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第十三章
609:天才的要求家、情報提供を要求する
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「状況はわかりました。ところで、マネージャーはこれからどうされるのですか?」
ロビー・タカミは画面に映る上司に話しかけた。
彼の姿は「はじまりの丘」近くにあるECN社の施設に設けられた通信室内にある。
「技術的な面から室長を支援することになるね。室長の件は本社に任せてもらって、タカミ君たちにはプロジェクトに専念してもらえればいいかな」
「わかりました。室長の件は、『とおえんてぃ? ず』の三人やホンゴウさんにも伝えますよ。特に先輩方は状況を知りたがっていましたから」
ロビーは「東部探索隊」の次の隊の派遣について、上司に相談を持ちかけていた。
プロジェクトの規模が大きく、ロビー自身の権限だけでは対応できないことが少なくない。そのついでにちゃっかり他のことも要求するのが彼らしい。
「今後の活動に支障が出てもよくないだろうから、それは仕方ないね」
その答えにロビーはやれやれといった様子で大げさに両手を広げた。
そして、ふうとひとつ息を吐いてから画面に話しかける。
「それと、いくつか対応していただけると仰られていた件はどうなりましたか?」
「秘書さんの件は社長と相談したけど、公にはしにくいので個人的に調査することにしたよ。それと君の隊は組織上他の隊から独立した形にしたから、今後も自由に行動してもらって構わない」
ロビーはその言葉にうなずいたものの、腕組みを解いて額に手をやって何かを考えている様子を見せていた。
話の相手はロビーより五つも役職等級が高く、相手からは失礼な態度と見られても仕方がない。
しかし、画面の先の相手はロビーの態度を咎めることなく、気になることがあるのかとロビーに尋ねた。
「あ、いえ、アイネス先生と秘書さんが欠けた分をどうしようかなと考えていたのですが」
それを聞いた画面の先の相手はそうだねぇ、とうなずいて考えはじめた。
要するに欠けたメンバーの代替要員を寄越せということであり、ロビーの立場を考えればこの要求は少々図々しいものである。
ただ、画面の先の相手━━ECN社上級チームマネージャーのエリック・モトムラは、部下に対して真摯な性質であった。
亡くなったウォーリー・トワの部下時代は、どちらかといえば時々口をついて出る毒舌のイメージが強かったが、これは上司の影響であるようだった。
「我々が調査とデータ収集に専念できれば、本社でもかなり早く状況が把握できると思うのですけどねえ」
ロビーが軽い調子で畳み掛けた。
本人は意識していないのだが、目上の者に自分の要求を飲ませることを得意としている。
本社でロビーの隊の状況が迅速に把握できることは、エリックにとっても魅力的である。
「東部探索隊」プロジェクトの責任者はエリックであり、彼はプロジェクトの成果に責任を負っている。
そして、投入された費用や人員の大きさから、社内のプロジェクトに対する感心は日に日に強さを増している状況である。
新たな発見、特にECN社の事業にプラスになるものであれば早急にその情報を得たいというのがエリックの本音だ。
「三月一〇日に『はじまりの丘』に到着予定のメンバーがいるから、彼らにやってもらうことにする。他の業務と兼務してもらうから隊に同行はさせられないけど、何かと役に立つはずだ」
エリックの回答はロビーにとって満足のいくものであった。
ロビーとしても隊に同行しないメンバーのほうがありがたかった。
現在のメンバーは勝手をよく知っている上に、非常に連携のとりやすい組み合わせである。
これに新たなメンバーが加わった場合、それが原因で隊に不協和音が生じかねない。
エリックもそれを考慮して、敢えて隊に同行しない者を選んだのだが、そのことを口にはしなかった。
エリックの選んだ二人は、カンナ・サイリという女性と、リツ・ゴウザという男性で、サイリがロビーと同い年、ゴウザはその一つ下とのことであった。
後にロビーがこの二人と顔を合わせたとき、エリックの人選に感心することになるのだが、この時点ではロビーは彼らが選ばれた理由を把握してはいなかった。
「マネージャー、メルツ室長の状況は進展があり次第こちらにも伝えていただけると助かります。先輩方が気にしているので」
ロビーのこの依頼に対してエリックは、表に出さないようにと念押しした上で、対応すると回答したのだった。
「やれやれ、これで先輩方に怒られないで済みそうだ」
ロビーは消えた画面を前にそうつぶやいた。
エリックについてはロビーより更に関係各所への調整が難しいとは思われる。だが、それはロビーの知ったことではない。
レイカ・メルツが行方不明となるきっかけとなった、インデストのホテル爆発事件が発生してから一週間が経過していた。
マスコミがこの事件を報じたとき、ロビーが率いていた「とおえんてぃ? ず」の三人はレイカの安否を真っ先に知りたがった。
彼女達にはレイカと一緒に仕事をしていた時期があり、同じ仕事をした仲間としてその安否を気遣ったのである。
