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第一章
5:決断
「では今日からお世話になります。呉さん、よろしくお願いします」
「平東さん、よく来てくれました。三ヶ月間は試用期間になりますが、よろしくお願いします」
仕事見学から三週間後、平東の姿はレボレック社のオフィスにあった。
※※
見学の翌日、平東は彼を担当している人材紹介会社カールスキャント・サービス社の来と連絡を取り、他の案件がないかと尋ねた。
来から少なくとも一、二ヶ月は出てきそうもない、という答えを聞いて平東は決断を迫られた。
レボレック社の仕事には筆記試験や面接などの選考がないということで、平東は疑いを持った。
だが、仕事を見学した限りでは業務内容はともかく、職場の雰囲気は悪くない、と思ったのだ。
ササクマという名の社員は話しやすそうな雰囲気だった。
呉とササクマ以外の従業員のことはわからないが、平東には割とのんびりした社風のように思えた。
なら、この仕事をしてみるのも悪くないだろう、と考えたのだった。
ただし、決断したからといってすぐに仕事が始められるわけではなかった。
手渡された書類に書いてあったのだが、一度仕事を始めると日本に帰国できるのは二、三ヶ月に一度になる。
そうすると今住んでいるアパートや所有している軽自動車の扱いをどうするか、考えておく必要がある。
「親に預かってもらうか……」
幸い両親は健在であるし、親子の仲は悪くない。
単純に実家周辺に仕事がないので都市部に出ているだけだ.。
レボレック社に勤務することになれば、借りているアパートも、持っている軽自動車も恐らく必要なくなる。
勤務地近くの住居は会社で用意してくれるそうだ。また、用意した住居の近所で大抵の必要なものは揃うらしいので車なども必要ないとのことであった。
平東は実家に戻り、両親にレボレック社の案件に応募すると話した。
両親はレボレック社を外国のレジャーランドを運営している会社と理解したようだった。
「言葉が何とかなるなら日本の会社よりも待遇がよさそうだからいいんじゃないか」と平東の決断を支持してくれたのだ。
両親とも五〇代前半と比較的若いので、平東が海外で (正確には異世界なのだが、両親はそのことを理解していない)仕事をするのにも抵抗はないようだった。
結局、両親と話し合ってアパートと軽自動車は次のようにすることに決めた。
試用期間満了で首になった場合に備えて、借りているアパートはそのままにして親に月一回程度様子を見に来てもらう。
軽自動車については実家に預ける。これについては母親の車がないので、必要なときに母親が利用する。
こうして後顧の憂いを断った平東は、レボレック社で仕事をすることになった。
※※
「で、私は何をすればいいのですか? それ以前に指示を出すのは誰でしょうか?」
「試用期間中は私が指示を出します。仕事の前に当面の生活の準備が先ですね。ヤーラに移動しますので、歩きながら説明しましょう」
呉が立ち上がって平東についてくるよう促した。
話しているうちに、平東にも状況がおぼろげに見えてくるようになった。
呉はレボレック社の人事部長とのことだった。
結構偉いのだな、などと平東は考えていたのだが、呉によれば中小企業なので古参は皆名前だけは偉そうな役職に就いていますと答えてきた。
前回同様空港の保安検査場にあるゲートのようなものを潜ってヤーラ側のオフィスに移動した後、エレベータで下に降りてからオフィスの外へ出た。
「何かうちの近くの繁華街とあんまり変わらないですねぇ……」
外へ出て周囲を見回した平東がつぶやいた。
オフィスの建物の向かいには、それほど大きくはないショッピングセンターがあり、その周囲には一〇数件の飲食店などが密集している。
「こちらはモニョイといって、我々だけでなく異世界出身の社員が生活するための都市です。五〇年位前の日本の都市をモデルにしていますので、平東さんにも馴染みやすいのではないでしょうか? ちょっと古いセンスなのはご容赦いただけると助かります」
呉が申し訳なさそうに説明した。
一方の平東は、うちの地元は五〇年前のセンスかとショックを受けていた。
確かに目の前に広がる光景は、平東が住んでいたアパートの最寄り駅の前と大差ない。むしろこちらの方が新しく、繁栄しているように感じられる。
人通りも多く、にぎわっているようだ。
異世界とは聞いているが、道行く人々は外見上地球人とほとんど差がない。
「こちらが住宅街です。社員の皆様の住宅もこのエリアにあります」
三、四分歩くと、住宅街に出た。
メゾネットやテラスハウスタイプの集合住宅が集まっており、多くの住民がこのあたりに居住しているらしい。
「こちらが社員の住宅です。平東さんには一号室に入っていただこうと思います。中を見て気に入らないようでしたら別の住宅も紹介できますので、何なりと言ってください」
「失礼します」
呉が指し示したのは住宅街に入ってから三番目のグレーの建物であった。
二階建てのメゾネットタイプの住宅で、五世帯が入居できるようになっているが、現在は全て空室とのことだった。
「家具は一通り揃っているな……一人暮らしには広すぎるくらいだが……」
呉から鍵を受け取って平東が一号室の中に入った。
一階にはリビングダイニングキッチンとバスルーム、そしてクローゼットがある。
二階に上がるとベッドルームが二つとトイレだ。
「さすがに広すぎて使いきれないかもしれないが……代わりを紹介してもらうのも面倒だし、ここにしておくか……」
