「君を愛することはない」からの溺愛展開ってデフォルト設定だと思ってたんですが違いますか?

つかさ文研

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魔力暴走

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「お兄ちゃん、頑張ってね!いってらっしゃい!」
「ああ……」
「こらっ!ソレート!挨拶はちゃんとしなさい!」
 ガーリアは不愛想に試験へと向かうソレートに向かって咎めた。
「いっ……、いってきます……」
 緊張からか、いつもより小さく自信なさげな声だった。
「全く!思春期はこれだから!」
 ガーリアは少し怒りながら屋敷の中に戻っていった。

「ハレア、今日は一緒にお料理をする?それとも絵本を読む?」
「今日、お昼を食べたらお友達と遊ぶお約束をしてるの!」
「いいわね!私もハレアのお友達に会いたいわ!」
「リールはね、土魔術が使えるんだって!それでね、お花を咲かせられるの!昨日そのお花をもらったの!花瓶に入れたかったんだけど、一輪だからヘニャってなっちゃってダメだったの!残しておきたいのに……」
「じゃあ、午前中はそのお花を栞にしましょう!そしたら一生残るわよ!」
「ほんとう!?作ったらリールにも見せたい!」
「いいわね!」

「そう!上手ね!あとはリボンを結んでおしまいよ!」
 出来上がった栞を見て、ハレアはリールに早く見せたくてうずうずしていた。
「リボンは黒にする!」
「あら、珍しいわね。ハレアは青が好きだから青にすると思ってたわ!」
「リールの髪と目の色が黒なんだよ!あんまり見たことないから綺麗って思ったの!」
「そうなのね!今、黒のリボン探してくるわ!ちょっと待っててね」
 そう言って、部屋からガーリアが出て数分後、屋敷の中が少し騒がしくなった。
 ハレアは部屋の外の声に耳を澄ませた。

「奥様が?赤ちゃんは?赤ちゃんは無事なのね。そう……、出血が……。旦那様は今日も付き添ってはいるけどねぇ。いいわ、私が今から行くわ!」
 ガーリアの焦った様子が声だけで伝わってきた。
(しゅっけつって血が出るってことだよね……)
 ハレアは一気に不安になった。大好きな母親がいなくなる恐怖だ。

「ハレア、ごめんなさいね!病院に行かなきゃいけなくなっちゃったの!お友達と遊んでも夕方までには帰るのよ!」
 ガーリアは上着を着ながら、慌ただしく出て行った。
「いってらっしゃい……」
 ハレアの声はガーリアに届いたのだろうか。それすら分からないほどに彼女は足早にハレアのもとから去って行った。

 ハレアはリボンのつけていない栞を見つめた。
(みんな、頑張ってる。ママもパパもお兄ちゃんもガーリアも……。リールも魔術の練習してた……。私だけ何もしてない……)

 ハレアは思うがままに玄関から庭に出た。花壇には庭師が植えた、まだ咲いていない花の苗が並んでいる。
(私も、魔術でお花を咲かせられたら……。ママはきっと喜んでくれるはず!パパもお兄ちゃんも凄いって言ってくれるはず!リールのやり方を真似すれば……)
 ハレアは一つの苗を優しく手で包んだ。
(大丈夫……。できる……。私にだってできるはず……。パパもお兄ちゃんも魔術が使えるってことは私にも魔術の才能があるはず……。リールと一緒に学校に行く約束だってしたもん……。大丈夫……)
 ハレアの手が苗の葉っぱに触れた瞬間、ハレアの手から溢れるように水が沸き上がった。その量は一瞬にして増え、雲一つない暴風と共に空から大雨が降り注いだ。ハレアは自分が出した大量の水に巻き込まれ、水流の真ん中へと飲まれていった。
 ゴゴゴゴゴという音が当たりに響く。屋敷の使用にも庭の只ならぬ様子に気付き、玄関を開けると、屋敷の中まで水が入ってきた。庭の中心の真っ黒な濁流の渦に一瞬鮮やかな青が見えた。ハレアのワンピースだと使用人の一人が気付いたが、ただでさえ屋敷の中も水が流れ込んできて足を取られて動けない。助けに行けるはずもなかった。

 数十分後、やっと庭の水はある程度引き、雨風だけになった頃合いを見て使用人が外へと出る。庭の隅の塀に引っかかるようにハレアが倒れていた。
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