君の手の温もりが…

海花

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いつもの様に壁の間接照明だけがついている部屋で葵は藤井の腕の中にいる。
さっきのことが夢だったんじゃないかと思う程、藤井が優しく葵に触れながら何度も優しくキスを重ね、丁寧に愛撫される。
その間何度「愛してる」と囁かれたか分からない……。
その度に葵は「俺も好きです」と囁き返した。
葵のつぼみが待ちきれないとばかりに開き藤井を包み込む……。
「──ぁ…いい……すごく……」
藤井が葵の一番感じるように体位を変えると
「──ンん!!……いい…ァァ!ん…!」
艶めかし声が部屋中に響き、葵が縋るような目つきで藤井を見つめる。
「──でけえ声」
突然寝室の入口から声が聞こえて藤井が慌てて振り返った。
「…………歩夢……」
藤井が慌てて葵から離れダウンケットで葵を隠す。
「何しに来た?」
聞いた事の無いような藤井の冷たい声が葵の耳にも届く。
「……鍵……返しに来ただけ」
歩夢が手に持ったいた鍵を藤井に見えるように指でぶら下げる。
「………ならテーブルの上に置いてさっさと帰ったらどうだ?」
「……随分冷たいんだね。少し前までそこで俺を抱いてたくせに」
藤井がベットから降りガウンを羽織ると歩夢の前へと向かった。
ダウンケットの中で葵の心臓が激しく打ち始める…。
───多分……あの写真の人だ……。
初めて藤井の部屋に来た時『恋人』だと言っていた……。
葵の為に作ったと言われてケーキを食べた記憶が蘇る。
「だから何だ?」
「……そんなガキのどこがいい訳?」
「お前には関係ないだろ。鍵は?」
歩夢が手に持っていた鍵を藤井の手に渡した。
「…まさか……こんなガキに直斗を寝盗られるとは思わなかったよ」
歩夢がベットに目をやる。
「葵くん、……顔ぐらいだしたら?」
「葵に構うな」
藤井の声が一層冷たくなったのが判ってベットから葵が起き上がった。
───俺のせいで…………
今まで経験したこと無いくらい鼓動が早くなって、頭が現状を理解しきれていなかったが、それでも他人事の様に隠れているのは嫌だった。
「へぇー……。ホント…直斗好みの顔だ…」
「──!?」
歩夢の言葉に藤井が葵を振り返り、起き上がっている葵を見るなりため息をついた。
「俺も……葵くんみたいなタイプ好きだよ。……。特に廊下まで響き渡る様な品の無い声で泣き叫ぶ猫の子はね」
歩夢が葵に含んだ様な笑顔をむけた。
「お前!」
藤井がカッとなって歩夢の胸ぐらを掴んだ。
「葵に何かしてみろ。お前を殺すぞ」
「───!?藤井さん!」
藤井の言葉に慌てて葵が立ち上がって止めようとすると
「葵はそこにいろ!」
藤井の初めて聞く声に葵が動けなくなる……。
「………………葵くん、これが直斗の本性だよ。……どんなに愛してるって囁いていても、要らなくなればゴミをゴミ箱に捨てる様に、罪悪感も躊躇いもなく捨てる」
「葵は違う!」
「嘘だね。俺は何人も見てきた。直斗は誰にも本気にならないし、要らなくなれば相手が泣こうが喚こううが関係ない……」
単調に言葉を紡いでいた歩夢の頬を涙が伝った。
「それでも……俺は……直斗を愛してたけどね」
藤井の手が歩夢の襟首からゆっくり離れていく……。
「……もう会うことも無い。葵くんともね……」
それだけ告げると歩夢は出ていき、薄暗い部屋に藤井と葵だけが残された。
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