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第十五章
704:ECN社、インデストへの関与を決める
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一連の事件に関する調査と同時期に、ECN社は水面下でOP社幹部と交渉を進めていた。
正確にはOP社の側からECN社に向けて話し合いの場を持ちたいという打診があり、ECN社がそれに応じたのである。
ECN社に話を持ちかけてきたのは、かつてミヤハラやサクライなどと同じ職場で働いていたテツヤ・ヘンミであった。
「タブーなきエンジニア集団」として、故ウォーリー・トワなどがECN社を去った後、ウォーリーが率いていたタスクユニットの責任者となった人物である。
その後OP社に出向し、転籍を経て現在はOP社の幹部の一人として、社長のノブヤ・ヤマガタを補佐している。
ヘンミはウォーリーとの折り合いが悪いことで知られており、「タブーなきエンジニア集団」に対しても、よい感情を持っているとは考えにくかった。
そのためヘンミからの申し出はミヤハラたちからも意外に思われていた。
しかし、OP社の状況が非常に厳しいものであるということは、ECN社でも予想されており、ヘンミ一人の感情など気にしている場合ではないのだろうと判断された。
レイカが実際にOP社を訪問し、ヘンミ、フトシ・ウノといった幹部と話し合いを行った。
病床のヤマガタは既に長時間の話し合いに応じることができる状態ではなく、最初にレイカに挨拶をするために顔を出しただけであった。
最初にOP社からインデストの問題解決のための協力を求める要請があった。
既になりふり構っていられない状況なのは、ヘンミやウノの様子からも見てとれた。
レイカは話し合いの席上でECN社とOP社が関連会社であることを指摘した上で、OP社からの公式な依頼があれば、インデストに向かう準備はある、と答えた。
この答えひとつでECN社への依頼文書が出てしまうあたり、OP社の置かれている状況の厳しさが窺える。
ECN社から技術者派遣の支援を受けているとはいえ、インデストからの物流がほぼ止まっている現状では、OP社としては事業の継続は困難である。
そのような状況のもと、レイカは冷静に交渉を決着させ、ECN社に不利のない状況を作り上げたのであった。
インデストの問題に介入するに当たって、他者に付け入る隙を与えない。
これがミヤハラの基本方針であった。
この点については、捲土重来を期しているレイカも同じ考えであった。
OP社からインデストの状況に介入するための文書を入手したのは、その最もたる行動のひとつであった。
前回のインデスト訪問で不本意な撤退を余儀なくされた要因のひとつとして、「EMいのちの守護者の会」について、事前に十分な情報が得られていなかったことが挙げられる。
レイカ本人はこれを重大な失敗ととらえている様子で、同じ失敗を繰り返さぬよう、今回は慎重に調査を進めていた。
そして、ついにミヤハラやレイカが十分だと認められるだけの情報が集まった。
OP社から文書を入手したことで、必要な大義名分も揃った。
「EMいのちの守護者の会」にこれ以上好き勝手はさせられない。
情報が集まったいま、ミヤハラやレイカはそう考えている。
ECN社は一企業であり、必要以上に島の治安には介入しない、というのが本来のスタンスである。
しかし、今の「EMいのちの守護者の会」の存在は島の治安に重大な悪影響を与えており、ECN社はそれを看過すべきではない。
「EMいのちの守護者の会」に対抗できる存在は、ECN社しかないのだ。
LH五二年七月四日、ミヤハラはインデストの問題への介入について、極秘に会議を開いた。
会議に呼ばれたのは、アツシ・サクライ、エリック・モトムラ、レイカ・メルツ、マコト・トミシマの四名である。
既に参加者の中では、インデストへの介入についての合意が得られていたため、あとは誰がいつ、どのように介入するか、という点について話し合いがなされた。
OP社のように武断的な方法は取るべきではない、ということで参加者の意見が一致したため、インデストへは少数のメンバーを向かわせることとなった。
「今回は俺が行く。ただし、社内外には極秘に、だ。サクライ、お前は残留して必要な対応を取れ」
ミヤハラの言葉で場に緊張が走った。
「ちょ、ちょっと待ってください。社長がそんな軽々しく社を空けていいと思っているのですか!」
サクライが立ち上がって抗議したが、ミヤハラはそれに構わずトミシマとエリックにサクライの補佐を命じた。
「何故社長が行かなければならないのか、理由くらい説明したらどうですか!」
サクライは抗議を続けたが、ミヤハラが気にする様子はない。
「あの、社長。できれば私たちにも理由を教えていただきたいのですが」
トミシマがサクライに助け舟を出した。
ミヤハラも仕方ないな、と理由を説明する。
社内での役職はミヤハラの方が上であるが、トミシマには頭が上がらない。
ミヤハラもトミシマの親族が運営する託児所に預けられていた時期がある。
