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第十二章
560:会談終了
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(上手いことOP社を取り込みましたね。これからどうするのやら。何か考えているみたいだが、対応を誤ると墓穴を掘るのはアカシ代表ではなく、「勉強会」グループになるかもしれないな)
レイカとオソダのやり取りを見ていたブナイは感心した様子で肯いた。
(そうだとしたら、うちとしては望ましい方向に行ったように思うが、まだ油断は禁物だな)
ブナイの言うところの「うち」は「勉強会」グループではなかった。
彼は「勉強会」グループの動向を探るため、敢えて彼らに情報提供する形で「勉強会」グループに潜りこんでいる。
彼の言う「うち」で、彼は「ゴールド」というコードネームで呼ばれていた。
彼の言う「うち」は、「判定者とその支援者」と呼ばれることの多いグループである。
彼は、判定対象となる者たちの動向を把握し、「判定者とその支援者」にその情報を流す役割を担っていた。
今回の会談では判定対象が所属している「勉強会」グループの他に、もう一人観察すべき人物がいた。
レイカ・メルツである。
「ダイヤ」と呼ばれる「判定者とその支持者」の実質的なトップが、彼にそう命じたのである。
ブナイから見ると、「ダイヤ」がレイカに持つ感情はかなり複雑なもののように思える。
レイカは彼らの言う判定対象ではないのだが、その象徴のような人物になるらしい。
今回の会談ではレイカは意図していなかったであろうが「判定者とのその支持者」に有益な動きを見せている。
レイカの存在は「判定者とのその支持者」に役立つのであろうが、その彼女が判定対象の象徴というのはダイヤにとって都合が悪いのであろう。
(見物する立場としては、復讐者に葛藤があるほうが楽しめる、といったところか。ただ、レイカ・メルツが判定対象の象徴、というのは少し違う気もするな)
ブナイはレイカが何故「判定対象の象徴」的な扱いになるのか、その理由を知っている。
だが、それはレイカに責のある性質の問題ではないと彼は判断している。
恐らくダイヤやアレクといった「判定者とその支持者」のトップ層もそう感じていると思われる。
問題なのは、レイカの活躍がある判定対象の評価を上げる可能性がある、という点である。
この点については、評価が上がったところで判定対象となる原因を作った罪に変わりはない、という立場なのだが、ダイヤやアレクはそうは考えていないようだ。
特にアレクは、そうした罪を犯した者が後にどれほどの善行を行おうとも、その評価を上げることがあってはならないと考えているようで、ブナイから見ればちょっとついていけない状態なのだ。
ただ、彼としては「判定者とその支援者」の他のメンバーと深く関わろうとは考えていないので、必ずしも他のメンバーの考えを受け入れる必要はないと考えている。
彼はある種の快楽を求めて、「判定者とその支援者」に手を貸しているにすぎないのだ。
「判定者とその支持者」は、彼にとって非常に興味深い集団であった。
彼らは復讐者であったが、彼らが目的を遂げたところで、「復讐をした」という事実以外の何かを手に入れられるとは考えにくいこと。
復讐のきっかけとなる事件が、その凄惨さと比較して世間での認知度が低いこと。
復讐を受ける側が、復讐者の存在に恐らく気付いていないであろうこと。
そして、復讐する側が自らの存在を表に出していないこと。
トップ層に強固な信念を持った者がおり、復讐をその信念を実現するための手段としていること。
など、数え上げればきりがない。
(復讐を通して彼らが何をするか、それがなされた後、彼らは果たしてどうするのか……最後まで楽しませてもらいたいところだね。おっと、そろそろ仕事に戻らないとな)
会談は終了に向かいつつあり、書記としてのブナイの仕事が一気に忙しくなってきた。
最初、「勉強会」グループが不毛な発言を繰り返し、会談の進行が危ぶまれた。
しかし、レイカが豊富な手札を場に投じたために、これらのカードを欲しがった「勉強会」グループやOP社が食いついた。
ブナイが感心したのは、レイカが用意したカードの豊富さであった。
ECN社の広報企画室長、という立場は確かにカードを用意するのにおいて有利ではある。
ただ、会談に際してほとんど切ることのできるカードを持たない相手に対して、過剰とも言えるカードを準備したように彼には思える。
そして、相手には持っているカードの中身どころか、今の今までカードの枚数すら悟られないように対応していた。
また、今回の会談でOP社、IMPU、「勉強会」グループのそれぞれの動きに関与できる状況を作り上げた。
今後、インデストの動向にECN社が影響力を持つことになるだろう。
(レイカ・メルツ、か。連中を追い詰めるのはこの女かもしれないが、もしそうなればダイヤやアレクはどう思うのだろうか……)
