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家族
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食後、ツキヨを居間に呼び出した。
「弟と妹の話ですか?」
「そう。そうだ。彼らとは親戚になるわけだ。少し、知っておきたい」
「弟は16歳になります。今、軍学校に通っております。昔から、災害が起きたときに駆けつけてくれる軍の方々に憧れていたそうです。昔から、弓が得意で、父と一緒に狩に行ってました。今も、狩と弓は続けています。」
「名は?」
「タスク」
「タスクか、良い名だな。軍学校は入学が難しいと言われている。よく頑張ったのだな」
「そうなんです、入ることを決めてから、毎日、朝と夕に走りにいったり、勉学にも励んで、一般学校時代には、主席を取るくらいで。あ、でも、家では甘えん坊な一面があるという感じで、飼い犬と、一緒に寝たりもしていたんです」
思わずべらべらとしゃべってしまった。ちらりと、尊星さまの方を見ると尊星さまは少し微笑んで私の話を聞いてくれているようだった。
「妹もいると言っていたが、妹は何をしているんだ?」
「妹は、養子に出されていて、離れて暮らしていたんですが、養子として引き取っていた伯父が墳陵をつくる為に、呼び出さされ、今は私の家族と一緒に過ごしています。一般学校に通っていて、友達とかも出来て楽しく過ごしているみたいです。あ、名前は、ハレです。」
「歳は?一般学校ということは、10歳以下になるのか?」
「はい、私よりも9つ年下で、9歳です。なんだか、まだ赤ちゃんみたいな気持ちがしてしまいます」
「私にも、異母兄弟だが歳の離れた兄弟がいるからその感覚は分かる」
初めて、尊星とツキヨが同じように感じたことかもしれない。
ツキヨは少し、尊星への抵抗感が薄れ自分から会話を振った。
「尊星さまのお母様は普段、どちらにいらっしゃるのですか?挨拶をしたいと思っていて」
夫婦なら、相手のご両親に挨拶をするのは当然のこと。私の義両親ともなるお方たちなのですから!
「私の母は、私が八つのときに亡くなっております」
「し、失礼いたしました」
私、全然知らなかった。尊星さまのお母様がお亡くなりになっていたことなんて。軽率すぎる発言だったな。
ツキヨは深く頭を下げ続ける。
「謝らずとも良い。面をあげなさい。母の遺骨は、王都の西の丘に埋葬されている。挨拶にでも行きたいのなら、そちらへ赴くことを勧めよう」
まだ、頭を下げたままのツキヨ。
「母上が身まかられたこと、公にはされていないゆえ、知らぬことが当然だ。気にするな」
ツキヨは眉をハの字にして、私の様子を伺う。その様子は、蛇に睨まれた蛙のようだ。そんな顔でこちらを、見られると、私の方が高圧的な態度で威圧しているみたいではないか。
「本当に気にしていないんだ。顔をあげてごらん。責めやしない」
「まことでございますか?」
おずおずとしたツキヨ。
「あぁ。弟と妹の話をしているときはあれだけ楽しそうだったのに、私の方こそ申し訳ない」
「いえ、そんな…」
「あぁ、そうだ、今度、タスク君とハレちゃんをここに呼ぶのはどうだろうか?」
「そんな、宮中に二人を招くなど」
「私が許す。ツキヨさんには申し訳なく思っているんだ。私が、こう物言いが無愛想な男であり、表情も変わらぬ、つまらぬ男であることを」
って言ってる間も、まるで機械がしゃべっているみたいに無表情。
「そ、そんな風に思ったことはございません」
うそ、本当は5分に一回くらい思ってる。
「ときには、姉弟水入らずの、明るい時間も欲しいだろうし、急な別れで二人もきっと悲しんでいるだろう。それに、義兄弟と仲良くなることがそこまで悪い行為だと私にはどうも思えなくてな」
「尊星さま、ありがとうございます」
「構わぬ。妻が笑うならばそれこそ夫の願いというものだろう」
妻! 目を丸くしたツキヨ。
ん?今の言い回し、キザったらしい感じだったな。恥ずかし!そうだ、こういう時は酒だ!いや、さすがにツキヨさんの前じゃダメか。
外から、カランカランと鈴の音が聞こえてきた。消灯、就寝の合図だ。これ以降、日の出までは屋敷の外へは出られない。夜はあやかしの活動時間にあたると考えられているからだ。
尊星とツキヨは居間を出て、廊下にたつ。
「もう、就寝の時間だ。灯りを消せ」
尊星は居間の前の廊下に待機する侍女にそう命令する。
「かしこまりました」
ひゅうと辺りが暗くなる。
手持ち灯りをボウと灯す。
「私は、書斎で休息をとる。ツキヨさんは、寝室でもご自分の部屋でも好きなところでお休みください」
尊星の後をちょっと小走りでついていく。じゃないと、暗くて辺りが見えない。尊星さましか手持ち灯りは持っていないから。
「はい」
自室で寝よう。
「では、おやすみなさい」
私が立ち止まった自室の前。尊星さまは、軽く頭を下げてそう言った。
