34 / 194
第二章
体験ツアーその2
しおりを挟む
マナにつけるディップは今回四種類用意することになっていた。
そのうち一種類は存在界にある材料を使う。これはイサベルが運んで来たものだ。
残りの三種類は精霊界の材料を使う。
少しディップの種類が多すぎる気もするが、あまりに食事が単調だと飽きられるだろうということでこうなったのだ。
「味付けはディップで変えるということですか。なるほど、興味深い……」
「私たち精霊は辛い味付けに馴染みがない種類も結構いるのだよね」
イドイさんと彼を担当している草木の精霊メリアスのレジーナが話をしている。
彼に対しては移住希望者が娘さんであるため、彼女の相手となり得る男性型の精霊を担当につけるという話もあったのだが、本人の希望で女性型の精霊が担当している。
レジーナは博識で知られており、研究者のイドイさんの相手にはうってつけだ。
「ケルークス」にも時々来店するので、私も彼女とは面識がある。
「ほう、辛いというのにもいくつかパターンがありますが、精霊界に馴染みが薄いのはどの『辛い』なのですか?」
「精霊は甘いもの好きだからね。しょっぱいのは割と馴染みあるけど、これすら苦手という精霊もいるね。唐辛子の辛さは男性型の精霊や火の精霊には最近ウケてる。アタシもカキノタネくらいなら平気ね」
「辛子とか山葵はどうですかな?」
「うーん、男性型の精霊には好きなのもいるけどね、アタシは無理。仲間の草木から拒否されているように感じちゃうのね。唐辛子の辛さも同じはずなのに、何故かそっちは平気だから不思議」
「辛さについて区別されているという貴重な情報を聞くことができました。ありがとうございます」
イドイさんは妙なところで感心しているが、これが研究者の感性というものなのだろうか?
一時間弱でディップ作りが完了し、次はいよいよ夕食会となる。
食事は先ほど作ったマナとディップ、飲み物は「ケルークス」のメニューから参加者に選んでもらう。
メニューには存在界の飲み物もあるが、参加者は皆精霊界の飲み物を選んだ。
私はカーリンの造ったアンブロシア酒をいただく。
「じゃ、最初はボクたちが演奏して歌うから、聴いてね! 合わせて歌ったり、手拍子は大歓迎!」
店の一部に (相談員たちが)即席のステージを作り、その上でパン、エコー、セイレーンなどによる楽団が演奏を開始した。
精霊たちは基本的に陽気で軽妙な音楽を好むので、彼らが演奏しているのもそういった曲だ。
「ヨーロッパの居酒屋みたいですね」
「知らない曲ばかりですけど、それが新鮮ですね。私たちの世界にないリズムが興味深い」
「でも、歌詞は聞き取れるわ。わざわざ日本語で歌ってくれているのかしら?」
「歌い方に不自然なところがないが……リズムに合う歌詞に直すのは大変だと思うが……」
参加者は今になって精霊たちの言葉が理解できることに疑問を覚えたようだ。
精霊や私のような魂霊は、自らの意思を言葉として発している。
当たり前だろう、と思われるかも知れないが、皆さんが想像されるものとは少し異なるはずだ。
「精霊や私のような魂霊は『こういうことを伝えたいな』と思うと、自働的にそれが相手に伝わる言葉になって口から出てくるという能力を持っているのです。もちろん普通に話すこともできるのですが」
「??」
私の説明に参加者たちが一斉に首を傾げた。
私もこちらに来たばかりのときは、「こう伝えたい」と思うだけでそれが口から言葉になって出てくる、ということには慣れなかった。
精霊たちは普段からこの方法で会話をしているので慣れっこだが、人間の時代にこのような形で会話をしたことがない私にはしっくりこなかったのを覚えている。
「では、我々の言葉はどうして彼らに通じているのですか?」
ウエバヤシさんが尋ねてきた。この手の質問をするならイドイさんかと思っていたが、どうやら彼はカラクリを知っているようだ。
「上の方から私たちに伝わる言葉で聞こえているんだよー」
ノームのピアが種明かしをした。
実はマイクとスピーカーを魔法で精霊界仕様にする際に翻訳の機能を付けているのだ。
そのため建物内で人間が話すと、同時にスピーカーから精霊にわかる言葉で聞こえてくる。
