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第十五章
691:エクザローム一のマーケターの実力
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「えっ?」
「はぁ?」
「……」
「何だって?!」
レイカとモリタの突然の結婚発表にロビーと「とぉえんてぃ? ず」の三人の目が点になる。
エリックは笑いをこらえ切れないという様子で下を向いて顔に手をやっている。
当事者以外では唯一、ホンゴウが冷静におめでとうございますと二人に声をかけた。
モリタがありがとうございます、とホンゴウに返した。
ロビーがモリタに「本当か?」と尋ねると、モリタは憮然とした顔で「本当だ」と答えた。それでもこみ上げてくる笑みを隠しきれていない。
「とぉえんてぃ? ず」の三人は、いまだ動揺から立ち直れずにいる。
「タカミ君からも報告がありましたよね?」
エリックが笑いを堪えながらロビーを促した。
「ああ」
ロビーは大きく深呼吸する。
皆の注意を引きつけようと、必要以上に大きい呼吸となってしまったが、狙いは達成できたようだった。
「メルツ室長と重なってしまったが、俺からも報告だ。俺は、さっき社に結婚を申請してきた。相手はこちらのコナカさんだ」
ロビーの報告については、大部分のメンバーが受け入れやすかったらしく、すぐにロビーとコナカに祝福の言葉が浴びせられた。
その間隙を縫って、モリタが小声でロビーに尋ねた。
「セスが亡くなったんだって?」
「ああ。去年の九月にな。墓は『はじまりの丘』にある。一度挨拶に行ってやってくれ」
「……わかった。今度長期休暇を取って行ってくるよ」
モリタもセスの状況を気にしていたことで、ロビーは出しかけていた手を引っ込めた。
もし、セスのことを気にかけていなければ二、三発ぶん殴るつもりでいたのだ。
ロビーとモリタの会話の間にも、レイカとコナカには祝福の言葉が浴びせられていた。
コナカはともかく、レイカに関しては祝福というよりも質問攻めに近かったのだが。
「ね、ね、先生、じゃなかった、室長! どうしてアレがああなる、って思えたのですか?」
オオイダがモリタを指差しながらレイカに詰め寄った。
「あの、『アレ』はちょっと勘弁して欲しいのですけど……」
「す、すみません、でも……」
「誰でも普段からよく会っている人をよく観察していれば、わかることだと思いますけど」
レイカの言葉にオオイダが頭を抱えた。
「あー、天才マーケターというのはここまで違うものなのね……」
更にカネサキがオオイダに追い討ちをかける。
「メルツ室長は誰も注目しない逸品を発掘することの名人だものね。アンタとはレベルが違うわよ、オオイダ」
「ぐぅ、否定できないわね。もっともカネサキ、アンタも相手がいないということでは同類じゃない? それにアンタは私より六つも年上なんだから。私にはまだチャンスがあるけど、アンタはそろそろ危ないんじゃない?」
オオイダの反撃にカネサキは、余裕たっぷりにこう流した。
「あら、私にはセス君がいるからね。彼を裏切れないのよ」
「ロビー、そのカネサキさんとセスってそうだったのかい?」
カネサキの言葉を聞いたモリタが思わずロビーに尋ねた。
「多分、カネサキ先輩が勝手に主張しているだけだと思う。確かに先輩はセスに甘いところがあったと思うが……」
「セスの奴、年上には人気があったからなぁ」
それまで場の流れを静観していたエリックだったが、さすがに収拾がつかなくなりだしたと判断したのか、不意に立ち上がった。
「早く帰って休みたい人もいるだろうし、そろそろ仕事の話をしようか」
「おっと、そうだったな」
ロビーがエリックを気遣うかのように答えた。
カネサキがまだ仕事中よ、とオオイダ小突く。先ほどまでオオイダと盛り上がっていたことは完全に棚に上げている。
「大好物を先に食べるのは構わないけど、一応会社だから仕事もしてもらわないとね」
エリックがオオイダとカネサキに向けて、少々意地の悪い笑みを浮かべた。
まず、レイカから「とぉえんてぃ? ず」の三人に向けて、エリックのタスクユニットからレイカが率いる広報企画室への異動の打診があった。
職業学校時代から彼女達はレイカの部下のようなものであり、この異動に関しては、三人ともがその場で受け入れ、本日付で彼女達の異動が決定した。
次にエリックからロビーへ七月一日付けで、サブマネージャーへの昇格が打診された。
こちらはエリックのタスクユニットからの異動はない。
「はあ、ロビーは偉くなったね。こっちはOP社の現場でこき使われているからなぁ」
モリタが恨みがましそうな目をロビーに向けると、レイカが辛い思いをさせてごめんなさいと頭を下げた。
「モリタ君はうちからOP社に出向中だから、ポジションについてもOP社のものになるからね。出向から戻ってきたら、しかるべきポジションを用意するよ」
エリックがそう弁解したものの、モリタはそれがいつのことになるのかと疑わしげであった。
モリタはレイカの提案でOP社に出向しているものの、所属はエリックのタスクユニットであるため、最終的な処遇の決定権はエリックにあるのだ。
「さて、次が本題なのだけど、これからは皆さんの次の仕事の話になる。ホンゴウさん、今までお待たせしてしまってすみません」
エリックが今までほぼ蚊帳の外であったホンゴウに向かって頭を下げた。
ホンゴウはECN社の社員ではなく、「東部探索隊」の業務をECN社から請け負っているのだ。
「私は構いませんが、人事などの話は聞かなかったことにしますよ」
