君の手の温もりが…

海花

文字の大きさ
87 / 160

それぞれの朝 4

しおりを挟む
俊輔はいつも通りパンを焼きスクランブルエッグとウィンナーを皿に盛り付けた。
同じ二人分だが、今日は葵ではなく薫と自分の分だ。
「薫、パン何つける?」
先程起きてきたばかりの薫はイスに座り眠そうにダイニングテーブルの上に頭を乗せている。
「んー……バターがいい」
そう言いながら欠伸をしている。
「昨日はごめん…。俺またやらかしたよね?」
朝食を薫の顔の横に置きながら俊輔がため息をついた。
「……別に気にしてない」
薫がまた欠伸をしながら関心なさそうに答える。
「手伝う?」
薫が顔を上げ俊輔を見上げた。
「んー……じゃあコーヒー運んでよ」
薫は立ち上がるとキッチンから入れてあるコーヒーをテーブルへ運び
「…朝飯なんて食べるの何年ぶりかも」
嬉しそうに微笑んでいる。
俊輔が薫の言葉に笑いながらマグカップを受け取ろうとして手を差し出した瞬間、薫の手と触れ慌てて手を引っ込めた。
弾みでコップが落ち、机の上にコーヒーが黒く広がっていく。
「ごめんっ!」
俊輔が慌てて布巾を取りに行き机を拭きだした。

──今……触った瞬間……すごく……

薫は黙ったまま俊輔を見つめている。
「ごめん……。朝早く目が覚めたから寝ぼけてるのかも」
俊輔が困ったように薫に笑いかけると、薫が無言のまま俊輔の頬に手を伸ばした。
その手が頬に触れる直前、俊輔が薫の手を払い除け顔を背けた。

───触られたくない────

はっきりとした嫌悪感に理由が解らず鼓動が早くなる。
「ごめん……。なんか…ちょっと…調子悪いかも」
俊輔は薫を見るのが怖くて机に視線を落としたままポツリと呟いた。



「……とりあえず…朝メシ食べようぜ」
少しの沈黙の後、薫が微笑んで布巾を濯いでくるとまだ汚れの残ったテーブルをキレイに拭いた。
「……ごめん」
俊輔は自分に何が起こったのか解らず戸惑っていた。
それまで何ともなかったのに肌に触れた途端不快感を感じ、薫の手が顔に触れると思った瞬間……嫌悪感が溢れた。
「俊?」
薫の声で我に返り顔を上げると
「大丈夫だから……気にするなよ。きっと発作の後だから調子悪いだけだ」
そう言って薫が優しく微笑んだ。
「ごめん……。ありがとう」
薫の優しさが有難くて、申し訳なくて…。
俊輔はすまなそうに微笑み返した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...