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第1章:異世界でもワタシって遠慮しないタイプなんで!
第2話「現実(異世界)は甘くない? でも私ならイケる気しかしない!」
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「それにしても……この部屋、マジで崩れそうなんだけど……」
サヤーナ――いや、元・片桐沙耶香である私は、古びてぎしぎしときしむベッドから起き上がり、改めて部屋の中を見渡した。
石壁にはひび、床には穴。窓ガラスなんて、半分は割れてる。そして、隙間風がこれでもかっていうくらい入り込んで来ていて、寒い。いや、めっちゃ寒い。
「え、ちょっと待って……これって貴族の家だよね? いくら貧乏でもあり得なくない?」
だが鏡に映る自分の姿を見れば、不思議と力が湧いてくる。金髪の長髪に透き通る肌、少女漫画の中から抜け出したような美少女。これは間違いなく最強装備だ。
「よし、まずは現状整理からね!」
元の世界で培った“段取り力”を発揮する時がきた――元OLとしてのキャリアがこんなところでも役に立つなんて!
ふふふ、と私はほくそ笑んだ。あー、やっぱり会社勤めなんてスケールが大きすぎる私には向いてなかった。やっぱり私は使われるよりも、使う側に人間の方が合ってる。
「えーっと、記憶によれば、私は“サヤーナ=ド・ギルレア”。没落した貴族家の令嬢で、いまこのボロ屋敷が自宅で……ああ、使用人もほぼゼロ。残ってるのはあのお婆さんだけ……か」
あのお婆さん――名前はたしか、マルタだっけ? 屋敷に残る唯一の使用人で、メイド兼ばあや的存在らしい。サヤーナの記憶には“幼いころから世話してくれた人”としてかすかに残っていた。
と、そこへノックの音。
「お嬢様、お食事のご用意ができました」
おっとりとした声のマルタが、手押し車に載せたくすんだ銀の食器を運んできた。
「……何これ」
皿に乗っていたのは、薄灰色のパンと謎のスープ。スープと言いつつ、具らしきものが見当たらない。葉っぱのようなものが浮いているだけだ。
「本日は、保存食の乾パンと、ハーブのスープでございます。塩は……昨日使い切りましたので、少々味気ないかと……」
「……なるほど、ハーブのスープね……ハーブというよりも、雑草? うん、想像を超えた“没落”ぶりだわ」
思わず天を仰ぐ私。ま、超ハイスペックな私には、これくらいのハンデはどうってことないんじゃない? むしろ、この頭脳とこの見た目だけで十分反則級なのに、家まで大金持ちだったら、他の人たちがかわいそう。
「マルタさん、ざっくりでいいので教えてほしいんだけど……この国のざっくりした情勢と、私たちギルレア家のざっくりした立ち位置って、どんな感じ?」
“ざっくり”を三連発。ほーら、指示の出し方も的確。あの無能な課長に見せてあげたいくらい。
マルタは少し驚いた顔をしつつ、律儀に答えてくれた。
「この国は、アークセント王国。魔法と貴族制度が中心の国家でございます。サヤーナ様のご実家であるギルレア家は、もとは魔法師団の名門でしたが……前当主様の代で財政難となり、領地も剥奪。今は貴族階級に名を残すだけの状態でございます」
「なるほどねー……じゃあ今の私にあるのは、肩書きだけってわけか」
とはいえ、肩書きだけでも“貴族令嬢”ってのは大きい。下手に平民に転生するよりは、はるかにチャンスはある。
「てことは、ここから逆転できれば、むしろドラマチックってやつじゃない?」
完全に他人事のようにワクワクしている。
「そもそも私、見た目は最強でしょ? 性格もサッパリしてて付き合いやすいし、なりよりもめちゃくちゃ優秀。結婚相手なんてより取り見取りでしょ!」
マルタは心配そうにこちらを見ていた。何か言いたいことがありそうだが、口には出そうとはしない。
「よし。まずは行動から! どっかに出かけようかな?」
「ですがお嬢様、この屋敷には……馬車も、護衛も、着替えのドレスもございません」
「……あ、そうだよね。そっか、うん、そこからか……」
即・現実の壁。没落のレベルの半端なさを感じる。
しかし、たった数秒の後。
「――ま、いいや! とりあえず歩ける距離から攻めよっか♪ 何てったってここはファンタジーの国なんだし! どうにかなるっしょ!」
無敵のポジティブシンキングが全開になるのだった。
サヤーナ――いや、元・片桐沙耶香である私は、古びてぎしぎしときしむベッドから起き上がり、改めて部屋の中を見渡した。
石壁にはひび、床には穴。窓ガラスなんて、半分は割れてる。そして、隙間風がこれでもかっていうくらい入り込んで来ていて、寒い。いや、めっちゃ寒い。
「え、ちょっと待って……これって貴族の家だよね? いくら貧乏でもあり得なくない?」
だが鏡に映る自分の姿を見れば、不思議と力が湧いてくる。金髪の長髪に透き通る肌、少女漫画の中から抜け出したような美少女。これは間違いなく最強装備だ。
「よし、まずは現状整理からね!」
元の世界で培った“段取り力”を発揮する時がきた――元OLとしてのキャリアがこんなところでも役に立つなんて!
