君の手の温もりが…

海花

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別れない…

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久しぶりの休日に昼近いことも判っていながら、まだベットで微睡んでいる。
今日は店に出向く必要もない。
──たまには昼から飲むのもいいな…。
そんなことを思いながら、カーテンが完全に陽の光を遮っている暗い部屋で薄ら目を開けた……。
一人きりのベットがイヤに広く感じる…。
この部屋で何回か葵を抱いた。

自分でもみっともないと思うくらい……
──葵に本気になっているのが判る……。

寝室のドアが突然開いたのが分かり体を起こしてそちらを見る。
「……まだ寝てたの?」
「今日は何の予定もないからね」
藤井が笑顔を向ける。
「こんな時間に来るなんて珍しいね」
「歩夢から電話がきたの。あなたから別れようって言われたって泣いてた」
「……そんなことだろうと思ったよ」
「…………あの子のせい?」
莉央が傍まで来るとベットへ座った。
「葵は関係ない」
「まだ子供よ?……本気なの?」
「相変わらず直球だね」
藤井が笑った。
「はぐらかさないでよ」
莉央が真っ直ぐに見つめる。
ドアから入る明かりだけが藤井を朧気に照らしている。
「……私にも…別れようって言うの……?」
「……………………」
藤井も莉央を見つめ続ける。
「葵くんは?あの子も本気なの?……前会った時はそんな感じ全然無かったけど」
莉央の率直な言葉に再び笑った。
昔から変わらない。
「……いや。葵には他に好きな人がる。……だから俺の問題なんだよ」
莉央が眉をひそめた。
「……?意味が解らないんだけど?葵くんには他に好きな人がいるのを解ってて歩夢と別れたの?」
「俺の気持ちの問題だからね。葵が誰を好きかは関係無い」
「…もし、葵くんがその人と上手くいったら………?」
「……まぁ…俺の元を離れるだろうね。それでも俺と付き合える程、あれは器用じゃないし…割り切れもしない」
藤井が微笑む。
「……呆れちゃう…。他に好きな人がいるのを知ってて本気になって……」
莉央が藤井を見つめたまま頬に手を伸ばす。
「挙句……私まで捨てようっていうの?」
沈黙が二人を包む……。
「……離れてあげないから……」
莉央が囁きながら藤井の首に腕を回す。
「……直斗が一人になっちゃうかもしれないのに…私が離れると思うの?」
「……そろそろ俺のことなんか、見捨てたらどうだ?……俺の傍になんかいなきゃ、とっくに幸せになってただろ………?」
「幸せかどうかは自分で決めるわよ。人を不幸みたいに言うのやめて」
「…変わんねぇな……」
直斗が笑う。
「直人もね」
莉央も笑った。
「私がいなくなったら…今度は誰の胸で泣くつもり?……悪いけど『2番目』には慣れてるの」
藤井が黙ったまま莉央を抱きしめる。
「私が一番だったことなんて…最初の何年かだけだったでしょ?」
莉央の言葉だけが暗い部屋に響いている。
「……否定すらしないんだから……」
二人の唇が触れ…
やがてベットの中へと溶けていった……。


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