「君を愛することはない」からの溺愛展開ってデフォルト設定だと思ってたんですが違いますか?

つかさ文研

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不可侵領域

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 ハレアは口を半開きにしてポカンとしている。その間抜けな顔にチェルシー殿下は「ぷっ……」と吹き出してしまった。笑われたことに気付き、ハレアはハッといつもの顔に戻った。
「あの~、お言葉ですが、それはないと思います」
 ハレアはチェルシー殿下に対して恐る恐る発言した。
「そもそも私たちの結婚自体、皇帝陛下からの提案という名のほぼ命令によるものです。様々な条件があり、それにたまたま合ったのが私だったのです。それに皇帝陛下であっても、魔術師団内は不可侵領域ですよね?魔術師団長の妻を殺すっていうのは正直あり得ないと思います。皇帝陛下側と魔術師団での内戦に繋がりかねませんし……。ちなみにもしそうなったら、チェルシー皇子殿下はどちらにつくのですか?」
 ハレアは言われっぱなしだったからか、少しだけ意地悪な質問をしてみた。
「ははは。ただでは転ばないのね!」
 大きな口を開けて、皇子らしからぬ豪快な笑いをした。
「まあ、でも父上が何やら動いてるのはホント。君が帝都を離れた時期と被ってたからてっきり。ゼゼと結婚させようとしてだと思ってたけど、逃げられたからだと……」
「ちなみに、フェイリス殿下とはもう和解……というか結婚とかはそういうのは本当にないので……」
「あっ、そうなんだ。でも、ゼゼも意外と強かな男だから、何か理由があったんでしょ?」
「あ~、あの~……。他の人との会話の内容を話すのはマナー違反かなぁっと……」
「えっ?俺皇子だけど?」
 ニコニコ笑顔をハレアに向ける。圧倒的な美しさが逆に圧力に変わる。
「えっと……」
 ハレアが困りながら彼から目を逸らす。
「皇族への反逆罪って知ってる~?」
 チェルシー殿下は足を組み、その足に肘をつき手のひらに顎を乗せた。
 そこまで言われてしまえばただの伯爵家の妻は立場がない。
「実は……」
 ハレアはフェイリス殿下から聞いた、皇帝陛下が戦争をしようとしているかもしれないということ、そしてそのために協力をしてほしいと言われていることも核心には触れずに話した。
「でも、それっておかしいよね?本当に戦争を止めたいのであれば、それこそ魔術師団を味方につければいいんじゃない?皇族でも基本不可侵領域なわけだし。君自身になにがあるの?俺はずっとそれが知りたかったんだけど」
 この人には濁して言っても穴を探してはほじくり返してしまう。
「えっと……」
 ハレアは扉の前に立っているルードを見た。心配そうにハレアのことを見ている。何かあればすぐにでも防音魔術を突破してきそうな勢いを感じる。
「実は、私、人より少し魔力量が多いんです。なので、その魔力を貸してほしいのだと思います……」
「いや、俺だって隊長やってるくらいだからその辺の魔術使える人よりは多いよ。ゼゼだって学校内では多いほうなんじゃないかな?それに、そんなに魔力量が多いのになんで昼間簡単な魔術を使うのをあの使用人に止められてたんだ?君はゼゼと同じ帝都の学校出身なんだろ?何かおかしくないか?見れば大体その人がどのくらい強いかは分かるつもりでいるけど、俺には君自身が魔術を使うのが苦手で不器用な人としてしか映っていない」
 美麗な顔の眉間が少し歪んだ。
「えっと……、魔術を使うのが苦手なのはおっしゃる通りです。単純に魔力量が多いんです。自分ではそれを使いこなせていないだけで……」
「その魔力量は大体普通の人よりどれくらい多い?」
「詳しい量は分かりません。比べたことがないです」
「じゃあ、それをどうやって証明できる?」
「チェルシー皇子殿下は今魔石はお持ちですか?」
「ああ、魔力不足になった時用の補給用に自分の魔力を入れたものを常に持ち歩いてるよ」
 チェルシー殿下はそう言いながらジャケット内ポケットの中から小さな小袋を取り出し、中から直径二センチ程度の白く濁った半透明の魔石を自分の手のひらに出した。白い魔石、風魔術の魔力が込められている魔石だ。
「この一個しかないけど、これを使って何かできるの?」
 そう言いながら魔石をハレアに渡した。
「もともと魔力注入されている魔石にはしたことがないんですけど……」
 ハレアは小さな魔石を見ながら考えた。
「ん?したことがない?」
 チェルシー殿下もこれからハレアが何をしようとしているのか想像がつかずに考えている。

「この魔石、壊してもいいですか?」

 ハレアは顔を上げ、チェルシー殿下の顔を見た。
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