていると、漁師を紹介してもらって漁にも連れて行ってもらい、釣りたての魚をその場で食べたりとかもして、港町をかなり満喫することができた。
船では釣りもさせてもらったりもしたしね。ついでに海にいる魚の魔獣も何匹か倒すこともできた。このあたりは特に船の上までおそってくるような魔獣はいないらしいけどね。
ミントウアリアを出発してから次に行った大きな町は、少し内陸に入ったところにあるルイトウというところだ。ここは農作物が豊富なところで、ここでもいろいろな食材を買い込む。どこかの業者かと言われてしまったよ。
いろいろ買ったり注文していたら、市場の仕入れの時に同行させてもらってほしいものをまとめて購入できたのは助かった。店で買うより安くしてもらえたし、欲しいものも十分に買えたからね。果物とかも結構いろいろと手に入ったのはよかった。ヤーマンとかだとかなり高いものも、こっちではかなりの安値だったからね。
この国に来るまでに魔獣の肉以外の食材がほとんど無くなっていたんだけど、かなりの量をストックすることができた。数ヶ月分は買ってしまったかもしれないなあ。まあ腐らないから大丈夫と思って買いすぎるのはしょうが無いところか。
いろいろと寄り道しながら移動していたこともあり、モクニクとの国境の町アルトバに到着したときにはすでに4月になっていた。
~ジェンSide~
王都のタイカンでいろいろとお酒について情報を仕入れていたので途中はいろいろと寄り道をしてもらった。さすがにルートから外れすぎるところはあきらめたんだけど、それでも10軒以上の酒蔵に寄っていろいろと買うことができたのはよかったわ。本当はもっと寄りたいところもあったけどね。
そのうちの一軒はかなり有名なお酒を造っているところで、売ってもらえるかどうかはわからないと言われていたところだった。せっかくだからと寄ってみたけど、やっぱり売ってくれなかった。どうやら協会に入っている会員にしか売ってくれないということだった。
ダメ元でハスカルさんの名刺とそのときに書いてもらった紹介状を見せてみることにした。というのも、もらった名刺に今言った協会の肩書きが書いてあったのを思い出したからだ。
「協会には入っていませんが、この紹介状ではだめですか?」
そういって名刺を渡すと、ちょっと驚いていた。
「こ、これは副会長のハスカルさんの名刺?こっちはハスカルさんの紹介状?」
しばらく紹介状を読んだ後で、こっちをにらんで言ってきた。
「・・・もし、今からいうお酒のどれかを少しでいいので飲ませてくれるなら売ってもいい。」
言われたお酒のうち二つは持っていたのでそのうちの一つを出すとかなり驚いていた。さすがにそのときの顔を見ると、そのまま引っ込めるわけにもいかず、試飲をさせてあげるとかなり感激していた。
「さすがハスカルさんの紹介状を持っているだけあるな。今言ったお酒が本当に出てくるとは思わなかったぞ。半分冗談だったんだがな・・・。
会員でなくても会員からの紹介状があれば売ることにはしていたんだよ。試飲までさせてもらったからには秘蔵のお酒も含めて売れるものを出すから買いたいだけ買って行ってくれ。」
そう言ってかなりの数のお酒を出してくれたので買える分は全部買っていくことにした。かなりの金額になったけど、次の機会はないのでイチには目をつぶってもらった。もちろん私の小遣いからもお金を出したわよ。
だけどハスカルさんって、この界隈ではかなりの有名人みたいね。あのとき会えてよかったかもしれないわ。
~~~~~
ルイトウを出発して国境の町のアルトバまでは10日もかかってしまった。寄り道をしているので時間がかかってしまうのはしょうがない。
すでに夕方になっていたのでこの日はそのままこの町に泊まることにした。今からでもモクニク国に行くことはできるが、宿が取れなかったら困るので明日の朝一で国境を越えた方がいいだろう。夕食にはご飯と味噌汁に焼き魚という和食っぽいものを食べる。
翌朝国境の窓口に行くと、ここには貴族用の窓口があったのでこっちに進む。こういう時は使わないともったいない。
「えっと・・・サビオニア国からタイカン国に入られたんですね。」
「ええ、それで間違いありません。」
やっぱり聴かれてしまったよ。一定期間、身分証明証には入出国の記録が残っているので確認されてしまったようだ。たしか半年くらいだったと思うけど、正確な日時は記載されていないはずだ。
「いろいろあって、新しい連絡通路を使ってタイカン国にやってきたんです。新しい連絡通路のことはご存じですよね?」
未だにサビオニアとの出入国には制限がかかっているし、特にサビオニアからタイカンへの連絡通路はさらに制約が厳しいみたいなので、不審に思われるのは仕方がない。ただ、すでに連絡通路は正式に開通しており、タイカン国にやってきた人はゼロではないはずだ。
「はい。ただサビオニアから連絡通路を通ってきたという人は初めてでしたので・・・。」
一応上司へ確認に行ったみたいだけど、自分が爵位を持っていることからそれ以上深く追求することができなかったみたい。
「やっぱり聞かれたね。」
「そうね。かなり驚いていたみたい。だけど、タイカン国への入国も正式に手続きをしてもらっているから、不正なことは何もないのよね。」
「かなり遠回りしたから不信感は少なかったと思うけど、まっすぐにここに来ていたらまずかったかもしれないね。」
モクニク国側の国境の町オルクは特徴のあるところではないが、国境の町というだけあって人の出入りは多い。商品の流通も多いのでかなり発展しているんだけど、今後新しい連絡通路が正式に稼働し始めたらこの町の賑わいも落ちていくだろうな。今はタイカンからの唯一の正式な流通経路だからなあ。
カサス商会の人たちも新しい連絡通路の窓口になる町への出店を計画していると言っていた。町が大きくなるのは間違いないことだろうし、今後はサビオニアへの出店も考えていくらしい。
しばらくコーランさんたちも大変だろうな。店を出すとなるとそこの支店長とかも考えないといけないだろうし、出店のための流通経路も確立しなければならないだろうからね。国の方も経済の立て直しのためにある程度商会には融通をしてくれるだろうけど、その先陣をきる商会に入り込めるかどうかがネックだろう。
首都のタイカンでは結構お金がかかるのにコーランさんと通信機で話をすることになったからなあ。どこまで接触できるかわからないが、ハクさんやロンさんのことは一応話しておいたんだよね。まあ新しい国では重要なポストに就いているみたいだから簡単には会えないかもしれないけどね。
まだ公表されていない新しい連絡通路については自分から話すわけにもいかないので、ぼかしながらも少し伝えておいた。少しだけでも情報を与えておけばコーランさんならきっと気がつくだろう。
~コーランSide~
サビオニアの政変のことはかなり驚いた。もともと政情が良くないと言うことは聞いていたのだが、まさか革命が起きるまでとは思っていなかった。しかもジュンイチさんたちがその国に行っているタイミングで起こるとは・・・。無事だろうかとかなり心配したものだ。
国境が封鎖され、連絡が断片的にしか入らない状況だったが、突然タイカン国に二人がやってきたと聞いてかなり驚いた。モクニク国に戻って来たのならわかるが、なぜタイカン国に?