ちなみに存在界への出張組は魔法で妖精になると自動的に人間の言葉を理解し、話すことができるという。ほとんど反則だ。
アイリスのように魔法無しで日本語を解する精霊もいるが、これは少数派だ。
「ほう、なかなか高度な技術ですな」
「私たち精霊は魔法や魔術で片付けちゃうからね」
「便利なものですな」
ウエバヤシさんがピアの答えに納得したのかどうかわからないが、それ以上突っ込むことはしなかった。
夕食が終わって、エノキモリさんが演奏に合わせて歌いたいと名乗り出た。
どうやらカラオケ大会になるようだ。
最初のシフトの私とエリシアとアイリスはここで退出。
第二にシフトのベネディクトとドナート、そしてコレットに変わってもらう。ちょっと心配なメンバーだが、真面目人間のベネディクトがいれば大丈夫か。
私とエリシアは第三シフトにも入っているので、いったん家で休んで翌朝「ケルークス」に戻ってくることになる。
━━翌朝━━
「お疲れ、交代の時間だ」
「ふあ~い」
翌朝、私が「ケルークス」に出勤すると、テーブルの上に突っ伏していたコレットが起き上がって大欠伸した。
早朝といえる時間だったのだが、店内にいたコレットとドナートに尋ねると四人の参加者全員が起きていて店の近くで思い思いの時間を過ごしているそうだと答えが返ってきた。
そうだ、というのは店内にいるのは四人の参加者のうち二人だけだからだ。
ドナートによれば最年長と思われるウエバヤシさんは、イサベルを連れて外を歩いているらしい。
人間が出入りできる場所にいるのだろう。
相談所の建物の周辺には存在界と精霊界の両方の特徴を持つ特殊なエリアがあり、そのエリアの中なら精霊、人間、魂霊の誰もが出入りできる。
一方、アカヌマさんは、ベネディクトとピアに建物の中を案内してもらっているそうだ。
精霊界と存在界の時の流れはまったく同じで、精霊界の朝五時半は存在界でも朝五時半だ。
ツアーは昼食を終えた後、一三時半にイサベルの案内でこの建物を後にして、一五時に最寄りの駅で解散となっている。
今日の予定は朝食後、精霊たちや他の移住者たちとの会話と質問タイム。
相談員以外の移住者と話す機会はツアー以外にないので、貴重な時間といえるだろう。
今日来る相談員ではない移住者三名は、全員移住前に日本で暮らしていた人たちだ。
今回の参加者はすべて日本で暮らしている人だから、感覚が合うのではないかと思う。
「あ、アーベルさん、いらしていましたか。ということは交代の時間ですか?」
そう言ってベネディクトが一人で店内に入ってきた。
「そうだけど、ベネディクトは一人なのか? ピアとアカヌマさんが一緒だと聞いたが……」
「いえ、帰るのが遅くなるとメイヴのテンションがおかしくなるから……」
「……それは仕方ないな」
ベネディクトのパートナーであるメイヴはかなり力のある精霊なので何かと気を遣う。
家ではベネディクトが完全に彼女を支配しているらしいが。
少ししてエリシアも来たので、ベネディクト、コレット、そしてドナートには家に戻ってもらった。
朝食が終わるまではエリシアと私で、その後にフランシスとアイリスが合流する。
相談員が交代したところで、エノキモリさんがこう声をかけてきた。
「精霊の方は誰でも存在界にも出入りできると聞きましたので、この近くを一緒に歩いてきますね」
エノキモリさんは、イドイさんと店内にいた精霊を連れて外に出ていった。
こうなると店内に残された我々はすることもなく椅子に座っているだけだ。
四人の参加者は皆元気で、それは良いことなのだが、精霊界への移住という点では気がかりな点もある。
バイタリティのありすぎる人には向いていない世界なのではないか、と私は思うからだ。
六時少し前にブリスがやって来て、その直後に上に自室のあるユーリが下りてきた。
朝食の準備はこの四名で対応する。
飲み物と昨日作ったマナを並べるだけだからそれほど大変な作業ではない。
コーヒーを飲んでだらだら休憩した後、七時すぎから準備を開始する。
七時一五分過ぎになって、外に出ていた参加者たちが続々と戻ってきた。
いつの間にか建物の中の散策をしていたアカヌマさんとピアも外出組に合流していたらしい。