ミヤハラより一二才年上のトミシマは、ミヤハラが託児所に預けられていた時期のことをよく知っていた。
もっとも、トミシマは子供の相手が大の苦手であり、そのためにECN社の社員となっているのだが。
正確にはOP社の側からECN社に向けて話し合いの場を持ちたいという打診があり、ECN社がそれに応じたのである。
ECN社に話を持ちかけてきたのは、かつてミヤハラやサクライなどと同じ職場で働いていたテツヤ・ヘンミであった。
「タブーなきエンジニア集団」として、故ウォーリー・トワなどがECN社を去った後、ウォーリーが率いていたタスクユニットの責任者となった人物である。
その後OP社に出向し、転籍を経て現在はOP社の幹部の一人として、社長のノブヤ・ヤマガタを補佐している。
ヘンミはウォーリーとの折り合いが悪いことで知られており、「タブーなきエンジニア集団」に対しても、よい感情を持っているとは考えにくかった。
そのためヘンミからの申し出はミヤハラたちからも意外に思われていた。
しかし、OP社の状況が非常に厳しいものであるということは、ECN社でも予想されており、ヘンミ一人の感情など気にしている場合ではないのだろうと判断された。
レイカが実際にOP社を訪問し、ヘンミ、フトシ・ウノといった幹部と話し合いを行った。
病床のヤマガタは既に長時間の話し合いに応じることができる状態ではなく、最初にレイカに挨拶をするために顔を出しただけであった。
最初にOP社からインデストの問題解決のための協力を求める要請があった。
既になりふり構っていられない状況なのは、ヘンミやウノの様子からも見てとれた。
レイカは話し合いの席上でECN社とOP社が関連会社であることを指摘した上で、OP社からの公式な依頼があれば、インデストに向かう準備はある、と答えた。
この答えひとつでECN社への依頼文書が出てしまうあたり、OP社の置かれている状況の厳しさが窺える。
ECN社から技術者派遣の支援を受けているとはいえ、インデストからの物流がほぼ止まっている現状では、OP社としては事業の継続は困難である。
そのような状況のもと、レイカは冷静に交渉を決着させ、ECN社に不利のない状況を作り上げたのであった。
インデストの問題に介入するに当たって、他者に付け入る隙を与えない。
これがミヤハラの基本方針であった。
この点については、捲土重来を期しているレイカも同じ考えであった。
OP社からインデストの状況に介入するための文書を入手したのは、その最もたる行動のひとつであった。
前回のインデスト訪問で不本意な撤退を余儀なくされた要因のひとつとして、「EMいのちの守護者の会」について、事前に十分な情報が得られていなかったことが挙げられる。
レイカ本人はこれを重大な失敗ととらえている様子で、同じ失敗を繰り返さぬよう、今回は慎重に調査を進めていた。
そして、ついにミヤハラやレイカが十分だと認められるだけの情報が集まった。
OP社から文書を入手したことで、必要な大義名分も揃った。
「EMいのちの守護者の会」にこれ以上好き勝手はさせられない。
情報が集まったいま、ミヤハラやレイカはそう考えている。
ECN社は一企業であり、必要以上に島の治安には介入しない、というのが本来のスタンスである。
しかし、今の「EMいのちの守護者の会」の存在は島の治安に重大な悪影響を与えており、ECN社はそれを看過すべきではない。
「EMいのちの守護者の会」に対抗できる存在は、ECN社しかないのだ。
LH五二年七月四日、ミヤハラはインデストの問題への介入について、極秘に会議を開いた。
会議に呼ばれたのは、アツシ・サクライ、エリック・モトムラ、レイカ・メルツ、マコト・トミシマの四名である。
既に参加者の中では、インデストへの介入についての合意が得られていたため、あとは誰がいつ、どのように介入するか、という点について話し合いがなされた。
OP社のように武断的な方法は取るべきではない、ということで参加者の意見が一致したため、インデストへは少数のメンバーを向かわせることとなった。
「今回は俺が行く。ただし、社内外には極秘に、だ。サクライ、お前は残留して必要な対応を取れ」
ミヤハラの言葉で場に緊張が走った。
「ちょ、ちょっと待ってください。社長がそんな軽々しく社を空けていいと思っているのですか!」
サクライが立ち上がって抗議したが、ミヤハラはそれに構わずトミシマとエリックにサクライの補佐を命じた。
「何故社長が行かなければならないのか、理由くらい説明したらどうですか!」
サクライは抗議を続けたが、ミヤハラが気にする様子はない。
「あの、社長。できれば私たちにも理由を教えていただきたいのですが」
トミシマがサクライに助け舟を出した。
ミヤハラも仕方ないな、と理由を説明する。
社内での役職はミヤハラの方が上であるが、トミシマには頭が上がらない。
ミヤハラもトミシマの親族が運営する託児所に預けられていた時期がある。
ミヤハラより一二才年上のトミシマは、ミヤハラが託児所に預けられていた時期のことをよく知っていた。
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