今まで住んでいた1Kのアパートとは大違いで面食らったものの、平東はここに住むことを決めた。
呉にそのことを伝えると、次にモニョイを案内しますと答えが返ってきた。
「平東さん、よく来てくれました。三ヶ月間は試用期間になりますが、よろしくお願いします」
仕事見学から三週間後、平東の姿はレボレック社のオフィスにあった。
※※
見学の翌日、平東は彼を担当している人材紹介会社カールスキャント・サービス社の来と連絡を取り、他の案件がないかと尋ねた。
来から少なくとも一、二ヶ月は出てきそうもない、という答えを聞いて平東は決断を迫られた。
レボレック社の仕事には筆記試験や面接などの選考がないということで、平東は疑いを持った。
だが、仕事を見学した限りでは業務内容はともかく、職場の雰囲気は悪くない、と思ったのだ。
ササクマという名の社員は話しやすそうな雰囲気だった。
呉とササクマ以外の従業員のことはわからないが、平東には割とのんびりした社風のように思えた。
なら、この仕事をしてみるのも悪くないだろう、と考えたのだった。
ただし、決断したからといってすぐに仕事が始められるわけではなかった。
手渡された書類に書いてあったのだが、一度仕事を始めると日本に帰国できるのは二、三ヶ月に一度になる。
そうすると今住んでいるアパートや所有している軽自動車の扱いをどうするか、考えておく必要がある。
「親に預かってもらうか……」
幸い両親は健在であるし、親子の仲は悪くない。
単純に実家周辺に仕事がないので都市部に出ているだけだ.。
レボレック社に勤務することになれば、借りているアパートも、持っている軽自動車も恐らく必要なくなる。
勤務地近くの住居は会社で用意してくれるそうだ。また、用意した住居の近所で大抵の必要なものは揃うらしいので車なども必要ないとのことであった。
平東は実家に戻り、両親にレボレック社の案件に応募すると話した。
両親はレボレック社を外国のレジャーランドを運営している会社と理解したようだった。
「言葉が何とかなるなら日本の会社よりも待遇がよさそうだからいいんじゃないか」と平東の決断を支持してくれたのだ。
両親とも五〇代前半と比較的若いので、平東が海外で (正確には異世界なのだが、両親はそのことを理解していない)仕事をするのにも抵抗はないようだった。
結局、両親と話し合ってアパートと軽自動車は次のようにすることに決めた。
試用期間満了で首になった場合に備えて、借りているアパートはそのままにして親に月一回程度様子を見に来てもらう。
軽自動車については実家に預ける。これについては母親の車がないので、必要なときに母親が利用する。
こうして後顧の憂いを断った平東は、レボレック社で仕事をすることになった。
※※
「で、私は何をすればいいのですか? それ以前に指示を出すのは誰でしょうか?」
「試用期間中は私が指示を出します。仕事の前に当面の生活の準備が先ですね。ヤーラに移動しますので、歩きながら説明しましょう」
呉が立ち上がって平東についてくるよう促した。
話しているうちに、平東にも状況がおぼろげに見えてくるようになった。
呉はレボレック社の人事部長とのことだった。
結構偉いのだな、などと平東は考えていたのだが、呉によれば中小企業なので古参は皆名前だけは偉そうな役職に就いていますと答えてきた。
前回同様空港の保安検査場にあるゲートのようなものを潜ってヤーラ側のオフィスに移動した後、エレベータで下に降りてからオフィスの外へ出た。
「何かうちの近くの繁華街とあんまり変わらないですねぇ……」
外へ出て周囲を見回した平東がつぶやいた。
オフィスの建物の向かいには、それほど大きくはないショッピングセンターがあり、その周囲には一〇数件の飲食店などが密集している。
「こちらはモニョイといって、我々だけでなく異世界出身の社員が生活するための都市です。五〇年位前の日本の都市をモデルにしていますので、平東さんにも馴染みやすいのではないでしょうか? ちょっと古いセンスなのはご容赦いただけると助かります」
呉が申し訳なさそうに説明した。
一方の平東は、うちの地元は五〇年前のセンスかとショックを受けていた。
確かに目の前に広がる光景は、平東が住んでいたアパートの最寄り駅の前と大差ない。むしろこちらの方が新しく、繁栄しているように感じられる。
人通りも多く、にぎわっているようだ。
異世界とは聞いているが、道行く人々は外見上地球人とほとんど差がない。
「こちらが住宅街です。社員の皆様の住宅もこのエリアにあります」
三、四分歩くと、住宅街に出た。
メゾネットやテラスハウスタイプの集合住宅が集まっており、多くの住民がこのあたりに居住しているらしい。
「こちらが社員の住宅です。平東さんには一号室に入っていただこうと思います。中を見て気に入らないようでしたら別の住宅も紹介できますので、何なりと言ってください」
「失礼します」
呉が指し示したのは住宅街に入ってから三番目のグレーの建物であった。
二階建てのメゾネットタイプの住宅で、五世帯が入居できるようになっているが、現在は全て空室とのことだった。
「家具は一通り揃っているな……一人暮らしには広すぎるくらいだが……」
呉から鍵を受け取って平東が一号室の中に入った。
一階にはリビングダイニングキッチンとバスルーム、そしてクローゼットがある。
二階に上がるとベッドルームが二つとトイレだ。
「さすがに広すぎて使いきれないかもしれないが……代わりを紹介してもらうのも面倒だし、ここにしておくか……」
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