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しおりを挟む「……ごめん……」
───え…………?……オレ……そんなことすら拒否されんの?
俯き唇を固く閉ざしている和志の横顔から、それが嘘や冗談では無いのだと嫌でも分かる。
そしてその意志の硬さも……
確かに6年の月日は決して短い時間では無い。それでも哲太は和志を忘れたことなど無かったし、もしまた会えたら昔のように戻れると信じて疑う事すらしなかった。
───マジか………こんなに会いたいと思ってたのは……オレだけかよ…………しかもこれ……拒否ってか拒絶……?……イヤ…………ガチでキツい…………
「……はは……だよな…………考えたら……小5までしか知らない奴に……いきなり連絡先なんて教えらんねぇよな……」
───なんつっても……今は本田グループの御曹司だもんなぁ…………
無理に笑って見せた瞳が、薄らと滲んでいる。
「───違っ……そうじゃないッ!そうじゃなくてッ!!」
向けられた表情があまりにも必死で、哲太は思わず息を呑んだ。連絡先を交換するのを拒否されるとも思っていなかったが、自分の言葉に和志がここまで反応するとも思っていなかった。
「俺のスマホ……着信も発信も……メッセージのやり取りも全部…………叔父さんに通知が行くんだ」
「───は!?……なんだそれ……」
「俺が…間違ったことをしないようにって……だから、俺の番号を知ってるのは叔父さんと……面倒見てくれてる人くらいで………家では持ち歩くことすら出来ないし……」
視線を逸らしそう言った和志の言葉の意味が哲太には理解出来なかった。“間違ったこと”と言ったその言葉の意味が、所謂“友達付き合い”というものの事を言っているのだとしたら異常でしかない。
「本当なら学校の後……こんな風に“寄り道”することも許されない。それに今は、学校への行き帰りの時間も……」
そこで言葉を切ると、和志は公園の外へ視線を向けた。哲太もそれにつられる様に視線を追うと、1台の車が停まっているのが見えた。所謂“高級車”と言われる黒塗りの車だ。運転席に男が乗っているのは分かるが、顔まではよく見えない。
「……ずっと人と一緒だから、自由な時間はない……」
「じゃぁ……こうやって学校帰りに会うとかも……」
「無理だよ。きっと……今日の事も叔父に報告される」
そう言ってまるで自分が悪いことでもしているように笑った和志が、不満を言っているようには思えなかった。
当たり前の事だと思っているのとも違う。
ただ諦めているのだ。
その影に何があるのか分からない。しかしこの境遇を受け入れるしかないと理解しているのだ。
「──何だよそれ……それじゃまるで───」
─牢獄じゃねぇか─
そう言おうとして哲太はそこで言葉を呑み込んだ。
どんなに異常だろうと、それが今の和志の生活なのだ。それは誰が何を言おうと変わらない。
だから望むのでは無く諦めたのだ。
───オレに何が言える……?今の家から和志を連れ出せるわけじゃねぇ……慰めるか!?励ますか!?……そんなの余計クソ野郎じゃねぇか……
「…………異常だろ……?けどそれが今の俺なんだよ。それにしがみついて6年間生きてきたんだ。それにこの先も……俺はこうして生きていくしかない」
和志の声が、昨日あった他愛のない話でもしているかのように穏やかで、哲太は気付かない内に膝に乗せた両手を硬く握りしめた。
今度こそ和志を守りたいなどと考えていた自分に腹が立ってしかたがなかった。
「だから……もう会いにこなくていいよ」
和志はそう言うと動く気配のない杉本の車にもう一度視線を向けた。
1度目は見逃してもらえたが、2度見逃す程杉本が甘いとは思えない。
ずっと黙り続けている哲太に、和志は立ち上がった。
「もう行くね。哲太と会えて嬉しかったよ」
そう言って笑顔を向けた和志の手を、哲太が握りしめた。
「───お前…………授業サボったことある?」
「────え………………」
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