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第十三章
611:新たな協力者
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ロビーはエリックと連絡を取った後、再び会議室に戻ってきた。
そして会議室に残っていた第二次隊のメンバーに対して、第二次隊の役割分担と出発予定日について説明を始めた。当然、「はじまりの丘」に到着していないサイリとゴウザの姿はない。
情報分析を「はじまりの丘」に派遣されるサイリとゴウザが担当させることになったためか、役割分担についてはある程度メンバーが予想できるものであった。
そのため、役割分担に対する質問や意見はなかった。
しかし、ロビーが出発日を二月二六日と発表したときには皆から声があがった。
今日は二月二四日、それも夕方に近い時刻である。あまりにも急すぎる。
「情報分析の方は間に合うのでしょうか?」
それまで黙っていたホンゴウが初めて口を開いた。
情報分析のメンバーは三月一〇日に「はじまりの丘」に到着するはずだ。
二月二六日出発では、彼らと接触する時間がない。
「彼らは隊に同行しないし、こちらから送ったデータを分析して本社に報告してもらう役割だから問題ない。それよりも出発を急いだほうが本社にとっても都合がよいはずだ」
ロビーは本社、特にエリックやミヤハラなどが隊の成果を急いでいることをよく理解していた。
また、セスの状況が判明した今、一刻も早く探索に戻るべきだと考えていた。
彼らの探索は、まだ途上にあるのだ。
「いいでしょう。望むところじゃない」
カネサキは乗り気だ。腕をまくり、舌なめずりまでしている。
「ちょっと急すぎない? 準備間に合うかな……」
オオイダはやや不服そうだが、カネサキがそれを許さなかった。
「普段の整理整頓がなってないからそうなるのよ。文句を言う暇があったら、準備に走る!」
そう言われるとオオイダとしても反論できないらしく、しょうがないな、とつぶやいてカネサキに従った。
それを見たホンゴウも「対応しましょう」と応じ、コナカも「承知です!」と賛同の意を示した。
不意にロビーの携帯端末が、着信を告げる。
「モトムラマネージャーか。仕事が速い!」
恐らくロビーから依頼されてすぐ対応したのであろう、エリックがサイリとゴウザとの顔合わせの場をセットしたと伝えてきた。
「では、一七時に本社の五〇二B会議室に繋げばいいんですね? マネージャーも出席されるのですか?」
ロビーの問いに対し、画面のエリックは首を横に振った。
よく見ればエリックの背景はロビーがよく知らない場所である。
「いや、今は出先で本社には戻れないから、直接やり取りしてもらうよ」
「では、こちらで対応しておきますよ」
エリックが知らない場所に居ることに疑問を感じたものの、ロビーはエリックの状況を敢えて確認することはしなかった。
(本社を離れる用事があるとは思えないが……こちらに影響することでもないだろう)
エリックの状況を確認するよりも、第二次隊の出発を急ぎたいとロビーは考えたのである。
一七時からのカンナ・サイリ、リツ・ゴウザの二名との通信による顔合わせは、和やかなムードで進んでいった。
カンナ・サイリの実家はロビーの友人のタカシ・モリタの家の近所で、モリタとは面識があるらしい。若い女性で、情報分析が得意だそうだ。
リツ・ゴウザにはそのような背景はなかったが、「東部探索隊」事業に対しては好意的であった。こちらは男性でサイリの一年後輩になるのだそうだ。
どうやら二人とも機会があれば「東部探索隊」の事業に関わりたかったようで、それを知ったエリックがチャンスとばかりにロビーに預けた、というのが真相らしい。
「だから対応が早かったのか。ただ、業務上は『はじまりの丘』に残ってもらう形になるのだが、それは構わないのか?」
ロビーは気にかけていたことを確認してみることにした。
「問題ありません。本社から離れて仕事ができるのなら万々歳です」
とこれはサイリ。
一方、ゴウザは探索よりも情報分析に向いているといって、「はじまりの丘」での残留に問題はないと答えた。
答えの内容に問題はなかったのだが、ロビーには何か引っかかる点があった。
ロビー自身も何が原因なのかよくわからないでいたが、予想外の人物から、解決のきっかけが提供された。
「そういえば、本社って最近どんな雰囲気なの?」
オオイダの口から発せられたこの言葉は、サイリとゴウザの二人を警戒させたようだった。
「私達だったら何を言っても大丈夫よ。訳もわからないうちにここの社員になっている人ばかりなんだから」
カネサキが片目をつぶってみせて場を和ませる。
確かに現在部屋にいる「東部探索隊」のメンバーは、生え抜きのECN社員ではないし、社内でも特異な立場にある。
「よそのユニットにはうちにいい感情を持っていない人もいるので、職場によってはギクシャクしているところもありますね」
ゴウザの言葉は、ある程度予想されたものだった。
(まあ、「タブーなきエンジニア集団」の元関係者やOP社の治安改革部隊の元幹部までいるユニットだからなぁ、仕方ないといえば仕方ないよな)