ふふふ、と私はほくそ笑んだ。あー、やっぱり会社勤めなんてスケールが大きすぎる私には向いてなかった。やっぱり私は使われるよりも、使う側に人間の方が合ってる。
「えーっと、記憶によれば、私は“サヤーナ=ド・ギルレア”。没落した貴族家の令嬢で、いまこのボロ屋敷が自宅で……ああ、使用人もほぼゼロ。残ってるのはあのお婆さんだけ……か」
あのお婆さん――名前はたしか、マルタだっけ? 屋敷に残る唯一の使用人で、メイド兼ばあや的存在らしい。サヤーナの記憶には“幼いころから世話してくれた人”としてかすかに残っていた。
と、そこへノックの音。
「お嬢様、お食事のご用意ができました」
おっとりとした声のマルタが、手押し車に載せたくすんだ銀の食器を運んできた。
「……何これ」
皿に乗っていたのは、薄灰色のパンと謎のスープ。スープと言いつつ、具らしきものが見当たらない。葉っぱのようなものが浮いているだけだ。
「本日は、保存食の乾パンと、ハーブのスープでございます。塩は……昨日使い切りましたので、少々味気ないかと……」
「……なるほど、ハーブのスープね……ハーブというよりも、雑草? うん、想像を超えた“没落”ぶりだわ」
思わず天を仰ぐ私。ま、超ハイスペックな私には、これくらいのハンデはどうってことないんじゃない? むしろ、この頭脳とこの見た目だけで十分反則級なのに、家まで大金持ちだったら、他の人たちがかわいそう。
「マルタさん、ざっくりでいいので教えてほしいんだけど……この国のざっくりした情勢と、私たちギルレア家のざっくりした立ち位置って、どんな感じ?」
“ざっくり”を三連発。ほーら、指示の出し方も的確。あの無能な課長に見せてあげたいくらい。
マルタは少し驚いた顔をしつつ、律儀に答えてくれた。
「この国は、アークセント王国。魔法と貴族制度が中心の国家でございます。サヤーナ様のご実家であるギルレア家は、もとは魔法師団の名門でしたが……前当主様の代で財政難となり、領地も剥奪。今は貴族階級に名を残すだけの状態でございます」
「なるほどねー……じゃあ今の私にあるのは、肩書きだけってわけか」
とはいえ、肩書きだけでも“貴族令嬢”ってのは大きい。下手に平民に転生するよりは、はるかにチャンスはある。
「てことは、ここから逆転できれば、むしろドラマチックってやつじゃない?」
完全に他人事のようにワクワクしている。
「そもそも私、見た目は最強でしょ? 性格もサッパリしてて付き合いやすいし、なりよりもめちゃくちゃ優秀。結婚相手なんてより取り見取りでしょ!」
マルタは心配そうにこちらを見ていた。何か言いたいことがありそうだが、口には出そうとはしない。
「よし。まずは行動から! どっかに出かけようかな?」
「ですがお嬢様、この屋敷には……馬車も、護衛も、着替えのドレスもございません」
「……あ、そうだよね。そっか、うん、そこからか……」
即・現実の壁。没落のレベルの半端なさを感じる。
しかし、たった数秒の後。
「――ま、いいや! とりあえず歩ける距離から攻めよっか♪ 何てったってここはファンタジーの国なんだし! どうにかなるっしょ!」
無敵のポジティブシンキングが全開になるのだった。
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