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「本田──お前こんな所で何してるんだ!?体調が悪くて保険室に行ったんじゃないのか!?」
無理矢理押し出された敷地の外でも聞こえた和志に向けた声に、哲太は両手を固く握りしめた。
出て行きたい衝動に駆られたが、この場に自分が出ていけば余計悪い方向にいくことくらいは解る。
そして何より和志が口にした最後の言葉が、哲太の足を縛り付けた。
───俺の為にもう会いに来ないで───
和志のことを知りたくて、少しでも守れるようになりたくて、こうして会いに来ていた事が、結局和志の立場を悪くしているのだと、自分のエゴでしか無かったのだと今初めて気付かされた。
和志が「的場」と呼んでいた男の言った言葉にも、反論出来なかった自分が情けなくて腹が立った。
「……親友にキスしようとするバカがいるかよ……」
そう吐き捨てるように声にすると、噛み締めた奥歯が小さく音を立てた。
保健室のベッドに横になり、和志は真白い雲が浮かんだ空を見つめた。
───哲太…………帰ったかな…………
もう会いに来るなと言った時の哲太の顔が脳裏に刻みついて離れない。
「今度こそ…………怒ったよな……」
和志はそう声にすると、フッと笑った。
哲太を巻き込む危険があると解っていながら離れることもせず、わがままに付き合わせ、結局こうして突き放した。
───キスまでしようとして…………
哲太といる間は、昔の自分に戻れたような気がしていた。
哲太の傍にいる資格などもう無いと理解っていながら、頭の隅でまだどこか期待していた。
哲太ならこんな自分を受け入れてくれるのではないかと。
「なに寝てんだよ」
ベッドを囲うように吊るされているカーテンが躊躇なく開き、横になっている和志の顔を的場が覗き込んだ。
「……せっかく的場が庇ってくれたからさ……なら寝てようかなって」
青空から目をそらすことなく和志は戯けるように返した。
あの後連れ戻された校舎で、具合の悪い和志を自分が無理に連れ出したのだと的場が言ったのだ。
ついでに生垣に穴を開けたのも的場のせいになっていた。
「この期に及んでお前を連れ出したくらい、俺には痛くも痒くもねぇからな」
ニヤリと笑った顔に、和志は漸く視線を向けた。
「……けど………親呼ぶって言われてたじゃん」
「いいんだよ。出来損ないの事で煩わされたって……アイツ今頃怒り狂ってるぜ?」
父親に対しての本心か、和志に心配させない為か、的場はそう言うと鼻で笑った。
「……まぁ、あの茶髪がやった事まで俺のせいにされてるのが気に入らねぇけどな」
「…………ごめん……」
「ウザッ……なんでお前が謝んだよ……」
不貞腐れそう言うと、的場は和志に覆い被さる様に腕の中に閉じ込めた。
「気に入らねぇけど、悪くねぇ……お前に“恩”が売れるから」
赤い髪の間から切れ長の鋭い瞳が見つめ、逸らすことなく見つめ返す黒い瞳に不意に近付いた。
「あいつだろ……前話してた一生片想……」
「───的場」
空を映した大きな黒い瞳が揺らぐ事無く見据え、感情の感じられない声が的場の言葉を遮った。
「……ありがとう」
「…………いいって言ってんだろ?何度も言わせんなよ」
「違うよ……止めてくれてさ……」
その言葉を真意を計るように、的場は真直ぐに和志を見つめた。一瞬なんのことを言っているのか戸惑ったが、すぐに哲太としようとしていたキスの事なのだと解った。
「…………別にムカついたから止めただけだけど……有難いって思うならさ……やらせてよ」
耳元で囁いた的場の指が、その耳元から首を這うように撫でた。
「今日はダメ……」
「……あいつと会ったからか?」
僅かでは無い声に含まれた嫉妬に、和志は的場の頬に手を伸ばし、細い指で優しく触れた。
「……違うよ………哲太は関係ない……。今夜城ヶ崎先生と会うから……」
表情ひとつ変えず当たり前の様に言った和志に、首を撫でていた指が止まった。
『共有の秘密』
そんな綺麗な言葉では隠せない想いが的場の顔を歪ませた。
