72 / 72
第七十二話 解けゆく緊張
しおりを挟む
宴はもちろん俺と朱殷の焼肉の争奪戦。その横で黒緋|黒緋さんは遠慮しつつそれでも緊張感は薄らいだ様で、しっかりと取皿に肉や野菜を確保していた。
「出遅れるなよ……まあ、紫苑がお前の分も確保してくれるだろうがなぁ」
「えっ!?」
柚葉の一声に黒緋さんは驚きの声を上げ、ごくりと唾を飲み込んだ。
そう言われれば、俺まだ柚葉の分を確保していなかったなぁと、食欲に負けた自分を少しだけ恥じた。
「二人とも! お皿貸して! 早く!」
「うふふ、その隙に……」
「しゅあーん?」
白群の一声でぴくりと箸を止め、声の主を振り返った朱殷の隙をついて、俺は二人のお皿に大急ぎで食べ頃の肉を盛って渡したが、すぐに朱殷の悲鳴に近い絶望感に満たされた声が鼓膜を揺らした。
「私の育てとったお肉がないん! いつの間に! 紫苑、侮れぬ……」
「俺の口に入ったが、何か文句があるか?」
「んんぅ、お、長のお口に入ったんなら……そんなん文句言われんのん!」
「ごめんね、朱殷、すぐ次の焼くから待ってね」
「繋ぎでこれ食え。美味いぞ。酒にも合う」
白群が配ったのは鶏肉と牛蒡を細切りにして揚げた物を湯掻いた空豆と合わせて甘酢で和えた物。それを見た瞬間、朱殷の目が輝く。
「これ好きなん! 紫苑、食べた事ある? 白ご飯にも合うしな? はなちゃんのお酒にも合うん! 私の大好物なん!」
興奮気味の朱殷は小鉢を片手に、目を輝かせたまま俺が渡された小鉢に箸をつけるのを待っていた。
あまりの迫力に肉を焼く手を止めて、摘みやすい棒状の鶏肉を口に含んだ。途端に口内に広がる甘酢の酸味と鶏肉の柔らかさに思わず言葉を失った。
「美味しい!」
「じゃろ! 辰臣の作るコレは天下一なん!」
俺は無言で何度も首を振り、朱殷の為の肉を焼くのも忘れて渡された小鉢を一瞬で空にしてしまった。
「紫苑、お代わりいるか?」
白群の声に反射的に頷いた俺を見て、彼は呵々大笑し再びキッチンへと消えた。
「黒緋も! お代わり要るんやったら一緒に行って! 辰臣に何往復もさせんといて!」
「は、はい! 食べ終わりましたら必ずや、お代わりいただきます!」
「んふー、美味しいじゃろ? うんうん」
「場所も存じておりますので、お代わりは自らいただきに参りますので、副統領はお食事を進めていただきたく!」
「うんうん、その時はなちゃんも呼んできて欲しいん」
満足そうな朱殷と、小鉢と口の間で忙しなく箸を往復させる黒緋さんの表情の対比は正直言って笑えるものだったけれど、俺はどうしたものかと立って待っている白群に申し訳ないと思いつつも朱殷の為に肉を網に乗せた。
じゅうう! と耳に楽しい音と共に途端に生唾が湧いてくる良い匂いが煙と同時に立ち上がった。
「あ、しおーん! ありがとう! 黒緋もおるし、ちょっと控えるね……黒緋、食べとるー?」
「いいいいいいただいております! とても美味しいです!」
そう言う黒緋さんは、さっきとは違い緊張は抜けきらないけれど、柔らかな表情をして箸を動かしていた。
「紫苑、私はタンが食べたいのだ! ぜひとも焼いて欲しいのだ! 翳狼達はいつもの感じでお願いなのだ!」
「了解! 飛影は塩は大丈夫だったよね?」
「もちろんなのだ! 私なのだぞ!?」
「ぷぷっ、解ったよ。待っててね」
