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第十一章
506:レイカの孤独な闘い
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(行方不明のイナ社長が鍵になるかも知れないわね……)
ハドリが黒幕であったなら、ECN社のトップにはオイゲンのような人物を就けるのではないか、とレイカは思う。
オイゲンがOP社に出向していた時点ではハドリは彼を警戒しながらも重用していたという情報を得ている、また、ハドリがその気になればいつでも彼をECN社の社長の座から引きずり降ろし、ハドリの子飼いの者をその座に就けることも可能であったはずだ。
しかし、ハドリはそうしなかった。
警戒していたとはいえ、ハドリはフジミ・タウン及びインデストへの遠征において、オイゲンを常に自らの近くに置いていたらしい。
これは複数の情報源から得られたもので、その信憑性は高いと思われる。
得られた情報から、ハドリはオイゲンを気に入っていたのではないか? とレイカは考えた。
これは信頼、というより扱いやすい、という意味においてである。
その場合、もしもオイゲンが生存しており、ハドリの手に落ちていたとしたら、これは非常に厄介な事態になる。
存在だけでECN社に対する十分な取引材料となり得る人物である。
それだけではない。ミヤハラにとって代わってECN社の社長、それもハドリの傀儡としては最適な人物であるように思われた。
オイゲンが健在であるならば、ミヤハラ抜きでもECN社を掌握することは十分可能であろう。
更に恐ろしい方法として、オイゲンにミヤハラを処断させる、という手もある。
このようなケースを思いついてしまう自分が嫌になるが、レイカは考えることを止めなかった。
ミヤハラの処断を要求された場合、オイゲンはどのような決定を下すであろうか?
それはレイカにも未知数であった。
オイゲンとミヤハラの仲がよかったことはレイカもよく知っている。
あの無精なミヤハラが、未だにオイゲンの行方を捜させていることがそれを証明している。
ただし、オイゲンが揉め事を好まない性格であることもレイカは見抜いていた。
ミヤハラの処断を迫られたとしたら、それは温厚で人の好いオイゲンにとっては非常に苦しい決断に違いない。
オイゲンの性格からハドリに反旗を翻すことはないであろう。
顧客としてレイカはオイゲンと何度も接したことがあるが、彼は義理堅い性格であるようにも思われた。
(そのような事態になれば……彼は、自らの生命を断つ決断をするのではないか?)
そう考えて、レイカは首を横に振った。
何故、ここまでECN社やオイゲンの行く末にこだわるのか……?
(こだわってしまっているわね、私。それは何のため……?)
彼女は彼女なりにその理由を理解していた。
結局、彼女にとって居心地のよい場所であったからだ。
彼女は、仕事の世界などで及第点を大幅に上回る成果を出しており、何かとマスコミ等への露出が多かった。そのため、権力や名声に対する志向性が強いように思われているのではないか、と気に病むことが多かった。
権力闘争のような揉め事や争い事は彼女が最も嫌うところであるのだが、どうも周辺はそう理解していないようにレイカには思われた。
自分に友好的でなかった人物は、そのほとんどが権力志向の強い人物ばかりだ、とレイカは感じている。
権力志向の強い者は勝手に彼女も同類と考え、攻撃対象にしてしまう。
レイカはただ、そうした揉め事や争い事に自らが巻き込まれないよう、今まで職務に邁進してきたつもりだ。
このような者たちが、闘争を仕掛ける相手として彼女を選ばないように。
ただ、彼女のこうした努力が必ずしも、彼女の望む結果を生むとは限らなかった。
だが、現在のECN社は彼女にとって数少ない居心地のよい場所である。
彼女にとって敵対的な人物はおらず、本来の彼女自身のまま行動できるからだ。
ミヤハラ、サクライ、エリックなどといった幹部は、よい意味でレイカとの距離を保っている。他のECN社の従業員の大多数がそれに倣ったため、彼女としても気を遣わずに済んでいる。
彼女の顧客であったオイゲンもそうであったが、ECN社の社風は自分と相性がよい、とレイカは考えている。
現在の居場所を守るためのレイカの戦いは続く。
彼女が戦いを止められる日は訪れるのだろうか?
