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第三章
他の相談所への応援 その2
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一時間の休憩の後、相談が再開された。
二八名のうち、二度目の相談を希望したのは二六名。二人を除いて全員ということになる。
「移住した後で住むところってどうやって決めるの?」
「釣りができるところはないか?」
「所長さん以外に会えるって精霊はいないかい?」
次々に相談客から質問が飛んでくる。
「パートナーとなる精霊の住んでいるところに行くケースが多いですが、自分でお住まいを探すこともできます。家を建てたいときは、許可さえとれば近くの精霊が協力してくれます」
「魚とかいないんだよね。精霊界では他の生き物を傷つけるのは厳禁だしね」
「ちょっと待ってください。私どものパートナーを連れてきます!」
中でも精霊を見てみたいという相談が結構多い。
「ケルークス」では、カフェスペースに案内すれば誰かしら精霊がいるが、この相談所にはカフェや飲食店が併設されていない。
アイリスが出る前にパートナーを連れていけと言っていたのだが、こういう事態に備えてのことだったと理解した。
ちなみにエリシアは前回相談客に会わせたグレースとファビオ、私はリーゼを連れてきている。
正確には、パートナーたちは私とエリシアから何時間か遅れてここに到着しているので、連れてきたというのはちょっと違うのだが。
「アーベルさまと契約しているリーゼと言います。水の精霊ニンフです」
リーゼが相談客の前でぺこりとお辞儀した。
「可愛らしいお嬢さんね。絵で見るニンフってこんな感じだったかしら?」
女性の相談客が首をひねった。彼女の地元にはニンフを描いたとされる絵が多数存在しているそうだ。
「私はニンフの中では小さい方なので、もう少し大きい方もいます」
リーゼは落ち着いた様子で相談客の疑問に答えた。
こうした場面には、素直で人当たりの良いカーリンが最適なのだが、残念ながら彼女はアンブロシア酒造りの最中で家を離れることができない。
礼儀正しいという点ではニーナだが、彼女にはウンディーネ特有の「パートナーを馬鹿にされると激怒する」という性質があるから、こうした場には連れ出しにくい。
メラニーはユーリから何か用事を頼まれているらしく、手が離せないということだったので、消去法でリーゼが同行することになった。
リーゼには大変申し訳ないと思う。
彼女の場合、人見知りというか精霊見知り的なところがあるから大丈夫かな、と思ったのだが今のところ問題なさそうだ。
多少ぶしつけな質問にも落ち着いて答えてくれている。
「ちょっと若すぎる気もするけど、これなら男の精霊にも期待できそうね。ありがとう」
相談客はリーゼと話をして満足したようであった。
この相談客は移住に前のめりといった感じで、私からすれば少し心配になってしまう。
彼女が最初に相談所を訪れてから三日も経っていないのだから。
「次の人、どうぞ!」
相談を終えてエリシアが次の相談客を呼ぶ。
二回目は一人当たりの相談時間が一時間までとされたので、相談も慌ただしい。
相談客がチャーターしているヘリコプターの関係で、ここにいられるのは明後日の昼までになるからだ。
「精霊界への移住は考えているけど、孫が成人するくらいまではこっちにいたいのだよね。移住するとしたらだいぶ先になるけど、それでも問題ないのかい?」
次の相談客は頭に白いものが少し混じっている男の人だった。
「はい。最初に相談に来てから移住に三〇年くらいかかった方もいらっしゃいますから、じっくり考えてください」
私はそう答えた。私の場合は生命にかかわる病気、ということで急がざるを得なかったが、そのくらいじっくり考えてもいいと思う。
ちなみにこの方、お孫さんは娘さんのお腹の中、すなわちまだ生まれていないということだそうだ。
お孫さんが成人するとなると二〇ウン年後ということだろう。そういう人がいてもいい。
「それは良かった。存在界でやることをやり終えて悔いがない状態になったら移住するよ」