ホンゴがは笑いながら答えた。
「ここからは私がお話しましょう」
とレイカがエリックの前に進み出た。
「はぁ?」
「……」
「何だって?!」
レイカとモリタの突然の結婚発表にロビーと「とぉえんてぃ? ず」の三人の目が点になる。
エリックは笑いをこらえ切れないという様子で下を向いて顔に手をやっている。
当事者以外では唯一、ホンゴウが冷静におめでとうございますと二人に声をかけた。
モリタがありがとうございます、とホンゴウに返した。
ロビーがモリタに「本当か?」と尋ねると、モリタは憮然とした顔で「本当だ」と答えた。それでもこみ上げてくる笑みを隠しきれていない。
「とぉえんてぃ? ず」の三人は、いまだ動揺から立ち直れずにいる。
「タカミ君からも報告がありましたよね?」
エリックが笑いを堪えながらロビーを促した。
「ああ」
ロビーは大きく深呼吸する。
皆の注意を引きつけようと、必要以上に大きい呼吸となってしまったが、狙いは達成できたようだった。
「メルツ室長と重なってしまったが、俺からも報告だ。俺は、さっき社に結婚を申請してきた。相手はこちらのコナカさんだ」
ロビーの報告については、大部分のメンバーが受け入れやすかったらしく、すぐにロビーとコナカに祝福の言葉が浴びせられた。
その間隙を縫って、モリタが小声でロビーに尋ねた。
「セスが亡くなったんだって?」
「ああ。去年の九月にな。墓は『はじまりの丘』にある。一度挨拶に行ってやってくれ」
「……わかった。今度長期休暇を取って行ってくるよ」
モリタもセスの状況を気にしていたことで、ロビーは出しかけていた手を引っ込めた。
もし、セスのことを気にかけていなければ二、三発ぶん殴るつもりでいたのだ。
ロビーとモリタの会話の間にも、レイカとコナカには祝福の言葉が浴びせられていた。
コナカはともかく、レイカに関しては祝福というよりも質問攻めに近かったのだが。
「ね、ね、先生、じゃなかった、室長! どうしてアレがああなる、って思えたのですか?」
オオイダがモリタを指差しながらレイカに詰め寄った。
「あの、『アレ』はちょっと勘弁して欲しいのですけど……」
「す、すみません、でも……」
「誰でも普段からよく会っている人をよく観察していれば、わかることだと思いますけど」
レイカの言葉にオオイダが頭を抱えた。
「あー、天才マーケターというのはここまで違うものなのね……」
更にカネサキがオオイダに追い討ちをかける。
「メルツ室長は誰も注目しない逸品を発掘することの名人だものね。アンタとはレベルが違うわよ、オオイダ」
「ぐぅ、否定できないわね。もっともカネサキ、アンタも相手がいないということでは同類じゃない? それにアンタは私より六つも年上なんだから。私にはまだチャンスがあるけど、アンタはそろそろ危ないんじゃない?」
オオイダの反撃にカネサキは、余裕たっぷりにこう流した。
「あら、私にはセス君がいるからね。彼を裏切れないのよ」
「ロビー、そのカネサキさんとセスってそうだったのかい?」
カネサキの言葉を聞いたモリタが思わずロビーに尋ねた。
「多分、カネサキ先輩が勝手に主張しているだけだと思う。確かに先輩はセスに甘いところがあったと思うが……」
「セスの奴、年上には人気があったからなぁ」
それまで場の流れを静観していたエリックだったが、さすがに収拾がつかなくなりだしたと判断したのか、不意に立ち上がった。
「早く帰って休みたい人もいるだろうし、そろそろ仕事の話をしようか」
「おっと、そうだったな」
ロビーがエリックを気遣うかのように答えた。
カネサキがまだ仕事中よ、とオオイダ小突く。先ほどまでオオイダと盛り上がっていたことは完全に棚に上げている。
「大好物を先に食べるのは構わないけど、一応会社だから仕事もしてもらわないとね」
エリックがオオイダとカネサキに向けて、少々意地の悪い笑みを浮かべた。
まず、レイカから「とぉえんてぃ? ず」の三人に向けて、エリックのタスクユニットからレイカが率いる広報企画室への異動の打診があった。
職業学校時代から彼女達はレイカの部下のようなものであり、この異動に関しては、三人ともがその場で受け入れ、本日付で彼女達の異動が決定した。
次にエリックからロビーへ七月一日付けで、サブマネージャーへの昇格が打診された。
こちらはエリックのタスクユニットからの異動はない。
「はあ、ロビーは偉くなったね。こっちはOP社の現場でこき使われているからなぁ」
モリタが恨みがましそうな目をロビーに向けると、レイカが辛い思いをさせてごめんなさいと頭を下げた。
「モリタ君はうちからOP社に出向中だから、ポジションについてもOP社のものになるからね。出向から戻ってきたら、しかるべきポジションを用意するよ」
エリックがそう弁解したものの、モリタはそれがいつのことになるのかと疑わしげであった。
モリタはレイカの提案でOP社に出向しているものの、所属はエリックのタスクユニットであるため、最終的な処遇の決定権はエリックにあるのだ。
「さて、次が本題なのだけど、これからは皆さんの次の仕事の話になる。ホンゴウさん、今までお待たせしてしまってすみません」
エリックが今までほぼ蚊帳の外であったホンゴウに向かって頭を下げた。
ホンゴウはECN社の社員ではなく、「東部探索隊」の業務をECN社から請け負っているのだ。
「私は構いませんが、人事などの話は聞かなかったことにしますよ」
ホンゴがは笑いながら答えた。
「ここからは私がお話しましょう」
とレイカがエリックの前に進み出た。
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