【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

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102. 異世界2233日目 3年ぶりのサクラの町と転移魔法の検証

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102. 異世界2233日目 3年ぶりのサクラの町と転移魔法の検証
 まずはシルバーフローに行って部屋を確保する。3年経っているけど、受付には知っている顔もあって自分たちのことを覚えていた。少し世間話をして予約を済ませる。「冒険者の方達が長い間いらっしゃらないことは結構ありますよ。」とか言っていたので3年ぐらい来ないのは普通のようだ。

 それから役場に行って登録の手続きをしたけど、アルモニアのクリアレントを出発してから全く滞在地の申請していなかったのでちょっと怒られてしまった。まあ国が変わったらすぐに申請するのがマナーだったからね。一気に走ってきたせいで完全に忘れていたよ。

「実績を見るとかなり腕を上げたようですね。優階位の魔獣もかなり狩られているようですし、実績ポイントがたまったら優階位に挑戦してみますか?」

「実績ポイントはまだまだでしょ?良階位までは結構いいペースで実績ポイントを稼げたけど、最近はなかなかたまらないですからねえ。」

「それでも十分に速いペースですよ。本格的に魔獣狩りを中心に活動すれば結構早くたまるんじゃないですか?」

「まあそれはそうですけど、いろいろとやってみたいことも多いですからね。」

 しばらく話をした後、資料を少し見てから役場を後にする。さすがに変わった依頼というものはない。


 続いていったのはカサス商会だ。受付に行くとすぐに部屋に通してくれてコーランさんとカルニアさんがやってきた。相変わらず元気そうだ。

「お久しぶりです。直接会うのは3年ぶりくらいですかね?」

「そうですね。途中、通信で会話はしましたけどね。」

「ええ、その際はありがとうございました。おかげで他の商会に先んじて動くことが出来ましたし、紹介してもらった方達にも会うことが出来ましたよ。
 おかげでサビオニアからヤーマンへの物流関連に食い込むことが出来ました。サビオニアの鉱石関係はかなり品薄になっていましたからね。一部とはいえ関連商会として入れただけでもかなり大きなことです。
 それにモクニク国とタイカン国での物流にもかなり食い込めましたからね。ホクサイ大陸の商会でここまで入り込めたのはうちくらいなものです。」

「さすがですね。」

「いえいえ、ジュンイチさんの助言があってこその成果です。あれで動けないようなら商人としては失格ですよ。」

 ナンホウ大陸の販路が広がったこともあり、重量軽減の魔道具の需要がまた増えてきていたので定期的に納めていたけど、やっと販売数量も落ち着いてきているらしい。ハクセンとアルモニアにいるときは結構受注を受けたからなあ。結婚式など他の商売についてもいろいろと情報を交換してからカサス商会を後にする。


 少し町の中を見て回り、夕方にクリスさんの家に向かう。事前に到着日は連絡していたのですでにクリスさんは帰宅していた。

「「お久しぶりです!!」」

「「「「「いらっしゃい!!」」」」」

 全員が出迎えてくれた中に小さな子供が二人こっちを見ていた。

「「い、いらっしゃいませ・・・。」」

「もしかしてスレインさんとイントさんのお子さんですか?」

「そうだ。スレインの息子のスリクとイントの娘のイルランだ。ちょうど眠りについたのでベッドに寝かせているが、あと3人いるぞ。アルドの息子のアルリフとデルタの息子と娘のデリフとデルニアだ。デルタのところは双子だったんだよ。」

「そ、それはおめでとうございます。」

「スリクとイルランはジュンイチ達が旅立った後、4月頃に生まれたんだが、アルリフとデリフとデルニアは昨年末に生まれたんだ。驚かそうと思って内緒にしていたんだけどな。」

 クリスさんがちょっと照れながら説明してくれた。

「そうだったんですね。」

 上の二人のお土産は買ってきたけど、下の子供達のもなにか考えないといけないなあ。とりあえず買ってきたお土産を渡してから、いろいろと近況を話しながら夕食をいただく。今回も夕食はアルドさんが中心になって作ったようだ。


 子供達の世話は人を雇っているのでそこまで手間はかかっていないようだ。ただこっちでは布おむつみたいで大変そう。まあ浄化魔法があるからまだいいみたいだけどね
 今はまた冒険者としての活動を再開させたいと思っていてリハビリ中らしいけど、再開してもそこまで本格的には行わないようだ。事業の方がかなり大変になってきているようだしね。

 結婚式の事業でカサス商会と提携していろいろとやっているので支店もかなり増えているようだ。忙しいけど、かなりの利益も上がっているみたい。

 今回のナンホウ大陸での話をしたけど、すでにスレインさん達の実家の話は伝わっていたようだ。現地に行ったときの話をするとため息をついていた。

「結局、私たちがいたときから何も変わっていなかったのね・・・。」

 事前に聞いていたこともあり、それほど悲しい感じではないようだが、やはり血のつながった家族なので心に引っかかるものがあるのだろう。

 折角なので、サビオニアで仕入れてきた食材やお酒を渡すとかなり喜ばれたが、特に一人はお酒に感激していた。

「ずっと飲みたいと思っていたものがまさか手に入るなんてーー!!」

 どうやら実家にあったという記憶だけで、ずっと気になっていたものだったみたい。折角なので何本かはプレゼントとして渡しておいた。
 子供が出来てから断酒していたらしく、最近になってやっと解禁したようだ。実際は乳母のような人がいるので生まれた後は大丈夫だったんだけど、せめて半年はとがんばっていたらしい。
 ちなみにスレインさんとイントさんは手伝ってもらいながらも卒乳までは断酒していたらしく、アルドさんもそのつもりらしい。デルタさんは・・・確かに無理だね。