「それがいいと思います」
「そうだね! オイラも応援するよ」
相談客は納得してくれたようで、いい顔をしていた。珍しく相談員としていい答えができたのではないかと思う。
休憩を挟みながら更に一日半、相談を続けた。
多い人には四度目までの相談を行った。
相談客が慌ただしく帰り支度をしている。
フィデリア所長をはじめとした相談所のメンバーも相談客を手伝って荷物を建物の入口まで移動させている。
帰りのヘリコプターが来るまであと一時間もない。
相談所がかなり行きにくい場所にあるため、時間ギリギリまで相談したいという相談客が少なくなかった。
一回相談所を訪れるのに給料二ヶ月分とかいわれると確かにそうなるだろうなとは思う。
その意味では「ケルークス」のある日本はかなり条件が良いのだろう。
魂霊であるため建物の外の存在界側に出られない私とエリシアは建物の入口で相談客を見送った。イレーネさんも同様だ。
ヘリコプターが五往復して相談客を近くの町に送り届ける。
一往復が四、五〇分くらいなので、相談客の輸送だけで半日仕事だ。
最後の相談客を送り出した後、半日前まで私とエリシアが相談に応じていた部屋に移動した。どうやらこの部屋は本来相談員の控室として使われているらしい。
部屋の広さはともかく、置かれているテーブルが大きくないので精霊魂霊合わせて七体入るとちょっと狭い気もする。
「皆さん、お疲れさまでしたっ。助かりましたぁ!」
フィデリア所長が魔術でお茶を淹れてくれた。
相談員のイレーネさんが棚からスナック菓子のようなウケの入った器を出してテーブルの上に置いた。
手慣れているところを見ると、いつも相談の後はティータイムにしているのではないかと思う。
「ふーっ! やっと落ち着きました。アーベルさん、エリシアさん、お客さんが多くてびっくりしなかったですか?」
イレーネさんがウケをパリパリかじりながら尋ねてきた。
「驚いたよ。うちは多いときで日に三人とかだし、同じ人が連続で何回も相談することがないからね」
エリシアがウケの器に手を伸ばした。
「ここ、来るのが大変だから泊まり込みで何回も相談するお客さんが多いんですっ!」
「相談員二人で回すのは大変ではないですか、フィデリア所長?」
泊りの客が多いと聞いて、私は思わず質問してしまった。ここの相談所は「ケルークス」みたいに七人も相談員を抱えているわけではない。
「イレーネさんが頑張っているので、普段はこんなことにはならないのですけどね。今回はびっくりしちゃいました」
フィデリア所長によると、この相談所を訪れる相談客は年に七、八人程度らしい。
「存在界で宣伝しているメンバーに聞いたのだけど、最近、ここの国は政情が不安定になっているみたいなんです。だから国から出ようとしている人たちがたくさんいるらしいです。相談に来ている中にもそういう人が多いみたいです」
イレーネさんが状況を教えてくれた。
相談客にそれほど切羽詰まった感じの人はいなかったと思うのだけど、相談客にもいろいろ事情があるのだろう。
危険からの逃れる先の選択肢としての精霊界、というのはあまりオススメできないのだけど、彼らの状況をほとんど知らない私にどうこう言う資格はない。
「法律で決まっているわけじゃないんだけど、この国では精霊界への移住は処罰の対象になっちゃうんだよね。今のところここに来ることは黙認されているみたいなんだけどね」
フィデリア所長がしゅんとうなだれた。
相談所を移転させることも考えているのだが、周辺の国は更に状況が悪いらしく、今よりマシな候補地がないのだそうだ。
「ここでもかなり行くのが難しかったですよ。私も苦労したんですよ」
イレーネさんは移住する前、近くの町から二日かけて歩いてここまで相談に来ていたそうだ。
三回泊まり込みで相談に来て、四回目にここを訪れたときに移住したと話してくれた。
ここの相談所から精霊界に移住した人は、彼女のようなパターンが多いらしい。
「そういえば、さっきファビオさんから聞いたけど、そっちの相談所では存在界に行っている妖精が相談客を相談所まで送ってくれるんだって? ウチでもやってみようかなぁ……」