嬉しそうに翼を広げて、嘆願成就をアピールしながらテチテチと飛影は使い魔達の席へと戻って行った。相変わらず左右に揺れる尻尾は可愛らしくもあり、可笑しくもあり、だ。おねだりされたタンは早く火が通るし、翳狼と天翔なら生肉でも喜んでくれるだろう。おねだりを山盛りに叶えてあげよう。そう思って広げた肉を裏返そうと取り箸に手を伸ばとした時、細く綺麗な手が取り箸を俺より早く手に取って、贅沢に厚めに切ってあるカルビやハラミを返し始めた。
「私かてお肉焼けるん!」
「ありがと、朱殷」
「……ん。あの子達にもいーっぱい食べて欲しいん」
焦げたら美味しゅうないもんな! なんて照れ隠しなのかゴニョゴニョ言いながら、朱殷は網いっぱいの肉を全て返すと網をずぅっと見つめていた。
「鬼火も上から足そか? その方が早く焼ける……ん?」
朱殷はさっきの代表・飛影からのおねだりをかなり気に掛けているようだった。
「止めとけ、朱殷。お前がやったら全部炭になる」
「なん! ちょ、辰臣! ちゃんとできるん……た、多分……でき、る……」
朱殷の頭をくしゃくしゃと撫でると、白群は部屋中を周り空いた皿を手早く盆に載せると部屋を出た。そんな白群を追いかけるように黒緋さんがあんかけの入っていた皿を持って、少し楽し気に早足で消えた。
和らいだ第二の宴会では色んな表情が見れる場になった。現に……
「ちゃんとできるはずじゃもん……でも、このお肉お高かったんじゃろし、失敗したら辰臣に怒られ、る?」
しょんぼりしつつ、掌を見つめて唸る朱殷がいる。ここまで悩む朱殷を見るのは初めてだ。
いつもの彼女なら即断即決即行動のはずなのに。早く使い魔達のお願いを叶えてあげたい想いと、今日の日の為に白群が選びに選んだ食材をダメにしたくないという考えで揺れている姿は可愛らしいなと思う。
緊張の解け始めた黒緋さんの見せる柔らかな雰囲気も嬉しくなる。トランプ大会の時は笑ってくれたら良いな、なんて思う。
「焼けたよ、朱殷。お皿に取っちゃって! 俺はタン広げるからよろしくね!」
「あや、焼けてもうた。ん、長にも持っていかないけんけど、とりあえずはお皿に避難じゃな!」
嬉しそうに一回り大きな皿に手早く肉を取る朱殷とタイミングを合わせてタンを置いていく。まるでテレビで見た事がある餅つきみたいだと思っていたら、笑いを含んだ柚葉の声が聞こえてきた。
「お前ら、息ピッタリだな」
「柚葉も手伝ってよぉ!」
「紫苑よ、さすがに長を動かすのはいかんと思うぞ。ほれ、新しい酒を持って来たぞ。杏と金柑を混ぜてみた果実酒じゃ」
「あ、はなちゃん! せっかく来てくれたんじゃから、お肉食べてって! 長と食べてって」
「おや、長はお一人か。ならばお供しよう」
「争奪戦を見るのも楽しくてな。ま、取り箸も持たせてもらえんしな」
くつくつと笑いながら答える柚葉に応えながら隣に腰を下ろした縹は、さっき網から上げたばかりの皿を朱殷から受け取った。
「長よ、良き宴となりましたな?」
「まあな。黒緋がこの騒がしさに慣れて、満腹になれば良し、そしてお前の酒を堪能できるならばなお良し、だ」
「まだ少々の緊張は見えますがな……この面子の雰囲気、慣れてしまえばあっという間でしょう」
二人が話していると小鉢を持った黒緋さんが部屋に入った途端、縹が片手を挙げてひょいひょいと揺らして呼びつけた。
黒緋さんは一瞬驚いた顔をしたけれど、朱殷も笑顔で手招きしているので素直に今まで座っていた隅っこの席ではなく、こちらへやって来た。そしてしばらく逡巡してから縹の横に少し間を空けてちょこんと座った。
「黒緋もお肉食べて! これからタンが焼けるん!」
「は、はい! ぜ、贅沢……贅沢、ここに極まれりです!」
確かに少し緊張しているみたい。小鉢を持つ手が微かに震えているけれど……?
