104 / 160
怪我
しおりを挟む───面倒くさ………………。
藤井は一人になるとソファーに座って身体を預けた。
莉央の手前、医者に行くと言ったが行ったところで大した治療はされないことなど、過去の経験から分かっていた。
恐らく肋骨にヒビが入ったか…その程度だろう。
昨夜は結局一睡もしていないが気が昂っているせいか眠くもならない。
───葵………………。
葵に会いたかった、しかしこんな情けない姿を見せたくない。
そう思うことがまたカッコ悪く思えて、ため息をついた。
「───いたっ…………」
それだけでも脇腹に痛みが走る。
その時『ガチャ』と玄関のドアの開く音に気付いた。
───ホントだ……莉央さんの言う通り鍵開いてる……。
莉央と別れる間際、今自分が出てきたところだから鍵が開いていると、教えてくれたのだ。
少し躊躇いながら中へ入っていき、リビングのドアを開けると
「ちゃんと行くから帰れって……」
藤井が入ってきた葵に気付き言葉を止めた。
「───葵………………」
「藤井さん!その顔……!」
葵が藤井の元へ行き紫色に腫れた左頬にそっと手を当てた。
「……どうして…来たんだ……」
「電話で藤井さんが酔っ払いと喧嘩したって聞いて……」
藤井が信じられないと言った様に葵を見つめる。
「どうして喧嘩なんかしたんですか……」
葵が眉をひそめ窘めるように言う。
髪が……Tシャツが……汗で濡れていて、急いで走って来たのを容易に想像させる。
──俺を…心配して…………
「ごめん……」
「謝る必要はないですけど……。いや……あるかな……。俺、それ聞いた時どうしようかと思いましたよ」
葵が苦笑いする。
「でも…入院とかしてなくて良かった…」
葵の安心したような笑顔に胸が締め付けられる。
本当は会いたくて仕方がなかった。
「ほら!医者…行きますよ!」
葵が手を差し伸べる。
藤井はゆっくり立ち上がり葵の手を取るとそっと抱きしめた。
「大丈夫だから。大した怪我じゃない」
医者に行くより、こうして葵を抱きしめている方が余程痛みが和らぐ気がした。
「ダメですよ!莉央さんにも言われてるし……」
「──莉央と会ったの?」
「……あ……下で……」
「そっか……。あいつは昔から大袈裟なんだよ」
「でも……!」
「本当に大丈夫だから……」
───今はこうして葵と二人でいたい……。
「……………………」
葵はそっと藤井の背中に手を伸ばし、莉央に言われた通りギュッと抱きしめた。
「────いっっっ!!!」
「え!?」
藤井が脇腹を抑えて床にしゃがみ込んだ。
「──ふっ…藤井さん!?」
葵が慌てて膝をつき顔を覗き込む。
「…………大丈夫……だから…………」
藤井は無理に笑顔を向けるが目には薄ら涙を浮かばせている。
「すみません!俺…………」
莉央から『もし直斗が医者に行きたがらなかったら抱きしめてあげて』と言われていたのだ……。
「ちゃんと、医者……行きましょう?」
葵が申し訳なさそうに言った。
0
あなたにおすすめの小説
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる