ねじ巻きトカゲの愛と嘘

十年島

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ねじ巻き色のHappy New Yeah

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「ねぇねぇおかーさん!これなに!」



少年が指す指の先には、一箱の色えんぴつ。



「それはね、色えんぴつって言うのよ」

「いろえんぴつ?」

「そう、例えば~これ、何色かわかる?」

「えっとねえっとね、あか!」

「正解!じゃあちょっと見てて、これをこうして、こうなふうに…」



母親が画用紙に絵を書いていく。



「じゃーん!できた。」

「あ、とかげだ!」



少年は大喜び。

「これで遊んでみて」と言って母親は色えんぴつの箱を手渡す。

少年は思い描くままの絵を描く。

好きなもの、目の前にあるもの。

子供のお絵描きなんてそんなものだ。

ふと、少年が顔を上げる。



「おかーさん!これなにいろ?」 



返事はない。

大方洗濯でもしているのだろう。



「おかーさん?」



すると、少年の問にどこからともなく声が答えた。



「それはね…ねじ巻き色だよ…」

「ねじ…まき…?」



少年の問いに答えるものはもういない。

少年も、もう何も問うことはなかった。









場面は変わって、ある時間、ある場所。



「あぁ…もう!」



一人の少女の叫び声が廊下まで響く。

ここはある高校の美術室。

彼女は美術部の部員の一人だ。



「なんっか違うのよね…!」



所謂スランプ、というやつだろう。

コンテストが近いというのに満足のいく絵がかけていない。



彼女は焦っている。

前回のコンテストで、彼女は完璧に限りない作品を生み出した。

だが、そのコンテストで彼女は準優勝だった。



一位を取った作品は、なんの変哲もない風景画。

中心に一人の男がいるだけ。

歪なのは、男がねじ巻き色単色で描かれていること。

色鮮やかな景色の真ん中に、不格好とも取れる単色の男一人。

非日常の中の日常を描いた独特な一枚絵に、会場すべてが虜にされた。



何より少女こそ、その絵をとても美しいと感じ取ってしまった。



「違う、違う!こんなんじゃ!…こんなんじゃあの絵には……」



出来ないと分かりつつ筆を握り続ける。









「como é? Quais são suas impressões agora?」



「えぇ、とっても嬉しいです。子供の頃からの夢が叶ったようです。」



「Vem vill du berätta det här först?」



「そうですね…やっぱり、私をここまで成長させてくれたライバル、でしょうか。」



誰も居ない部屋で少女は一人呟く。

少女の目の前には一つのキャンバス。



それはねじ巻き色一色に塗りつぶされていた。







おめでとうございます。

おめでとうございます。おめでとうございます、

おめでとうごぎいます?おめれとうございます。

おめでとうずざいます!おめでえうございます、

おめでとうございます

おめでとうございます

おめでとうございます

オめでくのごびびめす











おめでとうございます。
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