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第1章:異世界でもワタシって遠慮しないタイプなんで!
第3話「とりあえず、城下町に行ってみた」
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「何これ、喪服?」
マルタが用意したのは、くすんだ茶色のシンプル過ぎるワンピースと擦り切れたマント。正直言って、辛気臭いったらありゃしない。
「申し訳ございません、お嬢様……でも、本当にこれしかないのです……」
マルタの申し訳なさそうな顔を見ていると、責める気もなくなってくる。
「ま、文句を言ってもしょうがないけどさ。でも、これを着るくらいなら、いっそのことカーテンを巻き付けるがマシじゃない?」
そう口にした私は、本当にカーテンに手を伸ばしていた。
「そうだ! なければ作ればいいんだわ!」
私とマルタは屋敷の中をくまなく探して、カーテン、テーブルクロス、クッションカバー……布と名のつく物すべてを一か所に集めた。
「あの、お嬢様……一体、何をなさるおつもりで?」
「まあ見てなさい!」
女子大の服飾科で培った縫製スキルと、アパレルメーカーで培ったデザイン&コーデ力が、今こそ火を吹く!
「ふふん、伊達に展示会で即完売したアイテムを作った女じゃないのよ?」
針と糸と、溢れんばかりの創作魂を総動員して二時間が経過した頃、そこには、ボロ布から生まれたとは思えないモード系ドレス(自称)が完成していた。ボロ布のほつれた部分をあえて活かしたアシンメトリーの裾、腰に巻いたゴブラン柄のサッシュベルト。そして背中には大胆なレースアップ。
「これは……斬新……でございますわね……?」
目を丸くするマルタに、私はにっこり微笑んだ。
「でしょでしょ? これが“リメイク”よ。ま、最先端のファッション業界にいた私からしてみたら、これくらいできて当然だけどね! 次はこのドレスに合った髪型とメイクね!」
鏡の前に座ると、隙間時間に見ていた動画サイトで流れて来た“量産型ハーフツイン”を参考に、自己流のアレンジを加えた。あとは軽く頬に血色足して、唇にツヤを。化粧道具なんてろくにないけど、アイシャドウは炭の粉、口紅はハーブを擦って代用。
――そして私は、“異世界×令嬢×原宿系”なスタイルで、城下町へと出かけていった。
「ちょっと、あの子見た?」
「何あの服……でも、なんか目が離せない!」
「髪型、どうなってるの……?」
街の視線が、一斉に私に集まる。やっぱり、狙い通り。無難じゃ埋もれるだけ。異世界だろうと何だろうと、“ちょっと変わってるけどなんかすごい”は正義!
私は通りの石畳を、ランウェイ気分で歩いていた。気分はもう完全にパリコレ。いいじゃん、いいじゃん。今まさに私はトレンドが生まれる瞬間にいる。
「お嬢様……」
後ろからそっと見守るようについてきたマルタが、半ば呆れたように、でもどこか嬉しそうに言った。
「本当に……変わられましたわね……」
「何を言っているの、私の革命は今、始まったばかりよ!」
ポジティブは全てを覆す。そしてこの“注目度”――使える。目立てばきっと声がかかる、声がかかればチャンスが生まれる。
一台の馬車が私を少し通り越したところで停車した。この世界に来たばかりの私でもわかる、いかにも貴族が乗っていそうな豪勢な馬車だ。
その馬車の扉が御者によって開けられると、中からフリルとリボンをふんだんに使ったドレスをまとった、縦ロールの令嬢が現れた。
(マリー・アントワネットかよ……)
異世界のマリー・アントワネットは、一瞬にして私に注がれていた人々の熱視線を奪い取った。
(何なの、こいつ……!)
