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第1章:異世界でもワタシって遠慮しないタイプなんで!
第10話 くまの行進、始動!
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夕暮れの街道を、私はリリーを伴って歩いていた。
リリーは小さな荷物を胸に抱え、不安そうに私の横を歩いている。
「ほ、本当に……よろしいのでしょうか。わたしなんかがお嬢様のお屋敷に……」
「何言ってるの。あんたは“うちの戦力”よ!」
私は胸を張って答えた。
「才能を持ってるのに埋もれてる人材を拾い上げる――これって立派な経営戦略でしょ? まあ、うちは没落寸前の名家だから、説得力にはいまいち欠けるけどね」
リリーはぽかんとしていたが、すぐにくすっと笑った。
ほどなくして、私たちはギルレア家の屋敷にたどり着いた。
かつては立派だったであろう建物は、今や外壁の漆喰が剥がれ、門扉も錆びついている。
でも、今の私にとっては唯一の“居場所”だ。
「さあ、ようこそ。我が屋敷へ!」
「……本当に、ここで……?」
「そうよ! ほら、ボロい……いや、歴史が感じられる佇まいでしょ?」
呆れ顔のマルタが玄関で出迎えてくれる。
「お嬢様、お客様……ですか?」
マルタがリリーに丁寧に挨拶をする。
「そ、同僚のリリー。これから一緒に作業をするから、余計な気遣いはしなくていいから」
「はあ。気遣いと言いましても……」
マルタが小さな声で何かごにょごにょ言っているが、気にしない。
リリーを部屋に案内すると、
「お嬢様、ちょっとお話があります」
とマルタに廊下に連れ出された。
「もう時間がないから、早く作業に取り掛かりたいの。今夜は徹夜になると思うから、何か夜食でも……」
「そのようなものはありません。それどころか、お客様にお出しできるお茶も満足にありません!」
マルタにしては強い口調だ。
「え~、じゃあ、うちの裏に生えてるミントのミントティーだけでいいわよ……」
「いつものミントティーでございますね。かしこまりました」
何か棘が刺さる言い方……。
「……さて、改めて見ると、修復不可能って感じ」
裂かれたドレスを前に、私は腕を組んだ。スカートの布はズタズタ、刺繍は無惨にほどかれている。
リリーも布の端を持って、上に持って行ったり下に持って行ったりして、何とかドレスの形にできないか思案している。
普通の人間なら、泣き崩れて諦めるような絶望的な状況。でも、ここで諦めることは絶対にできない。
「何か……覆い隠すものがあればいいのですけれど……」
刺繍がほどかれて穴だらけになっている布地を触りながら、リリーが呟いた。
「隠すもの……あっ!」
ひらめいた瞬間、私は机をバンッと叩いた。
「そうだわ! ぬいぐるみよ!」
私の脳裏に、転生前にいた世界で見たぬいぐるみがたくさんついたジャケットが思い浮かんだ。
「そうよ。行ける……!」
「……え?」
リリーが目をぱちくりさせる。
「だから、クマのぬいぐるみを大量に作って、ドレスに縫い付けるの! これぞ革命的デザイン、題して《くまドレス》!」
リリーは理解に苦しむのか、相変わらず呆けた顔をしている。
そこにミントティーを持って来たマルタが部屋に入ってきたので、私の素晴らしいアイデアを聞かせてあげた。
「お嬢様……それは、冗談で仰ってますのよね?」
マルタが真顔で私に問いかける。コイツ大丈夫か、とでも言いたげな表情だ。
奇抜なアイデアというものは、最初からすんなりと受け入れられるものではない。私はにっこり笑って首を横に振った。
「本気も本気。コンセプトはぬいぐるみを纏う、よ」
「ですが……そんな発想、前代未聞でございます」
「だからこそ! 人と同じことしてても勝てないの。差をつけるには、発想の自由が一番大事!」
私は手を叩いて号令をかけた。
「というわけで、これからぬいぐるみ大量生産よ!」
「そうですね、私たちに残された手段はそれしかありません」
リリーは困惑しつつも、袖をまくって針と布を手に取った。彼女の指先には微かな光が宿る。
「リリー、魔法で縫うの早くできるんでしょ? だったら量産にはもってこいじゃない!」
「……はい。わかりました、やってみます」
リリーの声は小さいけれど、瞳は決意に光っていた。
「マルタは屋敷にある古布でもいいから、ぬいぐるみの材料になりそうなものを全部かき集めて!」
「承知しました……お付き合いいたします」
こうして、私の屋敷にて《くまドレス計画》は幕を開けた。
(ふふん、見てなさいよ。凡人のお針子たち――。これで私がどれだけ天才か、はっきり思い知らせてあげるんだから!)