会話と質問タイムは八時半からなのだが、この時間にやって来ている精霊も何体かいる。
精霊は時間の感覚がルーズなのだが、どうもアイリスに「遅刻だけは絶対にダメ」と念を押されて早めに来たらしい。
「なら、朝食の間も質問とかは受け付けてしまう、ということでどうですか?」
七時ニ〇分過ぎにやってきたアイリスに私はそう提案した。
精霊の方も話をしたくてうずうずしているし、参加者の方も乗り気に見える。
「いいわよ。移住者は八時半に来るから、それまでは精霊たちと話していてね。寝足りない人は部屋で寝ていてもいいし」
あっさりオーケーが出たので、朝食時間から参加者と精霊たちに話をしてもらう。
「やっぱり精霊にも好みの相手とかあるのかしら?」
「こういう人が好かれるとか、こういう人は苦手というのはある?」
「一人で複数のお相手を抱えているとお相手同士で揉めたり喧嘩になったりすることはないのでしょうか?」
「精霊たちの一日のスケジュールはどのようになっているのだ?」
朝食が開始されてから、参加者たちは精霊たちに矢継ぎ早に質問を浴びせかけていった。
「好みはあるけど、人間や魂霊はボクら精霊の理想像を集めたようなものなんだ。人間もそういう理想像を絵や文章や人形などで表現するでしょう? それと同じ感覚だと思うよ」
「精霊に乱暴したりコキ使ったりしなければ大丈夫だと思うけどな……多分そういうことはできないはずだけど」
「モヤモヤすることはあるかも知れないわ。でも、契約している相手が嫌な思いをするだろうから、揉め事や喧嘩はできないかな……」
「うーん、皆でお話して、歌って、遊んで……かな?」
精霊たちも人間と話ができるのが嬉しいのか、楽しそうに答えている。
私は何十年か精霊界で暮らしているが、どうも契約に関する精霊の感覚は未だに十分に理解できていないような気がする。
契約で特定の相手に縛られることについて、抵抗がないというかむしろ嬉々として受け入れているように思えるのだ。
私のパートナー四体もそのように主張するし (これは私の前なので正直に話すのが憚られるという可能性もある)、アイリスも「契約」は少なくない精霊が強く望んでいると言っていた。
何の縛りもない状態よりも、何かの縛りがあったほうが良いということなのだろうか?
八時二〇分を過ぎたあたりで今日、話をする移住者たちが到着した。
私とエリシアとユーリで急いで片付けとテーブルのセットを行う。
この後はいよいよ精霊たち、移住者、ツアー参加者の会話&質問タイムだ。
そのうち一種類は存在界にある材料を使う。これはイサベルが運んで来たものだ。
残りの三種類は精霊界の材料を使う。
少しディップの種類が多すぎる気もするが、あまりに食事が単調だと飽きられるだろうということでこうなったのだ。
「味付けはディップで変えるということですか。なるほど、興味深い……」
「私たち精霊は辛い味付けに馴染みがない種類も結構いるのだよね」
イドイさんと彼を担当している草木の精霊メリアスのレジーナが話をしている。
彼に対しては移住希望者が娘さんであるため、彼女の相手となり得る男性型の精霊を担当につけるという話もあったのだが、本人の希望で女性型の精霊が担当している。
レジーナは博識で知られており、研究者のイドイさんの相手にはうってつけだ。
「ケルークス」にも時々来店するので、私も彼女とは面識がある。
「ほう、辛いというのにもいくつかパターンがありますが、精霊界に馴染みが薄いのはどの『辛い』なのですか?」
「精霊は甘いもの好きだからね。しょっぱいのは割と馴染みあるけど、これすら苦手という精霊もいるね。唐辛子の辛さは男性型の精霊や火の精霊には最近ウケてる。アタシもカキノタネくらいなら平気ね」
「辛子とか山葵はどうですかな?」
「うーん、男性型の精霊には好きなのもいるけどね、アタシは無理。仲間の草木から拒否されているように感じちゃうのね。唐辛子の辛さも同じはずなのに、何故かそっちは平気だから不思議」
「辛さについて区別されているという貴重な情報を聞くことができました。ありがとうございます」
イドイさんは妙なところで感心しているが、これが研究者の感性というものなのだろうか?