ハドリが黒幕であったなら、ECN社のトップにはオイゲンのような人物を就けるのではないか、とレイカは思う。
オイゲンがOP社に出向していた時点ではハドリは彼を警戒しながらも重用していたという情報を得ている、また、ハドリがその気になればいつでも彼をECN社の社長の座から引きずり降ろし、ハドリの子飼いの者をその座に就けることも可能であったはずだ。
しかし、ハドリはそうしなかった。
警戒していたとはいえ、ハドリはフジミ・タウン及びインデストへの遠征において、オイゲンを常に自らの近くに置いていたらしい。
これは複数の情報源から得られたもので、その信憑性は高いと思われる。
得られた情報から、ハドリはオイゲンを気に入っていたのではないか? とレイカは考えた。
これは信頼、というより扱いやすい、という意味においてである。
その場合、もしもオイゲンが生存しており、ハドリの手に落ちていたとしたら、これは非常に厄介な事態になる。
存在だけでECN社に対する十分な取引材料となり得る人物である。
それだけではない。ミヤハラにとって代わってECN社の社長、それもハドリの傀儡としては最適な人物であるように思われた。
オイゲンが健在であるならば、ミヤハラ抜きでもECN社を掌握することは十分可能であろう。
更に恐ろしい方法として、オイゲンにミヤハラを処断させる、という手もある。
このようなケースを思いついてしまう自分が嫌になるが、レイカは考えることを止めなかった。
ミヤハラの処断を要求された場合、オイゲンはどのような決定を下すであろうか?
それはレイカにも未知数であった。
オイゲンとミヤハラの仲がよかったことはレイカもよく知っている。
あの無精なミヤハラが、未だにオイゲンの行方を捜させていることがそれを証明している。
ただし、オイゲンが揉め事を好まない性格であることもレイカは見抜いていた。
ミヤハラの処断を迫られたとしたら、それは温厚で人の好いオイゲンにとっては非常に苦しい決断に違いない。
オイゲンの性格からハドリに反旗を翻すことはないであろう。
顧客としてレイカはオイゲンと何度も接したことがあるが、彼は義理堅い性格であるようにも思われた。
(そのような事態になれば……彼は、自らの生命を断つ決断をするのではないか?)
そう考えて、レイカは首を横に振った。
何故、ここまでECN社やオイゲンの行く末にこだわるのか……?
(こだわってしまっているわね、私。それは何のため……?)
彼女は彼女なりにその理由を理解していた。
結局、彼女にとって居心地のよい場所であったからだ。
彼女は、仕事の世界などで及第点を大幅に上回る成果を出しており、何かとマスコミ等への露出が多かった。そのため、権力や名声に対する志向性が強いように思われているのではないか、と気に病むことが多かった。
権力闘争のような揉め事や争い事は彼女が最も嫌うところであるのだが、どうも周辺はそう理解していないようにレイカには思われた。
自分に友好的でなかった人物は、そのほとんどが権力志向の強い人物ばかりだ、とレイカは感じている。
権力志向の強い者は勝手に彼女も同類と考え、攻撃対象にしてしまう。
レイカはただ、そうした揉め事や争い事に自らが巻き込まれないよう、今まで職務に邁進してきたつもりだ。
このような者たちが、闘争を仕掛ける相手として彼女を選ばないように。
ただ、彼女のこうした努力が必ずしも、彼女の望む結果を生むとは限らなかった。
だが、現在のECN社は彼女にとって数少ない居心地のよい場所である。
彼女にとって敵対的な人物はおらず、本来の彼女自身のまま行動できるからだ。
ミヤハラ、サクライ、エリックなどといった幹部は、よい意味でレイカとの距離を保っている。他のECN社の従業員の大多数がそれに倣ったため、彼女としても気を遣わずに済んでいる。
彼女の顧客であったオイゲンもそうであったが、ECN社の社風は自分と相性がよい、とレイカは考えている。
現在の居場所を守るためのレイカの戦いは続く。
彼女が戦いを止められる日は訪れるのだろうか?
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