いつの間にかフィデリア所長はエリシアのパートナーであるファビオとも会話していたらしい。
部屋の中にはファビオ、グレース、リーゼの三体もいるのだが、さすがに移住相談に関する話だと中に入って来れないようで、大人しくお茶やウケを楽しんでいる。ちょっと悪いことしたかな。
「ウチでもまだ二回か三回じゃないかと思うけどね。『ケルークス』は割と行きやすい場所だからそれほど必要性がある、って感じではないかな……」
「それでもゼロとそうじゃないのとは大違いだよっ!」
エリシアの答えにフィデリア所長は興奮気味に立ち上がった。
この相談所が行きにくい場所だということを気にしているようだ。
この後、フィデリア所長からのいくつかの質問に答えて、私たちは家に戻ることになった。
予めうちの所長のアイリスとフィデリア所長とで期間を取り決めていたみたいで、その期間が終わったから、というのが理由らしい。
私もエリシアもアイリスからはそんなことを聞かされていなかった。
この次「ケルークス」に出勤したら、アイリスに質問してみようと思う。
「アーベルさま、どうされました?」
家への帰り道、途中でエリシアたちと別れて私はリーゼと二人になっていた。
「リーゼには関係ないかもしれないけど、人間がもう少し相談所に行きやすくならないか、と考えていたんだ」
「難しい……です」
リーゼが首を横に振った。そりゃそうだ、彼女は相談所の仕事に関わっていない。
「いや、リーゼが悩むことじゃないんだ。五日近くもぶっ続けで仕事をしていたから頭が回っていないのかもしれないな」
そう、これはリーゼを巻き込む問題じゃない。
「帰ったらお休みにしますか?」
「五日も家を空けていたから皆の顔を見たい。リーゼとも仕事中はあまり話せなかったからね」
「わかりました。なら、急いで帰りましょう」
リーゼが私の腕を引いて勢いよく進みだした。
本気になったら魂霊は精霊に体力では勝てない。道を進むスピードだって魂霊の私より精霊のリーゼの方が断然速い。
私はリーゼに引っ張ってもらいながらわが家への道を急いだ。
相談所の問題は相談所の仕事の中で何とかしよう、うん。
二八名のうち、二度目の相談を希望したのは二六名。二人を除いて全員ということになる。
「移住した後で住むところってどうやって決めるの?」
「釣りができるところはないか?」
「所長さん以外に会えるって精霊はいないかい?」
次々に相談客から質問が飛んでくる。
「パートナーとなる精霊の住んでいるところに行くケースが多いですが、自分でお住まいを探すこともできます。家を建てたいときは、許可さえとれば近くの精霊が協力してくれます」
「魚とかいないんだよね。精霊界では他の生き物を傷つけるのは厳禁だしね」
「ちょっと待ってください。私どものパートナーを連れてきます!」
中でも精霊を見てみたいという相談が結構多い。
「ケルークス」では、カフェスペースに案内すれば誰かしら精霊がいるが、この相談所にはカフェや飲食店が併設されていない。
アイリスが出る前にパートナーを連れていけと言っていたのだが、こういう事態に備えてのことだったと理解した。
ちなみにエリシアは前回相談客に会わせたグレースとファビオ、私はリーゼを連れてきている。
正確には、パートナーたちは私とエリシアから何時間か遅れてここに到着しているので、連れてきたというのはちょっと違うのだが。
「アーベルさまと契約しているリーゼと言います。水の精霊ニンフです」
リーゼが相談客の前でぺこりとお辞儀した。
「可愛らしいお嬢さんね。絵で見るニンフってこんな感じだったかしら?」
女性の相談客が首をひねった。彼女の地元にはニンフを描いたとされる絵が多数存在しているそうだ。
「私はニンフの中では小さい方なので、もう少し大きい方もいます」
リーゼは落ち着いた様子で相談客の疑問に答えた。
こうした場面には、素直で人当たりの良いカーリンが最適なのだが、残念ながら彼女はアンブロシア酒造りの最中で家を離れることができない。
礼儀正しいという点ではニーナだが、彼女にはウンディーネ特有の「パートナーを馬鹿にされると激怒する」という性質があるから、こうした場には連れ出しにくい。