縹が差し出したお酒を恭しく受け取った黒緋さんは朱殷に急かされてハラミを口の中に放り込んだ。目を閉じて、行儀良く咀嚼して。縹の酒を傾ける黒緋さんから流れ出す雰囲気は、床に正座をして沙汰を待っていた時とは大違いだ。
「黒緋、もっと寛げ、肩が凝る」
柚葉の小言に黒緋さんは箸を止め、至極まじめな声で答えた。
「我が身の非から、皆様の寛大なお心を受け、そして何故か長と同じ卓に並ばせていただいておるのです。く、寛いではおるはずですが……緊張はします!」
「それはそうじゃなあ。儂でも同じ立場なら同じようになるだろうて」
縹の助け舟のような言葉に黒緋さんは大きく頷いた。それに咄嗟に本音を洩らしたのは朱殷。
「んでも、ご飯じゃし。楽しまんと損なん!」
「ま、これも正論よの」
からりと笑う縹は手酌で自分の盃に酒をとくとくと注ぐと、クイっと傾けた。俺もあんな風に飲めたらオトナな感じを味わえるのかなぁ、なんて呑気な事を考えながら焼き上がったタンを平皿にどんどん乗せていった。
「よっし、第一弾はこのくらいかな? 俺、ちょっと飛影達の所に持って行ってくるね」
「ん。ほんなら……長、カルビ食べる? はなちゃんのお酒にはどれが合うじゃろか? 黒緋も食べたいお肉があるんなら、早う言わんとなくなるんよ?」
「俺はレモン塩」
「はいはい、紫苑と一緒ならなんでもええ、じゃな。んで、二人は?」
「はい、同じくよろしくお願いいたします!」
聞き慣れた柚葉と朱殷の掛け合いに吹き出しそうになりながら、飛影達の前に山盛りの焼きたてのタンを置く。そして飛影に一言。
「みんな味付けしてないから、飛影は……」
「大丈夫なのだ。ここにはタレも薬味も全て準備していただいておるのでな! 私好みの味付けで楽しむとするのだ!」
片翼をゆっくりと広げ、胸を張ってみせた飛影に安心して、再び焼肉奉行に戻る事にした。
「出遅れるなよ……まあ、紫苑がお前の分も確保してくれるだろうがなぁ」
「えっ!?」
柚葉の一声に黒緋さんは驚きの声を上げ、ごくりと唾を飲み込んだ。
そう言われれば、俺まだ柚葉の分を確保していなかったなぁと、食欲に負けた自分を少しだけ恥じた。
「二人とも! お皿貸して! 早く!」
「うふふ、その隙に……」
「しゅあーん?」
白群の一声でぴくりと箸を止め、声の主を振り返った朱殷の隙をついて、俺は二人のお皿に大急ぎで食べ頃の肉を盛って渡したが、すぐに朱殷の悲鳴に近い絶望感に満たされた声が鼓膜を揺らした。
「私の育てとったお肉がないん! いつの間に! 紫苑、侮れぬ……」
「俺の口に入ったが、何か文句があるか?」
「んんぅ、お、長のお口に入ったんなら……そんなん文句言われんのん!」
「ごめんね、朱殷、すぐ次の焼くから待ってね」
「繋ぎでこれ食え。美味いぞ。酒にも合う」
白群が配ったのは鶏肉と牛蒡を細切りにして揚げた物を湯掻いた空豆と合わせて甘酢で和えた物。それを見た瞬間、朱殷の目が輝く。
「これ好きなん! 紫苑、食べた事ある? 白ご飯にも合うしな? はなちゃんのお酒にも合うん! 私の大好物なん!」
興奮気味の朱殷は小鉢を片手に、目を輝かせたまま俺が渡された小鉢に箸をつけるのを待っていた。
あまりの迫力に肉を焼く手を止めて、摘みやすい棒状の鶏肉を口に含んだ。途端に口内に広がる甘酢の酸味と鶏肉の柔らかさに思わず言葉を失った。
「美味しい!」
「じゃろ! 辰臣の作るコレは天下一なん!」
俺は無言で何度も首を振り、朱殷の為の肉を焼くのも忘れて渡された小鉢を一瞬で空にしてしまった。
「紫苑、お代わりいるか?」
