「君を愛することはない」からの溺愛展開ってデフォルト設定だと思ってたんですが違いますか?

つかさ文研

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国家転覆の噂

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 どうしてこうなってしまったのか。
 インハート伯爵家の屋敷は貴族の中でもとてもこじんまりしている。夫婦と使用人家族の部屋が主を占めていて、申し訳程度の応接室しかない。そんな応接室のソファに帝国の第三皇子であるフェイリス殿下が座っている。
 この間のパーティーで着ていったドレス一着のみしか持っていない、ハレアはいつも通りの白いブラウスに紺色の膝丈スカートという、貴族らしからぬ格好で出迎えることとなった。ただ一ついつもと違うのは胸元に水色のバラのブローチをつけていることである。
 この魔具の発動範囲がどれほどか分からないが、帝都中心部の時計塔まで届くことを信じてつけている。
 ハレアの後ろにはヨーレンとモーネが従者として立っている。姿は見えていないが、入口付近にはリールが待機している。ルードはリールの部屋からキルシュにメッセージを送ったら、応接室の外で待機するようだ。
 フェイリス殿下側にも執事が一人、剣を腰に下げた護衛が一人後ろに控えている。

 フェイリス殿下はなんの疑いもなく、モーネが入れた紅茶を飲んだ。
「殿下は毒味などはなされないのですか?」
 ハレアは純粋な興味で質問をした。
「普段はしますよ。ですが、ここは魔術団長の屋敷であり、このお茶を入れたのは私の学校の同級生でもあるモーネさんです。私に毒を盛って殺してもメリットがないと思いますからね」
 そう言いながら彼は少年のような笑顔を向けた。まだ幼さが残るその顔はハレアに、弟のジュードを思い出させた。
「あの~、殿下にいくつか質問したいことがあるのですが……」
 ハレアは小さく右手を挙げた。
「もちろんです。申し訳ありませんが、この部屋に私とハレアさんの二人にしていただけますか?大丈夫ですよ、別に何かしようなんて考えていませんから」
 フェイリス殿下がそう言うと、ハレアと殿下を残し、応接室には誰もいなくなった。ハレアには全く気配は感じられないが、リールはきっとこの部屋のどこかにはいる。それだけで少しだけ安心感があった。

「質問というのは私の誕生日パーティーのラストダンスのことですか?」
 殿下はティーカップをソーサーに丁寧に置きながら、ハレアに質問をした。
「はい、そうです。殿下も知っての通り、私はインハート伯爵夫人ですし……」
「実は私もあの後、父である皇帝にめっぽう叱られてしまって。『お前は何を考えてるんだー!』って」
 そう言いながら彼は苦笑いをした。
「あなた方の結婚を提案したのは、やはり父だったんですね。そこで初めて知りました」
「はい。ウェル……あっ、主人の結婚相手を探しているという噂を聞きつけた私の父が私を推薦したようで……」
 ハレアはあまり格式の高い人との会話に慣れていないからか、身振り手振りが多くなり緊張を隠しきれていない。
「噂では契約結婚と聞いていたのですが、ミドルネームで呼び合うほどには仲がよろしいんですね」
「そうですね!とっても仲いいです!」
 ハレアは両手を合わせ、右頬に当て引きつった笑顔でアピールした。
「ちなみに私の噂は聞いたことありますか?」
 フェイリス殿下はそう言って紅茶を一口飲んだ。
「ええ、まあ、それなりには……」
 ハレアは殿下とは目を合わさずにそう言った。
「う~ん、女性をとっかえひっかえとか?国家転覆を企んでるとか?」
 フェイリス陛下は少し意地悪そうな笑顔でそう言う。
「まあ、そんな感じの……」
「ははは、そうですよね。女性に関しては全て否定できないですけど。自慢に聞こえるかもしれないですけど、学校では結構モテるんですよ?まあ、私が皇子だからだと思いますけど」
 そう言いながら彼は少しだけ寂しそうな顔をした。
「それにそんなこと言ったらローゼル兄さんの方が女性泣かせだと思いますよ。何せ『世紀の美青年』なんて呼ばれてますしね」
「先日のパーティーでご挨拶させていただきました。確かにとても綺麗なお顔立ちでした」
「ああ、ローゼル兄さんも魔術師団だから、インハート団長とも交流がありますもんね」
「そうみたいですね……」
「ローゼル兄さんなんてもういい年なのにいまだに婚約者すらいませんからね。あっ、そんなことを言ったら私もですけど」
 フェイリス殿下は少年のような笑顔をハレアに向けた。その無邪気な顔にハレアも少しドキッと顔を赤らめた。
「ちなみに皇族は侯爵家以上の身分の人としか婚姻できない決まりになっているんですよ。それもあって、この間のラストダンスに関しては怒られてしまって……。まあ、それでも私はあなたを諦められないですけど……」
 そう言ってカップの中の紅茶をすべて飲み干した。

「国家転覆の噂、アレ、あながち間違いじゃないですよ」

 そう言いながらハレアに向けた笑顔が邪心など一切ない、そんな屈託のなさだった。
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