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第十五章
675:東端目指して
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「コナカさん、あとチップは何枚あるかしら?」
カネサキがコナカに仕事モードの口調で尋ねた。
「ニ五〇枚ほどです。二日分くらいでしょうか」
LH五二年四月一六日、「東部探索隊」のロビー・タカミが率いるチームは、サブマリン島東端からおよそ十数キロと思われる地点でキャンプを張っていた。
この地点で比較的広い平地が見つかったとため、ロビー、ホンゴウ、オオイダの三名が周辺の調査に出ており、キャンプにはカネサキとコナカの二名が残されていた。
探索は一時の遅れを取り戻し、予定よりもやや早くサブマリン島東端に到達できる見込みではある。
隊は相変わらず背の高い木々に囲まれた場所を進んでおり、視界は開けていないが、進むに連れて徐々に地形が平坦になってきた。
進むのには好都合であったが、新たな問題も生じていた。
当初の見込みより、居住可能な平地が少ないのである。
最大の要因は島東部を南北に分ける川の川幅にあった。
三十数年前、「ルナ・ヘヴンス」がサブマリン島に不時着する直前に撮影された上空からの写真では、島中央部の湖「サファイア・シー」からほぼ真東に細い川が流れていた。
写真の通りであればロビーの隊が選択したルートからは、とても川が見えるとは考えられなかった。
しかし、実際にはロビー達の進んだルートのすぐ脇まで川が流れている場所もあり、その分、居住可能とされる平地が狭くなっていた。
ロビーのチームの目的は島の東端までのルートを開拓することが第一である。
だが、「東部探索隊」の主目的が「島の東部で居住可能な場所を探索すること」である以上、ロビーのチームもこの目的から逃れることはできない。
「東部探索隊」の目的からすれば、ロビーのチームの成果は著しく小さいものであった。
カネサキはそのことを気にかけているのだが、ロビーは「相手が自然だからなぁ、居住できない場所がわかっただけでも成果じゃないか」とあまり気にしていない様子である。
ロビーから見ればカネサキは成果を急ぎすぎのように思えるのだが、相手は社会人の先輩であり、その意見は重く見ている。
その結果が現在の状況で、半日のロスを承知で現在地の周辺の平地を調査しているのである。
現在の場所は調査前から比較的大きな平地があるとされている場所であり、居住可能な場所として有望視されていた。
この場所に後続の隊が使う大規模な拠点を置くために事前調査を行う、ということで調査そのものの大義名分も立つ。
こうした観点からロビーは妥協案として、この日一日を居住可能性調査に充てたのだ。
カネサキもこのあたりが落としどころだ、ということは認識している。
彼女には他に気にかかることがあり、そちらにも力を注ぎたいと考えていた。
本社との通信で、レイカがインデストを離れざるを得なくなったと聞かされたのだ。
このことから、インデストの状況が非常に悪いことは見当がついている。
レイカの状況を聞いたホンゴウが「ECN社の幹部が再度インデストを訪れる際に自分が同行した方がいいのではないか」と申し出たが、これにはロビーが断固として反対した。
ロビーのチームの誰もがハモネスへの帰還を急ぐべきだとは考えている。
ただ、戻るための前提条件の設定については、メンバーによって差があるというだけの話なのだ。
ロビー達が調査を終えてキャンプに戻ってきたのは、陽が完全に落ちた午後六時半を少し回った時刻であった。
日没までに戻ってこないというのはカネサキにとって予想外であったが、オオイダからカネサキに宛てて二時間ほど前に帰りが遅れる可能性があると連絡が入っていたため、特に混乱は生じなかった。
キャンプに戻るや否や、ロビーとホンゴウは一気に報告用の資料をまとめ、夕食の場でメンバーに調査結果を報告した。
まず、調査に予定より時間を要した理由として、ロビーは調査した平地に入り込むための道を見つけるのに苦労したためと説明した。
ロビーのチームが現在進んでいるルートは、川に近すぎて増水時に危険なことや、見通しが悪いことなどから、今後の移動のための道としてはふさわしくない。
そこでこの平地に入るための他のルートを調査し、平地の北側から入るのがよさそうだという結果を得たが、この調査に時間を要した。
その後の居住可能性の調査については、特に問題なく進み、ある程度の人数の居住については問題がなさそうだという結論に達した。
「移動の方法と、細かい部分は後のチームに任せることにして、明日一気に東端まで進む。今日は早めに休むことにしますよ、先輩方」
そう言って、ロビー荷物の整理を始めた。
その様子を見たメンバーは、ロビーが本気で明日一日で決着をつけるつもりだと確信した。
ロビーが言葉の後にただちに行動に移った、ということは、その言葉が決定であるからだ。
一度決めてしまえばロビーの行動は早い。
ロビーの行動についていけなかったとしても、彼がそれを叱責することはまずなかった。だが、ついていけなかった者の後押しを欠かすことはなかったことから、彼が急いでいることだけは明らかだ。
ロビーはチームのリーダーではあるが、チームの中では最年少であり、社会人としての経験も少ない。
しかし、経験の少ないリーダーに余計な手間をかけさせようとする者は、少なくとも現在のロビーのチームには存在しなかった。
