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昔もこうして無茶をしては和志に怒られていた事を思い出したのだ。思いつきで行動する自分と、冷静で周りを見ながら行動する和志。
まるで正反対だったが、それがとにかく心地良かった。
「───なに笑ってんのさッ!俺は本気で怒ってんだぞッ!」
「ごめんてッ!」
微かに頬をピンク色に染めた哲太の手が、スっと伸びるなり和志を抱き寄せた。
「けどお前が昔のまんまで、なんか……めっちゃ嬉しくてさ」
こうやって怒られたのも、1度や2度では無かった。
「さっき会ったお前が、なんか……前とは全然違う表情しててさ…………変わっちゃったんかなって……ちょっと心配してた」
そう言った哲太の顔が、和志には見なくても分かった。
きっと本当に嬉しそうに笑っている。昔からそうだ。自分とは違って喜怒哀楽がハッキリしている。
感情表現が豊かで、嬉しければ笑うし、腹が立てば怒る。その癖面倒見が良いから、他人のことでも本気で喜んだり怒ったりしているのを子供の頃何度も見ていた。
そして多分、それの殆どが自分の事だった。
その見た目から女みたいだ、チビだ、と揶揄われた時も、母子家庭なのをバカにされた時も、一緒になって、いやそれ以上に怒ってくれた。
そんな哲太にどれだけ救われたか分からない。
きっと本気で今でも自分のことを『友達』だと思ってくれている。
「バカッ──離せよッ!」
しかしさすがに2度目ともなると、顔を赤くしながら和志は抱き締める腕を押し退けた。
「ぅわ……つれなッ……オレはお前に会えてこんなに嬉しいのに……」
唇を尖らせ不貞腐れる姿が余りにも昔のままで、和志は思わず笑いだした。自分が怒った時に必ずしていた表情だ。
「……お前……だからって道端で寝るか?普通……それに……もう俺が帰ってたらどうしたのさ……」
頬を赤くしたままくすくす笑う和志に、哲太は、それよりまだ嬉しそうに笑った。
「お前は絶対帰ってないって解ってたから。昔だって……約束破ったことなんて無かったろ?──お前はそういう奴だから」
その言葉に和志の笑顔が消え、再び鼓動が煩いくらい早くなった。
哲太の中では自分は昔のままなのだ。
俯き黙り込んだ和志に気付かず、哲太は立ち上がるとズボンに付いた砂ぼこりを払い、まだしゃがんでいる和志に手を差し出した。
「久しぶりオレん家来いよ。お袋たちもずっと和志のこと心配してたから、顔見せたらスゲー喜ぶよ」
「……え…………」
以前と変わらない哲太との会話に思わず“今の自分”を忘れていた。
「な!?」
なんの思惑もなく差し伸べられた手から和志は目を逸らした。自分にはこの手を掴む資格が無いと解っている。
「…ごめん……それは出来ない……」
「え……なんで?──あ!今日忙しかったか?」
「そういう訳じゃ無いけど……」
和志は道の反対側に止まっている黒塗りの高級車を目の端で確認した。
今日は本当に“予定”がある訳では無かったが、いつもよりずっと帰りが遅くなっていることに杉本が迎えに来ているだろうと思っていたが、案の定来ている。
予定の無い行動を、叔父の秀行が許す訳が無いからだ。
「特に用事が無いならいいじゃん」
しかしそんな胸の内を知る由もない哲太が和志の腕を掴んだ。
「やっと会えたんだから!──ほらッ行くぞ!」
「───え………………ちょっ…と……哲太」
そしてどんどん歩き出す背中に、引かれるように和志も歩き出した。
本気で抗えばいくら哲太でも手を離すと分かっていながら、引かれるままに和志は広い背中だけを見つめていた。
動く様子も無い車の中から、杉本が見ていることも理解っていながら和志は振り返りもせず歩き続けた。
まるで正反対だったが、それがとにかく心地良かった。
「───なに笑ってんのさッ!俺は本気で怒ってんだぞッ!」
「ごめんてッ!」
微かに頬をピンク色に染めた哲太の手が、スっと伸びるなり和志を抱き寄せた。
「けどお前が昔のまんまで、なんか……めっちゃ嬉しくてさ」
こうやって怒られたのも、1度や2度では無かった。
「さっき会ったお前が、なんか……前とは全然違う表情しててさ…………変わっちゃったんかなって……ちょっと心配してた」
そう言った哲太の顔が、和志には見なくても分かった。
きっと本当に嬉しそうに笑っている。昔からそうだ。自分とは違って喜怒哀楽がハッキリしている。
感情表現が豊かで、嬉しければ笑うし、腹が立てば怒る。その癖面倒見が良いから、他人のことでも本気で喜んだり怒ったりしているのを子供の頃何度も見ていた。
そして多分、それの殆どが自分の事だった。
その見た目から女みたいだ、チビだ、と揶揄われた時も、母子家庭なのをバカにされた時も、一緒になって、いやそれ以上に怒ってくれた。
そんな哲太にどれだけ救われたか分からない。
きっと本気で今でも自分のことを『友達』だと思ってくれている。
「バカッ──離せよッ!」
しかしさすがに2度目ともなると、顔を赤くしながら和志は抱き締める腕を押し退けた。
「ぅわ……つれなッ……オレはお前に会えてこんなに嬉しいのに……」
唇を尖らせ不貞腐れる姿が余りにも昔のままで、和志は思わず笑いだした。自分が怒った時に必ずしていた表情だ。
「……お前……だからって道端で寝るか?普通……それに……もう俺が帰ってたらどうしたのさ……」
頬を赤くしたままくすくす笑う和志に、哲太は、それよりまだ嬉しそうに笑った。
「お前は絶対帰ってないって解ってたから。昔だって……約束破ったことなんて無かったろ?──お前はそういう奴だから」
その言葉に和志の笑顔が消え、再び鼓動が煩いくらい早くなった。
哲太の中では自分は昔のままなのだ。
俯き黙り込んだ和志に気付かず、哲太は立ち上がるとズボンに付いた砂ぼこりを払い、まだしゃがんでいる和志に手を差し出した。
「久しぶりオレん家来いよ。お袋たちもずっと和志のこと心配してたから、顔見せたらスゲー喜ぶよ」
「……え…………」
以前と変わらない哲太との会話に思わず“今の自分”を忘れていた。
「な!?」
なんの思惑もなく差し伸べられた手から和志は目を逸らした。自分にはこの手を掴む資格が無いと解っている。
「…ごめん……それは出来ない……」
「え……なんで?──あ!今日忙しかったか?」
「そういう訳じゃ無いけど……」
和志は道の反対側に止まっている黒塗りの高級車を目の端で確認した。
今日は本当に“予定”がある訳では無かったが、いつもよりずっと帰りが遅くなっていることに杉本が迎えに来ているだろうと思っていたが、案の定来ている。
予定の無い行動を、叔父の秀行が許す訳が無いからだ。
「特に用事が無いならいいじゃん」
しかしそんな胸の内を知る由もない哲太が和志の腕を掴んだ。
「やっと会えたんだから!──ほらッ行くぞ!」
「───え………………ちょっ…と……哲太」
そしてどんどん歩き出す背中に、引かれるように和志も歩き出した。
本気で抗えばいくら哲太でも手を離すと分かっていながら、引かれるままに和志は広い背中だけを見つめていた。
動く様子も無い車の中から、杉本が見ていることも理解っていながら和志は振り返りもせず歩き続けた。
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