ロビーは、そう考えて苦笑するしかなかった。
そして会議室に残っていた第二次隊のメンバーに対して、第二次隊の役割分担と出発予定日について説明を始めた。当然、「はじまりの丘」に到着していないサイリとゴウザの姿はない。
情報分析を「はじまりの丘」に派遣されるサイリとゴウザが担当させることになったためか、役割分担についてはある程度メンバーが予想できるものであった。
そのため、役割分担に対する質問や意見はなかった。
しかし、ロビーが出発日を二月二六日と発表したときには皆から声があがった。
今日は二月二四日、それも夕方に近い時刻である。あまりにも急すぎる。
「情報分析の方は間に合うのでしょうか?」
それまで黙っていたホンゴウが初めて口を開いた。
情報分析のメンバーは三月一〇日に「はじまりの丘」に到着するはずだ。
二月二六日出発では、彼らと接触する時間がない。
「彼らは隊に同行しないし、こちらから送ったデータを分析して本社に報告してもらう役割だから問題ない。それよりも出発を急いだほうが本社にとっても都合がよいはずだ」
ロビーは本社、特にエリックやミヤハラなどが隊の成果を急いでいることをよく理解していた。
また、セスの状況が判明した今、一刻も早く探索に戻るべきだと考えていた。
彼らの探索は、まだ途上にあるのだ。
「いいでしょう。望むところじゃない」
カネサキは乗り気だ。腕をまくり、舌なめずりまでしている。
「ちょっと急すぎない? 準備間に合うかな……」
オオイダはやや不服そうだが、カネサキがそれを許さなかった。
「普段の整理整頓がなってないからそうなるのよ。文句を言う暇があったら、準備に走る!」
そう言われるとオオイダとしても反論できないらしく、しょうがないな、とつぶやいてカネサキに従った。
それを見たホンゴウも「対応しましょう」と応じ、コナカも「承知です!」と賛同の意を示した。
不意にロビーの携帯端末が、着信を告げる。
「モトムラマネージャーか。仕事が速い!」
恐らくロビーから依頼されてすぐ対応したのであろう、エリックがサイリとゴウザとの顔合わせの場をセットしたと伝えてきた。
「では、一七時に本社の五〇二B会議室に繋げばいいんですね? マネージャーも出席されるのですか?」
ロビーの問いに対し、画面のエリックは首を横に振った。
よく見ればエリックの背景はロビーがよく知らない場所である。
「いや、今は出先で本社には戻れないから、直接やり取りしてもらうよ」
「では、こちらで対応しておきますよ」
エリックが知らない場所に居ることに疑問を感じたものの、ロビーはエリックの状況を敢えて確認することはしなかった。
(本社を離れる用事があるとは思えないが……こちらに影響することでもないだろう)
エリックの状況を確認するよりも、第二次隊の出発を急ぎたいとロビーは考えたのである。
一七時からのカンナ・サイリ、リツ・ゴウザの二名との通信による顔合わせは、和やかなムードで進んでいった。
カンナ・サイリの実家はロビーの友人のタカシ・モリタの家の近所で、モリタとは面識があるらしい。若い女性で、情報分析が得意だそうだ。
リツ・ゴウザにはそのような背景はなかったが、「東部探索隊」事業に対しては好意的であった。こちらは男性でサイリの一年後輩になるのだそうだ。
どうやら二人とも機会があれば「東部探索隊」の事業に関わりたかったようで、それを知ったエリックがチャンスとばかりにロビーに預けた、というのが真相らしい。
「だから対応が早かったのか。ただ、業務上は『はじまりの丘』に残ってもらう形になるのだが、それは構わないのか?」
ロビーは気にかけていたことを確認してみることにした。
「問題ありません。本社から離れて仕事ができるのなら万々歳です」
とこれはサイリ。
一方、ゴウザは探索よりも情報分析に向いているといって、「はじまりの丘」での残留に問題はないと答えた。
答えの内容に問題はなかったのだが、ロビーには何か引っかかる点があった。
ロビー自身も何が原因なのかよくわからないでいたが、予想外の人物から、解決のきっかけが提供された。
「そういえば、本社って最近どんな雰囲気なの?」
オオイダの口から発せられたこの言葉は、サイリとゴウザの二人を警戒させたようだった。
「私達だったら何を言っても大丈夫よ。訳もわからないうちにここの社員になっている人ばかりなんだから」
カネサキが片目をつぶってみせて場を和ませる。
確かに現在部屋にいる「東部探索隊」のメンバーは、生え抜きのECN社員ではないし、社内でも特異な立場にある。
「よそのユニットにはうちにいい感情を持っていない人もいるので、職場によってはギクシャクしているところもありますね」
ゴウザの言葉は、ある程度予想されたものだった。
(まあ、「タブーなきエンジニア集団」の元関係者やOP社の治安改革部隊の元幹部までいるユニットだからなぁ、仕方ないといえば仕方ないよな)
ロビーは、そう考えて苦笑するしかなかった。
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