 翌日もクリスさんのところに行って手合わせをしてもらう。がんばってきた甲斐もあったのと、スレインさん達がまだリハビリ中だったせいか、重量軽減魔法を使わなくても互角以上の戦いが出来た。

「驚いたな。いくらリハビリ中だとは言え、ついていくのがやっとだ。全盛期だったとしても、もうかなわなかったかもしれないな。」

 クリスさんは自分たちの力にかなり驚きながら言っていた。

「ハクセンの騎士隊とアルモニアの魔術団でかなり鍛えられましたからね。」

「それぞれの国で訓練していたとは聞いていたが、まさかそんなところで訓練してきたのか?
 よく入隊できたな・・・って、二人の人脈を考えると可能か。それぞれの国のかなりの重鎮に伝があるんだったな。
 ヤーマンでも入隊してみたいと思っている人間はかなりいるが、実際に体験入団できる人間はほとんどいないからな。特にアルモニアの魔術団は他国からの入団はほとんど聞いたことがないぞ。」

「そうみたいですね。アルモニアではかなり驚かれましたから。魔法については自己流でやっていたのでかなり勉強になりましたよ。」

 夕べは話せなかった訓練のことなどいろいろと話をした。

「そういえば、このあとはどうするつもりなんだ?また他の大陸に行ったりするのか?」

「しばらくはこの国にいるつもりですが、しばらくしたらまたどこかに行こうかと思っています。」

「相変わらず忙しいな。どこに行くのかは決めているのか?」

「まず直近では遺跡調査のためにルイサレム方面に行くことと、ジェンの親友の結婚式でオカニウムに行くことですね。
 そのあとについてはまだ情報をいろいろと集めているところですが、折角なら行ったことがないところに行きたいと思っているのでトウセイ大陸が候補かと思っています。」

 実はジェンの親友のアキラさんとマラルさんが結婚式を挙げると連絡が入っていた。是非二人で参加してほしいと言われたので行くことにしている。

「そうなのか。まあ他の国の情報だったらこっちでも分かる範囲で調べてみるよ。また戻ったときに話をしよう。」

 結局この日は一日クリスさんの家で訓練したり、話をしたりして宿に戻ったのはかなり遅くなってからだった。



 さらに翌日にはチューリッヒ商会に行って車の買い換えを行った。納期に時間がかかることが分かっていたので、通信で概要を伝えて先行発注をかけていた。普通は出来ないことらしいけど、今までのこともあり受けてくれたので助かった。
 前と同じ型で良かったんだけど、後継車がでたということでそちらに変更した。乗り心地がさらに改善されたようで、車の振動もかなり抑えられているという話だった。

 店に行くとすぐにクーロンさんがやってきて購入した車を見せてくれた。今までよりも空気抵抗の少ない流線型で、地球の車に近くなっている。模型を使った実験で風の流れなどを見せたのでそれを採用した形なのだろう。
 いろいろとアイデアを出してくれたお礼として新型にもかかわらず、今回もかなり値引きしてくれた。ただ新しい車を宣伝してくれとは頼まれた。今回の車は先行で製作したものらしく、本格的な販売はもう少し後からみたいだしね。

 クーロンさんは今ではかなり売り上げを上げているらしく、車のメーカーから表彰されることも多いみたい。自分たちがきっかけとなったと言って、未だにかなりひいきにしてくれているのはありがたいことだ。「二人からの要望は最優先で行いますよ。」とか言われているしね。

 受け取った後、予約しておいたガレージを借りてさっそく改造を施すが、大分慣れてきたことと錬金のレベルが上がったこともありそこまで時間がかからず改造が完了する。

 町を走るとやはり目立つみたいでかなり注目を浴びるけど、宣伝も兼ねているので仕方がないだろう。クリスさんやコーランさん達にも車を見せておいた。そのほかにも役場の訓練場や道場にも顔を出していろいろと情報交換を行った。


~クリストフ王爵Side~
 3年ぶりにジュンイチ達が戻ってきた。若干たくましさは加わったが、出会ったときとほとんど変わらない姿でちょっと驚いた。スレイン達も出会った頃からほとんど変わらないが、同じような血を引いているのかもしれないな。

 久しぶりだったが、前と同じように接してくれるのでほっとする。スレイン達もかなりうれしそうにしていた。こういう風に気の置けない友人がいるというのは本当にいいものだな。
 子供達は最初はかなり遠慮していたが、お土産をもらってからかなり打ち解けていた。最後はなかなか離れないくらいになっていたからな。二人とも子供のあやし方がうまいな。

