ストランディング・ワールド(Stranding World) 第二部 ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて新天地を求める~

空乃参三

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第十四章

638:休日の終わり

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 ロビー、ホンゴウ、カネサキの三人は、レイカが「EMいのちの守護者の会」に疑いをかけることに危険を感じているのではないかと推測していた。
 一方、オオイダは考えすぎではないか、とやや疑わしげで、コナカはよくわからないと言葉を濁した。

「だったら調査しちゃえばいいじゃない、どうせ実際に調査をするのは私たちじゃないんだし」
 そう言い放ったのはオオイダであった。
「EMいのちの守護者の会」の活動内容をよく知っている者からすればかなり乱暴な発言ではある。
 彼女のいう通り調査することは、子供の生命を守るというスローガンを掲げ、身寄りのない子供の面倒を見たり、教育を行ったりしている団体に疑いの目を向けることになる。
 このような行動に世間は厳しい目を向けてくる可能性は十分に考えられるからだ。
 周囲の反応を無視してオオイダが言葉を続ける。
「どうせ、こっちで調査なんてできやしないんだから、社長なりマネージャーなりに頼んじゃえば?」
「オオイダ!」
 カネサキがちょっと待ってと言いかけたところで言葉を止める。
 オオイダの意見に聞くべき部分がある、と感じたのであろう。
 ロビーが単独でミヤハラやエリックに頼んでも彼らは動くだろうが、そこにホンゴウの情報が加われば、力の入れ具合が変わるように思えてきたからだ。
 ハドリが「EMいのちの守護者の会」に目をつけていた、というのが事実であればECN社も放置はしておけないはずだ。
 OP社のパトロール・チームのリーダーであったホンゴウからの指摘であれば、ミヤハラやエリックも無視はできないだろう。
 それだけOP社におけるホンゴウの地位は重かったし、ハドリに近い存在でもあった。
「……そうですね、先輩方。ここは社長に頼んでおきます。ホンゴウさん、さっきのOP社の話をもう一度社長にしてもらっていいですか?」
 ロビーの提案にホンゴウはわかりましたと了承した。

 自分たちがやるべきこと、そして他人に任せることが明確になってきたことで、ロビー達のチームは、落ち着きと士気を取り戻した。
 障害があるとはいえ、それはある程度力押しで対応できる性質のものだ。
 ロビーはあることが気になって、ここ一週間の探索結果を調べてみた。
 もっとも、自分一人では機器の操作がおぼつかないため、カネサキとオオイダの助力を仰いでいる。
 機器の操作にかけては、この二人に分があるのだ。
 コナカやホンゴウは、ロビーと同じでどちらかといえば肉体作業を得意としており、その点ではうまく役割分担できているともいえる。
「カネサキ先輩、知っていましたね?」
「さあ、どうかしら?」
 ロビーの問いかけに、カネサキは悪戯を仕掛ける子供のような様子で答えた。
 それは、ロビーの問いに対する肯定を意味しているように思われる。
 カネサキとオオイダが示した画面では、探索開始初日と比較して、昨日の時間当たりの探索効率が四倍近くに向上していることが示されていた。
 目的地への進行速度が遅かったのは、むしろ過去の探索部分の再探索やチップの設置に問題があった場所に対してチップの設置位置を修正するなどの作業が原因であった。
「まだ、当初予定していたペースにはなっていないけど、まだ効率化できる余地はあるわ。一、二週間もあれば何とかするわよ」
 カネサキの言葉は力強い。
 それはまるで今回の休憩が予定通りのものであると言わんばかりであった。
「まあ、カネサキがそういうなら何とかなると思うわよ。あとは、おやつと睡眠があれば、ね」
 そう言うオオイダの左手には、ポテトチップスの大袋が握られていた。
「先輩は甘いのも辛いのも関係ないんですね」
 そう言いながらロビーはオオイダの持っている袋から数枚のポテトチップスを取り出し、自らの口へと運んだ。
「あ、こら、私のなんだから。それはそうと、よく食べてよく寝る子は健全に育つものよ」
 オオイダはポテトチップスの袋の口を握って、これ以上中身を取られないようにしながら胸を張って答えた。
「どこが健全に育っているのだか……私が聞きたいわよ」
 カネサキが少し呆れた様子でオオイダを見やった。
「まあいいわ。明日からは、今までのようにチンタラとは行かないわよ。覚悟しておきなさい」
 カネサキはオオイダに呆れた顔を向けながら端末の電源を切った。
(……なるほどな、よく周りを見ているぜ、カネサキ先輩は)
 ロビーはこの二日間のカネサキの動きに感心するばかりだった。
 これで明日からは今まで以上に動くことができるであろう。
 ロビーの仕事は島の東端に達するという目標を可能な限り達成することである。
 自らの経験不足を周辺は根気よくフォローしてくれる。
 ならば自分は自分の仕事を全うするだけ、とロビーは自分に言い聞かせた。
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