ロビーもレイカとは面識があり、その安否は気にかかった。
そこで上司であり、親しいエリックを通じて事件とレイカの安否についてエリックに情報提供を求めたのであった。
ロビー・タカミは画面に映る上司に話しかけた。
彼の姿は「はじまりの丘」近くにあるECN社の施設に設けられた通信室内にある。
「技術的な面から室長を支援することになるね。室長の件は本社に任せてもらって、タカミ君たちにはプロジェクトに専念してもらえればいいかな」
「わかりました。室長の件は、『とおえんてぃ? ず』の三人やホンゴウさんにも伝えますよ。特に先輩方は状況を知りたがっていましたから」
ロビーは「東部探索隊」の次の隊の派遣について、上司に相談を持ちかけていた。
プロジェクトの規模が大きく、ロビー自身の権限だけでは対応できないことが少なくない。そのついでにちゃっかり他のことも要求するのが彼らしい。
「今後の活動に支障が出てもよくないだろうから、それは仕方ないね」
その答えにロビーはやれやれといった様子で大げさに両手を広げた。
そして、ふうとひとつ息を吐いてから画面に話しかける。
「それと、いくつか対応していただけると仰られていた件はどうなりましたか?」
「秘書さんの件は社長と相談したけど、公にはしにくいので個人的に調査することにしたよ。それと君の隊は組織上他の隊から独立した形にしたから、今後も自由に行動してもらって構わない」
ロビーはその言葉にうなずいたものの、腕組みを解いて額に手をやって何かを考えている様子を見せていた。
話の相手はロビーより五つも役職等級が高く、相手からは失礼な態度と見られても仕方がない。
しかし、画面の先の相手はロビーの態度を咎めることなく、気になることがあるのかとロビーに尋ねた。
「あ、いえ、アイネス先生と秘書さんが欠けた分をどうしようかなと考えていたのですが」
それを聞いた画面の先の相手はそうだねぇ、とうなずいて考えはじめた。
要するに欠けたメンバーの代替要員を寄越せということであり、ロビーの立場を考えればこの要求は少々図々しいものである。
ただ、画面の先の相手━━ECN社上級チームマネージャーのエリック・モトムラは、部下に対して真摯な性質であった。
亡くなったウォーリー・トワの部下時代は、どちらかといえば時々口をついて出る毒舌のイメージが強かったが、これは上司の影響であるようだった。
「我々が調査とデータ収集に専念できれば、本社でもかなり早く状況が把握できると思うのですけどねえ」
ロビーが軽い調子で畳み掛けた。
本人は意識していないのだが、目上の者に自分の要求を飲ませることを得意としている。
本社でロビーの隊の状況が迅速に把握できることは、エリックにとっても魅力的である。
「東部探索隊」プロジェクトの責任者はエリックであり、彼はプロジェクトの成果に責任を負っている。
そして、投入された費用や人員の大きさから、社内のプロジェクトに対する感心は日に日に強さを増している状況である。
新たな発見、特にECN社の事業にプラスになるものであれば早急にその情報を得たいというのがエリックの本音だ。
「三月一〇日に『はじまりの丘』に到着予定のメンバーがいるから、彼らにやってもらうことにする。他の業務と兼務してもらうから隊に同行はさせられないけど、何かと役に立つはずだ」
エリックの回答はロビーにとって満足のいくものであった。
ロビーとしても隊に同行しないメンバーのほうがありがたかった。
現在のメンバーは勝手をよく知っている上に、非常に連携のとりやすい組み合わせである。
これに新たなメンバーが加わった場合、それが原因で隊に不協和音が生じかねない。
エリックもそれを考慮して、敢えて隊に同行しない者を選んだのだが、そのことを口にはしなかった。
エリックの選んだ二人は、カンナ・サイリという女性と、リツ・ゴウザという男性で、サイリがロビーと同い年、ゴウザはその一つ下とのことであった。
後にロビーがこの二人と顔を合わせたとき、エリックの人選に感心することになるのだが、この時点ではロビーは彼らが選ばれた理由を把握してはいなかった。
「マネージャー、メルツ室長の状況は進展があり次第こちらにも伝えていただけると助かります。先輩方が気にしているので」
ロビーのこの依頼に対してエリックは、表に出さないようにと念押しした上で、対応すると回答したのだった。
「やれやれ、これで先輩方に怒られないで済みそうだ」
ロビーは消えた画面を前にそうつぶやいた。
エリックについてはロビーより更に関係各所への調整が難しいとは思われる。だが、それはロビーの知ったことではない。
レイカ・メルツが行方不明となるきっかけとなった、インデストのホテル爆発事件が発生してから一週間が経過していた。
マスコミがこの事件を報じたとき、ロビーが率いていた「とおえんてぃ? ず」の三人はレイカの安否を真っ先に知りたがった。
彼女達にはレイカと一緒に仕事をしていた時期があり、同じ仕事をした仲間としてその安否を気遣ったのである。
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