一時間弱でディップ作りが完了し、次はいよいよ夕食会となる。
食事は先ほど作ったマナとディップ、飲み物は「ケルークス」のメニューから参加者に選んでもらう。
メニューには存在界の飲み物もあるが、参加者は皆精霊界の飲み物を選んだ。
私はカーリンの造ったアンブロシア酒をいただく。
「じゃ、最初はボクたちが演奏して歌うから、聴いてね! 合わせて歌ったり、手拍子は大歓迎!」
店の一部に (相談員たちが)即席のステージを作り、その上でパン、エコー、セイレーンなどによる楽団が演奏を開始した。
精霊たちは基本的に陽気で軽妙な音楽を好むので、彼らが演奏しているのもそういった曲だ。
「ヨーロッパの居酒屋みたいですね」
「知らない曲ばかりですけど、それが新鮮ですね。私たちの世界にないリズムが興味深い」
「でも、歌詞は聞き取れるわ。わざわざ日本語で歌ってくれているのかしら?」
「歌い方に不自然なところがないが……リズムに合う歌詞に直すのは大変だと思うが……」
参加者は今になって精霊たちの言葉が理解できることに疑問を覚えたようだ。
精霊や私のような魂霊は、自らの意思を言葉として発している。
当たり前だろう、と思われるかも知れないが、皆さんが想像されるものとは少し異なるはずだ。
「精霊や私のような魂霊は『こういうことを伝えたいな』と思うと、自働的にそれが相手に伝わる言葉になって口から出てくるという能力を持っているのです。もちろん普通に話すこともできるのですが」
「??」
私の説明に参加者たちが一斉に首を傾げた。
私もこちらに来たばかりのときは、「こう伝えたい」と思うだけでそれが口から言葉になって出てくる、ということには慣れなかった。
精霊たちは普段からこの方法で会話をしているので慣れっこだが、人間の時代にこのような形で会話をしたことがない私にはしっくりこなかったのを覚えている。
「では、我々の言葉はどうして彼らに通じているのですか?」
ウエバヤシさんが尋ねてきた。この手の質問をするならイドイさんかと思っていたが、どうやら彼はカラクリを知っているようだ。
「上の方から私たちに伝わる言葉で聞こえているんだよー」
ノームのピアが種明かしをした。
実はマイクとスピーカーを魔法で精霊界仕様にする際に翻訳の機能を付けているのだ。
そのため建物内で人間が話すと、同時にスピーカーから精霊にわかる言葉で聞こえてくる。
ちなみに存在界への出張組は魔法で妖精になると自動的に人間の言葉を理解し、話すことができるという。ほとんど反則だ。
アイリスのように魔法無しで日本語を解する精霊もいるが、これは少数派だ。
「ほう、なかなか高度な技術ですな」
「私たち精霊は魔法や魔術で片付けちゃうからね」
「便利なものですな」
ウエバヤシさんがピアの答えに納得したのかどうかわからないが、それ以上突っ込むことはしなかった。
夕食が終わって、エノキモリさんが演奏に合わせて歌いたいと名乗り出た。
どうやらカラオケ大会になるようだ。
最初のシフトの私とエリシアとアイリスはここで退出。
第二にシフトのベネディクトとドナート、そしてコレットに変わってもらう。ちょっと心配なメンバーだが、真面目人間のベネディクトがいれば大丈夫か。
私とエリシアは第三シフトにも入っているので、いったん家で休んで翌朝「ケルークス」に戻ってくることになる。
━━翌朝━━
「お疲れ、交代の時間だ」
「ふあ~い」
翌朝、私が「ケルークス」に出勤すると、テーブルの上に突っ伏していたコレットが起き上がって大欠伸した。
早朝といえる時間だったのだが、店内にいたコレットとドナートに尋ねると四人の参加者全員が起きていて店の近くで思い思いの時間を過ごしているそうだと答えが返ってきた。
そうだ、というのは店内にいるのは四人の参加者のうち二人だけだからだ。
ドナートによれば最年長と思われるウエバヤシさんは、イサベルを連れて外を歩いているらしい。
人間が出入りできる場所にいるのだろう。
相談所の建物の周辺には存在界と精霊界の両方の特徴を持つ特殊なエリアがあり、そのエリアの中なら精霊、人間、魂霊の誰もが出入りできる。
一方、アカヌマさんは、ベネディクトとピアに建物の中を案内してもらっているそうだ。
精霊界と存在界の時の流れはまったく同じで、精霊界の朝五時半は存在界でも朝五時半だ。
ツアーは昼食を終えた後、一三時半にイサベルの案内でこの建物を後にして、一五時に最寄りの駅で解散となっている。
今日の予定は朝食後、精霊たちや他の移住者たちとの会話と質問タイム。
相談員以外の移住者と話す機会はツアー以外にないので、貴重な時間といえるだろう。
