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第十五章
707:思惑の相違
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ECN社との接触について、「判定者とその支援者」のメンバーは、検討に検討を重ねた。
「勉強会」グループに忍び込ませたゴールドとは一ヶ月近く連絡が取れていない。
連絡が取れなくなる直前から、「勉強会」グループの監視が厳しくなったことや、「勉強会」グループがダイヤの交友関係を徹底調査していることなどが伝えられていた。
こうした状況から、ゴールドは「勉強会」グループの監視により身動きが取れない状況であることが予想された。
ゴールドからの連絡が途絶えたことで、「判定者とその支援者」は、「勉強会」グループやそれを支援している「EMいのちの守護者の会」に関する新たな情報を得ることが困難な状況にあった。
ECN社と接触するのであれば、できるだけ「勉強会」グループや「EMいのちの守護者の会」の手の届かないところが望ましい。
ECN社の本拠地であるハモネスやその近くの都市であれば、「勉強会」グループの手は届かないであろう。
しかし、「EMいのちの守護者の会」の影響力は全島規模であり、彼らが特意とする「借金をタテに債務者を使って敵を排除する」という方法は、ハモネスやその近くの都市でも実行可能だ。
OP社治安改革部隊が街を闊歩していた時期ならばこうした暴力的な手段は取り得なかっただろうが、残念ながら彼らは既に解散して (させられて)おり、現在島の治安に関与していない。
ハモネスからインデストに向かう街道の道中、という方法も考えられたが、運送業者でもない者が今の状況でインデスト方面からハモネスやポータル・シティ方面に向かうのは不自然に思われる可能性がある。
そこでディンことカケル・タニノサキが、次のように提案した。
ECN社のメンバーはレイカ・メルツ率いる先発部隊とロビー・タカミ率いる後発部隊の二手に分かれてインデストを訪れることが公表されている。
レイカ・メルツはECN社の重鎮であり、世間的な知名度も高く、注目される存在である。
このため、レイカが検問所に到着した際は、その警備に「勉強会」グループは多くの人員を割くと思われる。
そうして他の警備が薄くなったタイミングで、ECN社の後発部隊と接触するのがよいのではないか、と。
ECN社との接触場所が「勉強会」グループの影響範囲に近い、という点に問題はあるが、インデスト市街に入ってからでは、接触は困難であろう。
また、街道を移動する方法は潜伏している拠点から姿を現すことになり、かえって危険ではないかと意見もあった。
そこで、アレクはディンの提案を受け入れることとした。
ECN社の先発部隊が検問所に到着するのは、七月二四日前後になると思われる。
それまでの約二週間、彼らは息を潜めて姿を隠し続ける。
「なるほどな、見事なものだな」
人気のない街道でプラチナことホッカ・カジがつぶやいた。
「いえいえ。でもアレクさんは当初の目的を少し見失っているところがあるように思えたので、ああいう提案をさせてもらったのですけど」
答えたのはディンである。
拠点に隠れるといっても、日々の食料や日用品など必要なものはある。
プラチナとディンはそうしたものを調達に外出したのである。
先ほどの打ち合わせを終えて、ダイヤとの関係がなさそうに見える二人が調達係となったのは自然な流れであろう。
「あの『EMいのちの守護者の会』という連中の非道は理解しているが、そのためにIMPUに寄るというのは、個人的には納得できないのでな。ECN社は微妙なところだが」
プラチナが忌々しそうに顔をしかめた。
彼の抱える事情は複雑だ。
実家はOP社のもと関連企業であったが、OP社との取引を打ち切られ、結果的に社長であった彼の父親が自ら命を絶つ事態となった。
残された従業員が会社を引き継ぎIMPUに参加したのだが、その際、自殺した彼の父を無責任だと非難したのだ。
会社の経営が傾いた際、従業員は社長である彼の父に対して、死んで保険金を作って給与を払えと罵声を浴びせたにもかかわらず、だ。
後に、IMPUの代表であるサン・アカシもそれを支持したと取れるような発言をした。
それを知ったプラチナはOP社やIMPUに対して強い嫌悪感を持っている。
「EMいのちの守護者の会」に対しては、やはり彼の父の会社の経営が傾いた際、会の息のかかった高利貸しが何度も彼の父のもとを訪れていたことを記憶していた。
当時は「判定」されるべき者達と「EMいのちの守護者の会」とのつながりを把握していなかったが、後に知人のゴールドことセイガ・ブナイから「EMいのちの守護者の会」の非道に関する情報を聞かされた。
彼の父親は高利貸しからの融資を断ったため、「EMいのちの守護者の会」絡みの被害を受けることはなかった。だが、それでも会を許すことはできず、ゴールドの誘いに乗って「判定者とその支援者」に参加したのである。
アレクもプラチナの事情は把握していたが、アカシの言葉は事実に対する情報不足が生んだものとし、「EMいのちの守護者の会」に対する判定が終わってから、アカシに直接真意を正せばよいとしていたのだった。
