「君を愛することはない」からの溺愛展開ってデフォルト設定だと思ってたんですが違いますか?

つかさ文研

文字の大きさ
15 / 68

街へ③

しおりを挟む
「キャー!じゃあ、本当に急に結婚が決まったんですね!運命ですね!素敵~!どうです?甘々な結婚生活は?冷徹魔術師なんて言われてますけど、奥様には溺愛してるっていうテンプレ展開ですよね~!キャー!」
「ちょっ!ちょっと待ってください!コレットさん?」
 カフェのガーデンスペースでハレアとコレットは頼んだ冷たい紅茶の氷が溶けて、グラスに水と紅茶の層ができるほどに話が盛り上がっている。ハレアの周りには自然とお喋り好きな人たちが集まる様だ。
「照れてるんですよね!大丈夫ですよ!夜のことなんて、そんな野暮なことは聞きませんから!」
 フンッ!と誇らしげな顔をするコレットだが、そうではない。
ハレアはこそこそと結婚後のことを語る。「愛することはない」と言われたこと。それから約二週間ほど会っていないこと。半年帰ってこないこともあるということ。自分も物語のような恋愛ができると思っていたが、会わないことにはどうしようもないこと。なんならもう、キルシュの顔をあんまり覚えていないこと。
「そうなんですね~。時計塔に行くのも止められていると……。う~ん……」
 コレットは眉間にしわを寄せて考えている。

「うん!詰んだ!」

 パァっと顔を明るくして『パンッ!』と手を叩く。
「えっ?」
 ハレアは困惑して口が半開きになる。
「もう、次の恋愛に行きましょう!既婚だからなんですか!」
「でも、浮気はちょっと……。世間体的にも……」
「行動に移さなければいいんです!精神的恋愛しちゃいましょ!」
「えっ!?」
「精神的恋愛です!学生時代いませんでしたか?影で見てるだけでドキドキしちゃうような!その人が何か食べてるだけで心が満たされるような!言葉を発するだけで耳が赤くなってしまうような!ふとした笑顔にみぞおちあたりがキュンっとなっちゃうような!動いているだけで世界に感謝する存在の人が!」
 コレットは指を祈るように絡ませ、空を見上げてキラキラとした目で語る。
「私、落ちこぼれで卒業もギリギリだったから、そんな余裕なかったです……」
「あら!そうなんですね!……まあ、私も女学校出身なのでそんな恋愛したことないです……。全部物語の受け売りです……。全然参考にならなくてすみません……」
 さっきまでの勢いはどこへやら。コレットは言葉を発するたびにしゅんっとしぼんでいくようだった。
「いえ、屋敷以外の方とお話したのが久しぶりだったので、すごく気晴らしになりました!またこうやってお茶をしていただけますか?」
「はい!もちろん!いつでも!」
 コレットはまたいつものような屈託のない笑顔をハレアに向けた。

「あっ!そうだ!魔道具店行きませんか?」
 コレットは思い出したように言った。
「魔道具?いいですけど、コレットさんって魔具に興味ありましたっけ?」
 ハレアは首をかしげる。
「いえ、全く興味がありません!でも、そこで働いている人に興味があります!実は、巷で有名なんですよ!」
 コレットは耳打ちをするように手を添えて言っているが、声量をあまり抑えてないから意味がない。ガーデンスペースで周りとの距離も離れているから聞こえている様子はないが。
「最近、店番の人が変わったそうで。その人がすっごいイケメンなんですって!でも、私は魔術が使えるわけでもないですし、そこのお店に行く用事がないのでハレアさんと是非一緒にと思いまして!」
 ハレアは自然と笑みがこぼれる。コレットは自分を貴族扱いも魔力の化け物扱いもしない、自然体でいられる数少ない存在だ。
「もちろん!行きましょう!イケメン見ましょ!」
 ハレアは少しいたずらな笑顔をする。
「そうです!その意気です!イケメン見て心を潤しましょ!!!」
 コレットはハレアの手を引っ張り先導した。

―――

「いらっしゃいませ、お嬢さッ!げっ!ハレア・ロンダム!?」
 少し癖のあるふわふわとしたキラキラと光るブロンドヘアに、バイオレットカラーの瞳、鼻筋のすうっとした美形の男の顔が歪む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

処理中です...