チームの成り立ちを考慮すれば当然のことであるかもしれないが、ロビーの隊が大きなトラブルもなく運営され続けていたのはこうした要因も影響していた。
カネサキがコナカに仕事モードの口調で尋ねた。
「ニ五〇枚ほどです。二日分くらいでしょうか」
LH五二年四月一六日、「東部探索隊」のロビー・タカミが率いるチームは、サブマリン島東端からおよそ十数キロと思われる地点でキャンプを張っていた。
この地点で比較的広い平地が見つかったとため、ロビー、ホンゴウ、オオイダの三名が周辺の調査に出ており、キャンプにはカネサキとコナカの二名が残されていた。
探索は一時の遅れを取り戻し、予定よりもやや早くサブマリン島東端に到達できる見込みではある。
隊は相変わらず背の高い木々に囲まれた場所を進んでおり、視界は開けていないが、進むに連れて徐々に地形が平坦になってきた。
進むのには好都合であったが、新たな問題も生じていた。
当初の見込みより、居住可能な平地が少ないのである。
最大の要因は島東部を南北に分ける川の川幅にあった。
三十数年前、「ルナ・ヘヴンス」がサブマリン島に不時着する直前に撮影された上空からの写真では、島中央部の湖「サファイア・シー」からほぼ真東に細い川が流れていた。
写真の通りであればロビーの隊が選択したルートからは、とても川が見えるとは考えられなかった。
しかし、実際にはロビー達の進んだルートのすぐ脇まで川が流れている場所もあり、その分、居住可能とされる平地が狭くなっていた。
ロビーのチームの目的は島の東端までのルートを開拓することが第一である。
だが、「東部探索隊」の主目的が「島の東部で居住可能な場所を探索すること」である以上、ロビーのチームもこの目的から逃れることはできない。
「東部探索隊」の目的からすれば、ロビーのチームの成果は著しく小さいものであった。
カネサキはそのことを気にかけているのだが、ロビーは「相手が自然だからなぁ、居住できない場所がわかっただけでも成果じゃないか」とあまり気にしていない様子である。
ロビーから見ればカネサキは成果を急ぎすぎのように思えるのだが、相手は社会人の先輩であり、その意見は重く見ている。
その結果が現在の状況で、半日のロスを承知で現在地の周辺の平地を調査しているのである。
現在の場所は調査前から比較的大きな平地があるとされている場所であり、居住可能な場所として有望視されていた。
この場所に後続の隊が使う大規模な拠点を置くために事前調査を行う、ということで調査そのものの大義名分も立つ。
こうした観点からロビーは妥協案として、この日一日を居住可能性調査に充てたのだ。
カネサキもこのあたりが落としどころだ、ということは認識している。
彼女には他に気にかかることがあり、そちらにも力を注ぎたいと考えていた。
本社との通信で、レイカがインデストを離れざるを得なくなったと聞かされたのだ。
このことから、インデストの状況が非常に悪いことは見当がついている。
レイカの状況を聞いたホンゴウが「ECN社の幹部が再度インデストを訪れる際に自分が同行した方がいいのではないか」と申し出たが、これにはロビーが断固として反対した。
ロビーのチームの誰もがハモネスへの帰還を急ぐべきだとは考えている。
ただ、戻るための前提条件の設定については、メンバーによって差があるというだけの話なのだ。
ロビー達が調査を終えてキャンプに戻ってきたのは、陽が完全に落ちた午後六時半を少し回った時刻であった。
日没までに戻ってこないというのはカネサキにとって予想外であったが、オオイダからカネサキに宛てて二時間ほど前に帰りが遅れる可能性があると連絡が入っていたため、特に混乱は生じなかった。
キャンプに戻るや否や、ロビーとホンゴウは一気に報告用の資料をまとめ、夕食の場でメンバーに調査結果を報告した。
まず、調査に予定より時間を要した理由として、ロビーは調査した平地に入り込むための道を見つけるのに苦労したためと説明した。
ロビーのチームが現在進んでいるルートは、川に近すぎて増水時に危険なことや、見通しが悪いことなどから、今後の移動のための道としてはふさわしくない。
そこでこの平地に入るための他のルートを調査し、平地の北側から入るのがよさそうだという結果を得たが、この調査に時間を要した。
その後の居住可能性の調査については、特に問題なく進み、ある程度の人数の居住については問題がなさそうだという結論に達した。
「移動の方法と、細かい部分は後のチームに任せることにして、明日一気に東端まで進む。今日は早めに休むことにしますよ、先輩方」
そう言って、ロビー荷物の整理を始めた。
その様子を見たメンバーは、ロビーが本気で明日一日で決着をつけるつもりだと確信した。
ロビーが言葉の後にただちに行動に移った、ということは、その言葉が決定であるからだ。
一度決めてしまえばロビーの行動は早い。
ロビーの行動についていけなかったとしても、彼がそれを叱責することはまずなかった。だが、ついていけなかった者の後押しを欠かすことはなかったことから、彼が急いでいることだけは明らかだ。
ロビーはチームのリーダーではあるが、チームの中では最年少であり、社会人としての経験も少ない。
しかし、経験の少ないリーダーに余計な手間をかけさせようとする者は、少なくとも現在のロビーのチームには存在しなかった。
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