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第十五章
720:カヤノが守ったもの
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再びロビーがカヤノに問いかける。
「なら、カヤノさん、でいいか? 『勉強会』グループに攻撃されているようだったが、あの建物にいたのはトーカMC社の関係者か? あの建物はトーカMC社のものだとは聞いていないのだが」
ロビーの質問を最後まで聞き終えると、カヤノは首を横に振った。
「違う。建物はトーカMC社のものではないし、私もトーカMC社の関係者ではありません。私の所属するグループに社員が一人いたけど、五ヶ月前に『勉強会』グループに捕まったまま戻っていません」
カヤノの答えにロビーたちは顔を見合わせた。
トーカMC社以外に「勉強会」グループに攻撃されている集団がいることを意味しているからだ。IMPUの幹部以外に「勉強会」グループの攻撃対象となっている者がいるとなれば、それはロビー達にとって重要な情報である。
「カヤノさん、あんた達のグループは『勉強会』に狙われている、ということか?」
「その通りです。狙われる理由は不明確な点も多いのですが……」
思わぬ展開にロビーは、カヤノにいったん断ってから会話の記録を取ることにした。
「トーカMC社ではないとすると、あんた達のグループは一体何者だ?」
ロビーの質問に、辺りが一瞬静まり返った。
ほんの一瞬のことであるが、カヤノの表情が強張った。
数秒の後、カヤノは意を決したかのように口を開いた。
「……タカミさん、といいましたね? ECN社ではレイカ・メルツさんとどのような関係にありますか?」
「俺か? 部署が違うからなぁ……ただ、個人的には面識がある。内容によってはメルツ室長に話を繋ぐことはできる」
唐突な質問にロビーは一瞬、答えをはぐらかそうとしたが、すぐに考え直したのだった。
「……わかった。私たちのグループは『判定者とその支援者』と名乗ることが多い。公になっている団体ではないので、恐らく名前を聞いたことはないでしょう」
ロビーにはその名前に聞き覚えがなかったし、ムレハやネガワに確認しても首を横に振るだけだった。
「悪いが、その名前を聞いたことはない。それがカヤノさんの所属しているグループの名前なのだな?」
「その通り。それと、こちらから質問させていただきたいのですが、タカミさんが私を保護した理由は?」
「なんだ、そんなことか。『勉強会』の連中が理由も説明せずにあんた達を殲滅しようとしていたのでな。それが許せなかったので、救える者は救おうとしただけだ」
ロビーの答えにカヤノは意外そうな表情を見せた。
その一方で、ロビーもカヤノへの対応に頭を悩ませていた。
カヤノはレイカとの接触を望んでいるように思われる。
可能であれば、カヤノについてはロビー一人の範囲で対応したかったが、それで済みそうな状況ではない。
今まで存在すら知らなかった「判定者とその支援者」なる集団のメンバーを調査もなしにレイカと引き合わせてよいものか、ロビーは判断に迷っていたのである。
トーカMC社の関係者であれば、レイカから事前に話を聞かされているので、問題なくレイカに引き合わせたであろう。
しかし、「判定者とその支援者」がレイカやECN社を狙う集団である場合、彼女と直接引き合わせるのは危険が伴う。
今までのカヤノとの会話では、「判定者とその支援者」が何を目的とした集団なのか、ロビーには判断がつかないのだ。
(化かし合いは俺の性には合わねぇ。直球でいくか……)
「俺の行動に疑問があるようだが、『判定者とその支援者』とやらは、うちの会社に何を望んでいるのか?」
「中心的なメンバーはECN社さんに情報提供し、協力を仰ぎたいようだった。私は情報を託された。情報提供のためECN社さんの責任者との面会を願いたい」
カヤノはそう答えると、抱えていたケースから携帯端末を取り出してみせた。その手は緊張のためかわずかに震えていた。
言葉遣いが安定しないのもそのあたりに原因があるようだった。
ロビーは携帯端末とカヤノへ交互に目をやった。
カヤノは表情を変えることなくロビーを見据えていた。
少し離れた位置にいるムレハとネガワは、心配そうに二人を見ていた。
離れた位置に移動したのは、ロビーに対して配慮したからであった。
ロビーにはカヤノが身動きひとつしていないように見えた。
その表情はやや緊張気味のためか硬く思われたが、少なくともロビーに対して後ろめたいことがあるようには思われなかった。
ロビーは覚悟を決めるしかないと悟った。
「……わかった。俺の判断でしかるべき相手に会わせることを約束しよう。メルツとは限らないが、それでも構わないか?」
ロビーの言葉にカヤノは、それでいいと答えた。
ロビーがレイカとカヤノを会わせると約束しなかったのは、「判定者とその支援者」の希望によってはレイカではなく、自分自身かミヤハラが話を聞いた方がよいのではないかと判断したためである。
「ところで、差し支えなければ、だが、情報とやらが何か少し教えてくれないか? その方が話を通しやすい」
するとカヤノは、どうぞと言って携帯端末の電源を入れてロビーに示した。