今日来る相談員ではない移住者三名は、全員移住前に日本で暮らしていた人たちだ。
今回の参加者はすべて日本で暮らしている人だから、感覚が合うのではないかと思う。
「あ、アーベルさん、いらしていましたか。ということは交代の時間ですか?」
そう言ってベネディクトが一人で店内に入ってきた。
「そうだけど、ベネディクトは一人なのか? ピアとアカヌマさんが一緒だと聞いたが……」
「いえ、帰るのが遅くなるとメイヴのテンションがおかしくなるから……」
「……それは仕方ないな」
ベネディクトのパートナーであるメイヴはかなり力のある精霊なので何かと気を遣う。
家ではベネディクトが完全に彼女を支配しているらしいが。
少ししてエリシアも来たので、ベネディクト、コレット、そしてドナートには家に戻ってもらった。
朝食が終わるまではエリシアと私で、その後にフランシスとアイリスが合流する。
相談員が交代したところで、エノキモリさんがこう声をかけてきた。
「精霊の方は誰でも存在界にも出入りできると聞きましたので、この近くを一緒に歩いてきますね」
エノキモリさんは、イドイさんと店内にいた精霊を連れて外に出ていった。
こうなると店内に残された我々はすることもなく椅子に座っているだけだ。
四人の参加者は皆元気で、それは良いことなのだが、精霊界への移住という点では気がかりな点もある。
バイタリティのありすぎる人には向いていない世界なのではないか、と私は思うからだ。
六時少し前にブリスがやって来て、その直後に上に自室のあるユーリが下りてきた。
朝食の準備はこの四名で対応する。
飲み物と昨日作ったマナを並べるだけだからそれほど大変な作業ではない。
コーヒーを飲んでだらだら休憩した後、七時すぎから準備を開始する。
七時一五分過ぎになって、外に出ていた参加者たちが続々と戻ってきた。
いつの間にか建物の中の散策をしていたアカヌマさんとピアも外出組に合流していたらしい。
会話と質問タイムは八時半からなのだが、この時間にやって来ている精霊も何体かいる。
精霊は時間の感覚がルーズなのだが、どうもアイリスに「遅刻だけは絶対にダメ」と念を押されて早めに来たらしい。
「なら、朝食の間も質問とかは受け付けてしまう、ということでどうですか?」
七時ニ〇分過ぎにやってきたアイリスに私はそう提案した。
精霊の方も話をしたくてうずうずしているし、参加者の方も乗り気に見える。
「いいわよ。移住者は八時半に来るから、それまでは精霊たちと話していてね。寝足りない人は部屋で寝ていてもいいし」
あっさりオーケーが出たので、朝食時間から参加者と精霊たちに話をしてもらう。
「やっぱり精霊にも好みの相手とかあるのかしら?」
「こういう人が好かれるとか、こういう人は苦手というのはある?」
「一人で複数のお相手を抱えているとお相手同士で揉めたり喧嘩になったりすることはないのでしょうか?」
「精霊たちの一日のスケジュールはどのようになっているのだ?」
朝食が開始されてから、参加者たちは精霊たちに矢継ぎ早に質問を浴びせかけていった。
「好みはあるけど、人間や魂霊はボクら精霊の理想像を集めたようなものなんだ。人間もそういう理想像を絵や文章や人形などで表現するでしょう? それと同じ感覚だと思うよ」
「精霊に乱暴したりコキ使ったりしなければ大丈夫だと思うけどな……多分そういうことはできないはずだけど」
「モヤモヤすることはあるかも知れないわ。でも、契約している相手が嫌な思いをするだろうから、揉め事や喧嘩はできないかな……」
「うーん、皆でお話して、歌って、遊んで……かな?」
精霊たちも人間と話ができるのが嬉しいのか、楽しそうに答えている。
私は何十年か精霊界で暮らしているが、どうも契約に関する精霊の感覚は未だに十分に理解できていないような気がする。
契約で特定の相手に縛られることについて、抵抗がないというかむしろ嬉々として受け入れているように思えるのだ。
私のパートナー四体もそのように主張するし (これは私の前なので正直に話すのが憚られるという可能性もある)、アイリスも「契約」は少なくない精霊が強く望んでいると言っていた。
何の縛りもない状態よりも、何かの縛りがあったほうが良いということなのだろうか?
八時二〇分を過ぎたあたりで今日、話をする移住者たちが到着した。
私とエリシアとユーリで急いで片付けとテーブルのセットを行う。
この後はいよいよ精霊たち、移住者、ツアー参加者の会話&質問タイムだ。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる