君の手の温もりが…

海花

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本当に好きな人…

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俊輔が家の前まで来ると車が無くなっていてホッとした。
玄関のドアを開け靴が無くなっているのを確認すると
「……ただいま…」
声に出してリビングへ入っていく。
「……おかえり…」
葵がソファーで横になり、スマホに目を向けたまま答えた。
沈黙が重く伸し掛る……。
「夕飯…何食べたい?」
俊輔がいつものように声を掛けた。
「─え!?」
「夕飯だよ」
慌てる葵に俊輔が笑った。
「なんでも…いいけど…」
「じゃあ…冷やし中華にしない?今日めちゃくちゃ暑かったし…。バスで出かけてたから疲れた」
俊輔が苦笑いしている。
「……バス?……バスでどこ行ったの?」
葵がソファーから起き上がる。
「んー?…堀内先生んとこ……。最近発作続いてたしさ…」
俊輔は冷蔵庫から材料を出しながら話している。
「おかげで少し良いかも。……薬変わったんだ。しばらくの間、変えようって…」
「……そうなの?…」
「だから…お前にもあんまり迷惑掛けなくて済むと思う…」
俊輔が葵に向いて微笑んだ。
「……別に…迷惑なんて…掛かってないけど……」
───あいつのとこ……
……行ってたんじゃないんだ…………
葵の胸に小さな何かが引っかかる…。
俊輔が料理をしている間、葵はスマホのゲームをしていた。
まるで集中出来ない…。
テーブルの上のペットボトルが何故あったのかが知りたかった……
しかし同時に知るのが怖い───

食事をし始めると俊輔が
「そう言えば…今日、偶然結衣に会ってさ…」
話し始めた。
「……へぇー」
葵が興味なさそうに返事をする。
「………好きだって言われた……」
葵の手が止まる……。
「……それで…お前…なんて答えたの…?」
少しの沈黙の後
「考えさせてほしいって…言った」
俊輔が答えた。
「……考えるって……お前──片山ってやつと……」
そこまで言って言葉を切った。
──俊をあんな風に傷付けておきながら……
───俺が今日したことは……───
俊輔が葵の言葉に困った様に笑った。
「……薫とは本当に何も無い。お前の考えすぎだよ」
「──だって…!なら、あのキスマーク……」
──首と……背中の…………
「本当にキスマークじゃない…。あの日、薫の家で急にめちゃくちゃ眠たくなって…。多分…その時机か何かにぶつかったんだと思う…。薫がベットに連れてって寝かせてくれたらしいけど…全然覚えてない位眠かったから」
俊輔が苦笑いする。
───なんだよ……それ……
「そんな…急に眠くなるなんてあるか……?」
「俺も初めてでビビった」
そう言って俊輔が笑った。
再び沈黙が訪れる…。
2人とも食事の手も止まっている……。
「……お前さ……」
俊輔が葵から視線を外して口を開く。
「……藤井さんて……どんな人なの……?」
「────!?……なんで…………そんなこと聞くんだよ……」
葵の顔から表情が消える……。
少しの沈黙が葵に重く伸し掛る……。
「…俺……昼間……一度帰ってきたんだ……」

───藤井に抱かれている間……
……何度も…──名前を呼んだ…………
テーブルの上のペットボトルと……
──自分の艶かしい声が……
………………頭に蘇る………………。

「…別に…俺はお前が……好きになった人なら…良いと思う……」

────俊にだけは…………

「……男とか…女とか…お前が幸せなら……俺は…」

────知られたくなかった…………

頭が真っ白になって……。
俊輔が何を言っているか聞こえているのに解らなくなる……。
「好きなんだろ…?」
「──え……?」
葵がやっと俊輔を見る…。
「その、藤井さんて人のこと……好きなんだろ?」

────何を言ってる……?…………

「………そう……」

────違う!……俺が…………
───好きなのは……………………

「なら……俺は…応援するよ……」

葵が俊輔を見つめる……。
──そうだ…俺は俊を諦めるために……
藤井さんを……求めたんだ…………。

「ありがとう……」
そう言って葵は微笑んだ…。


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