自称・清々しい系令嬢ですが? ~底辺ポジでも自己肯定感だけは最強です~

林 真帆

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第1章:異世界でもワタシって遠慮しないタイプなんで!

第9話 リリーの秘密

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「これって……」

 

 私は足元に落ちたデザイン画を拾い上げる。繊細な線で描かれたドレスだったが、どれも大胆で斬新、それでいて品があった。



(……リリーが描いたの?)

 
 描いた本人はもう姿を消している。だが、私は確信していた。

 
 あの大人しそうなリリーが、このデザインを。


「ふーん……あの子、やるじゃない」

 

 私はデザイン画をそっと机に戻した。

 
 コンペの告知から数日。私は新作ドレス制作に没頭していた。

 
 
 裁縫室では相変わらず冷たい視線と嫌味が飛び交っていたが、そんなことは気にしない。



(天才っていうのは、凡人にはなかなか理解されないものなのよ。この世界でも一緒みたいね)

 
 ……と、独り言ちながら、私は黙々と布を裁ち、針を進めていた。

 
 
 この世界にはミシンなど存在しない。すべてが手縫いである。

 
 布に指を走らせると、そこにほんのりと暖かさを感じた。

 

 これは、マダム・オルタンシアの魔力が織り込まれた特別な布で、光の加減で虹のように色が変わる。魔力が織り込まれていると言っても、ほんのわずかで、人体に影響はない。
 
 
 マダムのサロンが人気なのは、デザインはもちろんだけど、この布みたいなマダムにしか作れない特別な素材も人気の一因だ。



(確かに、普通の布とは違う……見た目だけじゃなくて、なんか、縫ってるだけで気持ちがアガってくるような……)

 
 だが、まあまあ静かに集中できたのは、その日までだった。

 
 コンペの前日、出勤した私は絶句した。



「……なに、これ」

 
 私が作っていたドレスが――見るも無残に引き裂かれていたのだ。

 
 糸は引き抜かれ、スカート部分には大きな切れ込みが入っていた。ご丁寧に、修繕できないようように裁縫箱に入っている針まで折られている。


 他のお針子たちは知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。だが、やったのは彼女たちだろうなと簡単に想像がついた。



(やってくれたわね……)

 

 心の底から怒りが湧いたが、それ以上に、自分の詰めの甘さにも腹が立った。


「……どうしよう、時間がない……」

 

 一からやり直すには時間がかかりすぎる。今回のコンペは見送りか……。

 

 その時――


「サヤーナ様……」

 
 背後から声がした。

 
 
 振り返ると、リリーがそっと立っていた。両手をぎゅっと握りしめ、震えながらもまっすぐこちらを見ている。



「手伝わせてください。……少しだけなら、私、縫うの早いんです」



 そう言ってリリーがそっと袖をまくった指先には、微かに魔力の光が灯っていた。


「魔法……?」



「ええ。私の魔法、あんまり強くはないけど、針仕事なら少しだけ……」



「すごい!」


 私は、リリーの両手を強く握った。


「あの、サヤーナ様、ちょっと痛いです……」


「あ、ごめんごめん。じゃあ、さっそくだけどやってもらっていい?」 


「はい。でも、ここでは……」


 リリーは小声で耳打ちした。


「そうね。あんたの言う通りだわ」
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