メラニーはユーリから何か用事を頼まれているらしく、手が離せないということだったので、消去法でリーゼが同行することになった。
リーゼには大変申し訳ないと思う。
彼女の場合、人見知りというか精霊見知り的なところがあるから大丈夫かな、と思ったのだが今のところ問題なさそうだ。
多少ぶしつけな質問にも落ち着いて答えてくれている。
「ちょっと若すぎる気もするけど、これなら男の精霊にも期待できそうね。ありがとう」
相談客はリーゼと話をして満足したようであった。
この相談客は移住に前のめりといった感じで、私からすれば少し心配になってしまう。
彼女が最初に相談所を訪れてから三日も経っていないのだから。
「次の人、どうぞ!」
相談を終えてエリシアが次の相談客を呼ぶ。
二回目は一人当たりの相談時間が一時間までとされたので、相談も慌ただしい。
相談客がチャーターしているヘリコプターの関係で、ここにいられるのは明後日の昼までになるからだ。
「精霊界への移住は考えているけど、孫が成人するくらいまではこっちにいたいのだよね。移住するとしたらだいぶ先になるけど、それでも問題ないのかい?」
次の相談客は頭に白いものが少し混じっている男の人だった。
「はい。最初に相談に来てから移住に三〇年くらいかかった方もいらっしゃいますから、じっくり考えてください」
私はそう答えた。私の場合は生命にかかわる病気、ということで急がざるを得なかったが、そのくらいじっくり考えてもいいと思う。
ちなみにこの方、お孫さんは娘さんのお腹の中、すなわちまだ生まれていないということだそうだ。
お孫さんが成人するとなると二〇ウン年後ということだろう。そういう人がいてもいい。
「それは良かった。存在界でやることをやり終えて悔いがない状態になったら移住するよ」
「それがいいと思います」
「そうだね! オイラも応援するよ」
相談客は納得してくれたようで、いい顔をしていた。珍しく相談員としていい答えができたのではないかと思う。
休憩を挟みながら更に一日半、相談を続けた。
多い人には四度目までの相談を行った。
相談客が慌ただしく帰り支度をしている。
フィデリア所長をはじめとした相談所のメンバーも相談客を手伝って荷物を建物の入口まで移動させている。
帰りのヘリコプターが来るまであと一時間もない。
相談所がかなり行きにくい場所にあるため、時間ギリギリまで相談したいという相談客が少なくなかった。
一回相談所を訪れるのに給料二ヶ月分とかいわれると確かにそうなるだろうなとは思う。
その意味では「ケルークス」のある日本はかなり条件が良いのだろう。
魂霊であるため建物の外の存在界側に出られない私とエリシアは建物の入口で相談客を見送った。イレーネさんも同様だ。
ヘリコプターが五往復して相談客を近くの町に送り届ける。
一往復が四、五〇分くらいなので、相談客の輸送だけで半日仕事だ。
最後の相談客を送り出した後、半日前まで私とエリシアが相談に応じていた部屋に移動した。どうやらこの部屋は本来相談員の控室として使われているらしい。
部屋の広さはともかく、置かれているテーブルが大きくないので精霊魂霊合わせて七体入るとちょっと狭い気もする。
「皆さん、お疲れさまでしたっ。助かりましたぁ!」
フィデリア所長が魔術でお茶を淹れてくれた。
相談員のイレーネさんが棚からスナック菓子のようなウケの入った器を出してテーブルの上に置いた。
手慣れているところを見ると、いつも相談の後はティータイムにしているのではないかと思う。
「ふーっ! やっと落ち着きました。アーベルさん、エリシアさん、お客さんが多くてびっくりしなかったですか?」
イレーネさんがウケをパリパリかじりながら尋ねてきた。
「驚いたよ。うちは多いときで日に三人とかだし、同じ人が連続で何回も相談することがないからね」
エリシアがウケの器に手を伸ばした。
「ここ、来るのが大変だから泊まり込みで何回も相談するお客さんが多いんですっ!」
「相談員二人で回すのは大変ではないですか、フィデリア所長?」
泊りの客が多いと聞いて、私は思わず質問してしまった。ここの相談所は「ケルークス」みたいに七人も相談員を抱えているわけではない。
「イレーネさんが頑張っているので、普段はこんなことにはならないのですけどね。今回はびっくりしちゃいました」
フィデリア所長によると、この相談所を訪れる相談客は年に七、八人程度らしい。
「存在界で宣伝しているメンバーに聞いたのだけど、最近、ここの国は政情が不安定になっているみたいなんです。だから国から出ようとしている人たちがたくさんいるらしいです。相談に来ている中にもそういう人が多いみたいです」
イレーネさんが状況を教えてくれた。
相談客にそれほど切羽詰まった感じの人はいなかったと思うのだけど、相談客にもいろいろ事情があるのだろう。
危険からの逃れる先の選択肢としての精霊界、というのはあまりオススメできないのだけど、彼らの状況をほとんど知らない私にどうこう言う資格はない。
「法律で決まっているわけじゃないんだけど、この国では精霊界への移住は処罰の対象になっちゃうんだよね。今のところここに来ることは黙認されているみたいなんだけどね」
フィデリア所長がしゅんとうなだれた。
相談所を移転させることも考えているのだが、周辺の国は更に状況が悪いらしく、今よりマシな候補地がないのだそうだ。
「ここでもかなり行くのが難しかったですよ。私も苦労したんですよ」
イレーネさんは移住する前、近くの町から二日かけて歩いてここまで相談に来ていたそうだ。
三回泊まり込みで相談に来て、四回目にここを訪れたときに移住したと話してくれた。
ここの相談所から精霊界に移住した人は、彼女のようなパターンが多いらしい。
「そういえば、さっきファビオさんから聞いたけど、そっちの相談所では存在界に行っている妖精が相談客を相談所まで送ってくれるんだって? ウチでもやってみようかなぁ……」
いつの間にかフィデリア所長はエリシアのパートナーであるファビオとも会話していたらしい。
部屋の中にはファビオ、グレース、リーゼの三体もいるのだが、さすがに移住相談に関する話だと中に入って来れないようで、大人しくお茶やウケを楽しんでいる。ちょっと悪いことしたかな。
「ウチでもまだ二回か三回じゃないかと思うけどね。『ケルークス』は割と行きやすい場所だからそれほど必要性がある、って感じではないかな……」
「それでもゼロとそうじゃないのとは大違いだよっ!」
エリシアの答えにフィデリア所長は興奮気味に立ち上がった。
この相談所が行きにくい場所だということを気にしているようだ。
この後、フィデリア所長からのいくつかの質問に答えて、私たちは家に戻ることになった。
予めうちの所長のアイリスとフィデリア所長とで期間を取り決めていたみたいで、その期間が終わったから、というのが理由らしい。
私もエリシアもアイリスからはそんなことを聞かされていなかった。
この次「ケルークス」に出勤したら、アイリスに質問してみようと思う。
「アーベルさま、どうされました?」
家への帰り道、途中でエリシアたちと別れて私はリーゼと二人になっていた。
「リーゼには関係ないかもしれないけど、人間がもう少し相談所に行きやすくならないか、と考えていたんだ」
「難しい……です」
リーゼが首を横に振った。そりゃそうだ、彼女は相談所の仕事に関わっていない。
「いや、リーゼが悩むことじゃないんだ。五日近くもぶっ続けで仕事をしていたから頭が回っていないのかもしれないな」
そう、これはリーゼを巻き込む問題じゃない。
「帰ったらお休みにしますか?」
「五日も家を空けていたから皆の顔を見たい。リーゼとも仕事中はあまり話せなかったからね」
「わかりました。なら、急いで帰りましょう」
リーゼが私の腕を引いて勢いよく進みだした。
本気になったら魂霊は精霊に体力では勝てない。道を進むスピードだって魂霊の私より精霊のリーゼの方が断然速い。
私はリーゼに引っ張ってもらいながらわが家への道を急いだ。
相談所の問題は相談所の仕事の中で何とかしよう、うん。
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