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第十七章
808:日常の回復
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ECN社とOP社がサブマリン島各所で発生している混乱への対応に当たってから、アツミを中心とする電力事業者管理団体の穏健派とされるグループの態度が変わった。
引続き発電状況を注視する立場に変化はなかったが、暴力的な態度を取るメンバーに対してこれまで文書や口頭でそれをたしなめる程度であったのが、真っ向から非難するようになったのである。
アツミが態度を変えたことで、OP社に強硬的な姿勢を見せているグループがこれに反発した。
これに「EMいのちの守護者の会」の会員を名乗る一部の集団が同調し、OP社本社近くのビルに立て篭もっている。
一方、「EMいのちの守護者の会」は、会としてOP社を非難する声明は出しているものの、同時に電力事業者管理団体の強硬派グループの行動も非難している。
それだけではなく「EMいのちの守護者の会」は態度を変えたアツミの行動も非難しており、見ようによっては態度が明確になっていないともとれた。
この隙を突いて、ECN社はアツミらの電力事業者管理団体の穏健派を取り込み、強硬派の切り崩しを図った。
まずはアツミらに聞き取りを行い、強硬派についての情報を聞き出した。
そこで明らかになったのが、OP社本社前でデモを起こす際、敢えて中学生の集団が近くを通るタイミングを狙ったということであった。
アツミはこうした強硬派の姿勢には反対の立場であったが、彼らは既にアツミら穏健派のコントロールを受け付けなくなっていた。
このタイミングでのOP社の和解の申し出は、アツミら穏健派にとって渡りに船であった。
アツミらは更に、強硬派によるOP社の従業員などへの数々の暴力行為の証拠も持ち出した。
そこには、OP社と関係のない地域住民などが犠牲となっているものも含まれていた。
ミヤハラはアツミらに許可を得て、アツミの名前でこれらの事実を公表した。
そしてアツミは事態への責任を取るとして、電力事業者管理団体の解散を宣言し、自らも代表を辞したのであった。
電力事業者管理団体の強硬派の非道が明らかになったことで、彼らの中に動揺が走った。
強硬派はすぐに「解散はECN社による工作活動だ」として、後任の代表を置かないまま活動を継続すると宣言した。
しかし、穏健派が抜けたことでメンバーの数が激減しており、活動を継続しても動揺を隠しきることは不可能であった。
もっとも動揺が大きかったのは、電力事業者管理団体に所属していた「EMいのちの守護者の会」の会員たちであった。
アツミの名前で公表された情報が事実と反するとする者達がいる一方で、中学生を危険に巻き込んだとして、強硬派のやり方に反発する者も少なくなかった。
結果、強硬派とされていた者のうち、一割強が立て篭もっていたビルから離脱した。
ミヤハラは離脱した強硬派のメンバーのうち幾人かを取り込み、再び立て篭もっていたビルに戻らせた。
彼らはそこで「仲間を偽の情報で売った裏切り者のサキ・アツミに報復すべし」の声を挙げた。
これこそがミヤハラの指示であり、強硬派の動揺は更に大きくなった。
「サキ・アツミに報復すべし」と最初に声を挙げた者達が一度離脱してビルの外に出ていたため、彼らがどのような意図で声を挙げたか、立て篭もっている者たちには判断がつかなかったのだ。
言葉を額面どおり受け取り、アツミに対して報復を呼びかける者も少なくなかった。
一方で、ECN社が強硬派の分断を図って意図的に報復を煽っているとの声もあり、むやみに挑発に乗るなとたしなめる者もいた。
強硬派の動揺を目の当たりにしたミヤハラは、OP社社長のヘンミと共謀して強硬派に次のような提案を持ちかけたのだった。
「OP社の電力事業の状況について実態を伝えたいので、社の見学会を九月一一日に開催したい。ついては代表者一〇名程度の出席を要請する」
見学会には他の市民やアツミなども招待されており、出席を巡って強硬派は更に分裂を深めた。
出席すれば出席者が拘束されるのではないか、と疑う者。
OP社の内情を明らかにするチャンスであるのに、出席を渋れば逆に市民達から不信感を持たれる可能性があると危惧する者。
アツミが出席するなら、彼女を拘束し、強硬派に取り込むことが可能であると考える者、などであった。
その結果、見学会の前日に強硬派の立て篭もるビルの中では、乱闘騒ぎが発生した。
ことの発端は出席の回答をOP社へ届けたメンバーがビルに戻った際、彼らに対して「ECN社やOP社に内通した」と疑いの声を挙げた者がいたことであった。
「そう疑って、我々の分断を図っているのではないか?」
そう答えたのは、一度ビルを脱出して戻ってきた男であった。
この男こそ強硬派の姿勢に疑問を感じ、強硬派の分断を図るとアツミやミヤハラに誓った者であった。
男が一度ビルを脱出していたことで、男をECN社やOP社のスパイだと疑う者もおり、ビルの中では言い争いが罵りあいになり、ついには乱闘騒ぎに発展した。
ビルを脱出したメンバーから強硬派には多数の派閥があり、明確なトップがおらず主導権争いが絶えないと聞かされていたミヤハラは、くすぶっている火種に敢えて油を注いだのであった。
乱闘騒ぎがビルの外にまで及んだのに乗じて、サクライ率いる四〇〇名の部隊が周辺の市民の安全確保の名目で仲裁に入った。
そして、一日半かけて乱闘の中心になっていたいくつかの派閥のトップ層を拘束した後、彼らが占拠していたビルを奪還した。
そして、部隊の半数を警備に残し、ECN社本社へと引き上げたのであった。
これにより、OP社本社周辺は久しぶりに平穏を取り戻したのである。
引続き発電状況を注視する立場に変化はなかったが、暴力的な態度を取るメンバーに対してこれまで文書や口頭でそれをたしなめる程度であったのが、真っ向から非難するようになったのである。
アツミが態度を変えたことで、OP社に強硬的な姿勢を見せているグループがこれに反発した。
これに「EMいのちの守護者の会」の会員を名乗る一部の集団が同調し、OP社本社近くのビルに立て篭もっている。
一方、「EMいのちの守護者の会」は、会としてOP社を非難する声明は出しているものの、同時に電力事業者管理団体の強硬派グループの行動も非難している。
それだけではなく「EMいのちの守護者の会」は態度を変えたアツミの行動も非難しており、見ようによっては態度が明確になっていないともとれた。
この隙を突いて、ECN社はアツミらの電力事業者管理団体の穏健派を取り込み、強硬派の切り崩しを図った。
まずはアツミらに聞き取りを行い、強硬派についての情報を聞き出した。
そこで明らかになったのが、OP社本社前でデモを起こす際、敢えて中学生の集団が近くを通るタイミングを狙ったということであった。
アツミはこうした強硬派の姿勢には反対の立場であったが、彼らは既にアツミら穏健派のコントロールを受け付けなくなっていた。
このタイミングでのOP社の和解の申し出は、アツミら穏健派にとって渡りに船であった。
アツミらは更に、強硬派によるOP社の従業員などへの数々の暴力行為の証拠も持ち出した。
そこには、OP社と関係のない地域住民などが犠牲となっているものも含まれていた。
ミヤハラはアツミらに許可を得て、アツミの名前でこれらの事実を公表した。
そしてアツミは事態への責任を取るとして、電力事業者管理団体の解散を宣言し、自らも代表を辞したのであった。
電力事業者管理団体の強硬派の非道が明らかになったことで、彼らの中に動揺が走った。
強硬派はすぐに「解散はECN社による工作活動だ」として、後任の代表を置かないまま活動を継続すると宣言した。
しかし、穏健派が抜けたことでメンバーの数が激減しており、活動を継続しても動揺を隠しきることは不可能であった。
もっとも動揺が大きかったのは、電力事業者管理団体に所属していた「EMいのちの守護者の会」の会員たちであった。
アツミの名前で公表された情報が事実と反するとする者達がいる一方で、中学生を危険に巻き込んだとして、強硬派のやり方に反発する者も少なくなかった。
結果、強硬派とされていた者のうち、一割強が立て篭もっていたビルから離脱した。
ミヤハラは離脱した強硬派のメンバーのうち幾人かを取り込み、再び立て篭もっていたビルに戻らせた。
彼らはそこで「仲間を偽の情報で売った裏切り者のサキ・アツミに報復すべし」の声を挙げた。
これこそがミヤハラの指示であり、強硬派の動揺は更に大きくなった。
「サキ・アツミに報復すべし」と最初に声を挙げた者達が一度離脱してビルの外に出ていたため、彼らがどのような意図で声を挙げたか、立て篭もっている者たちには判断がつかなかったのだ。
言葉を額面どおり受け取り、アツミに対して報復を呼びかける者も少なくなかった。
一方で、ECN社が強硬派の分断を図って意図的に報復を煽っているとの声もあり、むやみに挑発に乗るなとたしなめる者もいた。
強硬派の動揺を目の当たりにしたミヤハラは、OP社社長のヘンミと共謀して強硬派に次のような提案を持ちかけたのだった。
「OP社の電力事業の状況について実態を伝えたいので、社の見学会を九月一一日に開催したい。ついては代表者一〇名程度の出席を要請する」
見学会には他の市民やアツミなども招待されており、出席を巡って強硬派は更に分裂を深めた。
出席すれば出席者が拘束されるのではないか、と疑う者。
OP社の内情を明らかにするチャンスであるのに、出席を渋れば逆に市民達から不信感を持たれる可能性があると危惧する者。
アツミが出席するなら、彼女を拘束し、強硬派に取り込むことが可能であると考える者、などであった。
その結果、見学会の前日に強硬派の立て篭もるビルの中では、乱闘騒ぎが発生した。
ことの発端は出席の回答をOP社へ届けたメンバーがビルに戻った際、彼らに対して「ECN社やOP社に内通した」と疑いの声を挙げた者がいたことであった。
「そう疑って、我々の分断を図っているのではないか?」
そう答えたのは、一度ビルを脱出して戻ってきた男であった。
この男こそ強硬派の姿勢に疑問を感じ、強硬派の分断を図るとアツミやミヤハラに誓った者であった。
男が一度ビルを脱出していたことで、男をECN社やOP社のスパイだと疑う者もおり、ビルの中では言い争いが罵りあいになり、ついには乱闘騒ぎに発展した。
ビルを脱出したメンバーから強硬派には多数の派閥があり、明確なトップがおらず主導権争いが絶えないと聞かされていたミヤハラは、くすぶっている火種に敢えて油を注いだのであった。
乱闘騒ぎがビルの外にまで及んだのに乗じて、サクライ率いる四〇〇名の部隊が周辺の市民の安全確保の名目で仲裁に入った。
そして、一日半かけて乱闘の中心になっていたいくつかの派閥のトップ層を拘束した後、彼らが占拠していたビルを奪還した。
そして、部隊の半数を警備に残し、ECN社本社へと引き上げたのであった。
これにより、OP社本社周辺は久しぶりに平穏を取り戻したのである。
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