リリーは小さな荷物を胸に抱え、不安そうに私の横を歩いている。
「ほ、本当に……よろしいのでしょうか。わたしなんかがお嬢様のお屋敷に……」
「何言ってるの。あんたは“うちの戦力”よ!」
私は胸を張って答えた。
「才能を持ってるのに埋もれてる人材を拾い上げる――これって立派な経営戦略でしょ? まあ、うちは没落寸前の名家だから、説得力にはいまいち欠けるけどね」
リリーはぽかんとしていたが、すぐにくすっと笑った。
ほどなくして、私たちはギルレア家の屋敷にたどり着いた。
かつては立派だったであろう建物は、今や外壁の漆喰が剥がれ、門扉も錆びついている。
でも、今の私にとっては唯一の“居場所”だ。
「さあ、ようこそ。我が屋敷へ!」
「……本当に、ここで……?」
「そうよ! ほら、ボロい……いや、歴史が感じられる佇まいでしょ?」
呆れ顔のマルタが玄関で出迎えてくれる。
「お嬢様、お客様……ですか?」
マルタがリリーに丁寧に挨拶をする。
「そ、同僚のリリー。これから一緒に作業をするから、余計な気遣いはしなくていいから」
「はあ。気遣いと言いましても……」
マルタが小さな声で何かごにょごにょ言っているが、気にしない。
リリーを部屋に案内すると、
「お嬢様、ちょっとお話があります」
とマルタに廊下に連れ出された。
「もう時間がないから、早く作業に取り掛かりたいの。今夜は徹夜になると思うから、何か夜食でも……」
「そのようなものはありません。それどころか、お客様にお出しできるお茶も満足にありません!」
マルタにしては強い口調だ。
「え~、じゃあ、うちの裏に生えてるミントのミントティーだけでいいわよ……」
「いつものミントティーでございますね。かしこまりました」
何か棘が刺さる言い方……。
「……さて、改めて見ると、修復不可能って感じ」
裂かれたドレスを前に、私は腕を組んだ。スカートの布はズタズタ、刺繍は無惨にほどかれている。
リリーも布の端を持って、上に持って行ったり下に持って行ったりして、何とかドレスの形にできないか思案している。
普通の人間なら、泣き崩れて諦めるような絶望的な状況。でも、ここで諦めることは絶対にできない。
「何か……覆い隠すものがあればいいのですけれど……」
刺繍がほどかれて穴だらけになっている布地を触りながら、リリーが呟いた。
「隠すもの……あっ!」
ひらめいた瞬間、私は机をバンッと叩いた。
「そうだわ! ぬいぐるみよ!」
私の脳裏に、転生前にいた世界で見たぬいぐるみがたくさんついたジャケットが思い浮かんだ。
「そうよ。行ける……!」
「……え?」
リリーが目をぱちくりさせる。
「だから、クマのぬいぐるみを大量に作って、ドレスに縫い付けるの! これぞ革命的デザイン、題して《くまドレス》!」
リリーは理解に苦しむのか、相変わらず呆けた顔をしている。
そこにミントティーを持って来たマルタが部屋に入ってきたので、私の素晴らしいアイデアを聞かせてあげた。
「お嬢様……それは、冗談で仰ってますのよね?」
マルタが真顔で私に問いかける。コイツ大丈夫か、とでも言いたげな表情だ。
奇抜なアイデアというものは、最初からすんなりと受け入れられるものではない。私はにっこり笑って首を横に振った。
「本気も本気。コンセプトはぬいぐるみを纏う、よ」
「ですが……そんな発想、前代未聞でございます」
「だからこそ! 人と同じことしてても勝てないの。差をつけるには、発想の自由が一番大事!」
私は手を叩いて号令をかけた。
「というわけで、これからぬいぐるみ大量生産よ!」
「そうですね、私たちに残された手段はそれしかありません」
リリーは困惑しつつも、袖をまくって針と布を手に取った。彼女の指先には微かな光が宿る。
「リリー、魔法で縫うの早くできるんでしょ? だったら量産にはもってこいじゃない!」
「……はい。わかりました、やってみます」
リリーの声は小さいけれど、瞳は決意に光っていた。
「マルタは屋敷にある古布でもいいから、ぬいぐるみの材料になりそうなものを全部かき集めて!」
「承知しました……お付き合いいたします」
こうして、私の屋敷にて《くまドレス計画》は幕を開けた。
(ふふん、見てなさいよ。凡人のお針子たち――。これで私がどれだけ天才か、はっきり思い知らせてあげるんだから!)
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