君の手の温もりが…

海花

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怪我

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───面倒くさ………………。
藤井は一人になるとソファーに座って身体を預けた。
莉央の手前、医者に行くと言ったが行ったところで大した治療はされないことなど、過去の経験から分かっていた。
恐らく肋骨にヒビが入ったか…その程度だろう。
昨夜は結局一睡もしていないが気が昂っているせいか眠くもならない。
───葵………………。
葵に会いたかった、しかしこんな情けない姿を見せたくない。
そう思うことがまたカッコ悪く思えて、ため息をついた。
「───いたっ…………」
それだけでも脇腹に痛みが走る。
その時『ガチャ』と玄関のドアの開く音に気付いた。


───ホントだ……莉央さんの言う通り鍵開いてる……。
莉央と別れる間際、今自分が出てきたところだから鍵が開いていると、教えてくれたのだ。
少し躊躇いながら中へ入っていき、リビングのドアを開けると
「ちゃんと行くから帰れって……」
藤井が入ってきた葵に気付き言葉を止めた。
「───葵………………」
「藤井さん!その顔……!」
葵が藤井の元へ行き紫色に腫れた左頬にそっと手を当てた。
「……どうして…来たんだ……」
「電話で藤井さんが酔っ払いと喧嘩したって聞いて……」
藤井が信じられないと言った様に葵を見つめる。
「どうして喧嘩なんかしたんですか……」
葵が眉をひそめ窘めるように言う。
髪が……Tシャツが……汗で濡れていて、急いで走って来たのを容易に想像させる。
──俺を…心配して…………
「ごめん……」
「謝る必要はないですけど……。いや……あるかな……。俺、それ聞いた時どうしようかと思いましたよ」
葵が苦笑いする。
「でも…入院とかしてなくて良かった…」
葵の安心したような笑顔に胸が締め付けられる。
本当は会いたくて仕方がなかった。
「ほら!医者…行きますよ!」
葵が手を差し伸べる。
藤井はゆっくり立ち上がり葵の手を取るとそっと抱きしめた。
「大丈夫だから。大した怪我じゃない」
医者に行くより、こうして葵を抱きしめている方が余程痛みが和らぐ気がした。
「ダメですよ!莉央さんにも言われてるし……」
「──莉央と会ったの?」
「……あ……下で……」
「そっか……。あいつは昔から大袈裟なんだよ」
「でも……!」
「本当に大丈夫だから……」
───今はこうして葵と二人でいたい……。
「……………………」
葵はそっと藤井の背中に手を伸ばし、莉央に言われた通りギュッと抱きしめた。
「────いっっっ!!!」
「え!?」
藤井が脇腹を抑えて床にしゃがみ込んだ。
「──ふっ…藤井さん!?」
葵が慌てて膝をつき顔を覗き込む。
「…………大丈夫……だから…………」
藤井は無理に笑顔を向けるが目には薄ら涙を浮かばせている。
「すみません!俺…………」
莉央から『もし直斗が医者に行きたがらなかったら抱きしめてあげて』と言われていたのだ……。
「ちゃんと、医者……行きましょう?」
葵が申し訳なさそうに言った。

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