それはそれで面白い、と考えるブナイである。
その後の議論は特に荒れることもなく進んでいった。
結局、会談は予定を三〇分ほどオーバーして終了した。
レイカとオソダのやり取りを見ていたブナイは感心した様子で肯いた。
(そうだとしたら、うちとしては望ましい方向に行ったように思うが、まだ油断は禁物だな)
ブナイの言うところの「うち」は「勉強会」グループではなかった。
彼は「勉強会」グループの動向を探るため、敢えて彼らに情報提供する形で「勉強会」グループに潜りこんでいる。
彼の言う「うち」で、彼は「ゴールド」というコードネームで呼ばれていた。
彼の言う「うち」は、「判定者とその支援者」と呼ばれることの多いグループである。
彼は、判定対象となる者たちの動向を把握し、「判定者とその支援者」にその情報を流す役割を担っていた。
今回の会談では判定対象が所属している「勉強会」グループの他に、もう一人観察すべき人物がいた。
レイカ・メルツである。
「ダイヤ」と呼ばれる「判定者とその支持者」の実質的なトップが、彼にそう命じたのである。
ブナイから見ると、「ダイヤ」がレイカに持つ感情はかなり複雑なもののように思える。
レイカは彼らの言う判定対象ではないのだが、その象徴のような人物になるらしい。
今回の会談ではレイカは意図していなかったであろうが「判定者とのその支持者」に有益な動きを見せている。
レイカの存在は「判定者とのその支持者」に役立つのであろうが、その彼女が判定対象の象徴というのはダイヤにとって都合が悪いのであろう。
(見物する立場としては、復讐者に葛藤があるほうが楽しめる、といったところか。ただ、レイカ・メルツが判定対象の象徴、というのは少し違う気もするな)
ブナイはレイカが何故「判定対象の象徴」的な扱いになるのか、その理由を知っている。
だが、それはレイカに責のある性質の問題ではないと彼は判断している。
恐らくダイヤやアレクといった「判定者とその支持者」のトップ層もそう感じていると思われる。
問題なのは、レイカの活躍がある判定対象の評価を上げる可能性がある、という点である。
この点については、評価が上がったところで判定対象となる原因を作った罪に変わりはない、という立場なのだが、ダイヤやアレクはそうは考えていないようだ。
特にアレクは、そうした罪を犯した者が後にどれほどの善行を行おうとも、その評価を上げることがあってはならないと考えているようで、ブナイから見ればちょっとついていけない状態なのだ。
ただ、彼としては「判定者とその支援者」の他のメンバーと深く関わろうとは考えていないので、必ずしも他のメンバーの考えを受け入れる必要はないと考えている。
彼はある種の快楽を求めて、「判定者とその支援者」に手を貸しているにすぎないのだ。
「判定者とその支持者」は、彼にとって非常に興味深い集団であった。
彼らは復讐者であったが、彼らが目的を遂げたところで、「復讐をした」という事実以外の何かを手に入れられるとは考えにくいこと。
復讐のきっかけとなる事件が、その凄惨さと比較して世間での認知度が低いこと。
復讐を受ける側が、復讐者の存在に恐らく気付いていないであろうこと。
そして、復讐する側が自らの存在を表に出していないこと。
トップ層に強固な信念を持った者がおり、復讐をその信念を実現するための手段としていること。
など、数え上げればきりがない。
(復讐を通して彼らが何をするか、それがなされた後、彼らは果たしてどうするのか……最後まで楽しませてもらいたいところだね。おっと、そろそろ仕事に戻らないとな)
会談は終了に向かいつつあり、書記としてのブナイの仕事が一気に忙しくなってきた。
最初、「勉強会」グループが不毛な発言を繰り返し、会談の進行が危ぶまれた。
しかし、レイカが豊富な手札を場に投じたために、これらのカードを欲しがった「勉強会」グループやOP社が食いついた。
ブナイが感心したのは、レイカが用意したカードの豊富さであった。
ECN社の広報企画室長、という立場は確かにカードを用意するのにおいて有利ではある。
ただ、会談に際してほとんど切ることのできるカードを持たない相手に対して、過剰とも言えるカードを準備したように彼には思える。
そして、相手には持っているカードの中身どころか、今の今までカードの枚数すら悟られないように対応していた。
また、今回の会談でOP社、IMPU、「勉強会」グループのそれぞれの動きに関与できる状況を作り上げた。
今後、インデストの動向にECN社が影響力を持つことになるだろう。
(レイカ・メルツ、か。連中を追い詰めるのはこの女かもしれないが、もしそうなればダイヤやアレクはどう思うのだろうか……)
それはそれで面白い、と考えるブナイである。
その後の議論は特に荒れることもなく進んでいった。
結局、会談は予定を三〇分ほどオーバーして終了した。
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