「尊星さま、おやすみなさい」
私は、深く頭を下げて、そう言った。すると、尊星さま二度ほどうなずくようなそぶりを見せてから、書斎へと入っていった。
「弟と妹の話ですか?」
「そう。そうだ。彼らとは親戚になるわけだ。少し、知っておきたい」
「弟は16歳になります。今、軍学校に通っております。昔から、災害が起きたときに駆けつけてくれる軍の方々に憧れていたそうです。昔から、弓が得意で、父と一緒に狩に行ってました。今も、狩と弓は続けています。」
「名は?」
「タスク」
「タスクか、良い名だな。軍学校は入学が難しいと言われている。よく頑張ったのだな」
「そうなんです、入ることを決めてから、毎日、朝と夕に走りにいったり、勉学にも励んで、一般学校時代には、主席を取るくらいで。あ、でも、家では甘えん坊な一面があるという感じで、飼い犬と、一緒に寝たりもしていたんです」
思わずべらべらとしゃべってしまった。ちらりと、尊星さまの方を見ると尊星さまは少し微笑んで私の話を聞いてくれているようだった。
「妹もいると言っていたが、妹は何をしているんだ?」
「妹は、養子に出されていて、離れて暮らしていたんですが、養子として引き取っていた伯父が墳陵をつくる為に、呼び出さされ、今は私の家族と一緒に過ごしています。一般学校に通っていて、友達とかも出来て楽しく過ごしているみたいです。あ、名前は、ハレです。」
「歳は?一般学校ということは、10歳以下になるのか?」
「はい、私よりも9つ年下で、9歳です。なんだか、まだ赤ちゃんみたいな気持ちがしてしまいます」
「私にも、異母兄弟だが歳の離れた兄弟がいるからその感覚は分かる」
初めて、尊星とツキヨが同じように感じたことかもしれない。
ツキヨは少し、尊星への抵抗感が薄れ自分から会話を振った。
「尊星さまのお母様は普段、どちらにいらっしゃるのですか?挨拶をしたいと思っていて」
夫婦なら、相手のご両親に挨拶をするのは当然のこと。私の義両親ともなるお方たちなのですから!
「私の母は、私が八つのときに亡くなっております」
「し、失礼いたしました」
私、全然知らなかった。尊星さまのお母様がお亡くなりになっていたことなんて。軽率すぎる発言だったな。
ツキヨは深く頭を下げ続ける。
「謝らずとも良い。面をあげなさい。母の遺骨は、王都の西の丘に埋葬されている。挨拶にでも行きたいのなら、そちらへ赴くことを勧めよう」
まだ、頭を下げたままのツキヨ。
「母上が身まかられたこと、公にはされていないゆえ、知らぬことが当然だ。気にするな」
ツキヨは眉をハの字にして、私の様子を伺う。その様子は、蛇に睨まれた蛙のようだ。そんな顔でこちらを、見られると、私の方が高圧的な態度で威圧しているみたいではないか。
「本当に気にしていないんだ。顔をあげてごらん。責めやしない」
「まことでございますか?」
おずおずとしたツキヨ。
「あぁ。弟と妹の話をしているときはあれだけ楽しそうだったのに、私の方こそ申し訳ない」
「いえ、そんな…」
「あぁ、そうだ、今度、タスク君とハレちゃんをここに呼ぶのはどうだろうか?」
「そんな、宮中に二人を招くなど」
「私が許す。ツキヨさんには申し訳なく思っているんだ。私が、こう物言いが無愛想な男であり、表情も変わらぬ、つまらぬ男であることを」
って言ってる間も、まるで機械がしゃべっているみたいに無表情。
「そ、そんな風に思ったことはございません」
うそ、本当は5分に一回くらい思ってる。
「ときには、姉弟水入らずの、明るい時間も欲しいだろうし、急な別れで二人もきっと悲しんでいるだろう。それに、義兄弟と仲良くなることがそこまで悪い行為だと私にはどうも思えなくてな」
「尊星さま、ありがとうございます」
「構わぬ。妻が笑うならばそれこそ夫の願いというものだろう」
妻! 目を丸くしたツキヨ。
ん?今の言い回し、キザったらしい感じだったな。恥ずかし!そうだ、こういう時は酒だ!いや、さすがにツキヨさんの前じゃダメか。
外から、カランカランと鈴の音が聞こえてきた。消灯、就寝の合図だ。これ以降、日の出までは屋敷の外へは出られない。夜はあやかしの活動時間にあたると考えられているからだ。
尊星とツキヨは居間を出て、廊下にたつ。
「もう、就寝の時間だ。灯りを消せ」
尊星は居間の前の廊下に待機する侍女にそう命令する。
「かしこまりました」
ひゅうと辺りが暗くなる。
手持ち灯りをボウと灯す。
「私は、書斎で休息をとる。ツキヨさんは、寝室でもご自分の部屋でも好きなところでお休みください」
尊星の後をちょっと小走りでついていく。じゃないと、暗くて辺りが見えない。尊星さましか手持ち灯りは持っていないから。
「はい」
自室で寝よう。
「では、おやすみなさい」
私が立ち止まった自室の前。尊星さまは、軽く頭を下げてそう言った。
「尊星さま、おやすみなさい」
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