無理矢理押し出された敷地の外でも聞こえた和志に向けた声に、哲太は両手を固く握りしめた。
出て行きたい衝動に駆られたが、この場に自分が出ていけば余計悪い方向にいくことくらいは解る。
そして何より和志が口にした最後の言葉が、哲太の足を縛り付けた。
───俺の為にもう会いに来ないで───
和志のことを知りたくて、少しでも守れるようになりたくて、こうして会いに来ていた事が、結局和志の立場を悪くしているのだと、自分のエゴでしか無かったのだと今初めて気付かされた。
和志が「的場」と呼んでいた男の言った言葉にも、反論出来なかった自分が情けなくて腹が立った。
「……親友にキスしようとするバカがいるかよ……」
そう吐き捨てるように声にすると、噛み締めた奥歯が小さく音を立てた。
保健室のベッドに横になり、和志は真白い雲が浮かんだ空を見つめた。
───哲太…………帰ったかな…………
もう会いに来るなと言った時の哲太の顔が脳裏に刻みついて離れない。
「今度こそ…………怒ったよな……」
和志はそう声にすると、フッと笑った。
哲太を巻き込む危険があると解っていながら離れることもせず、わがままに付き合わせ、結局こうして突き放した。
───キスまでしようとして…………
哲太といる間は、昔の自分に戻れたような気がしていた。
哲太の傍にいる資格などもう無いと理解っていながら、頭の隅でまだどこか期待していた。
哲太ならこんな自分を受け入れてくれるのではないかと。
「なに寝てんだよ」
ベッドを囲うように吊るされているカーテンが躊躇なく開き、横になっている和志の顔を的場が覗き込んだ。
「……せっかく的場が庇ってくれたからさ……なら寝てようかなって」
青空から目をそらすことなく和志は戯けるように返した。
あの後連れ戻された校舎で、具合の悪い和志を自分が無理に連れ出したのだと的場が言ったのだ。
ついでに生垣に穴を開けたのも的場のせいになっていた。
「この期に及んでお前を連れ出したくらい、俺には痛くも痒くもねぇからな」
ニヤリと笑った顔に、和志は漸く視線を向けた。
「……けど………親呼ぶって言われてたじゃん」
「いいんだよ。出来損ないの事で煩わされたって……アイツ今頃怒り狂ってるぜ?」
父親に対しての本心か、和志に心配させない為か、的場はそう言うと鼻で笑った。
「……まぁ、あの茶髪がやった事まで俺のせいにされてるのが気に入らねぇけどな」
「…………ごめん……」
「ウザッ……なんでお前が謝んだよ……」
不貞腐れそう言うと、的場は和志に覆い被さる様に腕の中に閉じ込めた。
「気に入らねぇけど、悪くねぇ……お前に“恩”が売れるから」
赤い髪の間から切れ長の鋭い瞳が見つめ、逸らすことなく見つめ返す黒い瞳に不意に近付いた。
「あいつだろ……前話してた一生片想……」
「───的場」
空を映した大きな黒い瞳が揺らぐ事無く見据え、感情の感じられない声が的場の言葉を遮った。
「……ありがとう」
「…………いいって言ってんだろ?何度も言わせんなよ」
「違うよ……止めてくれてさ……」
その言葉を真意を計るように、的場は真直ぐに和志を見つめた。一瞬なんのことを言っているのか戸惑ったが、すぐに哲太としようとしていたキスの事なのだと解った。
「…………別にムカついたから止めただけだけど……有難いって思うならさ……やらせてよ」
耳元で囁いた的場の指が、その耳元から首を這うように撫でた。
「今日はダメ……」
「……あいつと会ったからか?」
僅かでは無い声に含まれた嫉妬に、和志は的場の頬に手を伸ばし、細い指で優しく触れた。
「……違うよ………哲太は関係ない……。今夜城ヶ崎先生と会うから……」
表情ひとつ変えず当たり前の様に言った和志に、首を撫でていた指が止まった。
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そんな綺麗な言葉では隠せない想いが的場の顔を歪ませた。
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