そう思っていたところ、その謎を解明することがあった。古代遺跡の連絡通路のことだ。どういう経緯かわからないが、おそらくその連絡通路を通ってタイカン国に行ったのだろう。あの二人のことだ、また何かに巻き込まれてしまったのかもしれない。
その後、首都のタイカンの商会に訪れたときに二人と話す機会を作ってもらった。どうやらサビオニアの革命の関係者と知り合ったおかげで連絡通路を優先的に使わせてもらえたらしい。そのときの名前を聞いて驚いた。おそらく同一人物と思われるその一人は新たな国の大臣に名前があげられている人だった。
今後サビオニアで商売を進めるにあたり、ジュンイチさんたちの名前を出していいとの許可をもらえたのはかなり助かった。そして次の言葉を聞いて驚いた。
「古代の連絡通路があったってことは、一つだけってことはないと思うんですよね?」
それだけの言葉だったが、その可能性は高いと考えていいだろう。そしてわざわざそんな事ことを言ってきたのはなにかそのような情報があったと考えてもいいのかもしれない。
すぐにモクニク国とタイカン国で情報を収集すると、不自然に投資が始まっている町の情報を得ることができた。疑ってみない限りはわからないが、間違いなく町の拡張を想定して調査を行っていた。
今はまだ小さな町だが、ムニアとタラトクという二つの町がその拠点となるのではないかと思われる。すぐに支店を出す方向で調整を進めることにした。
そしてサビオニアについても出店を進めていくことになった。他にも多くの商会がサビオニアとの交易を進めようと動いていた。もともとここ最近は交易量が下がっていてサビオニアの主要な輸出品であった鉱物などの価格が上がっていたこともある。
ジュンイチさんから聞いた伝を使いコンタクトをとったところ、ジュンイチさんからも確認が取れたようでハク様の右腕と言われるロン様と面談することができたと報告があった。正式な手続きをするために私もサビオニアに行くことになったが、多くの商会が手続きに難航している中で話を進められているのはかなりありがたい。
おそらく革命の前から話のついていた商会との競争とはなるし、かなりの先行投資をしなければならないが、十分に見返りが期待できる。現在ヤーマンの商会でサビオニアとの交易に参入できたというところは聞いていないので、距離があるとはいえ、かなり大きな商売になるだろう。
~~~~~
オルクの町を出発してから7日ほどで北にある副王都のマルニクへ到着した。ここもかなり大きな町で、町の中心には大きなお城もあった。湖畔にある王都モクニクとは異なり、小高い丘の上に作られた城で、町は丘の上から裾野に向かって広がっていた。
ここはもともとはランタクという別の国の首都だったところだったが、100年ほど前にモクニクに併合されたらしい。さらにさかのぼれば250年ほど前まではランタクという大きな国があり、そこで王位争いが勃発し東西の国に別れてしまったみたい。東に逃げた王位継承者が東の勢力をまとめて創った国がモクニク国のようだ。
そのあと50年ほどは戦争が続いたが、両方の国も疲弊してきて他の国に攻め込まれる危険性が出たことで和平が結ばれたようだ。そしてそれから100年ほど経ってからホクサイ大陸との交易で力を付けたモクニク国がランタク国に攻め込み、再度統一されたということらしい。
言語はもともと同じ国だったこともあり、なまり程度の差なので特に問題はないけど、やはり別れて数百年も経ったせいで文化は異なるようだ。ちなみに自分たちが習ったのは東側エリアの国の言葉なのでこの辺りでは若干言葉が異なっている。
貴族の権限はこちらの地域の方が多少緩い感じらしいけど、これは国の影響ではなく、おそらくタイカン国の影響なのだろう。
さすがに西側で一番大きな町だけあってかなりの規模で人通りも多い。店もいろいろとあって商品も充実しているのでいろいろと日用品などを買い出ししていく。
装備品やアクセサリーも見てみるが、今使っているものが結構いいものなので、値段を考えても買い換えたいというものはない。ここ最近は全く装備の更新をしていないんだよなあ。まあ補修が自分でできるようになったことも大きいけどね。
あとは魔獣の討伐を魔法中心にしたこともあるだろうな。魔法で遠距離から仕留めることも多いし、魔法で作った盾で防ぐことも多いので装備へのダメージがあまりないんだよね。
貴族エリアの役場に行っても特に変わったことはなかったんだけど、平民エリアの役場に行くと、最近貴族の取り締まりがきつくなっていると教えてくれた。どうやらサビオニアの政変があったことで、いろいろと問題のあった領主は領地を没収されたりとかもしているらしい。この国でも革命が起きないか心配しているのだろう。
数日ほど滞在してから出発し、ランタクとモクニクのもともとの国境だったところにある城塞都市タラクを経由して王都モクニクへ。デリアンさんに連絡を取るとすぐに返事があって、カルクさんと一緒に会うことになった。
宿を取ってから指定された店で待っていると二人がやってきた。仕事が終わったあとに直接やってきたらしいが、なんかちょっと前と雰囲気が違っているような感じがするのは気のせいか?
適当に食べ物や飲み物を注文してから二人と話をする。
「大丈夫でしたか?サビオニアに行くと言っていたのでかなり心配したんですよ。結局あの国に行かれたんですか?」
「ええ、サビオニアにいるときに革命が起きてしまったので結構大変でしたよ。現地で知り合った方々に助けてもらいながらなんとか戻ってこれました。」
「よかったですね。」
この間の調査結果のことを聞くと、2ヶ月ほど前に論文として報告したらしく、最近になって論文の内容が正式に認められたらしい。
「良かったですね。平民の論文が認められることはなかなかないと言っていましたけど、大丈夫でしたか?」
「ああ、もともとはそうだったんだけどね。サビオニアの革命の影響なのか、最近は平民への当たりもだいぶん良くなってきているんだ。タイミング良く論文を報告できて良かったよ。おかげで調査許可証の方も何とかなりそうなんだ。」
「平民にとってはいい方向に進みそうな感じですね。」
「ああ。それで論文については複写しておいたから渡しておくよ。明日は無理だけど、3日後なら休みが取れるから分からないところがあれば聞いてほしい。内容を見るのに2日あれば大丈夫か?」
「ええ、この量であれば大丈夫だと思います。それじゃあ、これはまた後でゆっくり見させてもらいますね。」
食事を楽しんだ後、二人と別れてから宿に戻る。
「なあ、なんかあの二人の距離が前と違う感じだったんだけど気のせいじゃないよな?」
二人が座っているときの距離も近かったし、前はお互いにデリアン、カルアと呼んでいたのに、今はデル、カルと呼び合っていたからなあ。
「たぶんつきあい始めたんじゃないかしら?二人の雰囲気とか行動を見てたらバレバレじゃない。分からなかったの?」
「そ、そうなんだ・・・。」
「今回の調査で一緒に居ることも多かったと思うし、いろいろとあったんじゃないかな?気になるなら今度あったときに聞いてみたら?たぶんごまかしたりはしないと思うわよ。」
翌日から二人のまとめた論文の確認を行った。二人の研究は古代文明の生活についてのことが主となっており、今回の調査結果と残っていた文章から当時の生活をいろいろと考察した内容になっていた。
今回調査した遺跡はもともと地下にあったところで、地上に出ていたのは天井部分が崩れ落ちた後の部分だったと報告されている。地下での生活の注意書きなどが多数あったみたいで、それらの内容を考えると地上での生活だったとは考えられないようだった。
生活の期間は数年に及んでいたみたいで、古代に起きた戦争から避難するためにそこに住んでいたのだろうという結論となっていた。
ただそこでの生活がどのように終わったかは分からなかったみたい。設備が使えなくなって町を出たのか、あそこが崩壊してから出たのか、それともその前に町を出たのかなどは残っていた記述からは判断できなかったらしい。
三日後に二人と会ったときに疑問に思ったことをいくつか質問すると、やはりまだ不明な箇所はいくつもあるらしく、今後も調査を進めていくつもりだと言っていた。
「そういえばお二人の呼び方がなんか変わっているようですけど、何かありました?」
「まあ、その、いろいろあってな。その・・・。」
「ちょっと、デルから言うって言ったんじゃないの!!」
「まあ・・・、その・・・、こいつと付き合っているんだ。一緒に話をしているうちにいろいろと世話を焼いてくれるようになってな。今は一緒に住んでいるんだよ。もう少し落ち着いたら結婚しようと考えているところなんだ。」
「そ、そうなんですね。おめでとうございます。カルアさん良かったですね。」
「あ、ありがとう。」
お祝いにちょっと高級なところで夕食をおごってあげるとかなり恐縮していた。カルアさんはやっと長年の思いが伝わって良かったね。デリアンさんはよく分かっていなかったみたいだけど。
翌日の朝に二人の店に行って挨拶してから町を出る。何か新しい発見があったらまた連絡をしてくれるようなのでお願いしておいた。
~デリアンSide~
遺跡の調査を行ったあと、時間を見つけてはカルアと二人で解析を進めた。遺跡の研究は進めなければならないが、仕事もやらないわけにはいかない。それで、少しでも研究する時間を作るためにできるだけ仕事を効率よくやって残業しないようにがんばった。
ここ数年カルアも遺跡調査とかには付き合ってくれていたが、ここまで真剣に研究に取り組んではいなかったので、学生時代に戻ったような感覚だった。
二人で過ごす時間が増えてくると、一緒に食事をしたり、料理を作ってもらったりすることも増えてきてカルアのことがちょっと気になりだした。今まで異性として気にはしていなかったんだけどなあ。正直こんなときにどうしていいのか全く分からない。
論文がだいたいの形になって、久しぶりに二人でお酒を飲んでいたんだが、途中から記憶があやふやになってきた。翌朝起きると、ベッドで眠っていて横にカルアが裸で眠っていた。
「え?えっ?」
ほとんど記憶には残っていなかったんだが、カルアとそういうことをやったことだけは分かった。たしかこれを素直に言ってはいけないんだよな・・・と思いながらもカルアのことが気になっていたのでそのまま付き合うことになった。
カルアの両親にも謝りに行ったんだが、付き合うことはすぐに認めてくれた。どうやら最近の働きぶりを評価してくれたようだ。
~カルアSide~
遺跡の調査を行ってからデリアンと一緒に過ごすことが増えてきた。調査や解析を進めることがほとんどだけど、一緒に食事に行ったり、料理を作ってあげたりと、なんか結婚したような錯覚もあった。
部屋で二人で飲んでいたんだけど、どうやら論文の先が見えてかなりうれしくて羽目を外しているようで、途中からなにか言動がおかしくなってきた。そう思っていると私に抱きついてきた。え?どういうこと?
そのままベッドに寝かせたんだけど、全く起きる気配がなかった。悩んだんだけど、折角だからと自分もベッドに入って一緒に寝ることにした。
翌朝目を覚ましたデリアンはかなりうろたえていたんだけど、事を終えてしまったと思ったのか、付き合ってほしいと言ってきた。本当に?話しを聞くと最近ちょっと気になっていたらしい。
すぐに両親に挨拶に行くというので連れて行くと、私の気持ちを知っていた両親はすぐに付き合う許可を出してくれた。どうやら最近の仕事ぶりも評価してくれていたらしい。
そのまま一緒に住むことになり、今度結婚をすることになっている。まさかいきなりこんなことになるとは思ってなかったわ。だけどうれしい・・・。私達のことを知っている友人達からは「やっとか・・・。」と言われたけどね。
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「このあとホクサイ大陸に戻るつもりだけど、折角だから装備の更新をしたいんだよね。それでハクセンに行ってみようかと思っているんだけどそれでいいかな?」
「ハクセンって言うことはカルマさんのところね?オリハルコンとかを手に入れたからね。どうせだったら腕の分かっているところが一番いいわね。」
「それで造ってもらうのに時間がかかるだろうから、また鍛冶の勉強もさせてもらおうかと思ってるよ。一緒にやるか?」
「もちろん!今度はミスリルくらいまで扱えるようになりたいわね。」
王都を出発してからまっすぐ北上して港町アラクへとやってきた。結局このナンホウ大陸に1年以上いたんだなあ。まさか政変にまで巻き込まれることになるとは思ってもみなかったよ。
町に入ってまずは宿を押さえてから港へと向かう。ハクセンに行くにはまずはタイガに行かないといけないけど、タイガ行きは以前ヤーマン行きの船に乗ったジャルガの町に行く船かその西側にあるライガの町に行く船の二つがある。距離はどちらも同じなのでせっかくなら行ったことのないライガにするか?
ただ問題なのはこっちだとモクニク国の会社のマンザックの船しかないんだよね。ジャルガ行きだと前にヤーマンに戻るときに乗ったときと同じ会社になる。
出航の予定を見てみると、ライガ行きは4日後、ジャルガ行きだと20日後だった。さすがに16日の差は大きすぎるな・・・。
「折角なら行ったことのなおところに行こうとは思っていたけど、これはライガ行きしか選択肢はないよね?会社がちょっと気にはなるけど・・・。」
「16日の差は大きいわね。変な貴族の粛正は行われているみたいだから、そうそう変な貴族には会わないと思うわよ。」
「まあね。それじゃあこっちにしようか。比較のためにもいろいろなところに乗っても面白いかもしれないしね。」
貴族用と平民用で受付は別れているので、貴族用の受付へと向かう。対応はいつものことなのでもう慣れたよ。ただ出航まで日数もないので部屋が空いていない可能性もあるんだよなあ。受付でペンダントを出してから部屋を確認すると、思ったよりも部屋が空いていた。
どうやらサビオニアの政変やモクニクでの貴族の粛正がここにも影響を及ぼしているみたいで貴族の旅行客が減っているみたい。部屋は十分に選べるくらいなので、逆に経営が大丈夫か心配になる。
「どうする?折角だから贅沢な船旅をしてみる?」
一番高い部屋はさすがにとれないけど、次のランクの部屋は空いている。値段は一部屋80万ドールと結構な額だ。
「お金は大丈夫なの?」
「ここ最近は装備の更新とかもなかったから、今は2000万ドール以上はあるよ。今度装備を更新するとは言っても材料はあるからそこまでかかるとは思えないしね。それに収納バッグを売ることにしたら1億ドールくらいになるかもしれない。」
「それじゃあ折角だからこの部屋にしよっか?」
自分たちが部屋の予約をすると、受付の女性はちょっと驚いた顔でお礼を言ってきた。普通こんなところでお礼を言うものなのか?
船の予約を済ませてから役場に行くと、前に会ったカステルとイクサのメンバーがやってきていた。事前に会えないか連絡を取っていたので待ってくれていたようだ。あのときいたカレニアのメンバーは他の町に行っているので今回は来られなかったらしい。
「みなさん、お久しぶりです。」
「元気だったか?サビオニアの方にも行くと言っていたから心配していたんだ。大丈夫だったのか?」
「ええ、行くには行ったんですが、特に革命の戦闘にも巻き込まれずにすみましたよ。いろいろとあってタイカン国にも行ってきたところなんです。そろそろホクサイ大陸に戻ろうかと思ってこっちに戻ってきたところなんですよ。」
「そうなのか。俺たちもやっと全員が良階位になったからホクサイ大陸に行こうと思っていたところだぞ。一緒の船か?」
イクサのリーダのイライザさんが言ってきた。
「自分たちはハクセンに行って装備を新調しようと思っているんですよ。お世話になった鍛冶屋もあるのでそこでやってもらおうかと思っているんです。」
「そうか。って事はタイガ行きだな。俺たちはヤーマンに行ってみようと思っているんだ。いろいろ聴いた感じでは一番平民には過ごしやすい国っぽいからな。まあ、俺たちもどのくらい居るか分からないが、会えそうだったら向こうで会おう。」
一通りの挨拶がすんだところで予約しておいた店に移動する。人数が多いので部屋を確保してくれていたようだ。狩りの話や行った場所の話などをしながら食事をする。サビオニアの状況はみんな気になっているみたいで簡単な状況だけは話しておいた。
「そろそろ収納バッグを買いたいと思っているんだが、ヤーマンだったら手に入れられるかなあ?」
イクサのパーティーはまだ収納バッグがなくて、そろそろ購入を考えているらしい。パーティーのサラさんが収納魔法を使えるようだけど、まだ1キリルしか入れられないみたい。
「収納バッグですか?以前ヤーマンで行ったオークションでは確か5キリルの物が500万ドールくらいで落札されていましたね。」
「やっぱりそのくらいするのかぁ。でもそれだけ出せば手に入るって事だよな。こっちでは金はあっても、貴族が独占するせいでそもそも売りに出ないからな。ヤーマンに行ったらオークションとかで何とか手に入れたいなあ。」
「どのくらいのものを探しているんですか?」
「そりゃ大きい方がいいんだが、値段を考えると3~5キリルくらいが限度だと思ってるんだよ。5キリルのやつは安いときでも400万ドールくらいだからな。3キリルのやつだったら安いときで200万ドールくらいであるみたいだからオークションでも300万ドールで手に入ればと思ってるんだ。」
「俺たちはヤーマンに行ったときに運良くオークションで手に入れることができたからな。6キリルの収納バッグが500万ドールで手に入ったからラッキーだったぜ。あとテラスも一応収納魔法が使えるからな。」
自分たちが持っている収納バッグは全部で6個ある。それぞれ30キリル、26キリル、5キリルが2個、2キリルが2個だ。それに収納魔法でそれぞれ100キリルずつ使えるから正直小さな収納バッグはなくてもいいんだよなあ・・・。オークションに出そうと思っていたくらいだし。
「あの・・・もし収納バッグを安く譲るとしたら購入されますか?」
「どういうことだ?」
「あまりおおっぴらにしないでほしいのですが、実は古代遺跡の調査で収納バッグを手に入れることができたんです。ヤーマンに戻ったらオークションに出そうと思っていたんですが、もしいるようだったら安く譲ってもいいですよ。」
「本当か!?」
「それで2キリルのバッグと5キリルのバッグがありますけど、どうされますか?」
持っていたバッグから収納バッグを出すとみんな驚いていた。
「ちょ、ちょっとまってくれ・・・。」
しばらく二つのパーティーで話し合っているようだ。イクサのパーティーだけでなく、カステルのパーティーもほしいと言い出したみたい。
「ちなみにいくらだったら譲ってくれるんだ?」
「えっと、2キリルのものは120万ドール、5キリルの物は400万ドールでどうでしょうか?オークションだと安くてもこのくらいはすると思うんですけど。」
「いや、十分に安いよ。そもそも出物がないからな。」
両方のパーティーでいろいろと言い合って話がまとまらない。やはり2キリルだと少ないという状況らしい。
「あの、2キリルの物だったら二つありますよ。」
「「まじか!!!」」
そのあとやっと話がまとまったみたいで、カラストパーティーが5キリル、イクサパーティーが2キリルを二つ購入することにしたようだ。
「だけどいいのか?」
「ええ、実は自分たちはもう少し大きなものを長期で借りられているので大丈夫なんです。自分たち二人とも収納魔法も使えますしね。最終的には今使っている物は売ってしまいたいと思っているところなんです。」
「ありがとうな。予算よりもかなり安く手に入ったから十分だ。今日の夕飯分くらいはおごってやるからな。」
実際に持っているものはさすがに言えなかったけど、いい人達に譲れて良かったな。オークションに出せばもっと値段が上がったかもしれないけど、まあこのくらいはいいだろう。一緒にオークションに出したら小さい方の値段はおそらく上がりにくいと思うからね。
王都のタイカン付近はまだ暖かいのでいいんだけど、今は2月と季節的にはもう秋なので、南下していくのはつらいだろう。なのでここから当初の予定通り、西の海岸沿いに出てから中都市のミントウアリアとルイトウを通って北上していくことにした。北上していくので季節は冬になっても亜熱帯から熱帯の気候となるので問題ないだろう。
途中にいくつか遺跡もあるようなので一応遺跡の調査許可証はもらっておいた。この国でも一級の許可証があれば大体のところには入れると聞いているんだけど、この国にはあまりめぼしい遺跡はなさそうなんだよね。遺跡の近くを通る場合には簡単には調査していくくらいのつもりで考えている。
遺跡調査で見つかった地図にも当時の町の位置などは書かれていたんだけど、すでに発見されているところだけだったからなあ。地下の遺跡とかじゃないと調査しても収穫はないだろうね。
王都のタイカンではいろいろと試食してからかなりの量のお米を購入した。気に入ったお米は3種類で、全部合わせたら何俵くらいになるんだろうか?これで数年はお米を買わなくてもいいくらいだろう。収納していれば劣化もしないからね。まあ気に入ったものがあればまた買ってしまいそうだけど。
ジェンはジェンでかなりの量のお酒を買っていた。酒屋で購入するだけでなく、その産地まで聞いていたので途中で寄っていくつもりだろうな。やっぱり農産物と水のおいしいところのお酒はおいしいんだろうね。おかげで寂しくなっていたお酒を補充できたとかなり喜んでいた。
しかしいろいろと買い込んだせいで収納するスペースがかなり少なくなってしまったなあ。まあまだ収納スペースは普通に考えると十分なんだけどね。それに収納バッグもあるので何かの時には使えば大丈夫だろう。次元魔法がもう一段階レベルアップすればいいんだけどなあ。
タイカン国は全体的に標高が低くて傾斜が少ないところが多いせいか、川幅も広いし、湖などもかなり多い。このため水生の魔獣が結構いるので途中は狩りをしながら進んでいくことにした。水生の魔獣はなかなか倒す機会もないからね。
途中にある町で魔獣の情報を確認しながらだったのでペースは遅くなったけど、いろいろな魔獣を狩っていくことができた。ただ結構街道から離れても上階位の魔獣がせいぜいなので鍛錬にはあまりならなかったけどね。
出てくるのは蛙タイプの土蛙、岩蛙、岩大蛙、大蛙、狂蛙、鰐タイプの大鰐、亀タイプの泥亀、牙亀という魔獣で今までも倒したことのあるものがほとんどだ。このあたりは素材として肉くらいしかないのでそのまま自分たちで使うことにした。
あと川の中にいるので今まで倒したことのなかった水魚、雷魚なども倒していく。普通の魚よりも大きく、水魚は体長1キヤルドくらい、雷魚は大きなものは2キヤルドくらいに達する魚型の魔獣だ。陸上には上がってこないので普段の生活では問題視されないんだけど、やはり水のそばに住んでいる人たちには不安材料なので定期的に討伐される対象となっている。
水魚は並階位なんだが、簡単な水魔法を使う魔獣で、特に血のにおいに敏感で、水の中で血を流すとすぐに襲いかかってくる。ピラニアみたいなものか?
雷魚は名前の通り雷魔法を使うようなんだけど、説明を見る限り魔法ではなく、デンキナマズとかの類いじゃないのかな?放電することはできないので、水中で感電させるくらいしかできないようだ。こちらはかなり大きなこともあり、子供などは丸呑みされることもあるようだ。
ただどちらも食用としても人気のあるもので、冒険者だけではなくこれを専門に捕っている漁師もいるみたい。
釣りや網などで捕まえるのが普通らしいが、自分たちは索敵でだいたいの位置を確認してからいろいろと魔法で試してみた。
火魔法や風魔法だと効果がないので、使えるとしたら土魔法か水魔法か雷魔法だろう。水魔法は水の中に攻撃しても威力が格段に落ちるので水中の魔獣には意味がない。雷魔法もそこまで効き目がなかった。
結局、土魔法で銛のような石を魔獣めがけて飛ばすという方法にしたが、もちろん水面近くにいないと刺さらないのでなかなか大変だった。それでも索敵能力が高いおかげかそれなりの数を退治することができたのでよかったけどね。
すぐに血抜きをしてから浄化魔法できれいにすると臭みもなくていい感じの身を手に入れることができた。ついでに普通の川魚やウナギなども捕まえたので処理をしておくが、さすがにウナギの処理は大変だったよ。
ちなみに解体魔法は魔獣だけでなく普通の魚とかにも使うことができるのでいったんできるようになるととても便利だ。
途中にあった遺跡にも寄っていったけど、すでに探索し尽くされた後で、建物もすべて壊れてしまっていたので正直何も残っていない状態だった。風雨にさらされて文字などもほとんど残っていなかったからね。やはり遺跡として調査ができるのは地中に残っているものだけだな。
地上に残っているものは基本的にすべて破壊されていると考えた方がいいのかもしれない。今まで調査できた遺跡も大体が地下などに造られた遺跡だったからね。地上にある調査できる遺跡はもしかしたら地下だった遺跡の天井が崩れた後なのかもしれない。
まっすぐ行けば15日くらいで到着できる行程だったのに、いろいろと寄り道したせいで港町のミントウアリアに着いた時には1ヶ月が経っていた。北上していたせいか、気温はあまり変わらず、快適な感じだったのは助かった。
久々の港町なのでちょっとテンションが上がっている。町に到着してからまずは聞いておいた宿を予約してからさっそく港に行ってみると、昼前だったのでまだいろいろと魚が売られていた。魚は温かいところの魚だけではなく、寒い地域の魚も多い。この沖の方で暖流と寒流が混じっているのかもしれないな。
「すみません、ここの魚は生で食べたりはできますか?」
「お、生魚を食べるのかい?それだったら下処理をしたものがあるけどこれでいいか?」
そう言って血抜きをした切り身を出してきたんだが、せっかくなら自分で処理した方が綺麗だよなあ・・・。
「すみません、血抜きは自分でするので、いけすの魚を捌いてもらっていいですか?」
いけすに入っていたハマチのような魚を絞めてもらい、水魔法で綺麗に血抜きをしてから浄化魔法もかける。そのあと三枚に下ろしてもらって、最近購入した甘口の刺身醤油でワルナと一緒に味見をしてみる。
うん、脂ものっていて美味しくて十分に食べ応えがある。他にもいくつか魚を捌いてもらい、近くのテーブルを借りてお昼にすることにした。
浄化魔法や血抜きを見たせいか、店の人が少し味見をさせてくれないかと言ってきたので食べさせるとえらく感激していた。
「あの短時間でここまでちゃんと血抜きができるのか・・・。ここで働く気はないか?」
「いやいや、さすがにそれは無理ですよ。」
「まあそれはそうだろうな。今あるだけでも手伝ってもらうことはできないか?あとでお礼は十分にするからさあ。」
「まあそのくらいなら・・・。」
簡単に引き受けてしまったせいでかなりの魚の処理をやらされることになった。まあサービスと言ってかなりの魚をもらうことができたからいいんだけどね。しかも夕食までごちそうになったし。明日からしばらく買い物に来ることを伝えてから宿に戻る。
宿は1000ドールのツインの部屋で、こざっぱりしてきれいなところだった。朝食も簡単なものは付いているようなのでこの値段なら十分安い方なのかもしれない。
翌日は朝一から港に行って、新鮮な魚介類をいろいろと購入する。貝はアサリやハマグリみたいなものから牡蠣やホタテのようなものまであったので購入したついでにここでも食べていくことにした。やはり牡蠣の炭火焼きは最高だ。ポン酢に醤油でさらにおいしさ倍増。浄化魔法をかけて生でも食べたけどね。
牡蠣の養殖はまだ行われていないみたいで、天然のものしかないのか値段は結構するのは仕方がないところか。魔法があるので殻ムキも楽だし言うことなしだね。牡蠣はジェンも大好物だったみたいで、二人でかなりの量を食べたので、店の人もあきれていた。こんなに食べる人も多くないのだろう。
しばらくの間、毎日港に通って食べまくっていたせいか、店の人に顔を覚えられてしまった。まあ買う量も多かったからね。店の近くを通ったときに、今日のおすすめと言われたときに気に入ったものは大量に買っていたから覚えられるのも当然か。
しばらく通っていると、漁師を紹介してもらって漁にも連れて行ってもらい、釣りたての魚をその場で食べたりとかもして、港町をかなり満喫することができた。
船では釣りもさせてもらったりもしたしね。ついでに海にいる魚の魔獣も何匹か倒すこともできた。このあたりは特に船の上までおそってくるような魔獣はいないらしいけどね。
ミントウアリアを出発してから次に行った大きな町は、少し内陸に入ったところにあるルイトウというところだ。ここは農作物が豊富なところで、ここでもいろいろな食材を買い込む。どこかの業者かと言われてしまったよ。
いろいろ買ったり注文していたら、市場の仕入れの時に同行させてもらってほしいものをまとめて購入できたのは助かった。店で買うより安くしてもらえたし、欲しいものも十分に買えたからね。果物とかも結構いろいろと手に入ったのはよかった。ヤーマンとかだとかなり高いものも、こっちではかなりの安値だったからね。
この国に来るまでに魔獣の肉以外の食材がほとんど無くなっていたんだけど、かなりの量をストックすることができた。数ヶ月分は買ってしまったかもしれないなあ。まあ腐らないから大丈夫と思って買いすぎるのはしょうが無いところか。
いろいろと寄り道しながら移動していたこともあり、モクニクとの国境の町アルトバに到着したときにはすでに4月になっていた。
~ジェンSide~
王都のタイカンでいろいろとお酒について情報を仕入れていたので途中はいろいろと寄り道をしてもらった。さすがにルートから外れすぎるところはあきらめたんだけど、それでも10軒以上の酒蔵に寄っていろいろと買うことができたのはよかったわ。本当はもっと寄りたいところもあったけどね。
そのうちの一軒はかなり有名なお酒を造っているところで、売ってもらえるかどうかはわからないと言われていたところだった。せっかくだからと寄ってみたけど、やっぱり売ってくれなかった。どうやら協会に入っている会員にしか売ってくれないということだった。
ダメ元でハスカルさんの名刺とそのときに書いてもらった紹介状を見せてみることにした。というのも、もらった名刺に今言った協会の肩書きが書いてあったのを思い出したからだ。
「協会には入っていませんが、この紹介状ではだめですか?」
そういって名刺を渡すと、ちょっと驚いていた。
「こ、これは副会長のハスカルさんの名刺?こっちはハスカルさんの紹介状?」
しばらく紹介状を読んだ後で、こっちをにらんで言ってきた。
「・・・もし、今からいうお酒のどれかを少しでいいので飲ませてくれるなら売ってもいい。」
言われたお酒のうち二つは持っていたのでそのうちの一つを出すとかなり驚いていた。さすがにそのときの顔を見ると、そのまま引っ込めるわけにもいかず、試飲をさせてあげるとかなり感激していた。
「さすがハスカルさんの紹介状を持っているだけあるな。今言ったお酒が本当に出てくるとは思わなかったぞ。半分冗談だったんだがな・・・。
会員でなくても会員からの紹介状があれば売ることにはしていたんだよ。試飲までさせてもらったからには秘蔵のお酒も含めて売れるものを出すから買いたいだけ買って行ってくれ。」
そう言ってかなりの数のお酒を出してくれたので買える分は全部買っていくことにした。かなりの金額になったけど、次の機会はないのでイチには目をつぶってもらった。もちろん私の小遣いからもお金を出したわよ。
だけどハスカルさんって、この界隈ではかなりの有名人みたいね。あのとき会えてよかったかもしれないわ。
~~~~~
ルイトウを出発して国境の町のアルトバまでは10日もかかってしまった。寄り道をしているので時間がかかってしまうのはしょうがない。