「悪いな。感謝する」
ロビーは携帯端末を受け取り、保存されている情報を見てみることにした。
「なら、カヤノさん、でいいか? 『勉強会』グループに攻撃されているようだったが、あの建物にいたのはトーカMC社の関係者か? あの建物はトーカMC社のものだとは聞いていないのだが」
ロビーの質問を最後まで聞き終えると、カヤノは首を横に振った。
「違う。建物はトーカMC社のものではないし、私もトーカMC社の関係者ではありません。私の所属するグループに社員が一人いたけど、五ヶ月前に『勉強会』グループに捕まったまま戻っていません」
カヤノの答えにロビーたちは顔を見合わせた。
トーカMC社以外に「勉強会」グループに攻撃されている集団がいることを意味しているからだ。IMPUの幹部以外に「勉強会」グループの攻撃対象となっている者がいるとなれば、それはロビー達にとって重要な情報である。
「カヤノさん、あんた達のグループは『勉強会』に狙われている、ということか?」
「その通りです。狙われる理由は不明確な点も多いのですが……」
思わぬ展開にロビーは、カヤノにいったん断ってから会話の記録を取ることにした。
「トーカMC社ではないとすると、あんた達のグループは一体何者だ?」
ロビーの質問に、辺りが一瞬静まり返った。
ほんの一瞬のことであるが、カヤノの表情が強張った。
数秒の後、カヤノは意を決したかのように口を開いた。
「……タカミさん、といいましたね? ECN社ではレイカ・メルツさんとどのような関係にありますか?」
「俺か? 部署が違うからなぁ……ただ、個人的には面識がある。内容によってはメルツ室長に話を繋ぐことはできる」
唐突な質問にロビーは一瞬、答えをはぐらかそうとしたが、すぐに考え直したのだった。
「……わかった。私たちのグループは『判定者とその支援者』と名乗ることが多い。公になっている団体ではないので、恐らく名前を聞いたことはないでしょう」
ロビーにはその名前に聞き覚えがなかったし、ムレハやネガワに確認しても首を横に振るだけだった。
「悪いが、その名前を聞いたことはない。それがカヤノさんの所属しているグループの名前なのだな?」
「その通り。それと、こちらから質問させていただきたいのですが、タカミさんが私を保護した理由は?」
「なんだ、そんなことか。『勉強会』の連中が理由も説明せずにあんた達を殲滅しようとしていたのでな。それが許せなかったので、救える者は救おうとしただけだ」
ロビーの答えにカヤノは意外そうな表情を見せた。
その一方で、ロビーもカヤノへの対応に頭を悩ませていた。
カヤノはレイカとの接触を望んでいるように思われる。
可能であれば、カヤノについてはロビー一人の範囲で対応したかったが、それで済みそうな状況ではない。
今まで存在すら知らなかった「判定者とその支援者」なる集団のメンバーを調査もなしにレイカと引き合わせてよいものか、ロビーは判断に迷っていたのである。
トーカMC社の関係者であれば、レイカから事前に話を聞かされているので、問題なくレイカに引き合わせたであろう。
しかし、「判定者とその支援者」がレイカやECN社を狙う集団である場合、彼女と直接引き合わせるのは危険が伴う。
今までのカヤノとの会話では、「判定者とその支援者」が何を目的とした集団なのか、ロビーには判断がつかないのだ。
(化かし合いは俺の性には合わねぇ。直球でいくか……)
「俺の行動に疑問があるようだが、『判定者とその支援者』とやらは、うちの会社に何を望んでいるのか?」
「中心的なメンバーはECN社さんに情報提供し、協力を仰ぎたいようだった。私は情報を託された。情報提供のためECN社さんの責任者との面会を願いたい」
カヤノはそう答えると、抱えていたケースから携帯端末を取り出してみせた。その手は緊張のためかわずかに震えていた。
言葉遣いが安定しないのもそのあたりに原因があるようだった。
ロビーは携帯端末とカヤノへ交互に目をやった。
カヤノは表情を変えることなくロビーを見据えていた。
少し離れた位置にいるムレハとネガワは、心配そうに二人を見ていた。
離れた位置に移動したのは、ロビーに対して配慮したからであった。
ロビーにはカヤノが身動きひとつしていないように見えた。
その表情はやや緊張気味のためか硬く思われたが、少なくともロビーに対して後ろめたいことがあるようには思われなかった。
ロビーは覚悟を決めるしかないと悟った。
「……わかった。俺の判断でしかるべき相手に会わせることを約束しよう。メルツとは限らないが、それでも構わないか?」
ロビーの言葉にカヤノは、それでいいと答えた。
ロビーがレイカとカヤノを会わせると約束しなかったのは、「判定者とその支援者」の希望によってはレイカではなく、自分自身かミヤハラが話を聞いた方がよいのではないかと判断したためである。
「ところで、差し支えなければ、だが、情報とやらが何か少し教えてくれないか? その方が話を通しやすい」
するとカヤノは、どうぞと言って携帯端末の電源を入れてロビーに示した。
「悪いな。感謝する」
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