 サビオニアのことをいろいろと聞いてみたが、革命が起こるというのもうなずけるような内容だった。そこまでひどかったとは・・・。チカ家が処罰されたことは聞いていたが話しに聞いていた以上にひどくなっていたのだな。
 今回の褒章のことを聞くと、やはり思っていたとおり連絡通路の発見に手を貸していたようだ。どうやら遺跡の調査の途中で連絡通路の記載を見つけたらしい。連絡通路の経済効果を考えると、褒章の内容も理解できるものだった。

 かなりたくましくなった印象を受けたが、手合わせしてみるとそれは間違いなかった。もともとかなりの実力は持っていたが、今回の遠征で格段にレベルアップしていたのだ。まあハクセンの騎士隊とアルモニアの魔法団で半年ずつ訓練すれば実力も上がるというものだろう。
 ジュンイチ達の人脈を考えると体験入隊の話もわかるが、最初にこの話を聞いたときは「ほんとか?」と思ったものだ。もしこの話を知ったらうらやましがるもの達がどのくらいいる事やら・・・。


~~~~~

 サクラで数日過ごした後、町を出てから一気にルイサレムに向かう。車の性能も上がっているのでペースも速いが、それ以前に振動が少なくて快適だ。
 途中の宿泊は拠点のみだが、食べ物とかも十分に仕入れてきたので不便は全くない。今は荷物の容量の心配はほぼないと考えていいくらいだからね。サクラでもかなりいろいろと仕入れてきたからなあ。

 拠点での宿泊がさらに便利になった一つにいろいろと試作して電子レンジのようなものを作れたことが大きい。水分子を振動させるような魔符核をいくつか組み込んで試行錯誤することでなんとかそれっぽいものが完成した。おそらく最初の頃の電子レンジの性能しかないかもしれないけど、それだけでもかなり大きい。
 このおかげで準備が大分楽になったし、食べ物も簡単に温められるようになったからね。お弁当関係も温められるので、前以上にお弁当関係を買い込んでいる。おかげで収納の分類を細分化することになったよ。

 いろいろと組み込んだこともあり、サイズがかなり大きくなったので普通だと持ち運びも厳しいものだ。収納魔法がなければとてもではないが持ち運べない。
 さすがにこの理論はこの世界には広められないので完全に自分たち用に使っている。コーランさんに見つかったらとんでもないことになってしまいそうだ。重量軽減の魔符核と同じようにこの魔符核もたぶん自分たちにしか作れないよな。



 ルイサレムに着いてから、まずは港に顔を出していろいろと魚を仕入れていく。以前お世話になったガバナンさんも元気にしており、お昼もごちそうになった。魚の処理は手伝わされたけどね。
 他の知り合いにも声をかけてくれて、かなりの量を買い取る約束を済ませた。明日にはかなりの量を手に入れることが出来るので、これでしばらく魚に困ることはなくなるだろう。

 ここでふと重要なことに気がついた。

「なあ、どうやって島に渡ろうか?」

「え?それは船で・・・って、そう簡単にはいかないわね。」

「そうなんだよ。ガバナンさんに頼めば連れて行ってくれるだろうけど、なんでまた行くんだと言われそうだもんなあ。出来ればあの遺跡を発見されるリスクは避けたいよね。」

「確かにそうね。またあの島に行くとしたら何かあると思われるわね。飛んで行くのはちょっと距離があるし、近くの島まで運んでもらってから飛んで行く?」

「どっちにしろ理由がないからちょっと厳しいよ。」

 誰かに頼むのが難しいなら自分で船を運転していくか?船は漁船レベルであれば簡単な講習さえ受ければ操船してもいいらしいので買ってみるのも手かな?普段は収納バッグに入れておけば問題ないし、持ち運べればどこの海でも使えるのが便利だ。

「運転はすぐに覚えられるみたいだから船を買ってしまうのも一つかもしれない。値段がどのくらいか分からないけど、幸い結構な資金があるからね。」

「それもありかもしれないわね。それでどこで買うの?」

「どこだろう?」


 とりあえずよく分からないのでカサス商会に行ってみたんだけど、船関係には手を出していないみたい。一応そういう商会を紹介することは出来るみたいなのでもしもの時はお願いすることにした。ただ基本的に注文発注らしいのですぐに買えるわけではなさそうだ。

「ここに長く住んでいるショウバンさんならなんとかなるかもしれないからそっちに聞いてみようか?もしだめならカサス商会か、あとはガバナンさんたち漁師経由で中古を探してもらうしかないよ。」

 カルミーラ商店に行き、ショウバンさんに取り次いでもらう。少し待つことになったが会ってくれるようだ。

「お久しぶりです。以前はいろいろとお世話になりました。」

「久しいな。クリストフ王爵の結婚式の時以来か?あのときは結婚式に参加していて驚いたよ。まさか王爵と知り合いだったとはな。」

「クリストフ王爵とは冒険者だった奥さん達の縁で知り合ったんですよ。」

「そうだったのか。」

 しばらく挨拶をした後、今回の目的について話をする。

「そこそこの大きさの船が手に入らないかと思っています。外洋に出るわけではないので漁船レベルのものでもかまわないのですが、相場も店もよく分からないので相談に乗ってもらえないかと思いまして。」

「船か・・・」

「新品だとできあがるまで時間がかかるみたいなので、中古でかまわないので売ってくれそうな知り合いなど紹介してもらえると助かります。金額は相談できるくらいは準備しています。」

 しばらく考えた後、話し始めた。

「うーむ、中古でもいいのなら私がもっている船を安く譲ってやっても良いが・・・どうかな?」

 ショウバンさんの持っている船ならそんなに程度も悪くないだろう。

「本当ですか!?もし譲ってくれるのならお願いしたいです。」

「わかった。いくつかあるので一度実物を見てから判断すればいい。」

 以前は海によく出ていたが、最近は出る機会もめっきり減ってしまったようだ。全部で3艘所有していて、どれでもいいのでほしいものがあれば譲ってくれると言ってもらえた。


 船の管理担当をしているラクニアさんという人が案内してくれるみたいで、一緒に港の方へと移動する。ほしい船があれば、値段についても彼に相談すればいいみたい。

 船は港の近くにある倉庫にあったんだけど、思ったよりも大きなもので、一番小さなものでも10キヤルドと漁船くらいの大きさがあった。その上は15キヤルド、20キヤルドという大きさだ。
 どれも操船は一人でも出来るような簡単なもので、キッチンや寝室など一通りの生活が出来るようになっている。もちろん大きなものほど設備が充実している。中古とは言っているが、整備が行き届いているので古さを感じない。

「このくらいかな?」

「そうねえ。あまり大きくても困るし、一番大きなものはないわね。」

 ジェンも元の世界でクルーザーに乗ったことがあるみたいだけど、よく使っていたのは40~60フィート(12~18キヤルド)のサイズらしい。まあ最低限の移動が出来れば十分だし、一番小さいサイズでも十分かな?

「ラクニアさん。一番小さいのと真ん中のものはどのくらいの価格になるのでしょうか?」

「一番小さなものはもともとの価格は1000万ドールほどでした。改造費などはかかっていますが、すでに10年ほど経っているので300万ドールで良いそうです。
 真ん中のサイズはもともとの価格は2000万ドールほどでしたが、すでに15年ほど経っていますので450万ドールですね。
 おそらく普通であれば中古のものでもこの値段では手に入らないかと思いますし、中の設備もかなり贅沢なものが付いていますよ。主人からも本体価格のみの相場でかまわないといわれていますので、どちらを選んでもかなりお得ですよ。」

 正直なところ船の値段というのはよく分からないんだよなあ。カサス商会でざっくり聞いたところ、ショウバンさんが言っているように安いものでも1000万ドールはするみたいだし、中古でも500万ドールはするみたいだからね。しかも中の装備は本当に贅沢だしね。


 店に戻る途中でジェンとどれにするかの話をする。一番大きなサイズはないが、残りの二つでかなり悩んでいる。金額的には十分足りるけど、収納には困ることもないし、やっぱり真ん中のものかな?
 店に戻ってからショウバンさんと話をする。

「それでは真ん中のサイズのものを購入したいと思います。」

「それを選んだのか。私が一番よく使っていた船だな。中の設備も一番力を入れているものなのでかなりお買い得だと思うよ。思い入れはあるが、このまま使われないよりもいろいろと使ってもらった方がいいだろう。」

 支払いを済ませてから船の取り扱いについて話をしたところ、収納できることを伝えると驚いていた。ラクニアさんに再び案内してもらい、船の所有権を移行する。
 ちなみにこういうものは収納魔法や収納バッグに簡単に入れられないように制約をかけることができるようになっている。なので制約をかけている場合はちゃんと設定しなおさないと収納が出来ないことになる。そうでなければ大きな収納バッグを手に入れれば簡単に盗まれてしまうからね。



 翌朝ガバナンさん達のところに行って大量の魚を仕入れる。鮮度もいいし、なかなかいいものを買うことが出来た。本当は個人にここまでの量を売ってくれないらしいけど、特別だと言って売ってくれたんだけど、おそらく差し入れのお酒が効いたんだろう。

 その後、役場で船の操縦についての講習を受ける。講習は2時間で基本的なルールや船の取り扱いなどが説明されるだけだ。免状は身分証明証に登録するまでのものではなく、講習修了証が渡されるだけだった。

 次元魔法から船を取り出すときは慎重にしないと壊れてしまうので、収納する場合は台車に乗せた状態で収納し、それから陸上に取り出すことが普通らしい。ただそれだと面倒なのでなんとかならないかといろいろと試してみることにした。

 飛翔魔法で海面近くに移動し、ゴムボートを使って試してみた。最初は海面に出したとたんにはねてしまったりとか、水の中に出てきたりと結構苦労したが、何度かやっていくうちにうまく出せるようになった。
 それから実際の船で試してみたけど、やっぱりなかなか難しい。海面より上に出すとまずいので海面に少し潜るくらいに出すと、海水がよけていい感じに浮かんでくれるんだけど、どのくらいの高さが一番いいのかを試さないとだめだった。収納は結構楽だったので何度か試してちょうどいい感覚をつかむことが出来た。



 翌日の朝早くに港近くの海上に移動してから船を出して出発する。運転はハンドルとアクセルのようなものだけなのでかなり簡単だ。問題は船が接近したときに注意するくらいだからね。
 魔獣除けは自分が使っている能力の高いものに交換したのでおそらくこの近海では魔獣に襲われることはないだろう。

 地図を頼りに船を走らせて目的の島に到着する。海底の状況が分からないので島からかなり離れたところで飛翔魔法で浮かんでから船を収納し、崖の下にある隠し扉のあるところまで移動する。ボタンを押すと扉が開いて中に入ることが出来た。


 ここには数年ぶりに来るんだけど、特に変わった様子はないので問題はなさそうだ。自動扉も開いたので、動力も切れていないだろう。
 たださすがに心配なので、索敵をしながら一通り見て回って問題ないことを確認してやっと落ち着くことができた。空調もちゃんとしているので、魔力の供給がなくならない限りは維持されるのだろう。

 見回りにも時間がかかってしまったので、この日は前作った休憩スペースで休むことにした。さすがにほこりをかぶっていたけど、浄化魔法を使えば一瞬で綺麗になるのは助かる。もう掃除機を使っての掃除なんて出来ないよな。



 翌日からさっそく鍵のかかっている扉を開けてみることにした。扉は居住スペースの横にあるコントロールルームと思われるところにつながっている扉だ。もしかしたらここを開ければ他の扉の鍵があるかもしれないからね。

 個人が持つ魔力を変化させるにはまずは身体にためた魔素を相手の身体に流し込んで同調させることで個人の持つ魔力を変えていく感じだ。ただ同調させるのはかなり難しく、魔素操作のレベルが高くないと全く出来ない。あとはもともとの相性もあるみたいだけど、運がいいことに自分とジェンは相性は悪くなかったようだ。

 この魔力の同調で一番の問題は魔素を流し込まれた方はかなり身体に負担がかかると言うことだ。魔素を流し込まれると、身体が同調するというか、一体化するというか、とにかく変な感覚となってしまい、ぶっちゃけた話、性的興奮状態になってしまうのだ。
 ジョニーファン様は同調できるレベルの人間がいなかったのでやったことがなかったようで、聞いた話だがと前置きをされて「相性が良ければ良いほど魔素の調整幅が大きくなるが、その分その負担が大きくなる」と言うことだった。

 ここに来るまでに何度か試してみたけど、すぐに我慢できなくなってしまう。このため短時間で交代しながら魔力の同調を行っていくことで20分は我慢できるようになった。我慢と言ってもそのあと興奮を収めるために身体を重ねないと収まらなかったけどね。

 今回どのくらいまでやらないといけないか分からないけど、がんばってみるしかないだろう。

「イチ、行くよ。」

「うん。」

 魔力確認のプレートに手を当てて魔力を通し始めたところでジェンから魔素を流し込こまれる。

「くっ!!」

 注ぎ込む魔素を受けて自分の魔素との割合を少しずつ変えて調整して変化させていく。エラーメッセージが出続けるが、魔素の認識についてはエラーでインターバルがあるわけではないので何度も試すことが出来る。

「く、く、はぁ・・・あ・・・っ」

 さすがに我慢できなくなるので数分おきに交代して魔力を調整していく。

「んっ、だ、だめ・・・。くっ・・・」

 ある程度したところで二人とも興奮が抑えられなくなり行為に及んでしまう。たしかに満足感は得られるんだけど、かなり疲れるので連続してすることは出来ない。
 さすがにずっとやっていると身体が持たないので、途中で狩りに行ったりして気分転換をするけど、一日に何度も繰り返す行為で肉体的にも精神的にもかなり疲れていった。治癒魔法とか使ってもやはり限界があるし、感情的には満足できてもうまくいかないことで精神的に参ってしまう感じだ。

 あと、魔素の調整がかなり微妙なのでダイヤルの番号を1つずつ変えていく感じには出来ないのも問題だ。このためここまでやったから続きということが出来ない。それに無制限に魔力を調整できるわけではないので、自分たちが調整できる範囲になければ結局は開かないという不安もある。

 いろいろと抑えられない感情と戦いながら数日が経過していた。気持ちだけは高ぶっているんだけど、やはり身体への負担はどうしようもない。

「ピッ!ガーーーーー!」

 もうそろそろ限界だなと思っていた4日目、ついに反応があって扉が開いた。

「あ、開いた?」

「うん、よかった・・・。」

「閉まらないようにさっさとドアを固定しておこう。」

 これでまた閉まってしまったらしゃれにならないので大きな岩をドアのところにおいて閉まらないようにしておく。

「感覚を忘れないうちに他のドアも試してみよう。大丈夫か?」

「ええ。イチの方こそ大丈夫?」

「まあ大丈夫と言えば大丈夫だけど、今は開けることを優先しよう。」

 他の扉も開けようと試してみたが、残念ながら開かなかった。登録されている魔力が違うのか、それとも同じようにやっているけど実際には微妙に違うのかもしれない。
 一つだけでも開けることが出来たのでいったん中の調査をしないといけないんだけど、開かないプレッシャーから解放されたせいで身体の火照りを治めるのが先だった。しかしずっとこんな事をやっていたら魔力同調しないと出来ないようになってしまいそうだ。

 一息というか、かなり時間が経ってから調査を開始する。索敵で魔獣はいないことは確認していたけど、何か罠のようなものがあっても怖いので慎重に行ったほうがいいだろう。

 通路を進むと、最初から開いていた扉のところのように大きなホールがあった。キッチンもあるし、大きなテーブルなどもあるので食堂なんだろうな。併設するスペースにはお風呂らしきところもあった。