ぎりりと下唇を噛む。が、ハッとひらめく。
(もしかして、これが‘悪役令嬢’ってやつ? 私みたいな美しい者を苛め抜くという……)
いいねえ、いいねえ。こうじゃなきゃ。見てなさい、返り討ちにしてやるから。
異世界のマリー・アントワネットは、人々の視線を集めながら、私の前にやってきた。
「その装い、とても素敵ね! もしよろしければ、明日のお茶会にいらっしゃらない?」
「お茶会? 行きます!」
即答。迷う理由はゼロ。たとえ罠だろうと行ってやる。
こうして私――サヤーナ=ド・ギルレアは、城下町デビュー即日にして、貴族主催のお茶会への初参戦が決定してしまうのだった。
マルタが用意したのは、くすんだ茶色のシンプル過ぎるワンピースと擦り切れたマント。正直言って、辛気臭いったらありゃしない。
「申し訳ございません、お嬢様……でも、本当にこれしかないのです……」
マルタの申し訳なさそうな顔を見ていると、責める気もなくなってくる。
「ま、文句を言ってもしょうがないけどさ。でも、これを着るくらいなら、いっそのことカーテンを巻き付けるがマシじゃない?」
そう口にした私は、本当にカーテンに手を伸ばしていた。
「そうだ! なければ作ればいいんだわ!」
私とマルタは屋敷の中をくまなく探して、カーテン、テーブルクロス、クッションカバー……布と名のつく物すべてを一か所に集めた。
「あの、お嬢様……一体、何をなさるおつもりで?」
「まあ見てなさい!」
女子大の服飾科で培った縫製スキルと、アパレルメーカーで培ったデザイン&コーデ力が、今こそ火を吹く!
「ふふん、伊達に展示会で即完売したアイテムを作った女じゃないのよ?」
針と糸と、溢れんばかりの創作魂を総動員して二時間が経過した頃、そこには、ボロ布から生まれたとは思えないモード系ドレス(自称)が完成していた。ボロ布のほつれた部分をあえて活かしたアシンメトリーの裾、腰に巻いたゴブラン柄のサッシュベルト。そして背中には大胆なレースアップ。
「これは……斬新……でございますわね……?」
目を丸くするマルタに、私はにっこり微笑んだ。
「でしょでしょ? これが“リメイク”よ。ま、最先端のファッション業界にいた私からしてみたら、これくらいできて当然だけどね! 次はこのドレスに合った髪型とメイクね!」
鏡の前に座ると、隙間時間に見ていた動画サイトで流れて来た“量産型ハーフツイン”を参考に、自己流のアレンジを加えた。あとは軽く頬に血色足して、唇にツヤを。化粧道具なんてろくにないけど、アイシャドウは炭の粉、口紅はハーブを擦って代用。
――そして私は、“異世界×令嬢×原宿系”なスタイルで、城下町へと出かけていった。
「ちょっと、あの子見た?」
「何あの服……でも、なんか目が離せない!」
「髪型、どうなってるの……?」
街の視線が、一斉に私に集まる。やっぱり、狙い通り。無難じゃ埋もれるだけ。異世界だろうと何だろうと、“ちょっと変わってるけどなんかすごい”は正義!
私は通りの石畳を、ランウェイ気分で歩いていた。気分はもう完全にパリコレ。いいじゃん、いいじゃん。今まさに私はトレンドが生まれる瞬間にいる。
「お嬢様……」
後ろからそっと見守るようについてきたマルタが、半ば呆れたように、でもどこか嬉しそうに言った。
「本当に……変わられましたわね……」
「何を言っているの、私の革命は今、始まったばかりよ!」
ポジティブは全てを覆す。そしてこの“注目度”――使える。目立てばきっと声がかかる、声がかかればチャンスが生まれる。
一台の馬車が私を少し通り越したところで停車した。この世界に来たばかりの私でもわかる、いかにも貴族が乗っていそうな豪勢な馬車だ。
その馬車の扉が御者によって開けられると、中からフリルとリボンをふんだんに使ったドレスをまとった、縦ロールの令嬢が現れた。
(マリー・アントワネットかよ……)
異世界のマリー・アントワネットは、一瞬にして私に注がれていた人々の熱視線を奪い取った。
(何なの、こいつ……!)
ぎりりと下唇を噛む。が、ハッとひらめく。
(もしかして、これが‘悪役令嬢’ってやつ? 私みたいな美しい者を苛め抜くという……)
いいねえ、いいねえ。こうじゃなきゃ。見てなさい、返り討ちにしてやるから。
異世界のマリー・アントワネットは、人々の視線を集めながら、私の前にやってきた。
「その装い、とても素敵ね! もしよろしければ、明日のお茶会にいらっしゃらない?」
「お茶会? 行きます!」
即答。迷う理由はゼロ。たとえ罠だろうと行ってやる。
こうして私――サヤーナ=ド・ギルレアは、城下町デビュー即日にして、貴族主催のお茶会への初参戦が決定してしまうのだった。
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