すでに夕方になっていたのでこの日はそのままこの町に泊まることにした。今からでもモクニク国に行くことはできるが、宿が取れなかったら困るので明日の朝一で国境を越えた方がいいだろう。夕食にはご飯と味噌汁に焼き魚という和食っぽいものを食べる。
翌朝国境の窓口に行くと、ここには貴族用の窓口があったのでこっちに進む。こういう時は使わないともったいない。
「えっと・・・サビオニア国からタイカン国に入られたんですね。」
「ええ、それで間違いありません。」
やっぱり聴かれてしまったよ。一定期間、身分証明証には入出国の記録が残っているので確認されてしまったようだ。たしか半年くらいだったと思うけど、正確な日時は記載されていないはずだ。
「いろいろあって、新しい連絡通路を使ってタイカン国にやってきたんです。新しい連絡通路のことはご存じですよね?」
未だにサビオニアとの出入国には制限がかかっているし、特にサビオニアからタイカンへの連絡通路はさらに制約が厳しいみたいなので、不審に思われるのは仕方がない。ただ、すでに連絡通路は正式に開通しており、タイカン国にやってきた人はゼロではないはずだ。
「はい。ただサビオニアから連絡通路を通ってきたという人は初めてでしたので・・・。」
一応上司へ確認に行ったみたいだけど、自分が爵位を持っていることからそれ以上深く追求することができなかったみたい。
「やっぱり聞かれたね。」
「そうね。かなり驚いていたみたい。だけど、タイカン国への入国も正式に手続きをしてもらっているから、不正なことは何もないのよね。」
「かなり遠回りしたから不信感は少なかったと思うけど、まっすぐにここに来ていたらまずかったかもしれないね。」
モクニク国側の国境の町オルクは特徴のあるところではないが、国境の町というだけあって人の出入りは多い。商品の流通も多いのでかなり発展しているんだけど、今後新しい連絡通路が正式に稼働し始めたらこの町の賑わいも落ちていくだろうな。今はタイカンからの唯一の正式な流通経路だからなあ。
カサス商会の人たちも新しい連絡通路の窓口になる町への出店を計画していると言っていた。町が大きくなるのは間違いないことだろうし、今後はサビオニアへの出店も考えていくらしい。
しばらくコーランさんたちも大変だろうな。店を出すとなるとそこの支店長とかも考えないといけないだろうし、出店のための流通経路も確立しなければならないだろうからね。国の方も経済の立て直しのためにある程度商会には融通をしてくれるだろうけど、その先陣をきる商会に入り込めるかどうかがネックだろう。
首都のタイカンでは結構お金がかかるのにコーランさんと通信機で話をすることになったからなあ。どこまで接触できるかわからないが、ハクさんやロンさんのことは一応話しておいたんだよね。まあ新しい国では重要なポストに就いているみたいだから簡単には会えないかもしれないけどね。
まだ公表されていない新しい連絡通路については自分から話すわけにもいかないので、ぼかしながらも少し伝えておいた。少しだけでも情報を与えておけばコーランさんならきっと気がつくだろう。
~コーランSide~
サビオニアの政変のことはかなり驚いた。もともと政情が良くないと言うことは聞いていたのだが、まさか革命が起きるまでとは思っていなかった。しかもジュンイチさんたちがその国に行っているタイミングで起こるとは・・・。無事だろうかとかなり心配したものだ。
国境が封鎖され、連絡が断片的にしか入らない状況だったが、突然タイカン国に二人がやってきたと聞いてかなり驚いた。モクニク国に戻って来たのならわかるが、なぜタイカン国に?
そう思っていたところ、その謎を解明することがあった。古代遺跡の連絡通路のことだ。どういう経緯かわからないが、おそらくその連絡通路を通ってタイカン国に行ったのだろう。あの二人のことだ、また何かに巻き込まれてしまったのかもしれない。
その後、首都のタイカンの商会に訪れたときに二人と話す機会を作ってもらった。どうやらサビオニアの革命の関係者と知り合ったおかげで連絡通路を優先的に使わせてもらえたらしい。そのときの名前を聞いて驚いた。おそらく同一人物と思われるその一人は新たな国の大臣に名前があげられている人だった。
今後サビオニアで商売を進めるにあたり、ジュンイチさんたちの名前を出していいとの許可をもらえたのはかなり助かった。そして次の言葉を聞いて驚いた。
「古代の連絡通路があったってことは、一つだけってことはないと思うんですよね?」
それだけの言葉だったが、その可能性は高いと考えていいだろう。そしてわざわざそんな事ことを言ってきたのはなにかそのような情報があったと考えてもいいのかもしれない。
すぐにモクニク国とタイカン国で情報を収集すると、不自然に投資が始まっている町の情報を得ることができた。疑ってみない限りはわからないが、間違いなく町の拡張を想定して調査を行っていた。
今はまだ小さな町だが、ムニアとタラトクという二つの町がその拠点となるのではないかと思われる。すぐに支店を出す方向で調整を進めることにした。
そしてサビオニアについても出店を進めていくことになった。他にも多くの商会がサビオニアとの交易を進めようと動いていた。もともとここ最近は交易量が下がっていてサビオニアの主要な輸出品であった鉱物などの価格が上がっていたこともある。
ジュンイチさんから聞いた伝を使いコンタクトをとったところ、ジュンイチさんからも確認が取れたようでハク様の右腕と言われるロン様と面談することができたと報告があった。正式な手続きをするために私もサビオニアに行くことになったが、多くの商会が手続きに難航している中で話を進められているのはかなりありがたい。
おそらく革命の前から話のついていた商会との競争とはなるし、かなりの先行投資をしなければならないが、十分に見返りが期待できる。現在ヤーマンの商会でサビオニアとの交易に参入できたというところは聞いていないので、距離があるとはいえ、かなり大きな商売になるだろう。
~~~~~
オルクの町を出発してから7日ほどで北にある副王都のマルニクへ到着した。ここもかなり大きな町で、町の中心には大きなお城もあった。湖畔にある王都モクニクとは異なり、小高い丘の上に作られた城で、町は丘の上から裾野に向かって広がっていた。
ここはもともとはランタクという別の国の首都だったところだったが、100年ほど前にモクニクに併合されたらしい。さらにさかのぼれば250年ほど前まではランタクという大きな国があり、そこで王位争いが勃発し東西の国に別れてしまったみたい。東に逃げた王位継承者が東の勢力をまとめて創った国がモクニク国のようだ。
そのあと50年ほどは戦争が続いたが、両方の国も疲弊してきて他の国に攻め込まれる危険性が出たことで和平が結ばれたようだ。そしてそれから100年ほど経ってからホクサイ大陸との交易で力を付けたモクニク国がランタク国に攻め込み、再度統一されたということらしい。
言語はもともと同じ国だったこともあり、なまり程度の差なので特に問題はないけど、やはり別れて数百年も経ったせいで文化は異なるようだ。ちなみに自分たちが習ったのは東側エリアの国の言葉なのでこの辺りでは若干言葉が異なっている。
貴族の権限はこちらの地域の方が多少緩い感じらしいけど、これは国の影響ではなく、おそらくタイカン国の影響なのだろう。
さすがに西側で一番大きな町だけあってかなりの規模で人通りも多い。店もいろいろとあって商品も充実しているのでいろいろと日用品などを買い出ししていく。
装備品やアクセサリーも見てみるが、今使っているものが結構いいものなので、値段を考えても買い換えたいというものはない。ここ最近は全く装備の更新をしていないんだよなあ。まあ補修が自分でできるようになったことも大きいけどね。
あとは魔獣の討伐を魔法中心にしたこともあるだろうな。魔法で遠距離から仕留めることも多いし、魔法で作った盾で防ぐことも多いので装備へのダメージがあまりないんだよね。
貴族エリアの役場に行っても特に変わったことはなかったんだけど、平民エリアの役場に行くと、最近貴族の取り締まりがきつくなっていると教えてくれた。どうやらサビオニアの政変があったことで、いろいろと問題のあった領主は領地を没収されたりとかもしているらしい。この国でも革命が起きないか心配しているのだろう。
数日ほど滞在してから出発し、ランタクとモクニクのもともとの国境だったところにある城塞都市タラクを経由して王都モクニクへ。デリアンさんに連絡を取るとすぐに返事があって、カルクさんと一緒に会うことになった。
宿を取ってから指定された店で待っていると二人がやってきた。仕事が終わったあとに直接やってきたらしいが、なんかちょっと前と雰囲気が違っているような感じがするのは気のせいか?