 食堂のテーブルはまだ使えそうな感じだけど、やっぱり劣化が進んでいる。ただ魔道具や金属で作られたところは大丈夫なのでキッチンやお風呂は使えそうだ。こっちの方が向こうの部屋よりも高級そうなので上のクラスの人間が使っていたのだろうか?

 その奥は同じように通路になっているんだけど、となりのドアの通路よりも広く、部屋もかなり広く作られていた。部屋と言うよりはコントロールルームという感じで機械が配置されている。
 置いている機械は劣化が抑えられているようなんだけど、残念ながらすでに動かなくなっていた。他で見たものよりは動きそうな感じはあるんだけどね。部屋の壁には投影機のようなものもあるので大きなモニターのような感じで使われていたのかもしれないね。
 他の部屋も似たような感じで、何かの研究がされていたような印象だ。紙のようなものがあったみたいだが、すでに劣化して読めなくなっていた。いくつか金属板に書かれているのであとで調べてみよう。

 一番奥にモニタールームみたいなものがあったんだけど、ここからさらに奥にある部屋がのぞけるようになっていた。窓になっているところは強化ガラスのようなものなのかな?部屋の中には魔獣石がある程度たまっている。もしかしてこれが動力の供給場所なのか?
 中には魔獣が一匹いるが、すでに死にかけている。魔獣が死んだ後、魔獣石にして魔素を回収しているのだろうか?魔獣の死骸はないので、死んだ後は分解されるようになっているのかもしれない。これが動いているからこそ、ここの遺跡はまだ稼働しているのだろうな。

 ただこんな方法で魔獣石を回収していたということは、古代文明でも魔獣石を作る技術はなかったって事なんだろう。でも、こんなところでは魔獣はあまり発生しないと思うんだけど・・・と部屋の中をよく見てみると、天井に無数の穴が開いていた。
 もしかして地上から魔素を集めているのか?そういえば島のあちこちに穴が開いていたけど、ここにつながっているのかもしれないね。ということは魔素を集める方法はあるのかな?
 部屋に入る通路はないんだけど、メンテナンスはどうやっていたんだろうな?魔獣が出るので簡単な入口にはしないと思うけど、下手に触ると稼働しなくなってしまうかもしれないのでこれ以上は手を出さない方がいいだろう。


 一通り部屋の確認がすんだあと、順番に部屋の中を細かく見ていく。時間はかかるけどどこに何があるかわからないので一つずつ確認していくしかない。
 机などはそのままだけど、機械関係なども含めて仕分けのすんだものは大きな木箱に入れてすべて収納していく。ばらばらだと整理が大変だからね。大きめの木箱を大量に入れておいて良かったよ。

 見つかったものの中にいくつか役に立ちそうなものがあった。この遺跡の地図、カード、道しるべの玉だ。

 地図はよくデパートとかにある簡単な案内板のようなもので、遺跡の大まかな配置と説明が書かれているだけなんだけど、これでもこの遺跡の全容を把握できた。

 ここはコントロールルームと上級居住室、隣の3つの通路のところは一般居住室となっている。その奥の酒があった倉庫みたいなところは当時から倉庫として使用されていたみたいで、通路の奥にはあの大きさの倉庫が連なってあるようだ。倉庫の奥は室内農園となっているのでサビオニアの遺跡で見たようなところなのかもしれない。
 最初に入ってきた通路の反対側の通路の先はホールになっているようだ。舞台とかまであったのだろうか?あと入ってきた通路が途中で切れていたけど、あの通路の先には普通の町のような住居エリアがあったようだ。サビオニアで見たような町みたいで、様々な施設が書かれている。
 その住居エリアからいくつかのエリアに通路が延びていて、工場とかいろいろ書かれているんだけど、分からない文字もある。中心に町があって放射線状に職場がある感じかな?

「ここってもともとはかなりの大きさの島だったって事なのかな?」

「島じゃなくて大陸の一部だった可能性もあるわよ。」

「確かにね。この辺り一帯が吹き飛ばされたけど、運良く遺跡の一部が残ったって事なのかな?海底を探したら何か出てくるかもしれないけど、さすがに年月が経ちすぎているのでちょっと厳しいだろうね。」

「そもそも地面ごと吹き飛んでいるから、なにかあっても壊れているわよ。だけどそれだけのことがあったのに一部とは言え、よく残ったわよね。」

「まあ魔素を供給するエリアにもなっていたからかなり頑丈に作っていたのかもしれないし、通路も長いのでもしかしたらここは他のエリアからかなり離れていたのかもしれない。まあ今となってはもう分からないけどね。」


 カードのようなものがあったのでもしかしてと思い、ドアの横のプレートに当ててみると反応した。よかった、これでドアをちゃんと開け閉めできる。鍵のかかった中にその鍵があるというパターンだ。誰か分からないけど、置いておいてくれて良かったよ。
 このカードで他のドアを試してみたところ、一般居住室の残りの2カ所のドアを開けることが出来たけど、倉庫とホールの扉の鍵は開かなかった。まあこっちの居住区が開いたので他のところはまだいいかな。そこまで重要なものがあるとは思えないしね。倉庫はちょっと気になるけど・・・。

 道しるべの玉はコントロールルームの机の金属製の箱に入っていたものだ。2つ入っていたんだけど、まだ登録されている場所はなかった。そしてありがたいことに道しるべの玉の使い方が書かれたプレートが入っていた。
