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しおりを挟む父親の側近に囲まれ、床に小さく蹲った秀行が身を守れる物と言えば、肩から掛けられた毛布だけだろうと思えるこの現状で、その言葉を聞かされる胸の内を思うだけで心臓が鷲掴みされる程、痛くなった。
恐らく今までもずっと、これが当たり前の中で生きてきたのだ。
自分への愛情も見えない中で、欲に塗れた手に────。
「秀行に限ったことではない。代々、長兄以外はそうして“本多”を護ってきたのだ」
「…………イカれてる……」
───俺は……それにも気付かずに……
当たり前のように両親に愛され、祖父も父も医師でありながら、誰一人真守を無理に継がせようとはしなかった。自分の人生なのだから自由でいろと、それすら当たり前だと思っていた。
「人の欲深さを知っているか?」
突然向けられた視線と言葉に、真守は眉を顰めた。
「───は!?」
「美味い物を食べたい、良い酒を飲みたい、高級車に乗りたい。……上げたところでキリがない」
起伏のない淡々とした声を聞きながら、真守は目を逸らすことなく雅臣を睨み続けた。
「そして……その中で、最も強い欲求はなにか分かるか?」
一瞬秀行に視線を投げると、雅臣はどこか誇らしげに笑った。
「性欲だよ。──しかも“偏った性癖”は情報だけが流れるように入り込み、そのくせ押さえ付けられるから欲望だけが育ち続ける。幼い子供、少年や少女、過激なSM……どれだけの性産業が社会の裏で金を動かしているか分かるか?」
「────まさか……金のために秀行を……!?」
真守の言葉に目を丸くすると、雅臣は大声を上げて笑いだした。
「この私が……本多の人間が、そんな端金の為にこんな事をすると本気で言っているのか!?」
完全に馬鹿にした言葉と眼差しに、瞬間的に向かっていこうとした身体を押さえつける手が、真守を床に捩じ伏せた。
「───クッ……ソ……」
「私たちの様な特別な人間が、そう易々と“弱み”にもなり得る顔を見せられると思うか?」
後頭部を押さえ付けられ、床に捩じ伏せられながらも、真守は必死で雅臣を睨んだ。
そうする事が、秀行の為に唯一出来ることだ思えたのだ。
こんな扱いを受けながら、当たり前のように「すみません」と謝った秀行が切なくて、自分の間抜けさが辛くなった。
「特別な人間に“安心して遊べる場”を提供する。その見返りは……お前には想像もつくまい」
それがまるで、正しい事のように話し続ける雅臣に、真守は吐き気が込み上げた。
しかしそれが、雅臣に対する怒りと嫌悪からなのか、あれだけの長い時間側にいながら何も気付いてやれなかった自己否定からくるものなのか分からなかった。
いつも笑顔で迎えてくれる秀行に、何年もの間違和感を感じながらも、何も知ろうとはしなかった。
「…………今言ったこと…………本当なのか……?……父さん…………」
聞き覚えのある声が耳を掠め、真守は視線だけを声のしたドアの方へ向けた。
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