それがプラチナには、引っかかっているのだ。
「勉強会」グループに忍び込ませたゴールドとは一ヶ月近く連絡が取れていない。
連絡が取れなくなる直前から、「勉強会」グループの監視が厳しくなったことや、「勉強会」グループがダイヤの交友関係を徹底調査していることなどが伝えられていた。
こうした状況から、ゴールドは「勉強会」グループの監視により身動きが取れない状況であることが予想された。
ゴールドからの連絡が途絶えたことで、「判定者とその支援者」は、「勉強会」グループやそれを支援している「EMいのちの守護者の会」に関する新たな情報を得ることが困難な状況にあった。
ECN社と接触するのであれば、できるだけ「勉強会」グループや「EMいのちの守護者の会」の手の届かないところが望ましい。
ECN社の本拠地であるハモネスやその近くの都市であれば、「勉強会」グループの手は届かないであろう。
しかし、「EMいのちの守護者の会」の影響力は全島規模であり、彼らが特意とする「借金をタテに債務者を使って敵を排除する」という方法は、ハモネスやその近くの都市でも実行可能だ。
OP社治安改革部隊が街を闊歩していた時期ならばこうした暴力的な手段は取り得なかっただろうが、残念ながら彼らは既に解散して (させられて)おり、現在島の治安に関与していない。
ハモネスからインデストに向かう街道の道中、という方法も考えられたが、運送業者でもない者が今の状況でインデスト方面からハモネスやポータル・シティ方面に向かうのは不自然に思われる可能性がある。
そこでディンことカケル・タニノサキが、次のように提案した。
ECN社のメンバーはレイカ・メルツ率いる先発部隊とロビー・タカミ率いる後発部隊の二手に分かれてインデストを訪れることが公表されている。
レイカ・メルツはECN社の重鎮であり、世間的な知名度も高く、注目される存在である。
このため、レイカが検問所に到着した際は、その警備に「勉強会」グループは多くの人員を割くと思われる。
そうして他の警備が薄くなったタイミングで、ECN社の後発部隊と接触するのがよいのではないか、と。
ECN社との接触場所が「勉強会」グループの影響範囲に近い、という点に問題はあるが、インデスト市街に入ってからでは、接触は困難であろう。
また、街道を移動する方法は潜伏している拠点から姿を現すことになり、かえって危険ではないかと意見もあった。
そこで、アレクはディンの提案を受け入れることとした。
ECN社の先発部隊が検問所に到着するのは、七月二四日前後になると思われる。
それまでの約二週間、彼らは息を潜めて姿を隠し続ける。
「なるほどな、見事なものだな」
人気のない街道でプラチナことホッカ・カジがつぶやいた。
「いえいえ。でもアレクさんは当初の目的を少し見失っているところがあるように思えたので、ああいう提案をさせてもらったのですけど」
答えたのはディンである。
拠点に隠れるといっても、日々の食料や日用品など必要なものはある。
プラチナとディンはそうしたものを調達に外出したのである。
先ほどの打ち合わせを終えて、ダイヤとの関係がなさそうに見える二人が調達係となったのは自然な流れであろう。
「あの『EMいのちの守護者の会』という連中の非道は理解しているが、そのためにIMPUに寄るというのは、個人的には納得できないのでな。ECN社は微妙なところだが」
プラチナが忌々しそうに顔をしかめた。
彼の抱える事情は複雑だ。
実家はOP社のもと関連企業であったが、OP社との取引を打ち切られ、結果的に社長であった彼の父親が自ら命を絶つ事態となった。
残された従業員が会社を引き継ぎIMPUに参加したのだが、その際、自殺した彼の父を無責任だと非難したのだ。
会社の経営が傾いた際、従業員は社長である彼の父に対して、死んで保険金を作って給与を払えと罵声を浴びせたにもかかわらず、だ。
後に、IMPUの代表であるサン・アカシもそれを支持したと取れるような発言をした。
それを知ったプラチナはOP社やIMPUに対して強い嫌悪感を持っている。
「EMいのちの守護者の会」に対しては、やはり彼の父の会社の経営が傾いた際、会の息のかかった高利貸しが何度も彼の父のもとを訪れていたことを記憶していた。
当時は「判定」されるべき者達と「EMいのちの守護者の会」とのつながりを把握していなかったが、後に知人のゴールドことセイガ・ブナイから「EMいのちの守護者の会」の非道に関する情報を聞かされた。
彼の父親は高利貸しからの融資を断ったため、「EMいのちの守護者の会」絡みの被害を受けることはなかった。だが、それでも会を許すことはできず、ゴールドの誘いに乗って「判定者とその支援者」に参加したのである。
アレクもプラチナの事情は把握していたが、アカシの言葉は事実に対する情報不足が生んだものとし、「EMいのちの守護者の会」に対する判定が終わってから、アカシに直接真意を正せばよいとしていたのだった。
それがプラチナには、引っかかっているのだ。
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