 登録場所の再登録を考えていたんだけど、登録場所は一度登録すると上書きが出来ないものだったようだ。そして登録するのもすぐに出来るものではなく、結構な時間がかかるみたい。これはまた試してみないといけないだろう。転移魔法の検証も一緒にやらないといけないしね。


 一般居住室の方は特に目を引く物はなかったけど、金目のものや素材になりそうなものは回収していく。あと劣化して使えなくなったものも回収しておいたので、あとてまとめて燃やすしかないだろうな。
 さすがに部屋の数も多かったので一通り見るだけでも数日かかってしまったのはしょうが無いだろう。そのあとゴミとなったものは夜の間に火魔法ですべて燃やしておいた。前のように焼け跡からなにか見つかると言うことはなかった。


 時間はかかったけど、大きなキッチンや大きなお風呂もあって生活自体は快適だ。お風呂の壁には何かが映し出されるようになっていたみたいだけど、さすがにその機能は失われていたのが残念だ。おそらく風景などを投影できていたんだろうな。
 単純な魔道具はまだ動くけど、細かな配線や基板のようなものは時間とともに劣化して使えなくなっているようなんだよな。サビオニアの遺跡よりはまだ原型は残っているけどね。今のここの文明だと修理は出来ないけど、地球だったら修理とか出来るのかな?ただ魔法も使った技術なのか、地球の技術でも無理そうな気もするな。

 一通りの確認が終わった後、資料関係の確認作業に入る。ただここも途中で知識が失われていったのか、他と同じようなことが書かれている。このため、金属プレートなどに書き写してくれたのだろうか?おかげで今までも読めるものとして残っているのだろう。

 ここの研究内容は古代兵器についてだった。古代兵器を作ったところではないけど、どうやら古代兵器の倒し方を研究していたみたい。ただある日古代兵器がすべて破壊されたという記述もあった。他のところで古代兵器に対応するものでも出来たのか?それとも他でも研究していたことが実を結んだんだろうか?
 資料関係は結構な量があったのである程度の内容を見てから簡単に分類して収納していく。本当ならこんな量ではなかったと思うけど、金属プレートに写したのでかなり厳選して書いたんだろうな。ありがたいことだ。


 ある程度調査が終わったので転移魔法の検証を行うことにした。登録するのは後にして、まずは今持っている道しるべの玉を使っての実践だ。

 今持っている道しるべの玉の転移先は10カ所で、1つはここが登録されていて、5つがすでに発見された遺跡、4つが未発見の遺跡だった。
 5つの発見された遺跡の内、3つはホクサイ大陸とナンホウ大陸で自分たちも調査に行ったところで、残りはトウセイ大陸とキクライ大陸に一つずつだ。
 4つの未発見の遺跡のうち2つはモクニクとサビオニアで調査をしている。まあモクニク国では遺跡ごと消滅していたけどね。残りの2つは海の上なので、この島のことを考えるとすでに無くなっている可能性が高い。
 知らないところにいきなり行くのも何があるか分からないから怖いし、転移先の状態も分からないのにいきなり転移するような馬鹿なまねはしない方がいいだろう。


 まずは転移先と思われる場所のすぐ近くに移動してから道しるべの玉に魔力を込めて出てきた転移先を選んでから魔力を込めていく。すぐに転移できるというわけではないみたいだけど、しばらくすると発動したみたいで目の前の視界が若干ずれた。

「転移した?」

 確かに場所が少しずれているけど、特になにか身体に違和感があったわけでもないので自分でもよく分からない。

「身体が消えたと思ったらすぐ横に現れたわよ。時間的なずれはなかった感じだったわね。かき消えていくって言うものでなくて瞬間移動という感じね。」

「ということはうまく転移できたって事なのかな?とりあえずは成功かな?距離が遠くなった場合に時間的なずれがでるのかどうかは分からないけど、確かめようもないよね。」

「まあそれはそうよね。」

 続いて少し離れたところから試してみたけど、魔力を貯める時間はほとんど変わらなかった。使う回数に制限はないようだけど、魔力を貯めるに時間がかかるので連続使用というのは無理だな。距離が離れた場合にどのくらいかかるのかも気になるところだ。

 ジェンも試してみるとちゃんと転移できた。端から見るとほんとに一瞬で消えるのでかなり怖いな。ただ転移できるようになっても数秒のタイムラグがあるので、転移したいと思った瞬間に転移できるわけではないようだ。
 同時に発動すると、若干でも早いほうが優先されるようだ。完全に同時だとなにかの優先順位が働くと思うが、二人が同時に出現して重なってしまうと言うことはないだろう。

 それから手をつないでやってみると、魔力の許容量不足ということで転移が出来なかった。前に王家の遺跡で転移できる魔力容量制限があったので、レベルとかによって一度に運べる量が決まっているのかもしれないな。
 ガイド本にはレベル4で複数転移が可能となると書いているからね。魔力容量がどのように変わっていくのかは正直不明だけど、自分の魔力量を上げることが出来ればその分転移できる容量も増えるのかな?

 ただ身につけていたり持っているものについての扱いがよく分からない。密着していないといけないわけでもなく、手に持っていると一緒に転移する。それぞれのものに固有の魔力量があるのだろうか?