白群の声に反射的に頷いた俺を見て、彼は呵々大笑し再びキッチンへと消えた。
「黒緋も! お代わり要るんやったら一緒に行って! 辰臣に何往復もさせんといて!」
「は、はい! 食べ終わりましたら必ずや、お代わりいただきます!」
「んふー、美味しいじゃろ? うんうん」
「場所も存じておりますので、お代わりは自らいただきに参りますので、副統領はお食事を進めていただきたく!」
「うんうん、その時はなちゃんも呼んできて欲しいん」
満足そうな朱殷と、小鉢と口の間で忙しなく箸を往復させる黒緋さんの表情の対比は正直言って笑えるものだったけれど、俺はどうしたものかと立って待っている白群に申し訳ないと思いつつも朱殷の為に肉を網に乗せた。
じゅうう! と耳に楽しい音と共に途端に生唾が湧いてくる良い匂いが煙と同時に立ち上がった。
「あ、しおーん! ありがとう! 黒緋もおるし、ちょっと控えるね……黒緋、食べとるー?」
「いいいいいいただいております! とても美味しいです!」
そう言う黒緋さんは、さっきとは違い緊張は抜けきらないけれど、柔らかな表情をして箸を動かしていた。
「紫苑、私はタンが食べたいのだ! ぜひとも焼いて欲しいのだ! 翳狼達はいつもの感じでお願いなのだ!」
「了解! 飛影は塩は大丈夫だったよね?」
「もちろんなのだ! 私なのだぞ!?」
「ぷぷっ、解ったよ。待っててね」
嬉しそうに翼を広げて、嘆願成就をアピールしながらテチテチと飛影は使い魔達の席へと戻って行った。相変わらず左右に揺れる尻尾は可愛らしくもあり、可笑しくもあり、だ。おねだりされたタンは早く火が通るし、翳狼と天翔なら生肉でも喜んでくれるだろう。おねだりを山盛りに叶えてあげよう。そう思って広げた肉を裏返そうと取り箸に手を伸ばとした時、細く綺麗な手が取り箸を俺より早く手に取って、贅沢に厚めに切ってあるカルビやハラミを返し始めた。
「私かてお肉焼けるん!」
「ありがと、朱殷」
「……ん。あの子達にもいーっぱい食べて欲しいん」
焦げたら美味しゅうないもんな! なんて照れ隠しなのかゴニョゴニョ言いながら、朱殷は網いっぱいの肉を全て返すと網をずぅっと見つめていた。
「鬼火も上から足そか? その方が早く焼ける……ん?」
朱殷はさっきの代表・飛影からのおねだりをかなり気に掛けているようだった。
「止めとけ、朱殷。お前がやったら全部炭になる」
「なん! ちょ、辰臣! ちゃんとできるん……た、多分……でき、る……」
朱殷の頭をくしゃくしゃと撫でると、白群は部屋中を周り空いた皿を手早く盆に載せると部屋を出た。そんな白群を追いかけるように黒緋さんがあんかけの入っていた皿を持って、少し楽し気に早足で消えた。
和らいだ第二の宴会では色んな表情が見れる場になった。現に……
「ちゃんとできるはずじゃもん……でも、このお肉お高かったんじゃろし、失敗したら辰臣に怒られ、る?」
しょんぼりしつつ、掌を見つめて唸る朱殷がいる。ここまで悩む朱殷を見るのは初めてだ。
いつもの彼女なら即断即決即行動のはずなのに。早く使い魔達のお願いを叶えてあげたい想いと、今日の日の為に白群が選びに選んだ食材をダメにしたくないという考えで揺れている姿は可愛らしいなと思う。
緊張の解け始めた黒緋さんの見せる柔らかな雰囲気も嬉しくなる。トランプ大会の時は笑ってくれたら良いな、なんて思う。
「焼けたよ、朱殷。お皿に取っちゃって! 俺はタン広げるからよろしくね!」
「あや、焼けてもうた。ん、長にも持っていかないけんけど、とりあえずはお皿に避難じゃな!」