適当に食べ物や飲み物を注文してから二人と話をする。
「大丈夫でしたか?サビオニアに行くと言っていたのでかなり心配したんですよ。結局あの国に行かれたんですか?」
「ええ、サビオニアにいるときに革命が起きてしまったので結構大変でしたよ。現地で知り合った方々に助けてもらいながらなんとか戻ってこれました。」
「よかったですね。」
この間の調査結果のことを聞くと、2ヶ月ほど前に論文として報告したらしく、最近になって論文の内容が正式に認められたらしい。
「良かったですね。平民の論文が認められることはなかなかないと言っていましたけど、大丈夫でしたか?」
「ああ、もともとはそうだったんだけどね。サビオニアの革命の影響なのか、最近は平民への当たりもだいぶん良くなってきているんだ。タイミング良く論文を報告できて良かったよ。おかげで調査許可証の方も何とかなりそうなんだ。」
「平民にとってはいい方向に進みそうな感じですね。」
「ああ。それで論文については複写しておいたから渡しておくよ。明日は無理だけど、3日後なら休みが取れるから分からないところがあれば聞いてほしい。内容を見るのに2日あれば大丈夫か?」
「ええ、この量であれば大丈夫だと思います。それじゃあ、これはまた後でゆっくり見させてもらいますね。」
食事を楽しんだ後、二人と別れてから宿に戻る。
「なあ、なんかあの二人の距離が前と違う感じだったんだけど気のせいじゃないよな?」
二人が座っているときの距離も近かったし、前はお互いにデリアン、カルアと呼んでいたのに、今はデル、カルと呼び合っていたからなあ。
「たぶんつきあい始めたんじゃないかしら?二人の雰囲気とか行動を見てたらバレバレじゃない。分からなかったの?」
「そ、そうなんだ・・・。」
「今回の調査で一緒に居ることも多かったと思うし、いろいろとあったんじゃないかな?気になるなら今度あったときに聞いてみたら?たぶんごまかしたりはしないと思うわよ。」
翌日から二人のまとめた論文の確認を行った。二人の研究は古代文明の生活についてのことが主となっており、今回の調査結果と残っていた文章から当時の生活をいろいろと考察した内容になっていた。
今回調査した遺跡はもともと地下にあったところで、地上に出ていたのは天井部分が崩れ落ちた後の部分だったと報告されている。地下での生活の注意書きなどが多数あったみたいで、それらの内容を考えると地上での生活だったとは考えられないようだった。
生活の期間は数年に及んでいたみたいで、古代に起きた戦争から避難するためにそこに住んでいたのだろうという結論となっていた。
ただそこでの生活がどのように終わったかは分からなかったみたい。設備が使えなくなって町を出たのか、あそこが崩壊してから出たのか、それともその前に町を出たのかなどは残っていた記述からは判断できなかったらしい。
三日後に二人と会ったときに疑問に思ったことをいくつか質問すると、やはりまだ不明な箇所はいくつもあるらしく、今後も調査を進めていくつもりだと言っていた。
「そういえばお二人の呼び方がなんか変わっているようですけど、何かありました?」
「まあ、その、いろいろあってな。その・・・。」
「ちょっと、デルから言うって言ったんじゃないの!!」
「まあ・・・、その・・・、こいつと付き合っているんだ。一緒に話をしているうちにいろいろと世話を焼いてくれるようになってな。今は一緒に住んでいるんだよ。もう少し落ち着いたら結婚しようと考えているところなんだ。」
「そ、そうなんですね。おめでとうございます。カルアさん良かったですね。」
「あ、ありがとう。」
お祝いにちょっと高級なところで夕食をおごってあげるとかなり恐縮していた。カルアさんはやっと長年の思いが伝わって良かったね。デリアンさんはよく分かっていなかったみたいだけど。
翌日の朝に二人の店に行って挨拶してから町を出る。何か新しい発見があったらまた連絡をしてくれるようなのでお願いしておいた。
~デリアンSide~
遺跡の調査を行ったあと、時間を見つけてはカルアと二人で解析を進めた。遺跡の研究は進めなければならないが、仕事もやらないわけにはいかない。それで、少しでも研究する時間を作るためにできるだけ仕事を効率よくやって残業しないようにがんばった。
ここ数年カルアも遺跡調査とかには付き合ってくれていたが、ここまで真剣に研究に取り組んではいなかったので、学生時代に戻ったような感覚だった。
二人で過ごす時間が増えてくると、一緒に食事をしたり、料理を作ってもらったりすることも増えてきてカルアのことがちょっと気になりだした。今まで異性として気にはしていなかったんだけどなあ。正直こんなときにどうしていいのか全く分からない。
論文がだいたいの形になって、久しぶりに二人でお酒を飲んでいたんだが、途中から記憶があやふやになってきた。翌朝起きると、ベッドで眠っていて横にカルアが裸で眠っていた。
「え?えっ?」
ほとんど記憶には残っていなかったんだが、カルアとそういうことをやったことだけは分かった。たしかこれを素直に言ってはいけないんだよな・・・と思いながらもカルアのことが気になっていたのでそのまま付き合うことになった。
カルアの両親にも謝りに行ったんだが、付き合うことはすぐに認めてくれた。どうやら最近の働きぶりを評価してくれたようだ。
~カルアSide~
遺跡の調査を行ってからデリアンと一緒に過ごすことが増えてきた。調査や解析を進めることがほとんどだけど、一緒に食事に行ったり、料理を作ってあげたりと、なんか結婚したような錯覚もあった。
部屋で二人で飲んでいたんだけど、どうやら論文の先が見えてかなりうれしくて羽目を外しているようで、途中からなにか言動がおかしくなってきた。そう思っていると私に抱きついてきた。え?どういうこと?
そのままベッドに寝かせたんだけど、全く起きる気配がなかった。悩んだんだけど、折角だからと自分もベッドに入って一緒に寝ることにした。
翌朝目を覚ましたデリアンはかなりうろたえていたんだけど、事を終えてしまったと思ったのか、付き合ってほしいと言ってきた。本当に?話しを聞くと最近ちょっと気になっていたらしい。
すぐに両親に挨拶に行くというので連れて行くと、私の気持ちを知っていた両親はすぐに付き合う許可を出してくれた。どうやら最近の仕事ぶりも評価してくれていたらしい。
そのまま一緒に住むことになり、今度結婚をすることになっている。まさかいきなりこんなことになるとは思ってなかったわ。だけどうれしい・・・。私達のことを知っている友人達からは「やっとか・・・。」と言われたけどね。
~~~~
「このあとホクサイ大陸に戻るつもりだけど、折角だから装備の更新をしたいんだよね。それでハクセンに行ってみようかと思っているんだけどそれでいいかな?」
「ハクセンって言うことはカルマさんのところね?オリハルコンとかを手に入れたからね。どうせだったら腕の分かっているところが一番いいわね。」
「それで造ってもらうのに時間がかかるだろうから、また鍛冶の勉強もさせてもらおうかと思ってるよ。一緒にやるか?」
「もちろん!今度はミスリルくらいまで扱えるようになりたいわね。」
王都を出発してからまっすぐ北上して港町アラクへとやってきた。結局このナンホウ大陸に1年以上いたんだなあ。まさか政変にまで巻き込まれることになるとは思ってもみなかったよ。
町に入ってまずは宿を押さえてから港へと向かう。ハクセンに行くにはまずはタイガに行かないといけないけど、タイガ行きは以前ヤーマン行きの船に乗ったジャルガの町に行く船かその西側にあるライガの町に行く船の二つがある。距離はどちらも同じなのでせっかくなら行ったことのないライガにするか?
ただ問題なのはこっちだとモクニク国の会社のマンザックの船しかないんだよね。ジャルガ行きだと前にヤーマンに戻るときに乗ったときと同じ会社になる。
出航の予定を見てみると、ライガ行きは4日後、ジャルガ行きだと20日後だった。さすがに16日の差は大きすぎるな・・・。
「折角なら行ったことのなおところに行こうとは思っていたけど、これはライガ行きしか選択肢はないよね?会社がちょっと気にはなるけど・・・。」
「16日の差は大きいわね。変な貴族の粛正は行われているみたいだから、そうそう変な貴族には会わないと思うわよ。」
「まあね。それじゃあこっちにしようか。比較のためにもいろいろなところに乗っても面白いかもしれないしね。」
貴族用と平民用で受付は別れているので、貴族用の受付へと向かう。対応はいつものことなのでもう慣れたよ。ただ出航まで日数もないので部屋が空いていない可能性もあるんだよなあ。受付でペンダントを出してから部屋を確認すると、思ったよりも部屋が空いていた。
どうやらサビオニアの政変やモクニクでの貴族の粛正がここにも影響を及ぼしているみたいで貴族の旅行客が減っているみたい。部屋は十分に選べるくらいなので、逆に経営が大丈夫か心配になる。
「どうする?折角だから贅沢な船旅をしてみる?」
一番高い部屋はさすがにとれないけど、次のランクの部屋は空いている。値段は一部屋80万ドールと結構な額だ。
「お金は大丈夫なの?」
「ここ最近は装備の更新とかもなかったから、今は2000万ドール以上はあるよ。今度装備を更新するとは言っても材料はあるからそこまでかかるとは思えないしね。それに収納バッグを売ることにしたら1億ドールくらいになるかもしれない。」
「それじゃあ折角だからこの部屋にしよっか?」
自分たちが部屋の予約をすると、受付の女性はちょっと驚いた顔でお礼を言ってきた。普通こんなところでお礼を言うものなのか?
船の予約を済ませてから役場に行くと、前に会ったカステルとイクサのメンバーがやってきていた。事前に会えないか連絡を取っていたので待ってくれていたようだ。あのときいたカレニアのメンバーは他の町に行っているので今回は来られなかったらしい。
「みなさん、お久しぶりです。」
「元気だったか?サビオニアの方にも行くと言っていたから心配していたんだ。大丈夫だったのか?」
「ええ、行くには行ったんですが、特に革命の戦闘にも巻き込まれずにすみましたよ。いろいろとあってタイカン国にも行ってきたところなんです。そろそろホクサイ大陸に戻ろうかと思ってこっちに戻ってきたところなんですよ。」
「そうなのか。俺たちもやっと全員が良階位になったからホクサイ大陸に行こうと思っていたところだぞ。一緒の船か?」
イクサのリーダのイライザさんが言ってきた。
「自分たちはハクセンに行って装備を新調しようと思っているんですよ。お世話になった鍛冶屋もあるのでそこでやってもらおうかと思っているんです。」
「そうか。って事はタイガ行きだな。俺たちはヤーマンに行ってみようと思っているんだ。いろいろ聴いた感じでは一番平民には過ごしやすい国っぽいからな。まあ、俺たちもどのくらい居るか分からないが、会えそうだったら向こうで会おう。」
一通りの挨拶がすんだところで予約しておいた店に移動する。人数が多いので部屋を確保してくれていたようだ。狩りの話や行った場所の話などをしながら食事をする。サビオニアの状況はみんな気になっているみたいで簡単な状況だけは話しておいた。
「そろそろ収納バッグを買いたいと思っているんだが、ヤーマンだったら手に入れられるかなあ?」
イクサのパーティーはまだ収納バッグがなくて、そろそろ購入を考えているらしい。パーティーのサラさんが収納魔法を使えるようだけど、まだ1キリルしか入れられないみたい。
「収納バッグですか?以前ヤーマンで行ったオークションでは確か5キリルの物が500万ドールくらいで落札されていましたね。」
「やっぱりそのくらいするのかぁ。でもそれだけ出せば手に入るって事だよな。こっちでは金はあっても、貴族が独占するせいでそもそも売りに出ないからな。ヤーマンに行ったらオークションとかで何とか手に入れたいなあ。」
「どのくらいのものを探しているんですか?」
「そりゃ大きい方がいいんだが、値段を考えると3~5キリルくらいが限度だと思ってるんだよ。5キリルのやつは安いときでも400万ドールくらいだからな。3キリルのやつだったら安いときで200万ドールくらいであるみたいだからオークションでも300万ドールで手に入ればと思ってるんだ。」
「俺たちはヤーマンに行ったときに運良くオークションで手に入れることができたからな。6キリルの収納バッグが500万ドールで手に入ったからラッキーだったぜ。あとテラスも一応収納魔法が使えるからな。」
自分たちが持っている収納バッグは全部で6個ある。それぞれ30キリル、26キリル、5キリルが2個、2キリルが2個だ。それに収納魔法でそれぞれ100キリルずつ使えるから正直小さな収納バッグはなくてもいいんだよなあ・・・。オークションに出そうと思っていたくらいだし。
「あの・・・もし収納バッグを安く譲るとしたら購入されますか?」
「どういうことだ?」
「あまりおおっぴらにしないでほしいのですが、実は古代遺跡の調査で収納バッグを手に入れることができたんです。ヤーマンに戻ったらオークションに出そうと思っていたんですが、もしいるようだったら安く譲ってもいいですよ。」
「本当か!?」
「それで2キリルのバッグと5キリルのバッグがありますけど、どうされますか?」
持っていたバッグから収納バッグを出すとみんな驚いていた。
「ちょ、ちょっとまってくれ・・・。」
しばらく二つのパーティーで話し合っているようだ。イクサのパーティーだけでなく、カステルのパーティーもほしいと言い出したみたい。
「ちなみにいくらだったら譲ってくれるんだ?」
「えっと、2キリルのものは120万ドール、5キリルの物は400万ドールでどうでしょうか?オークションだと安くてもこのくらいはすると思うんですけど。」
「いや、十分に安いよ。そもそも出物がないからな。」
両方のパーティーでいろいろと言い合って話がまとまらない。やはり2キリルだと少ないという状況らしい。
「あの、2キリルの物だったら二つありますよ。」
「「まじか!!!」」
そのあとやっと話がまとまったみたいで、カラストパーティーが5キリル、イクサパーティーが2キリルを二つ購入することにしたようだ。
「だけどいいのか?」
「ええ、実は自分たちはもう少し大きなものを長期で借りられているので大丈夫なんです。自分たち二人とも収納魔法も使えますしね。最終的には今使っている物は売ってしまいたいと思っているところなんです。」
「ありがとうな。予算よりもかなり安く手に入ったから十分だ。今日の夕飯分くらいはおごってやるからな。」
実際に持っているものはさすがに言えなかったけど、いい人達に譲れて良かったな。オークションに出せばもっと値段が上がったかもしれないけど、まあこのくらいはいいだろう。一緒にオークションに出したら小さい方の値段はおそらく上がりにくいと思うからね。
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ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
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※2019年10月、完結しました。
※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。
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