 収納魔法のものは大丈夫なんだが、収納バッグはだめだった。収納バッグはかなり中身を減らすと転移できたけど、手に持てる程度のものなので収納バッグの意味が無い。


 続いてちょっと怖かったけど移動先にものを置いてみたところ、転移できなかった。半分引っかかる感じにしてもできない。水がある場合もできない。空気の場合のみなのかな?どうやって判断するのか分からないな。
 試しに転移先に水を置いて、水の中から転移してみると転移できた。転移前と後である程度同じ状態でないと転移できないと言うことなのかな?ということはいきなり宇宙とか石の中とかいうことはないのかもしれないね。

 身体の一部を水につけていろいろ試した結果、身体の9割くらいが接している同じ空間には転移できる感じだった。多少の物質の差は誤差レベルと言うことだろう。しかし転移元と転移先の状態を判断するというのもなかなかすごいな。
 あと、何か物を置いたときには移動する体積の1割以下だと転移できるようだ。そのときには元々おいていたものが横に動かされるので重なるわけではない。
 金属などはだめだけど、水や木材などは転移できたので重量とかが影響しているのだろうか?物質がもつ嵩密度ではなく、真密度が影響しているのかもしれない。その境がどのようなものなのかまでは正確には分からないけど、感じ的に水より軽いものであれば行けるイメージかな?

 転移できない場合は転移先の周りの状態が転移元の周りの状態と違っているか、なにかものがあると言うことだろう。ただあくまで転移先の小さなエリアの問題であって、その周辺の状況は全く不明だ。なので転移したら周りが魔獣だらけと言うこともあるし、密閉された空間になっている場合もある。
 おそらくその危険性を少しでも排除するため、ちょっと離れたところに転移場所を指定して管理していたのだろう。他の転移場所も同じような感じかもしれないな。北の遺跡も岩の上にあったけど、おそらくあそこに建物を作って管理していたのかもしれない。

 いろいろと試したけど、結局よく分からない事も多い。魔法自体が科学的に考えておかしな現象なので解明は無理なのかもしれないし、これ以上の検証をしてもしょうが無いだろう。


 あと魔素はこの道しるべの玉にもためることが出来るようだ。ある程度この玉にためておけばすぐに使うことが出来ると言うことだろう。ただきっちりと把握は出来ないけど、通常魔力を込めるよりも多くためないといけない感じがする。遠くの場合は一気に魔力をためることが出来ないから普段から魔力をためておかないといけないだろうな。
 ただ問題なのは魔力をためても収納バッグに入れると放出されてしまうと言うことだ。結局はこれは持ち歩くしかないと言うことだろう。



 続いて今回手に入れた道しるべの玉の登録について考えてみた。登録箇所は8カ所なのでどこに登録するかをきちんと決めておかないといけない。この島はすでに登録したものがあるから一つだけに登録すればいいけど、とりあえずはサクラ、オカニウム、この島というところか?あとアルモニアやハクセンやナンホウ大陸のどこかに登録する感じか?
 どっちにしろ登録する場所は間違いなく転移しても大丈夫なところにする必要があるのできっちりと決めなければまずいだろう。この島はおそらく大丈夫だとは思うけど、他の町は郊外にしないとまずいかな?家とかがあればいいけど、管理する人も必要になるしちょっと無理だな。

 あとは魔素を貯めるのにどのくらい時間がかかるかだ。まあ持ち歩いて貯めていけばいいだけなんだけど、それだとよく分からないので今度オカニウムに行ったときに試してみようかな。それによってどのくらい使えるものかが分かるからな。


~ジェンSide~
 ヤーマンに戻ってきてからいろいろな人に会って、すぐに島の遺跡へ向かうことになった。島に渡るために船を購入したけど、ちょうどいい物が手には入って良かったわ。地球にいたときと同じくらい豪華な設備だったのよね。
 だけど目的は島への移動だったから、折角の船の機能は使うこともなく到着してしまったのよね。折角だから帰りは少し船上生活を楽しみながら戻りたいものだわ。


 島の遺跡の機能が残っていたのはよかったわ。転移が出来るようになればほんとにここに住むのも一つかもしれないわよね。どのくらいの時間で転移できるかにもよるけどね。

 さっそく扉の解錠に取りかかったけど、本当に大変だったわ。感情が抑えられなくなってしまって途中で意識がなくなってしまうことも何度もあったものね。大好きだけど、さすがに限界だと思ったわ。扉が開いてやっと落ち着いたんだけど、あのあともしばらくは魔力の注入をすることになったのよねえ。ふふふ・・・。

 転移の魔法は魔力を貯めるのに少し時間がかかりそうなので気軽には使えない可能性があるのはちょっと残念だった。とりあえず試してみてからどのくらい使えるものかを確認する必要があるわよね。


~あとがき~
 今回も転移についていろいろと考えた内容でした。転移が日常生活の一部として使えるものとした場合の安全性や制限を考えてこのような設定となりました。
 ただどうやって転移先の状況を確認しているのか、一緒に転移する制約はどうなっているのかなど、解明できていません。もともと魔法というもの自体が科学では説明できない現象なので科学的な考えでは解明できないものなんですけどね。


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