嬉しそうに一回り大きな皿に手早く肉を取る朱殷とタイミングを合わせてタンを置いていく。まるでテレビで見た事がある餅つきみたいだと思っていたら、笑いを含んだ柚葉の声が聞こえてきた。
「お前ら、息ピッタリだな」
「柚葉も手伝ってよぉ!」
「紫苑よ、さすがに長を動かすのはいかんと思うぞ。ほれ、新しい酒を持って来たぞ。杏と金柑を混ぜてみた果実酒じゃ」
「あ、はなちゃん! せっかく来てくれたんじゃから、お肉食べてって! 長と食べてって」
「おや、長はお一人か。ならばお供しよう」
「争奪戦を見るのも楽しくてな。ま、取り箸も持たせてもらえんしな」
くつくつと笑いながら答える柚葉に応えながら隣に腰を下ろした縹は、さっき網から上げたばかりの皿を朱殷から受け取った。
「長よ、良き宴となりましたな?」
「まあな。黒緋がこの騒がしさに慣れて、満腹になれば良し、そしてお前の酒を堪能できるならばなお良し、だ」
「まだ少々の緊張は見えますがな……この面子の雰囲気、慣れてしまえばあっという間でしょう」
二人が話していると小鉢を持った黒緋さんが部屋に入った途端、縹が片手を挙げてひょいひょいと揺らして呼びつけた。
黒緋さんは一瞬驚いた顔をしたけれど、朱殷も笑顔で手招きしているので素直に今まで座っていた隅っこの席ではなく、こちらへやって来た。そしてしばらく逡巡してから縹の横に少し間を空けてちょこんと座った。
「黒緋もお肉食べて! これからタンが焼けるん!」
「は、はい! ぜ、贅沢……贅沢、ここに極まれりです!」
確かに少し緊張しているみたい。小鉢を持つ手が微かに震えているけれど……?
縹が差し出したお酒を恭しく受け取った黒緋さんは朱殷に急かされてハラミを口の中に放り込んだ。目を閉じて、行儀良く咀嚼して。縹の酒を傾ける黒緋さんから流れ出す雰囲気は、床に正座をして沙汰を待っていた時とは大違いだ。
「黒緋、もっと寛げ、肩が凝る」
柚葉の小言に黒緋さんは箸を止め、至極まじめな声で答えた。
「我が身の非から、皆様の寛大なお心を受け、そして何故か長と同じ卓に並ばせていただいておるのです。く、寛いではおるはずですが……緊張はします!」
「それはそうじゃなあ。儂でも同じ立場なら同じようになるだろうて」
縹の助け舟のような言葉に黒緋さんは大きく頷いた。それに咄嗟に本音を洩らしたのは朱殷。
「んでも、ご飯じゃし。楽しまんと損なん!」
「ま、これも正論よの」
からりと笑う縹は手酌で自分の盃に酒をとくとくと注ぐと、クイっと傾けた。俺もあんな風に飲めたらオトナな感じを味わえるのかなぁ、なんて呑気な事を考えながら焼き上がったタンを平皿にどんどん乗せていった。
「よっし、第一弾はこのくらいかな? 俺、ちょっと飛影達の所に持って行ってくるね」
「ん。ほんなら……長、カルビ食べる? はなちゃんのお酒にはどれが合うじゃろか? 黒緋も食べたいお肉があるんなら、早う言わんとなくなるんよ?」
「俺はレモン塩」
「はいはい、紫苑と一緒ならなんでもええ、じゃな。んで、二人は?」
「はい、同じくよろしくお願いいたします!」
聞き慣れた柚葉と朱殷の掛け合いに吹き出しそうになりながら、飛影達の前に山盛りの焼きたてのタンを置く。そして飛影に一言。
「みんな味付けしてないから、飛影は……」
「大丈夫なのだ。ここにはタレも薬味も全て準備していただいておるのでな! 私好みの味付けで楽しむとするのだ!」
片翼をゆっくりと広げ、胸を張ってみせた飛影に安心して、再び焼肉奉行に戻る事にした。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる